ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

ウィーン

寒波の襲来

 中・東欧諸国で目下、寒波が襲来し、AFP電によれば、4日現在で223人が死亡したという。チェコ南部では零下40度近くまで下がったという。

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▲聖シュテファン大寺院横で旅行者を待つフィアカー

 数週間前まで「雪が降らない」とぼやいていた欧州人も、「これは堪らない」と厚いマンテル(Mantel)、毛皮の帽子、手袋で総身を包む。地元の天気予報では、この寒波はあと数日間、続くという。

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▲4日正午、マイナス9度を示す市内の温度計

 ウィーンでは4日早朝は零下14度前後、正午段階で市内の気温は零下9度だった。吐く息も白く、散歩もままならない、といった感じだ。ウィーンでは先月17日、今冬最初の雪が降った。アダモの「雪が降る」を口ずさみながら、歩いてみたい気分になったものだが、今回の寒波はそん悠長なことをいっておれない。  
 雪は降らない代わりに、冷たい風が吹く。市当局関係者は「幼児を長時間、外気に触れささないほうが無難」とアドバイスをしているほどだ。
 音楽の都ウィーン市には無宿者が結構多い。ローマ・カトリック教会の慈善組織「カリタス」は無宿者に熱いスープを与えると共に、可能な限り宿泊できる場所を提供している。
 市営住宅は全部屋が暖房入りだ。寒波が襲ってきても家の中にいる限りは快適だ。市電や地下鉄内も暖房が入っている。
 ところで、市民の中には経済的理由から暖房をつけない家庭もある。暖房の入っていないアパートの部屋は外からも分る。窓が白く凍っているからだ。だから、散歩していると、「あ、あの部屋は暖房をしていないな」と直ぐに分る。
 一部屋だけ暖房して他の部屋はカットしている家庭も少なくない。暖房代が払えない為、寒い部屋で死亡していた一人住いの老人の話を何度か聞いたことがある。零下の日々が続く冬の間、貧しい家庭では生存を賭けた戦いが続くわけだ。
 欧州全土で現在、財政危機で緊縮政策が叫ばれている。そこに寒波が襲撃してきた。ダブル・パンチを受けているような感じだ。懐が寒くなるだけではなく、一日中、外は零下で全身は冷え込む。春が待ち遠しい。

クリスマスツリーの話

 今年もクリスマスのシーズンが到来した。というより、クリスマス・シーズンは既に終盤を迎えている。ウィーン市内では到る所でクリスマスツリーが飾られている。否応なしに、市民はクリスマスのプレゼント買いに追われる。

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▲国連職員合唱隊、クリスマス・ソングを歌う

 ウィーンの国連内でもCビルの中央にクリスマスツリーが飾られている。15日には国連職員の合唱隊が昼休みにクリスマスソングを披露してくれたばかりだ。

 ところで、世の中には、人々の心を高揚させるクリスマスツリーに敵意を感じ、「ツリーを撤去しないと不足な事態が生じる」と警告する声も聞かれる。「クリスマス廃止運動」ではない。あの北朝鮮だ。
 北朝鮮政府は韓国側に国境近くにクリスマスツリーを飾るのを止めるように警告を発したという。高さは30メートルに及ぶクリスマスツリーが点灯されると北朝鮮の開城市からも見えるという。だから北朝鮮は不快感を表明し、韓国側に警告したというのだ。
 北国営ウェブサイト「わが民族同士」はクリスマスツリーを「卑劣な心理戦だ」と敵意を丸出しにした。南の同胞たちがクリスマス・シーズンに酔い、楽しく生きている状況を飢餓に苦しむ国民に教えたくないからだ。毎年のことといえばそれまでだが、クリスマスツリーにすら軍事的警告を発する異常な国だ。

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▲ウィーン市内のクリスマス風景

 北から音楽の都ウィーンのクリスマスツリーに話を戻す。当方の住む16区の地下鉄オッタクリング駅前ではクリスマスツリーを売る業者が忙しく動き回っている。さまざまな大きさのモミの木が並んでいる。市民は大きさや枝振りなどをみて買う。いいツリーは100ユーロを越す。
 ただし、24日に近付けばそれだけツリーの値段は下がる。だから、24日朝、ツリーを買う節約家もいる。大多数の家庭では子供たちの願いに応じて早々とツリーを家の中に飾る。ツリーがなければ、クリスマス・シーズンの雰囲気が出てこないからやむを得ない。子供たちはツリーの下にあるプレゼントが目当てだ。大人たちはツリーを飾る事で「ああ、一年も終わろうとしているな」といった感慨をもつ。
 最後に、クリスマスについて簡単に紹介しておく。世界では約22億人が24日、25日のクリスマスを祝う。ただし、ロシア正教徒、セルビア正教徒など正教会は来年6日に祝う。
 クリスマスツリーやクリッペ(キリスト降誕の模型)を飾る風習は13世紀初め頃から始まった。ただし、ツリーがクリスマスのシンボルと定着した始めたのは19世紀に入ってからだ。
 米国のブルース・シンガー、チャールズ・ブラウンのヒット曲 Please come home for christmas をご存知だろう。クリスマスには、家から遠く離れていた人も故郷に戻り、家族の絆を改めて確認する時だ。ちょっと早いが、メリー・クリスマス!


ウィーンで今夏、最も涼しい教会

 日本でも暑い日々が続いていると聞くが、音楽の都ウィーン市でも13日は約36度と真夏の暑さだった。日本ほど蒸し暑くはないが、朝から25度を越え、歩いていても汗をかく。この1週間は日中30度を越える日が多かった。
 当方はアパートの部屋のカーテンを日中は閉め、日射が部屋に入らないようにしておく。夜9時ごろになれば、涼しい風が吹いてくる。
 ところで、外で暑い時、「どうぞ一休みして下さい」という誘いの声がかかる。声の主は、街角の薄暗い飲み屋さんの女将さんではない。教会の神父さんだ。

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▲ウィーンで最も涼しい教会、ルプレヒト教会=2011年7月15日、撮影

 聖職者の未成年者への性的虐待事件が発覚し、聖職者の信頼性は急落、「子供に近づかないで」といわれる有様だが、そこはイエスの教えを説く聖職者だ。外で汗をかきながら歩く市民や観光客に何か役に立ちたい、ということから、「暑い日には涼しい教会に入って一休みを」というサービスを考え出したわけだ。
 夏、教会を訪ねたことがある人ならば分るだろう。外が30度以上の暑さでも教会に一歩足をいれると、ひんやりとした空気が総身を包み、快い。だから、ウィーンの神父さんたちは「涼しさを満喫する目的でいいですから、教会にどうぞ」と市民に呼びかけているわけだ。決して「ミサに参加して」とか、「告解するように」とはいわない。
 ウィーン大司教区のファーバー神父は「体だけではない。祈れば喧騒な社会のことを忘れて心も涼しくなる」と、粋な宣伝も忘れない。同時に、「祈りのためではなく、涼しさだけを求める市民にはアウグスティーナー教会(Augustinerkirche)か、ルプレヒト教会(Ruprechtskirche)を推薦します」とアドバイスまでしてくれる。外が30度を越える日でもそれらの教会では中は20度前後という。涼しさが保証された教会だ。
 どの教会がもっとも涼しいかを発表する前、教会側は市内の全ての教会の室内温度を調査したのだろう。これも暑い日を少しでも快適に過ごして欲しいという心遣いからでた行為と考えれば、その労に報いたくなるものだ。
 そこで当方は15日、ルプレヒト教会を訪ねた。ウィーンで最も古い教会だ(11世紀建設)。窓が小さいため、日射が入りにくい。その上、周辺の建物が大きくて、教会建物はその陰になる。その結果、教会内は真夏も涼しいということが分った次第だ。

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