オーストリアはここにきて国際機関のポスト争いやビック・イベント開催誘致争いで悉く敗北し、昔の「輝き」を急速に失ってきている。
モーツァルトの生誕地ザルツブルク市が2010年、14年の冬季五輪開催地に立候補した時、大方の予想に反し、決戦投票にも進出できず、第1回投票でいずれも敗北し、国民をがっかりさせた。最近では欧州安保協力機構(OSCE)事務局長にオーストリアが推すウルスラ・プラスニク同国前外相がトルコの拒否権にあって沈没。ローマに本部を置く国連食糧農業機関(FAO)事務局長選ではオーストリアから欧州連合(EU)の元農業・漁業担当委員、フランツ・フィシュラー氏が出馬したが、今月26日の投票で170カ国加盟国から10票しか獲得できず早々と敗北したのだ(ブラジル人でFAO中南米カリブ海地域代表のジョゼ・グラジアノ・ダシルバ氏が当選)。
当方はこのコラム欄で「『輝き』を失ったオーストリア外交」(2010年12月13日)、「泣くな、ザルツブルクよ」(07年5月29日)などを掲載し、国際機関や五輪開催地争いで連敗が続くオーストリアを紹介した。
オーストリアは昔、国際機関のポスト争いでは結構、強かった。クルト・ワルトハイム氏が国連事務総長に当選し、2期、10年間(1972〜82年)、国連機関のトップの重責を務めたことはまだ記憶に新しい。
アルプスの小国オーストリアは冷戦時代、東西両陣営の掛け橋的役割を果たし、政治的にも中立主義を標榜していたこともあって、同国の政治家は国際機関のトップに選出されやすい立場にあった。
しかし、冷戦が終焉して20年以上が経過した。中立主義はもはやその価値を失った。オーストリアより小国も多数誕生した。すなわち、同国が国際社会にアピールしてきた「アルプスの小国」「中立主義」といったメリットは既に過去の遺物となったわけだ。換言すれば、オーストリア出身政治家を国際機関のトップに選出する必然性も魅力もなくなってきた、という訳だ。その一方、中国を筆頭に、ブラジル、インド、トルコ、南アフリカなど、新興勢力が国際機関のトップの座を狙ってきている。
オーストリアにとって残念なことは、同国の欧州連合(EU)加盟に尽力したアロイス・モック外相が辞任して以来、外相らしい外相が出てこなくなったことだ。シュビンデルエッガー現外相などは、「国内の経済界の利益を重視、外交に対するビジョンはまったくない」と酷評されている有様だ。
オーストリアは冷戦後の政界情勢を踏まえ、その外交政策を再考する必要があるだろう。モーツァルト、ザッハー・トルテ(チェコレート・ケーキ)、中立主義、といった過去のキャッチフレーズから決別し、21世紀の新しい外交哲学を生み出すべき時を迎えている。
モーツァルトの生誕地ザルツブルク市が2010年、14年の冬季五輪開催地に立候補した時、大方の予想に反し、決戦投票にも進出できず、第1回投票でいずれも敗北し、国民をがっかりさせた。最近では欧州安保協力機構(OSCE)事務局長にオーストリアが推すウルスラ・プラスニク同国前外相がトルコの拒否権にあって沈没。ローマに本部を置く国連食糧農業機関(FAO)事務局長選ではオーストリアから欧州連合(EU)の元農業・漁業担当委員、フランツ・フィシュラー氏が出馬したが、今月26日の投票で170カ国加盟国から10票しか獲得できず早々と敗北したのだ(ブラジル人でFAO中南米カリブ海地域代表のジョゼ・グラジアノ・ダシルバ氏が当選)。
当方はこのコラム欄で「『輝き』を失ったオーストリア外交」(2010年12月13日)、「泣くな、ザルツブルクよ」(07年5月29日)などを掲載し、国際機関や五輪開催地争いで連敗が続くオーストリアを紹介した。
オーストリアは昔、国際機関のポスト争いでは結構、強かった。クルト・ワルトハイム氏が国連事務総長に当選し、2期、10年間(1972〜82年)、国連機関のトップの重責を務めたことはまだ記憶に新しい。
アルプスの小国オーストリアは冷戦時代、東西両陣営の掛け橋的役割を果たし、政治的にも中立主義を標榜していたこともあって、同国の政治家は国際機関のトップに選出されやすい立場にあった。
しかし、冷戦が終焉して20年以上が経過した。中立主義はもはやその価値を失った。オーストリアより小国も多数誕生した。すなわち、同国が国際社会にアピールしてきた「アルプスの小国」「中立主義」といったメリットは既に過去の遺物となったわけだ。換言すれば、オーストリア出身政治家を国際機関のトップに選出する必然性も魅力もなくなってきた、という訳だ。その一方、中国を筆頭に、ブラジル、インド、トルコ、南アフリカなど、新興勢力が国際機関のトップの座を狙ってきている。
オーストリアにとって残念なことは、同国の欧州連合(EU)加盟に尽力したアロイス・モック外相が辞任して以来、外相らしい外相が出てこなくなったことだ。シュビンデルエッガー現外相などは、「国内の経済界の利益を重視、外交に対するビジョンはまったくない」と酷評されている有様だ。
オーストリアは冷戦後の政界情勢を踏まえ、その外交政策を再考する必要があるだろう。モーツァルト、ザッハー・トルテ(チェコレート・ケーキ)、中立主義、といった過去のキャッチフレーズから決別し、21世紀の新しい外交哲学を生み出すべき時を迎えている。