ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁の情報収集能力は欧米の情報機関を凌ぐほど優秀だ。世界各地に派遣した宣教師、法王庁直属聖職者からローマに発信される情報は、米中央情報局(CIA)のそれよりも詳細で正確な場合が少なくないといわれる。なぜならば、数年で担当地域が変わるエージェントとは違い、バチカンの情報員たち(聖職者)は一生、現地で生活し、現地人と一緒に生活しているからだ。彼らは現地の歴史と文化を学び、現地語をマスターしているから、情報の理解力で欧米情報機関員を上回るのは当然かもしれない。
リビアで目下、カダフィ政権と反政府勢力が対立し、トリポリを拠点とする政府軍とベンガジを拠点とする反政府軍の武力衝突は一進一退といった状況だ。リビアに民主化の波が及んだ直後、リビア担当司教が「リビアは分断される可能性がある」と指摘していた。その当時、「少し早急な判断ではないか」と受け止めていたが、リビア情勢は司教の予想した方向に流れる様相を深めてきた。司教は当時、べドウィン(遊牧アラブ)出身のカダフィ大佐がエジプトのムバラク大統領やチュニジアのべンアリ大統領のように政権を放り出すことはない、と確信していたはずだ。すなわち、司教はカダフィ大佐の性格を熟知していたのだ。
最近では、イエメン、アラブ首席国連邦、オマーンの南アラブ地域を担当するポール・ヒンダー司教が17日、べネディクト16世に激動するイエメンの政情を報告している。
スイスのカプチン修道会出身のヒンダー司教はバチカン放送とのインタビューで「アラブの春は唐突に発生したものではない」と指摘、「アラブの再編は社会的、政治的、特に経済的状況が大きな役割を果たしている。一方、イスラム根本主義勢力はひとつの例外を除いては余りプレゼンスがない」と主張している。司教がいう例外とは、スンニ派とシーア派の対立が激化しているバーレーンだ。
当方は「聖職者とスパイ」(2007年1月9日参照)というコラムの中で、「冷戦時代、共産政権から聖職者は格好のスパイ予備軍と見なされてきた。信者たちと自由に接触でき、尊敬も享受でき、時には家庭生活の状況まで知り得る聖職者はスパイとなれる全ての条件を満たしているからだ」と書いたことがある。
聖職者は信者たちの昨夜の夕食の献立さえも知ることができるのだ。どんなに優秀なCIAエージェントもそこまで入り込むことは容易ではない。聖職者の「政情分析」を侮ってはならない理由だ。
リビアで目下、カダフィ政権と反政府勢力が対立し、トリポリを拠点とする政府軍とベンガジを拠点とする反政府軍の武力衝突は一進一退といった状況だ。リビアに民主化の波が及んだ直後、リビア担当司教が「リビアは分断される可能性がある」と指摘していた。その当時、「少し早急な判断ではないか」と受け止めていたが、リビア情勢は司教の予想した方向に流れる様相を深めてきた。司教は当時、べドウィン(遊牧アラブ)出身のカダフィ大佐がエジプトのムバラク大統領やチュニジアのべンアリ大統領のように政権を放り出すことはない、と確信していたはずだ。すなわち、司教はカダフィ大佐の性格を熟知していたのだ。
最近では、イエメン、アラブ首席国連邦、オマーンの南アラブ地域を担当するポール・ヒンダー司教が17日、べネディクト16世に激動するイエメンの政情を報告している。
スイスのカプチン修道会出身のヒンダー司教はバチカン放送とのインタビューで「アラブの春は唐突に発生したものではない」と指摘、「アラブの再編は社会的、政治的、特に経済的状況が大きな役割を果たしている。一方、イスラム根本主義勢力はひとつの例外を除いては余りプレゼンスがない」と主張している。司教がいう例外とは、スンニ派とシーア派の対立が激化しているバーレーンだ。
当方は「聖職者とスパイ」(2007年1月9日参照)というコラムの中で、「冷戦時代、共産政権から聖職者は格好のスパイ予備軍と見なされてきた。信者たちと自由に接触でき、尊敬も享受でき、時には家庭生活の状況まで知り得る聖職者はスパイとなれる全ての条件を満たしているからだ」と書いたことがある。
聖職者は信者たちの昨夜の夕食の献立さえも知ることができるのだ。どんなに優秀なCIAエージェントもそこまで入り込むことは容易ではない。聖職者の「政情分析」を侮ってはならない理由だ。