国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は先月17日午後の記者会見でイランの核計画の軍事目的を指摘した「最新イラン核報告書」の信頼性について何度も強調した。少し古くなった話題だが、ここで考えてみた。

▲査察官を絶対的に信頼する天野之弥事務局長(IAEAのHPから)
「私はIAEAの査察専門家の能力を絶対的に信頼している。その専門家の判断によれば、イランが軍事目的を追求しているというのだ。IAEAのトップとしてその事実を隠蔽できない。国際社会に公表することがIAEA事務局長としての義務だと考えた」と語った。
IAEA査察官たちが聞いたら、ボスの絶対的信頼に涙が出るかもしれない。ただし、ボスの部下への信頼はいいが、査察官の専門的判断を「絶対に信頼できるか」という素朴な疑問は残る。
同時に、情報提供国への「信頼」問題もある。事務局長は「イランを含む10カ国からの情報を入手した。それらの情報を調査した結果、信頼できると判断した」と繰り返している。
ある記者が、「あなたが入手した情報はほとんど米国とイスラエルからではないですか」と質問すると、天野氏は、「その質問に答えられない」と主張。常識の範囲からいえば、かなりの情報が米国発だったことは疑いない。それでは米国発の情報を「信頼」し、それを盲目的に受け入れることができるだろうか、が次の問題となる。
イラク戦争勃発の契機となったイラク大量破壊兵器問題に関連した米情報機関の情報を想起すればいいだろう。米国の情報が間違っていたことが後日明らかになっているのだ。
イランの核問題でも、「2003年まで核兵器製造を追及してきたが、その後、断念した」と発表したのは米国だった。それが今、「核兵器製造を目指している」という情報をIAEA側に提供したのだ。すなわち、米国自身が過去の情報を訂正しているのだ。
衛星写真も情報エージェントの情報も決して「100%正しい」ということはない、というのが欧米情報機関の常識となっていることを天野氏はご存知だろうか。
イランの核問題では、「情報」とそれを追認する側(IAEA査察官)への「信頼」より、冷静な「検証」が重視されるべきだからだ。
ただし、部下の査察官を絶対的に信頼する天野氏の姿勢は高く評価できる。ボスから信頼を受けた査察官たちは今後、一層その職務に励み、ボスの期待に応えたいと努力していくならば、天野氏の「信頼宣言」は将来、大きな実りをもたらすと信じるからだ。これはIAEAだけのテーマではない。どの組織や機関でも、ボス(社長)が部下を絶対的に信頼するならば、その組織は結束され、必ず発展すると確信する。

▲査察官を絶対的に信頼する天野之弥事務局長(IAEAのHPから)
「私はIAEAの査察専門家の能力を絶対的に信頼している。その専門家の判断によれば、イランが軍事目的を追求しているというのだ。IAEAのトップとしてその事実を隠蔽できない。国際社会に公表することがIAEA事務局長としての義務だと考えた」と語った。
IAEA査察官たちが聞いたら、ボスの絶対的信頼に涙が出るかもしれない。ただし、ボスの部下への信頼はいいが、査察官の専門的判断を「絶対に信頼できるか」という素朴な疑問は残る。
同時に、情報提供国への「信頼」問題もある。事務局長は「イランを含む10カ国からの情報を入手した。それらの情報を調査した結果、信頼できると判断した」と繰り返している。
ある記者が、「あなたが入手した情報はほとんど米国とイスラエルからではないですか」と質問すると、天野氏は、「その質問に答えられない」と主張。常識の範囲からいえば、かなりの情報が米国発だったことは疑いない。それでは米国発の情報を「信頼」し、それを盲目的に受け入れることができるだろうか、が次の問題となる。
イラク戦争勃発の契機となったイラク大量破壊兵器問題に関連した米情報機関の情報を想起すればいいだろう。米国の情報が間違っていたことが後日明らかになっているのだ。
イランの核問題でも、「2003年まで核兵器製造を追及してきたが、その後、断念した」と発表したのは米国だった。それが今、「核兵器製造を目指している」という情報をIAEA側に提供したのだ。すなわち、米国自身が過去の情報を訂正しているのだ。
衛星写真も情報エージェントの情報も決して「100%正しい」ということはない、というのが欧米情報機関の常識となっていることを天野氏はご存知だろうか。
イランの核問題では、「情報」とそれを追認する側(IAEA査察官)への「信頼」より、冷静な「検証」が重視されるべきだからだ。
ただし、部下の査察官を絶対的に信頼する天野氏の姿勢は高く評価できる。ボスから信頼を受けた査察官たちは今後、一層その職務に励み、ボスの期待に応えたいと努力していくならば、天野氏の「信頼宣言」は将来、大きな実りをもたらすと信じるからだ。これはIAEAだけのテーマではない。どの組織や機関でも、ボス(社長)が部下を絶対的に信頼するならば、その組織は結束され、必ず発展すると確信する。