音楽の都ウィーン市では夫婦の3組に2組が離婚するが、南欧の小国マルタは、欧州連合(EU)の中でもこれまで離婚を法的に認めない唯一の国だった。しかし、同国でも今後、離婚が合法的に認められる雲行きだ。
 マルタで28日、離婚を合法的に認めるか否かの国民投票が実施された。その結果、国民の過半数が離婚の合法化を支持したのだ。同国のローレンス・ゴンズィ首相は「投票結果は私の願いとは一致しないが、国民の意思を尊重する」と述べ、議会で離婚を容認する法案の作成に取り組む意向を明らかにしている。
 オーストリアのカトリック通信によれば、マルタの国民投票の質問は「夫婦が少なくとも4年間別居中で、近い将来和解の希望がなく、双方の生計に問題なく、子供の権利が保障されている場合、離婚を認めますか」といった少々、複雑な内容だ。
 マルタは人口約41万人の小国。国民の約90%がカトリック信者である。聖書や関連文献によると、使徒パウロはローマに行く予定だったが、船が壊れたため、途中のマルタの島で3カ月間、滞在した。その期間、パウロら使徒たちはイエスの福音を島の人々に伝えたという。ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王べネディクト16世は昨年4月17日から2日間、マルタを訪問したばかりだ。
 ちなみに、マルタのカトリック教会司教会議は離婚の合法化に強く反対してきた。そして「必要ならば、婚姻の概念を修正しても、離婚を合法化することは回避すべきだ」というのがカトリック教会の立場だったという。
 ところで、マルタでこれまで離婚は一切なかったのかというと、そうではない。「離婚のための抜け道」はあったのだ。例えば、教会による「婚姻無効」宣言だ。年間150組から200組の夫婦が教会から婚姻無効を受けてきた。もちろん、婚姻無効を認められるまでには長い時間がかかる。ただし、婚姻無効の場合、女性側が大きな負担を背負うケースが多いという。婚姻が元々なかったことになるため、生計の保証が得られないからだ。
 離婚の例外としてはまた、夫婦が海外で離婚した場合だ。夫婦の一方がその国の国籍、ないしは居住地を有している場合に限り、海外での離婚は認められることになっている。これに該当する離婚件数は年間約50ケースという。
 いずれにしても、離婚が日常茶飯事の今日、マルタも離婚合法化への道を歩みだすわけだ。