アイルランド、ギリシャから始まり、スペイン、ポルトガルなどで財政危機が表面化し、ユーロ加盟国はその対応で悪戦苦闘。一方、米国は債務上限引き上げ問題で与野党が激突後、瀬戸際で法案が成立してデフォルト(債務不履行)を回避したばかりだが、大国・米ドルの信頼性は大きく傷ついた。
 一方、ユーロ安とドル安を尻目に、スイスの通貨スイス・フラン高が続いている。特に、EU第4位の経済国イタリアの財政も大変だということが判明し、国際投資家の目は安定したスイス・フランに注がれだした結果、フランは一層高騰してきたのだ。例えば、2日現在で1ユーロは1.1641フランだ。
 その結果、スイスの輸出産業は益々苦しくなる。その辺の事情は円高を抱える日本の輸出企業とよく似ている。
 スイス国立銀行(SNB)は3日、追加金融緩和策を実施したと発表したが、「その程度ではフラン高を阻止できない。もっと抜本的な通貨政策を実施しなければならない」といった声が同国経済界から聞こえる。例えば、フラン売りの為替介入などだ。
 SNBのヒルデブランド総裁は、「フランの動向は国民経済にとって大きな負担となってきた」と認めている。
 詳細な通貨政策云々は経済専門記者に任せるとして、食いしん坊の当方などは今、「フラン高がこれ以上続くと、エメンタール・チーズ(Emmental Cheese)を口に出来なくなるかもしれない」と心配しているところだ。
 スイスは欧州連合(EU)加盟国ではないが、同国企業は国際企業も多く、EU内で生産、販売している企業は少なくない。エメンタール・チーズは同国ベルン北東部エメン渓谷近郊で製造された硬質チーズの名品だ。
 オーストリアにもさまざまなチーズはあるが、エメンタール・チーズは格別だ。それが高級品になってきた。朝の食卓に欠かせられないスイス産チーズを口に出来なくなる日が到来するかもしれないのだ。
 もちろん、エメンタール・チーズだけではない。時計製造メーカーのスウォッチ(Swatch)も同様と聞く。フラン高で海外での市場価格が高騰し、売れ行きにも影響が出て来ているという。
 これもあれも、フラン高のせいだ。SNB関係者には、エメンタール・チーズが海外の人々の口にも入ることができる為替政策を実施して頂きたいものだ。