「君は知らないかもしれないが、国連工業開発機関(UNIDO)の開発支援プロジェクト件数では中国が最も多い。UNIDOの開発援助資金を最も巧みに利用している国は中国とイランだ。UNIDOは両国に悪用されている」
 普段は外交的な知人のUNIDO職員もよほど頭にきているのか、吐き捨てるようにこのように語った。
 中国は国内総生産(GDP)で米国に次いで第2の経済大国だ。国民1人当たりにすれば、日本がまだ上位だが、その経済力は既に立証済みだ。拡大する経済力を支えるために、積極的な資源外交を展開させる一方、その豊かな資金は軍事力強化に再投資されている。
 香港時事発の記事によれば、「中国海軍は10日、改修した旧ソ連製空母『ワリャーグ』の試験航行を開始し、史上初めて空母を運用することになった。既に着手したとみられる国産空母の建造を急ぎ、その運用に訓練艦として使うワリャーグの経験を活用する方針だ」という。
 その中国は依然、開発途上国のような国を装い、国際社会、特に、国連専門機関から巨額の開発資金を手に入れているのだ。特に、UNIDOはアフリカ開発支援を標榜している国連の専門機関だ、その貴重な資金が中国に流れているという事実は看過できない。
 知人は、「UNIDOはここ数年、ウィーンのホーフブルク宮殿で国際エネルギー関連のシンポジウムを開催しているが、カンデ・ユムケラー事務局長は開催前に必ず中国を訪問している。中国はアフリカを資源供給地とみなし、UNIDOを巧みに引き込んでいる疑いがある」という。
 ところで、経済大国・中国の開発支援しているのは国連機関だけでない。最大の支援は財政赤字で悩む米国だ。米上院議員たちが上院外交委員会に提出した書簡によると、「米政府は中国に対して昨年だけで6500万ドルを援助し、2001年以来、インターネットサービスや交通運輸のインフラ建設などを含む各種援助項目の合計金額が2兆7500億ドルに達した。中国はこの他、米国が最大の資金提供者となっている国連や世界銀行などから、数十億ドルの援助も受けている」と指摘し、「中国向けの開発援助を停止すべきだ」と要求しているのだ。中国反体制派メディア「大紀元時報」が10日付で、米紙リッチモンド・タイムズ・ディスパッチの記事を引用しながら報じている。
 もちろん、米国だけではない。日本も政府開発援助(ODA)を通じて中国に開発援助を実施してきている。ただし、前原誠司外相(当時)は3月2日、対中ODA削減の意向を決定している。
 UNIDO担当の日本外交官は「日本はUNIDOを通じてアフリカ諸国の開発支援を今後も継続していく」と主張するが、先述したように、多くの援助金がアフリカ諸国ではなく、中国に利用されているのだ。最大分担国である日本はUNIDOの開発援助計画の検証を実施すべきだろう。
 繰り返すが、中国は経済大国だ。開発援助を受けなくても十分自立できる国だ。中国への開発援助は即停止すべきだ。