オスロの政府庁舎前の爆弾テロと郊外のウトヤ島の銃乱射事件で計76人を殺害(4人行方不明)したアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)は弁護士に対して「行動は残虐だったが、必要だった」と述べ、その蛮行を後悔していないことを明らかにしている。
容疑者は事件発覚当初から「信念がある1人の人間は自身の利益だけに動く10万人に匹敵するものだ」と豪語し、自身の行動を弁明している。その意味で、確信犯だ。
犯行後、容疑者が書き記したとみられる1516頁に及ぶ「欧州の独立宣言」がインターネット上に掲載されたが、そこで容疑者は今回の犯行を2年前から計画(「殉教作戦」)し、爆弾原料となる農場用の化学肥料を密かに大量購入する一方、合法的に拳銃、ショートガンなどを購入し、戦争ビデオ・ゲームを愛し、ボディ・ビルで体を鍛えてきたことなどを明らかにしている(宣言表明の最後に「2011年7月22日午後12時51分、これが最後となる」と記述し、その2時間後、犯行に走った)。
オスロからの情報によると、容疑者は極右民族主義者であり、反イスラム主義者だったという。そこで容疑者が書き残した宣言表明からそのプロファイル(Profile)を少し追ってみた。
容疑者が尊敬する人物は、イマヌエル・カント(独哲学者)、ジョージ・オーウェン(英作家)、ウィンストン・チャーチル(英政治家)、フランツ・カフカ(チェコ作家)、ジョン・ロック(英哲学者)、プラトン(古代ギリシャ哲学者)たちだ。一方、嫌悪する人物はカール・マルクス(共産主義の提唱者)とイスラム教徒だったという。音楽ではクラシックを愛している。
特に、宣言表明の中でオスマン・トルコの欧州北上の再現に強い警戒心を示している。その意味で、容疑者はオーストリアの手紙爆弾テロ事件(1993年)の犯人フランツ・フックス(Franz Fuchs)を想起させる面を有している、と指摘する声が挙がっている。フックスは数学を愛し、科学知識に精通していた孤独な民族主義者だった。11通の手紙爆弾で4人が死去、13人が重軽傷を負った(フックスは2000年、刑務所で自殺)。フックスはイスラム教徒に強い憎悪感を持っていた。
オスロの容疑者は哲学を愛し、その世界に精通していた事が伺える。彼の発言は過去の哲学者の著作から引用したものがある。
ウトヤ島の乱射事件から逃れた少女は「犯人は非常に落ち着いていた。そして撃った人間がまだ死んでいないと分ると、何度も撃って死を確認していた」という。乱射の時も容疑者はまるでその使命を果たすように冷静に蛮行を重ねていったわけだ。
容疑者は「政府庁舎前の爆弾テロで時間を取り、計画が遅れてしまった。そうでなかったならば、もっと多くの人間を射殺できたはずだ」と語っている。
以上から、容疑者のプロファイルをまとめるとすれば、(1)容疑者の知的レベルは平均より高く、哲学・文学の世界に精通、(2)多文化社会を嫌悪し、反イスラム主義を自身の使命と受け取る、(3)(今回の蛮行のために2年間に及ぶ準備時間があったというから)その行動は一時的な感情に基づくものではなく、強い信念に基づく、(4)(これ程の蛮行を犯しながら、これまで一度も感情を吐露していないことから)情感世界の欠陥が見られる、などだ(容疑者は母親のもとで農場を経営し、独り者だった)。
ノルウェーは豊富な原油と天然ガスの資源を誇り、その一人当たりの国内総生産(GDP)は昨年度約8万4500ドルだ。失業率も3・6%と欧州の中でも最も低い。移住者(特に、パキスタン)が近年増えてきたが、外国人率は10%を超えてはいない(例・スイスは20%を越える)。北欧のノルウェーは欧州諸国の中でも最も裕福で安定した国と受け取られているのだ。
すなわち、容疑者を取り巻く社会・経済的環境は決して緊迫し、爆発寸前といったものではなかったのだ。にもかかわらず、容疑者はイスラム教徒の増加に脅威を感じ、欧州のキリスト教文化を多文化社会から守るという使命感で今回の蛮行に走った。
哲学を愛する容疑者の「思考世界」がどこかで狂ってしまった、としか表現できない哀しさを感じる。
容疑者は事件発覚当初から「信念がある1人の人間は自身の利益だけに動く10万人に匹敵するものだ」と豪語し、自身の行動を弁明している。その意味で、確信犯だ。
犯行後、容疑者が書き記したとみられる1516頁に及ぶ「欧州の独立宣言」がインターネット上に掲載されたが、そこで容疑者は今回の犯行を2年前から計画(「殉教作戦」)し、爆弾原料となる農場用の化学肥料を密かに大量購入する一方、合法的に拳銃、ショートガンなどを購入し、戦争ビデオ・ゲームを愛し、ボディ・ビルで体を鍛えてきたことなどを明らかにしている(宣言表明の最後に「2011年7月22日午後12時51分、これが最後となる」と記述し、その2時間後、犯行に走った)。
オスロからの情報によると、容疑者は極右民族主義者であり、反イスラム主義者だったという。そこで容疑者が書き残した宣言表明からそのプロファイル(Profile)を少し追ってみた。
容疑者が尊敬する人物は、イマヌエル・カント(独哲学者)、ジョージ・オーウェン(英作家)、ウィンストン・チャーチル(英政治家)、フランツ・カフカ(チェコ作家)、ジョン・ロック(英哲学者)、プラトン(古代ギリシャ哲学者)たちだ。一方、嫌悪する人物はカール・マルクス(共産主義の提唱者)とイスラム教徒だったという。音楽ではクラシックを愛している。
特に、宣言表明の中でオスマン・トルコの欧州北上の再現に強い警戒心を示している。その意味で、容疑者はオーストリアの手紙爆弾テロ事件(1993年)の犯人フランツ・フックス(Franz Fuchs)を想起させる面を有している、と指摘する声が挙がっている。フックスは数学を愛し、科学知識に精通していた孤独な民族主義者だった。11通の手紙爆弾で4人が死去、13人が重軽傷を負った(フックスは2000年、刑務所で自殺)。フックスはイスラム教徒に強い憎悪感を持っていた。
オスロの容疑者は哲学を愛し、その世界に精通していた事が伺える。彼の発言は過去の哲学者の著作から引用したものがある。
ウトヤ島の乱射事件から逃れた少女は「犯人は非常に落ち着いていた。そして撃った人間がまだ死んでいないと分ると、何度も撃って死を確認していた」という。乱射の時も容疑者はまるでその使命を果たすように冷静に蛮行を重ねていったわけだ。
容疑者は「政府庁舎前の爆弾テロで時間を取り、計画が遅れてしまった。そうでなかったならば、もっと多くの人間を射殺できたはずだ」と語っている。
以上から、容疑者のプロファイルをまとめるとすれば、(1)容疑者の知的レベルは平均より高く、哲学・文学の世界に精通、(2)多文化社会を嫌悪し、反イスラム主義を自身の使命と受け取る、(3)(今回の蛮行のために2年間に及ぶ準備時間があったというから)その行動は一時的な感情に基づくものではなく、強い信念に基づく、(4)(これ程の蛮行を犯しながら、これまで一度も感情を吐露していないことから)情感世界の欠陥が見られる、などだ(容疑者は母親のもとで農場を経営し、独り者だった)。
ノルウェーは豊富な原油と天然ガスの資源を誇り、その一人当たりの国内総生産(GDP)は昨年度約8万4500ドルだ。失業率も3・6%と欧州の中でも最も低い。移住者(特に、パキスタン)が近年増えてきたが、外国人率は10%を超えてはいない(例・スイスは20%を越える)。北欧のノルウェーは欧州諸国の中でも最も裕福で安定した国と受け取られているのだ。
すなわち、容疑者を取り巻く社会・経済的環境は決して緊迫し、爆発寸前といったものではなかったのだ。にもかかわらず、容疑者はイスラム教徒の増加に脅威を感じ、欧州のキリスト教文化を多文化社会から守るという使命感で今回の蛮行に走った。
哲学を愛する容疑者の「思考世界」がどこかで狂ってしまった、としか表現できない哀しさを感じる。