ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

ブルガリア

ブルガリアとウクライナ間で無人機騒動

 戦争が長くなると敵国との関係だけではなく、同盟国との間でもいがみ合いや争いが生まれてくるものだ。ロシア軍が2022年2月24日、ウクライナに侵攻して以来、戦争は5年目に突入しているが、キーウ政府はウクライナを支援してきた同盟国との関係で問題が出てきている。同盟国の支援疲れ、ウクライナの戦争疲れ、といった側面もあるが、戦場以外の問題や誤射など技術的ミスが外交関係を刺々しくさせている。

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▲無人機対策の重要性を訴えるルーメン・ラデフ首相、ブルガリア首相府公式サイトから

 ロシア軍がウクライナに侵攻した時、避難するウクライナ国民を最も多く受け入れたのはポーランドだった。ポーランド人は歴史的に反ロシア的傾向が強いが、国民は国境の駅に到着したウクライナ避難民を温かく迎え入れてきた。その後、ポーランドの農民からウクライナ産農産物の輸出問題で一時期不満の声が聞かれたことがあった。

 そして今年5月末、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアと戦う自国の精鋭特殊部隊に対し、ウクライナ蜂起軍(UPA)の英雄にちなんだ名誉称号を授与する大統領令に署名して以来、ウクライナとポーランド両国の歴史認識を巡る外交問題が表面化した。

 ウクライナ蜂起軍(UPA)は、1942年に設立され1950年代まで活動したウクライナ民族主義者組織(OUN)の傘下組織だ。UPAは第二次世界大戦中、現在のウクライナでポーランド人虐殺を行った組織だ。ウクライナ大統領が自軍の部隊にUPAの称号を授与したと報じられると、ポーランドのナブロツキ大統領は「虐殺者を英雄視している」として、ゼレンスキー氏に授与した最高勲章(白鷲勲章)の剥奪を決定するなど、両国間で外交摩擦が生まれたことはまだ記憶に新しい。

 そして今度はウクライナの攻撃無人機がブルガリア領内で爆発するという事件が発生した。爆発物を積載したドローンは8日、欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)加盟国の隣国ルーマニアとの国境付近で爆発した。爆発は、トルコとウクライナを結ぶ「トランス・バルカン・ガスパイプライン」のコンプレッサー・ステーション(圧縮機所)から約1000メートルの地点で発生した。負傷者は出なかった。ブルガリアのラデフ首相によると、ドローンは黒海に近いカルダム近郊のヒマワリ畑に墜落した。ブルガリア国防省は8日、「残骸の初期調査の結果、当該機体がウクライナ軍によって頻繁に使用されている種類のドローンであった」と発表した。

 ブルガリア国内の戦略的に重要なガスパイプライン付近で、ウクライナ製とみられるドローンが爆発したことを受け、ソフィアとキーウの間で外交的な摩擦が生じてきた。ブルガリア側が初期調査に着手する一方、ウクライナ側も事態の解明に協力する姿勢を示した。ペトロヴァ外務次官は10日、駐ブルガリア・ウクライナ大使を呼び出し、会談を行う予定だ。

 キーウ側は、意図的にブルガリアへ向けて機体を飛ばしたことを否定しつつ、ソフィア側との共同調査に対して、全面的に応じると表明した。キーウのウクライナ外務省報道官は、「ウクライナ軍が意図的にブルガリアへ向けて何らかの機体を差し向けたことはない、と断言する」と述べた。ただし、同報道官は、当該ドローンが実際にウクライナ製であるかどうかについては明言を避けた。一方、ブルガリア国防省は、「現時点では、これが意図的な事案であったことを示す兆候はない」と発表し、事案の早期鎮静化に努めている。

 ラデフ首相によると、ドローンには「相当量」の爆発物が積載されていた。安全保障閣僚会議の緊急会合後、同首相は「ドローンを捕捉し無力化することは大きな課題となっている」と述べ、監視体制の強化、さらにドローンの探知および迎撃措置を講じるため、国境地帯へ軍隊が派遣される予定という。

 ちなみに、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で5日未明、ライプツィヒ・ハレ空港の「南滑走路」で、空港職員が正体不明のドローン(UAV)を発見した。そのドローンには爆弾が搭載されていたが、起爆装置が故障していたため幸い爆破せずに大惨事を免れたが、国民に大きなショックを与えている。連邦検察が重要インフラに対する「重大な攻撃」としてテロ容疑で捜査を開始したばかりだ。

 ドイツや東欧のNATO加盟国でドローンに関連する事案が相次いでいる。ロシアによる対ウクライナ侵攻の開始以来、ルーマニアでは自国領空をドローンが飛行したり、領内に墜落したりする事例が複数確認されている。

 ウクライナ製ドローンがNATO加盟国内で爆発し、被害が出た場合、欧州諸国のウクライナ支援にも影響を与えることは必至だ。ウクライナとNATO諸国間に亀裂が生じる危険性すら排除できない。そうなれば、ロシア側の思うつぼとなる。

ウクライナ戦争では、無人機は戦況を変えるゲームチェンジャーとなってきた。単に「敵を倒せるから」ではなく、1機わずか数千ドル(数十万円)の自爆ドローンや、ウクライナ国産の低コスト長距離ドローン(Blyskavkaなど)が、数億円〜数十億円のロシア軍の戦車、装甲車、防空システム、さらには後方の製油所を破壊できるからだ。

 ドローンは今後も大きな役割を担っていくだろう。ただし、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で発見された「正体不明」の爆弾搭載無人機が示すように、数千ドルのドローンは取り返しのつかない大惨事を起こす危険性を有していることを忘れてはならない。

ブルガリア議会選で親ロ派の野党が圧勝

  ソフィアからの情報によると、ブルガリアで19日に実施された早期議会選挙(一院制、定数240)では、前大統領のルメン・ラデフ氏が率いる親ロ派政党「前進するブルガリア」(PB)が議席の絶対多数を獲得する見込みだ。第一回目の開票結果によると、「前進するブルガリア」が約45%の得票率で140議席を獲得。ボリソフ元首相率いる中道右派「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)の現政権与党は得票率約12 〜13 %に留まっている。

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▲大統領職を辞任するラデフ大統領(当時)、2026年1月19日、ブルガリア大統領府公式サイトから

 シェリャスコフ首相率いる保守派、社会主義者、ポピュリストからなる親欧米少数派政権は、汚職と機能不全に陥った司法制度に対する大規模な抗議デモを受け、デモ開始からわずか3週間後の昨年12月に辞任した。1月のラデフ氏の大統領辞任後、主要政党による組閣工作が失敗に終わったため、4月の前倒し選挙の実施となった経緯がある。今回の選挙は2021年以来、8回目だ。今年1月のユーロ導入後初の選挙だった。

 今回の選挙戦では、汚職対策、停滞する国民経済、外交分野では「親欧米路線か親ロシア指向か」の選択等が焦点となった。なお、アルファ・リサーチによると、投票所閉鎖1時間前の時点で投票率は47%に達し、2024年10月の前回選挙の39%を上回った

 議会の議席獲得に必要な得票率4%を超えた政党はそのほかに、自由保守改革連合PP-DB(我々は変革を続ける―民主ブルガリア)が12.1%、親ビジネス政党DPSが7.7%でそれに続いた。反欧州、反NATO、親ロシア的な主張を展開し、EUからの離脱や、ロシアに対する制裁への反対を訴えてきた第3党の国民的ポピュリスト政党「ヴァザラシュダネ」(再生)は、得票率4.3%で5位に転落した。共産党の後継政党の社会主義政党BSPは、議席獲得に必要な4%のハードルを越えることができなかった。

 ラデフ氏(62)は暫定結果の報告を受け、「『前進するブルガリア』は決定的な勝利を収めた。これは不信に対する希望の勝利であり、恐怖に対する自由の勝利だ。究極的には、道徳の勝利と言えるだろう」と勝利宣言をした。同氏は、GERBと2位を争う親欧州改革派連合PP-DBとの協力に前向きな姿勢を示した。目標は司法改革であり、そのためには議会で3分の2議席、160票の賛成が必要となる。

 元戦闘機パイロット、ラデフ氏は議会選挙に出馬するため、今年1月に大統領を辞任した。PBの勝利が北大西洋条約機構(NATO)および欧州連合(EU)への外交政策をどの程度変えるかはまだ分からない。

 ラデフ氏はEU加盟による経済的メリットを認識している一方、ウクライナへのEU援助を批判し、対ロシア制裁に疑問を呈し、ロシアとの対話を求めている。選挙運動中、彼はモスクワとの関係改善とロシアからの石油・ガス供給再開を訴えた。

 EUに対して、「ブルガリアは経済力を強化する強いヨーロッパの実現に向けて尽力する。EUは批判的思考と現実主義を必要としている」と述べた。腐敗対策では「ブルガリアの腐敗という沼を一掃するつもりだ」と強調している。なお、トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数では、ブルガリアはハンガリー、ルーマニアとともに、EU加盟国の中で最下位にランクされている。

 ウクライナ支援問題に関しては、ハンガリー議会選挙で16年ぶりに政権を奪取した中道右派ティサ(尊重と自由)のペーター・マジャール党首と同様、「もし首相に就任すれば、ブルガリアはウクライナへの軍事援助に資金援助は行わないが、EUレベルでの決定を阻止することはない」と述べている。

 ちなみに、ロシアの新聞各紙はラデフ氏を「ブルガリアのオルバン」と見なしている。「ラデフ氏の党が勝利すれば、ブルガリアの外交政策は変わるだろう。ソフィアはブリュッセルにとってブダペストと同じくらい『居心地の悪い』存在になる可能性が高い」と報じている。クレムリンの願望が反映した論評だ。

 ラデフ氏自身は親ロシア派であることを否定しているが、旧冷戦時代から親ロシア傾向が強いブルガリアにとってモスクワの影響力拡大は最大の懸念事項だろう。ただし、ラデフ政権が発足したとしても、EUとNATOの加盟が問題視されることはないだろう。

ブルガリアで安定政権が発足できるか

 26日、27日は選挙デーだった。日本では衆議院選挙が行われ、欧州ではジョージア(グルジア)、リトアニア、そしてブルガリアの議会選挙(一院制、定数240)がそれぞれ行われた。欧州駐在の当方は母国日本の総選挙の結果を気にしながら、ブルガリア議会選をフォローした。

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▲「政府不在」期間、政治的影響力を強めるブルガリアのラデフ大統領(ブルガリア大統領府公式サイトから)

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▲集計93・27%の段階での各政党の得票率(ソフィア通信社から、2024年10月28日)
GERB-SDS – 26.31%
Continue the Change – Democratic Bulgaria (PP-DB) – 14.79%
"Vazrazhdane" – 13.65%
DPS – New Beginning – 10.66%
BSP – United Left – 7.7%
Alliance for Rights and Freedoms (APS) – 7.02%
There Is Such a People (ITN) – 6.94%
Moral, Unity, Honor (MECH) – 4.66%
"Velichie" – 4.07%


 ブルガリアは旧ソ連・東欧諸国の民主化後、2004年に北大西洋条約機構(NATO)、2007年に欧州連合(EU)に加盟し、立派な欧州の一員として歩みだしているが、過去3年半で7回目となる選挙が今回行われたのだ。同国では投票の結果、安定政権が発足できないため、短期間で議会解散、総選挙といったパターンが繰り返されてきたわけだ。それと同時に、国民の政治への不信感が高まる一方、メディアの関心も減少していった。オーストリア国営放送は27日夜、早速「ブルガリア、再び難航する政府探し」という見出しをつけて報じていた。

 まず、過去3年半の同国の7回の選挙を簡単にまとめる。
 同国では、�。横娃横映�4月、第3次ボリソフ政権(「ブルガリアの欧州における発展のための市民」=GERB)の任期満了に伴う議会選挙が実施されたが、選挙後の組閣工作が失敗に終わった。�■横映�7月に再選挙が行われたが同様の結果に終わった。�F映�11月の3度目の議会選挙後、第1党となった新連合「変革を継続する」(PP)を中心とする反ボリソフ同盟のぺトコフ新連立内閣が同年12月に発足したが、連立パートナーの連立離脱を契機とする内閣不信任決議案の可決を受け、2022年6月に総辞職に追い込まれた。�て映�10月の選挙後も新しい政権が発足できない状況が続き、ルメン・ラデフ大統領によって任命されたガラブ・ドネフ暫定政権が続いてきた。�ィ横娃横廓�4月2日、そして�Γ横娃横看�6月9日に、前倒し選挙が実施され、ボリソフ氏のGERBが最大の得票を獲得したが、安定政権は発足できなかった。その結果、�В廓�半で7回目の総選挙が10月27日実施されたわけだ。正式な政府が発足するまで現行の暫定政権(ディミタル・グラフチェフ首相)が引き続き政務を担当してきた。

 27日の総選挙の暫定結果を紹介する。ボイコ・ボリソフ元首相が率いる中道右派連合GERB−SDSが第一党となる見込みとなった。世論調査機関ガロップ・インターナショナル・バルカンとアルファ・リサーチの予測によれば、GERB−SDSは有権者の25.1%から26.4%の支持を集めた。一方、リベラル保守派の連合PP−DB(「民主主義的ブルガリア」)は14.9%から15.4%で2位につけた。両連合はブルガリアの欧米寄りの方針を維持し、ロシアの侵攻を受けたウクライナへの支援を続ける意向だ。両連合は過去1年にわたって正式な連立協定なしで共同統治してきたが、改革、人事、腐敗対策などを巡る対立が原因で崩壊した。

 今回も同様の連立が成立するかは27日の投票日夜の段階では未定だ。安定した多数派の新政権には時間がかかると見られている。3度首相を務めたボリソフ氏は投票時、「人々は政府に、安定、そして安全を求めている」と述べ、主要政党との協力に前向きな姿勢を示した。一方、PP党首のキリル・ペトコフ氏はボリソフ氏への協力を拒否し、「保守派のボリソフ氏と連携するつもりはない」と既に述べてきた。

 ボリソフ氏は「(親ロシア派の)復活党を除く全ての議会政党と話し合う用意がある」と発言する一方、「イタリアのマリオ・ドラギ氏のように無党派の首相を任命する」というPP−DBの提案を拒否し、「それは有権者の意向を無視するものだ」と反論している。

 ブルガリアでは2021年の反汚職デモによって当時のボリソフ政権が崩壊して以来、政治的に不安定な状態が続いている。2025年のユーロ圏加入申請やEUからの巨額の資金割り当てを危うくする可能性が出てきたのだ。

 ちなみに、政権の不安定を煽り、勢力を拡大しているのは極右「復活党」だ。復活党のコスタディン・コスタディノフ党首は27日、「ブルガリアは外国の干渉を受けず、独立した国であるべきだ」と述べ、ブルガリア・ファーストを標榜している。GERBは復活党との連携に関心を持っているが、EUのブリュッセルやワシントンは復活党が参画した新政権の発足には批判的であることもあって、これまでは一定の距離を置いてきた。

 民主主義国では選挙で過半数を獲得できる政党はもはや少なくなった。だから、選挙後、3党、4党の多党から成る連立政権が生まれてくるケースが増えてきた。安定政権を組閣するためにはどうしても政治信条の異なる寄せ集めの政権となりやすい。

 その意味で、ブルガリアの政情が特別、異常とはいえないが、長期安定政権の不在、政治的膠着状況が続くようだと、名誉職的な立場のラデフ大統領の政治的権限が強まり、「議会制共和国」から「大統領制国家」への移行が現実味なアジェンダとなってくる。

ブルガリアよ「政府不在」に終止符を

 選挙は民主主義の要だ。主権者の国民が国家の行方を託して自由意志で政党、政治家を選ぶ。しかし、短期間で何度も選挙が繰り返されると、有権者に投票疲れと共に、民主主義への不信感も高まってくる。南欧のブルガリアで2日、国民議会選挙の投開票が実施されたが、過去2年間で今回が5回目の選挙だ。それだけに、「今度こそは新しい政府を発足させなければ」といったプレッシャーが政党の間で高まってきている。

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▲「政府不在」期間、政治的影響力を強めるブルガリアのラデフ大統領(ブルガリア大統領府公式サイトから)

 同国では2021年4月、第3次ボリソフ政権(「ブルガリアの欧州における発展のための市民」=GERB)の任期満了に伴う議会選挙が実施されたが、選挙後の組閣工作が失敗に終わった。そのため21年7月に再選挙が行われたが同様の結果に終わった。同年11月の3度目の議会選挙後、第1党となった新連合「変革を継続する」(PP)を中心とする反ボリソフ同盟のぺトコフ新連立内閣が同年12月に発足したが、連立パートナーの連立離脱を契機とする内閣不信任決議案の可決を受け、昨年6月に総辞職に追い込まれた。昨年10月の前回選挙後も新しい政権が発足できない状況が続き、ルメン・ラデフ大統領によって任命されたガラブ・ドネフ暫定政権が続いてきた経緯がある。

 5回目の総選挙で新しい政権が誕生する見通しは余りない、と予測されている。一方、政治的膠着状況は本来、名誉職的な立場のラデフ大統領の政治的権限を強めてきている。「政府不在」がこれ以上長期化すれば、「議会制共和国」から「大統領制国家」への移行が現実味を帯びてくる。
 
 今回は前首相のペトコフ党首のPPは「民主主義的ブルガリア 」(DB)と選挙同盟を組んでいる。最近の世論調査では、同盟は約25%の支持を集めている。それを右派のボイコ・ボリソフ元首相が率いるGERBが僅差で追っている。

 アルファ世論調査によると、両党に次いで3位争いでは「リベラル派トルコ党」 (DPS)が14%弱、過激なナショナリストで親ロシア派の「再生」も得票率を増加する可能性がある。ロシアに友好的な「社会党」 (BSP)は8%だ。有権者の約15%がどの政党を選ぶか決定していないという。

 昨年秋の最後の選挙の後でも、親西政党のGERB、PP、およびDBの票は、安定政権を発足させるのに十分だったが、ペトコフ党首と彼の同盟DBは、ボリソフ元首相時代の汚職と職権乱用を非難、GERBとの連合を拒否した。一方、ボリソフ元首相のGERBは昨年末にPPらが実施した選挙改革を「選挙操作への道を切り開いた」と非難してきた、といった具合だ。ちなみに、GERB、PP、およびBSPの3党は過去、ラデフ大統領によって新政府組閣を要請されたが、いずれも失敗に終わっている。

 注目すべき点は、ブルガリアの政情不安を受け、ラデフ大統領がその政治的影響力を拡大してきていることだ。同大統領は2021年末の大統領選で再選されている。政治学者のリュボミール・ステファノウ氏は、「次の暫定内閣で、ラデフ氏は議会制共和国ではなく、大統領制国家として国を統治し続けるだろう」と予想しているほどだ(オーストリア国営放送Webサイトから)。

 ところで、ブルガリアは冷戦時代から親ロシア傾向が強く、欧州連合(EU)の中でどの加盟国よりもロシアとの繋がりが深い。ラデフ大統領もその例外ではない。同大統領はウクライナへの武器供給を要求した人々を「戦争挑発者」と呼んでいる。昨年秋、議会の親西側勢力はウクライナへの軍事援助を強行したが、ウクライナへの武器供給問題は、今回の選挙争点ともなってきた。

 政治的膠着状態は、ブルガリアの発展に具体的な影響を及ぼしている。2024年に予定されているユーロ圏への参入は25年に延期される可能性が出てきたのだ。

 国際社会の多様化、政治的多様化を受け、選挙後安定した政権を発足させることが益々難しくなってきている。例えば、ドイツでは戦後初めて、3党連立政権(社会民主党、緑の党、自由民主党)が発足したように、単独政権はもはや不可能で、2党連立政権の発足も次第に困難となっている。政治信条の全く異なる政党同士が政権を発足させるケースが増えてきているのだ。

 ブルガリアでも米ハーバード大卒のエリートビジネスマンという触れ込みで新生党PPを立ち上げたぺトコフ氏主導の連立政権は実際は左派と右派政党の寄り合い所帯だった。ブルガリアが今回、安定した政権を発足させるか、「政府不在」を更に長期化させるか、同国の国民議会選挙の投票結果とその後の組閣工作の行方が注視される。
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