ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

アフガニスタン

アフガンのアヘン栽培95%減少

 アフガニスタンで2021年8月15日、イスラム原理主義組織「タリバン」がアフガン全土を再び占領し、駐アフガンの米軍撤退で同国の政治情勢は激変した。タリバン勢力のカブール入りが伝わると、同国に駐在していた外国人要人や家族の国外退去で大混乱になったことはまだ記憶に新しい。あれから2年以上が経過、タリバン政権は国際社会から孤立化してきている。

Screenshot_2023-11-05_143955
▲アフガンのアヘン栽培状況を調査したUNODC「2023年調査報告書」(UNODC公式サイトから)

Screenshot_20231106-085130
▲アフガンのアヘン栽培と生産の動向(1994年〜2023年)UNODC報告書3頁目からのスクリーンショット

 ところで、ウィーンに本部を置く国連薬物犯罪事務所(UNODC)が5日公表したアフガンのアヘン栽培に関する調査報告によると、同国のアヘン栽培が推定95%減少したというのだ。アヘン栽培は国内全域で23万3000ヘクタールから23年にはわずか1万800ヘクタールに減少した。この減少により、アヘンの供給量も2022年の6200トンから23年にはわずか333トンへと95%減少したというわけだ。以下、UNODCのプレスリリースの概要を報告する。

 不法麻薬の生産に利用されるアヘン栽培の急減は朗報だが、アヘン栽培からの収入に依存してきた多くの農村コミュニティには大きな経済的損失を与えている。2023年に収穫されたアヘンを業者に販売することによる農民の収入は、2022年の推定13億6000万米ドルから、23年には1億1000万米ドルへと92%以上減少したからだ。アヘン栽培に依存してきた農民たちが突然、栽培を自主的に中止したわけではない。タリバン政権が麻薬禁止令を発令したからだ。

 UNODCのガーダ・ワーリ―事務局長は、「違法アヘン市場とそれが地域的および世界的に引き起こす被害に対して、長期的な成果を生み出すことが期待できるが、同時に、特にアフガンの人々にとって、最終的に前向きで持続可能な結果をも​​らすためには、対処する必要が出てくる。具体的には、アヘン栽培を中断して収入源を失った農民たちへの経済支援と共に、アヘン栽培に代わる代替作物栽培の促進が急務となる。アフガンの人々には今日、最も差し迫ったニーズを満たし、収入喪失のショックを和らげ、生活危機を救うために、緊急の人道支援が必要となる」と述べ、「今後数カ月間、アフガンの農民はアヘン収入の代わりとなる持続可能な生計への強力な投資を緊急に必要としている」と説明している。

 アフガンでは人口の80%近くが農業に依存している。同国ではすでに深刻な水不足の課題に直面している。国連事務総長アフガニスタン特別代表兼国連アフガニスタン支援ミッション代表のロザ・オトゥンバエワ氏は、「持続可能な代替開発の取り組みは、干ばつに強い農業活動と資源の効果的な保護と利用を指向しなければならない」と述べている。

 多くの農民はアヘンに代わり小麦の栽培に目を向け、ファラー州、ヒルマンド州、カンダハル州、ナンガハル州全体で穀物栽培が16万ヘクタール増加した。小麦栽培は食糧不安をある程度緩和する可能性があるが、この作物が生み出す収入はアヘンよりもはるかに少なく、小麦に切り替えることにより、4つの州の農民は2023年に約10億米ドルの潜在的収入を失ったという。

 UNODC調査報告書は、「アフガンでアヘン栽培が急減することで、アヘンに含まれるモルヒネを抽出して、科学的合成によって生産されるヘロインの減少をもたらす結果、密売や消費が減少する可能性が考えられる一方、フェンタニルやその他の合成オピオイド(麻薬性鎮痛薬)などの有害な代替品の出現に拍車がかかる可能性がある」と予想している。

 不法麻薬の押収に関するデータによると、アヘン取引業者らは2023年の不足を乗り切るために過去の記録的な収穫によるアヘンの在庫を売却する一方、ヘロインの処理は減少。また、他の薬物、すなわちメタンフェタミンの密売が急増している。ちなみに、アフガン国内でもアヘンの消費が大きな社会問題となっている。アヘン栽培の急減に伴う国内のアヘン消費状況にも影響が出てくるだろう。

 いずれにしても、アフガンのアヘン栽培急減は世界の麻薬の闇市場に大きな影響を与えることは必至だ。同時に、タリバン政権が資金獲得のためにアヘン栽培禁止の一部を解除する可能性は排除できない。UNODCの技術的支援と監視が重要だ。

アフガンから緊急援助要請のメール

 アフガニスタンで女性の教育を推進しているサケナ・ヤコ―ビ博士(Sakena Yacoobi)から10日、援助を求める緊急メールが届いた。博士の緊急メールは、アフガン西部ヘラート州で今月7日に発生したマグニチュード6・3の地震での救援を要請するものだ。

e247f3a7-a8e1-b104-476e-989d86b1fce9
▲アフガンを襲った地震の現地状況(AIL公式サイトから)

 博士は女性たちに教育の場を提供するための「Afghan Institut of Leraning」(AIL)という名称の非政府機関(NGO)の責任者だ。AILは、アフガンのコミュニティに教育、医療、女性と子供の支援を提供してきた。今、彼らは地震の影響を受けた地域で救援活動の最前線にいる。

 ヤコービ博士は、「10月7日土曜日、ヘラート州および周辺の州で地震が発生し、壊滅的なダメージをもたらしている。アフガンの人々は、この自然災害の影響で、過去2年間にわたって国を襲った壊滅的な人道的状況を一層深刻にしている。アフガン人は1つの危機から立ち直る時間さえない。数千の命が悲劇的に失われ、多くの人々は家族や家を失い、脆弱な子供たちは深刻な状況だ。地震は破壊の跡を残し、家を瓦礫に変え、家族は身につけた衣服以外何もないといった状況だ」と記している。

 同博士はまた、「アフガンは今、想像を絶する危機に直面している。ヘラートの地震は、既に紛争、避難、経済の不安定状態に苦しんできた国民の苦しみを更に悪化させている。私たちの仲間のアフガン人たちは、生き残り、生活を立て直すためにあなた方の支援を必要としている。アフガンとその人々を忘れないでください。過去、戦争と貧困に苦しんできたアフガン人たちです。私は助けてくれる全ての方々に感謝します」と述べている。

 博士は最後に、寛大な寄付者、慈善団体、世界中の政府に呼びかけて、「あなた方の支援は苦しみを和らげ、これらのコミュニティが回復の道を歩むのに有意義な力を与える」と書いている。

 アフガン西部ヘラート州で7日、M6・3の地震が発生し、レンガや土で作られた家屋が多数崩壊し、これまで分かっているだけでも2053人の死者が出た。そして11日に入っても同州北方向約23キロを震源とするM6・3の地震が起きた。死傷者は今後も増えると予想されている。住民は余震を恐れて夜も外で明かす人々が多い。同国では昨年6月にも東部で強い地震が起きて1000人以上が犠牲となった。

 アフガンは2021年8月15日、イスラム原理主義組織「タリバン」がアフガン全土を再び占領し、駐アフガンの米軍撤退で同国の情勢は激変した。タリバン勢力のカブール入りが伝わると、同国駐在していた外国人要人や家族の国外退去の際の大混乱となったのはまだ記憶に新しい。あれから2年以上が経過、国際社会から孤立するタリバン政権は被災地への救援活動が容易ではない。日本外務省は10日、アフガンへの被災地にテントや毛布など緊急援助物質の提供を発表している。

 戦争で多くの民間人が犠牲となっているウクライナでは厳しい冬をまもなく迎える。電気がなく、暖房もない部屋で住む人々がいる。彼らに発電機が届けばどんなに助かるだろうか。中東ではイスラム教テロ組織「ハマス」の襲撃で犠牲となったイスラエルの人々が涙を流している。彼らの涙をどうしたら拭きとれるだろうか。アジアのアフガンでは地震が発生した。家屋は破壊し、家族を生き埋めで失ったアフガンの男はがれきの山に座り、途方に暮れている。外部からの助けが期待できないような状況で、どこから希望が届くだろうか。

 閉塞感が漂う中で、助けを必要とする人々が増えている。彼らに静かに手を差し伸ばす人々の姿は美しい。そのような人が少しでも増えていけば、私たちにはまだ希望がある。

タリバンの「文化闘争」の2年間

 2021年8月15日、イスラム原理主義組織「タリバン」がアフガニスタンを再び占領し、駐アフガンの米軍撤退で同国の情勢は激変した。タリバン勢力のカブール入りが伝わると、同国駐在していた外国人要人や家族の国外退去の際の大混乱となったのはまだ記憶に新しい。あれから2年が経過した。

students-girls-desk_orig
▲学習するアフガニスタンの女性たち「Afghan Institut of Leraning」(AIL)の公式サイトから

 タリバンによるカブールの占拠とその後の(国際治安支援部隊=ISAF)の混乱した撤退は、国際社会にとって大きなショックだった。そのような中で、“タリバンは以前のテロ支配を再び追求しないだろう”という楽観的な見通しが広がっていた。1990年代とは異なり、タリバンは今や穏健化しており、経済的な理由から国際的な孤立を避けるのではないか、といった漠然とした希望的観測だ。

 実際、アフガンがタリバン勢力の手に落ちた時、内戦の勃発は十分に予想されていた。タリバン勢力の中でも穏健派と過激派が存在するからだ。しかし、過去2年間、大きな武装衝突は起きていない。すなわち、タリバン政権は現在、34州からなるアフガン全土を統治しているわけだ。第2期タリバン政権は第1期タリバン政権(1996年〜2001年)より行政統治能力があるという評価の所以だ。

 独週刊誌シュピーゲル最新号(8月12日号)では、「タリバンのパラドックス」という見出しの解説記事で、「現タリバン政権は下水路工事、住居建設などをカブール中央政府主導で実施している。第1期政権ではそれさえできなかった。現政権は明らかに第1期政権より行政能力を有しているが、その一方、西側文化や価値に対しては厳しく、特に女性の権利を次々と剥奪している」と指摘し、「タリバンの現指導者は国家の危機対策より堕落した西側文化、異教徒への戦い、文化闘争を重視している」と分析している。

 人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、「厳格なイスラム教に基づく性別隔離の制度の下 女性に対しては、小学校以外、高等学校に通うことを禁止、公園にいく時、病院に通う時には男性の随伴が義務づけられている」という。美容院も閉鎖されるというのだ。アフガンの女性たちにとって、美容院は他の女性たちと世間話などする場であり、厳しい生活圏では美容院通いが息抜きの場所だ。タリバン政権はそれすら禁止するのである。ちなみに、美容院が閉鎖されれば、そこで働く約6万人の女性は仕事を失うという。

 アムネスティ・インターナショナルによると、人権擁護者、活動家、少数派は頻繁に生命の危険にさらされ、過去2年間で、恣意的な逮捕、失踪、拷問、非公式な処刑が広く行われているという。また、メディアの大規模な検閲が実施され、多くのジャーナリストが職を失った。国連によると、約400万人が急性栄養失調であり、その中には5歳未満の子供約320万人が含まれる。約2800万人、人口の約3分の2に当たる人々が人道的支援を必要としているというのだ。

 バイデン米大統領は当時、「撤退は成功」と強調したが、ワシントンでは米軍のアフガニスタン撤退について、上下両院外交委員会で鋭い質問が続出した。米上院外交委員会のメネンデス委員長(民主党)は当時、「アフガンからの米軍撤収は明らかに致命的な欠陥があった」と指摘。米軍がアフガンに残していった大量の軍需品、武器がタリバン側に渡ってしまった。共和党議員から、「テロリストたちに我々の最新の武器を与えてしまった」という非難の声が出たのは当然だった。

 9・11同時多発テロ事件を契機に、米国の対テロ戦争は始まったが、9・11の主犯ウサマ・ビン・ラーディンを射殺した後も米軍の対テロ戦争は継続され、アフガンの民主化、国づくりへの支援に広がっていった。しかし、タリバンがカブールを占領すると急転直下、米軍兵士たちはアフガンから撤退していったわけだ。

 ちなみに、タリバン政権が運営するアフガンに中国が接近してきている。アフガンの豊かな希土類(レアアース)が狙いだともいわれる。同時に、アフガンは過去、不法なアヘン栽培で世界のアヘン市場を独占してきた歴史がある。それだけに、タリバン政権内の動向次第ではやはり内戦が起きる可能性を排除できない(「『帝国の墓場』アフガンと中国の関係」2021年8月20日参考)。

 タリバン勢力がカブールに侵攻した直後、アフガンで女性の教育を推進してきたサケナ・ヤコ―ビ博士(Sakena Yacoobi)から支援を求めるメールが届いたことがあった。博士は女性たちに教育の場を提供するための「Afghan Institut of Leraning」(AIL)という名称の非政府機関(NGO)の責任者だ。その後も定期的にメールを頂いたが、ここ半年、メールが途絶えている。文化闘争を展開するタリバン現政権にとって、女性の教育を推進する博士は危険な人物だろう。博士の安全が懸念される(「アフガニスタンの『地上の星たち』」2021年12月16日参考)。

アフガニスタンの「地上の星たち」

 時間は確実に過ぎ去っていく。2021年も2週間あまりとなった。コロナ禍で開け、閉じる1年となるが、感染症は2022年に入ってもその牙を治める気配がないどころか、さらに激しくなることが予想される。コロナ禍で開催された第32回東京夏季五輪大会は記憶の中で一輪の花のような輝きを残してくれたことは多くの人に救いとなった。忘れてならないのはアフガニスタンだ。イスラム原理主義組織「タリバン」が8月15日、アフガンを再び占領し、駐アフガンの米軍撤退で同国の情勢は激変した。

Sakena_Yaccobi
▲アフガンで女性の教育に献身するサケナ・ヤコ―ビ博士

 アフガンで女性の教育を推進してきたサケナ・ヤコ―ビ博士(Sakena Yacoobi)からこの激動の年を振り返ったメールが届いた。博士は女性たちに教育の場を提供するために「Afghan Institut of Leraning」(AIL)という名称の非政府機関(NGO)の責任者だ。

 博士は「私はより良い年を望んでいました。愛するアフガニスタンが混乱に陥るとは、予想だにしなかったことでした。アフガンから米軍の撤退後、誰も次に何が起こるかを予測することができませんでした。アフガンのガニ政府は崩壊し、私たちの国をタリバンの支配下に置いた時、私は私の人生の仕事が無に崩れ落ちたのを感じ、私たちの30年間の努力と国の再建における大きな進歩が消えてしまうのではないかと恐れました」と述べている。

 そして、「戦争は公平な殺人者ではありません。女性と子供は常にこの男たちのゲームでの究極の犠牲です。アフガンもこの事実の例外ではありません。飢餓とトラウマは今や私たちの女性と子供たちの絶え間ない同伴者となっています」と説明している。

 アフガンでは今年初めから新型コロナウイルスの感染が広がってきた。同時に、国土の半分以上は残忍な干ばつに見舞われ、食糧不足に直面する一方、多くの国民は仕事を失っていった。女性に対する暴力、家庭内暴力、幼児結婚、児童労働、人身売買は増加していった。

 ヤコービ博士は、「コロナ禍、干ばつ、そして米軍の撤退…、アフガンの人々はこれまで経験したことがなかったほどの孤独さを感じ、恐怖すら感じた」と語っている。彼女はメールの中で、「ガニ政権は国の資産と私たちに残っていたわずかな希望さえ持って逃げました」と表現している。

 そのような中で、博士が築き上げたチームのもとに多くの人々が救いを求めてきたという。栄養失調の子供たち、ロケットや弾丸で家を失った人々が息を切らして逃げてきた。「私たちはまだドアが開いている数少ない保健センターの1つでもあったので、多くの人が私たちの診療所に殺到し、助けを求めてきました。私たちの診療所や学校は国内避難民で一杯となりました」という。

 「私たちは祈り始めました。目を覚ました時、平和と民主主義を教え、健康と法を教えている私たちの女性がいつまで安全であるか不安になりました」と正直に告白している。タリバンの統治者たちは、学校と学習センターを再開することを認めたため、少し呼吸できたが、銀行は閉鎖され、食べ物も薬もない状況が続いている。

 「暗い日が続く時、私は何時間も泣き、絶望で圧倒されていた時、あなた方は救いの手を差し伸べてくれた。世界中から多くの人々が私たちの働きのために寄付し、支援し、擁護し、私たちに継続する力を与えてくれました」と報告し、感謝している。

 最後に、「爆弾の落下が止まった今、AILは強力です。ラーニングセンターのカリキュラムを拡張して、6年生以降も引き続き、女の子に教えています。2つの新しい診療所を開設します。新しい統治者は女子生徒に女性教師のみを要求しているので、より多くの教師を訓練しています。私たちは、人々を保護し、自分たちと私たちの国のために、より良い未来を創造する能力を持つ人材を育成するために、必要なことは何でもするつもりです。子供たちに本を渡します。私たちは彼らに読み書き、そして数学を教えます。私たちは彼らに夢を教えるでしょう。平和で繁栄するアフガニスタンが必ず実現できるという夢を彼らが見失わないように今後も歩んでいきます」と記している。

アフガン駐留独軍の戦死兵士の家族

 イスラム原理主義勢力タリバンがカブールを占領して1カ月が過ぎた。ワシントンでは米軍のアフガニスタン撤退について、上下両院外交委員会で検証作業が始まったが、上院外交委員会のメネンデス委員長(民主党)はアフガンからの米軍撤収について、「明らかに致命的な欠陥があった」と指摘。ブリンケン国務長官に対し、米軍撤収期限の延期などの対応をしなかった理由などについて、鋭い質問が続出した。下院外交委員会では共和党のマコール議員からバイデン政権への批判の声が聞かれた。バイデン大統領は撤退は成功したと従来の姿勢を崩していない。

verleihung
▲アフガンから約5400人を無事避難させたということでシュタインマイヤー大統領から功労勲章を受ける連邦軍イェンス・アール准将(独連邦軍公式サイトから)

 ワシントン発ロイター通信の上下両院外交委員会に関するニュースを読んでいる限りでは、米議会では野党の共和党議員だけではなく、民主党議員も米軍の撤収について批判していることが分かる。米軍がアフガンに残していった大量の軍需品、武器がタリバン側に渡ってしまったが、共和党議員から、「テロリストたちに我々の最新の武器を与えてしまった」という非難の声が出たのは当然だった。

 米軍にとって最長の戦争だったアフガン駐留で、米国が多くの犠牲を強いられたのは間違いない。多数の若き米軍兵士が犠牲となった。それだけではない。米国への国際社会の信頼が失われてしまった。9・11同時多発テロ事件を契機に、米国の対テロ戦争は始まったが、9・11の主犯ウサーマ・ビン・ラーディンを射殺した後も米軍の対テロ戦争は継続され、アフガンの民主化、国づくりへの支援に広がったいった。それらの努力は8月15日、タリバンがカブールを占領することで急転直下、激変し、世界最強国の米軍兵士たちはアフガンから追われるように撤退していった。

 米国は9・11テロ事件の主犯者に報復するまではアフガン駐留の大義をかざして戦いを続けることはできたが、その後アフガン政府の腐敗堕落もあって、アフガンの民主国への発展は未達成で終わった。その結果、歴史家は後日、モンゴル帝国、ムガール帝国、大英帝国、ソ連らが陥った「帝国の墓場」の中に米国も入れることだろう。

 バイデン政権のアフガン撤退についてここで再度書くつもりではなかった。どうしても書きたいことがあったので、その背景、いわば書割を説明したものだ。独週刊誌シュピーゲル(9月11日号)にはアフガンに駐留して、犠牲となった独兵士の家族とのインタビュー記事が掲載されていた。この話は多分、アフガン駐留した米軍兵士にも通じる内容だ。テロ撲滅を掲げて始まった米軍や北大西洋条約機構(NATO)軍の多くの兵士たちが亡くなったが、シュピーゲル誌が掲載したドイツ兵士の家族の話は心が痛い。記事は「Messer in der Seele」(魂の中にナイフ)だ。

 シュピーゲル誌は、2011年5月28日、31歳の若さで戦死したトビアス・ラーゲンシュタイン氏の兄、トーマス・ラーゲンシュタイン氏とインタビューしている。兄は、「タリバンがアフガンを占領して以来、弟がもう1度亡くなったような悲しみと怒りが湧いてくる」と述べている。兄は、「弟はテロ撲滅とアフガンの民主化のために駐留して亡くなったが、アフガンから撤収する米軍、カブール空港の状況などを目撃すると、弟は誰のために戦い、何のために亡くなったのかという問いが出てくる」という。

 先月15日の首都カブールの国際空港での混乱は世界に衝撃を投じた。アフガン政府軍は応戦することなく敗走。タリバン勢力が侵攻を開始して9日間で首都カブールがタリバンの手に落ちた。20年前のタリバン政権下の蛮行を知っている多くの国民はカブールの空港に殺到、空港周辺は国外脱出しようとする人々で大混乱した。メルケル独首相は、「アフガンの状況は悲劇だ。タリバンが再びアフガンを占領した、この現実は辛い」と述べている。アフガンで戦死したドイツ兵士とその家族にとって、その辛さはもっと深刻だろう。

 このコラム欄でも「独軍兵士、何のために戦ってきたか」(2021年8月24日参考)を書いた。駐ベトナム、駐イラクの米軍兵士が帰国後、社会に再統合できず、さまざまな困難に直面する「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)が大きな米の社会問題となったが、駐アフガン独連邦軍元兵士の間でも同じような現象が見られる。

 ドイツは過去20年間で総数16万人の兵士をアフガンに投入してきた。その間、少なくとも59人が犠牲となり、多くの兵士は悪夢に悩まされてきた。

 戦争を始める時、多くは「大義」を掲げて、兵士たちを鼓舞する。アフガンへの軍派遣の場合、テロ撲滅だ。その「大義」を胸に秘めて兵士たちは戦場に出かける。その「大義」が揺れ出した時、それでも兵士たちは戦いを続けなければならないことがある。「戦争は始める時より、終わらせることのほうが難しい」と述べた指導者がいた。兵士たちは「誰の為、何のために戦うのか」という呟きを残して戦場に向かう。その中には再び兵舎に戻れない兵士が出てくる。トビアス・ラーゲンシュタインもその中の1人だった。

 「米軍の対テロ戦争が9・11テロ事件の主犯者ウサーマ・ビン・ラーディンを射殺した段階(2011年5月2日)で幕を閉じていたならば、トビアスは死ななくてもよかったかもしれない」という思いが彼の家族や関係者にはあるだろう。バイデン氏はその呟きにどのように答えることができるだろうか。

タリバンとアヘン生産の密接な関係

 イスラム原理主義勢力タリバンが不法なアヘン生産と密売で巨額の資金を獲得してきたことは周知のことだ。ウィーンに本部を置く国連薬物犯罪事務局(UNODC)によると、アフガニスタン産アヘンは2020年の世界の85%を占めている。そのアヘンやヘロインはトルコやバルカンルートを経由して欧米全土に密輸されている。麻薬取引で得る収益はタリバンの最大の収入源となっている。アフガンのアヘン生産は昨年、新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず、前年度比で37%増、栽培面積は22万4000ヘクタールと推定されている。

erum_2021_G3
▲アヘンはケシの実から採取した果汁を乾燥して生産する(ウィキぺディアから)

 ところで、タリバンは15日、首都カブールを占領し、アフガン全土を掌握した直後、タリバンのムジャヒド報道担当者は17日の記者会見で、「アヘンの生産を禁止する」と述べた時、世界は決して驚かなかった。タリバンは過去にも同様の宣言をしたことがあったからだ。タリバンは1996年から2001年まで国を統治していた。タリバンは政権に就くなりアヘン栽培を禁止した。タリバンは当時、極度の国際的圧力にさらされており、緊急に国際的な支援を必要としていたからだ。しかし、禁止はほとんど意味がなかった。倉庫には大量のアヘンの在庫があったからだ。タリバンが今回も「アフガンをアヘン・フリーにする」と表明、アヘン栽培を禁止すると述べたとしても、その実効性は疑わしいわけだ。

 国家の運営にはしっかりとした財政的基盤がないと難しい。アフガンには豊かな地下資源があるから、それを開発すれば一定の収益を得る。例えば、アフガンには最大3兆ドル規模のレアアースが埋蔵されていると推定されている。レアアースは半導体やバッテリーなどの先端産業と軍事産業に広く利用されている。中国はその地下資源を得るためにタリバンに触手を伸ばしている(「『帝国の墓場』アフガンと中国の関係」2021年8月20日参考)。

 その一方、タリバン前も後もアフガンではアヘンを栽培し、それを密輸して巨額の外貨を稼ぐ業者や農家が少なくなかった。国際社会からの圧力で政府がアヘン栽培の禁止、アヘンに代わる代替栽培を推進したことがあったが、多くの農家はアヘン生産で生活をしてきた。収入が違うからだ。

 アフガンは34州から構成されている。アフガン政府といっても州を管理する部族がパワーを有している社会だ。州によってはアヘン生産を根絶した所がある一方、アフガン南部ヘルマンド州ではアヘン生産に従事する農家が多い。同州の農地の22%がケシ栽培に使われている。アフガンの過去最大の生産量は2017年で9900トンだ。総売り上げ額は14億ドル。タリバンは不法麻薬取引からの収益の半分をその懐に入れていると受け取られてきた。国連安保理によると、タリバンは麻薬密輸で年間4憶ドルの収益があると推定されている。具体的には、イスラム法に基づき、通称、ウシュル(Ushr)と呼ばれる税を密輸業者、栽培者から押収する。鉱山開発業者に対しても同様だ。売上の10%の税を払わないと、タリバンは活動をストップさせる。

 タリバン第2次政権が発足したとしても、その財政基盤は厳しい。アフガンをこれまで支援してきた世界銀行(WB)や国際通貨基金(IMF)、そして英国、スウェーデンやドイツはタリバンのテロ、人権弾圧、女性蔑視政策を懸念し、タリバンがアフガンを占領した直後、財政支援をストップすると表明したばかりだ。世界銀行によると、2020年のアフガンの国内総生産(GDP)は約198憶1000万ドルだったが、その43%は国際社会の財政支援だ。アフガンのガニ政権が崩壊した今日、欧米諸国からのタリバンへの経済支援は期待できない。海外に避難したアフガン中央銀行のトップ、アジュマル・アフマディ氏によれば、アフガンの保有外貨は約90憶ドルだが、大部分は海外に保管されている。

 ちなみに、タリバンの精神的指導者である故モハマド・オマールの息子であるモハマド・ヤクーブは、昨年の報告書でタリバンの財政状態を明らかにした。それによると、2020年3月期の収益は約16億ドルに上るという。アフガニスタン政府は同期間の歳入は約56億ドルだった、また、タリバンはサウジアラビア、パキスタン、イランなどの国からも活動資金を受け取ってきたという。

 タリバンにとって巨額な外貨が手に入るアヘン生産を禁止することは容易なことではないわけだ。タリバンが農民に経済的な代替手段を提供できない場合、農家からの抵抗が強まる。タリバンは遅かれ早かれアヘン生産を認めざるを得なくなるというわけだ。

 ウィーンに本部を置く国際麻薬統制委員会(INCB)はタリバンの政権奪還前、今年3月、「2020年年次報告」を発表したが、その中で「アフガンでの違法な麻薬栽培、生産、麻薬密売、麻薬使用などの問題に対して包括的に対応しなければ、アフガンの持続可能な開発、繁栄、平和が実現される可能性は低くなる」と述べている。アフガン政府はこれまでケシ栽培根絶プロジェクトを進める一方、INCBはケシ栽培する農業にケシに変わる栽培を支援してきた。

 アヘン生産やケシ栽培はこれまで国家権力が届かない、主にタリバンが支配してきた地域で行われてきたが、タリバンが全土を支配下に置けば、アフガン全土でアヘン生産がおこなわれる可能性が出てくるわけだ。

 興味深い点は、ロシアがタリバンと頻繁に接触しているが、その理由の一つはアフガン産のアヘンが中央アジア経由でロシアに密輸されるケースが増えているため、タリバンにその対策を強く要請するためだというのだ。中央アジア経由で入る不法な麻薬を摂取するロシア人、特に若い世代が急増し、大きな社会問題となっているからだ。

独軍兵士「何のために戦ってきたか」

 米軍の撤退直後、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが15日、首都カブールを占領、全土をほぼ掌握した。アフガン政府軍は応戦することなく敗走。タリバン勢力が侵攻を開始して9日間で首都カブールがタリバンの手に落ちた。20年前のタリバン政権下の蛮行を知っている多くの国民はカブールの空港に殺到、空港周辺は国外脱出を願う人々で大混乱している。

hkent
▲アフガンから避難する人々を支援する独連邦軍(独国防省公式サイトから)

 アフガンの急変に対し、20年間の駐留後、米軍撤退を決定したバイデン米政権は、「撤退時期が間違いだった」という批判を国内外から受けている。米情報機関は、「米軍撤退後も少なくとも3カ月はカブール政権は持ち続けるだろう」と予想していたが、その期待はあっさり破られた。

 一方、米軍と共に北大西洋条約機構(NATO)加盟国ドイツは連邦軍をアフガンに派遣してきた。ドイツは過去20年間で総数16万人の兵士をアフガンに投入してきた。その間、少なくとも59人が犠牲となり、多くの兵士は悪夢に悩まされてきた。その独連邦軍の元兵士は今、アフガン政権の崩壊、タリバンの政権奪還に直面し、「自分たちは何のために戦ってきたのか」と考え出している。

 独連邦軍退役軍事協会のダビット・ハルバウアー副会長は独日刊紙「南ドイツ新聞」(8月21日付)の取材に対し、「タリバンの政権奪還はアフガンに駐留してきた独連邦軍元兵士に精神的ダメージを与えている。多くの兵士は長い間、厳しい戦いを繰返し、死の不安にも直面してきた。そのアフガンがタリバンの一撃であっさりと倒れた。家族を犠牲にしてまで何のために戦ってきたのか、と考えだす兵士が出てきても不思議ではない」と説明、元兵士から相談を受ける件数が増えてきたという。

 また、独週刊誌シュピーゲル(8月7日号)は、2011年にアフガン北部クンドゥーズで戦闘部隊司令官だったマーセル・ボーネルト氏の寄稿を掲載している。「独連邦軍のアフガン派遣はわが国にとって戦後初めての大きな任務だった」とし、同氏は、「わが国では外国に派遣された連邦軍の兵士に対して評価が低い」と言った。第2次世界大戦の敗北後、ドイツは軍事活動には消極的な姿勢を崩さなかった。その点、同じ敗戦国の日本の事情に似ているかもしれない。軍事問題には距離を置き、もっぱら国民経済の発展に腐心してきたわけだ。

 駐ベトナム、駐イラクの米軍兵士が帰国後、社会に再統合できず、さまざまな困難に直面する「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)が大きな米国社会の問題となったが、駐アフガン独連邦軍元兵士の間でも同じような現象が見られ出している。

 スイスのアフガン問題専門家、民族学者のピエール・ソンリーヴル氏はスイス公共放送協会のウェブサイト「スイスインフォ」のインタビュー(8月19日)の中で、「米国とNATOの目的は明確ではなかった。テロとの戦いだったのか、ビンラディン容疑者を捕らえることだったのか、あるいは憲法を制定して民主的な国家を建設することだったのか。アフガン介入はこれらの異なる性質のものをごちゃ混ぜにしたものだった」と指摘している。

 ソンリーヴル氏は、「ガニ政権内にも抗争があり、不和と腐敗が蔓延していた。一方、政府軍の中では同じイスラム教の信仰を有するタリバンと戦闘することに消極的な兵士が多かった」という。

 アフガンにはタリバン以外にもイスラム過激派がいる。彼らはチャンスがあればタリバンと衝突するかもしれない。タリバン内も決して一枚岩ではない。そのような現状で、今後、タリバン政権がシャリア(イスラム法)に基づく国家建設に向かうかどうかは不明だ。イスラム過激派の国内流入を恐れるタジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンらの周辺国、スンニ派のタリバンに対してシーア派のイランの出方、そして中国の野望といったさまざまな要因が絡むアフガンの状況はここ暫くは流動的だろう。

 米同時多発テロ事件20年目(9月11日)を迎える前に米軍撤収を完了したいと計画していたバイデン大統領は22日、米軍撤収などの期限延期などを含む対策の検討に入っていることを明らかにしている。

 国の指導者の意向でコマのように右に左に動かされる兵士は、不透明な戦略と目標の中で、「なぜ戦わなければならないのか」という基本的な問い(大義)に答えを見いだせずに苦しむ。それは米軍兵士、独連邦軍兵士、そしてアフガン政府軍兵士にとっても同じなのかもしれない。

「帝国の墓場」アフガンと中国の関係

 イスラム原理主義勢力タリバンが15日、アフガニスタンの首都カブールを再び占領したというニュースが流れると、国外脱出が始まった。モーセは60万人の同胞を引き連れて神の約束の地「カナン」を目指して「出エジプト」したが、アフガンから脱出するガニ政権関係者、難民、移民、そして外交団の姿は希望を求めての出国ではなく、タリバン勢力の蛮行を恐れて、文字通り逃避する“敗北の群れ”のような光景を呈した。米軍が準備した輸送機には600人余りの人々が乗り込んできた。彼らは搭乗出来たことに安堵感を見せる一方、残された者に待ち受けている国の混乱を考えて憂鬱な思いと申し訳なさをを感じたかもしれない。

students-girls-desk_orig
▲学習するアフガニスタンの女性たち「Afghan Institut of Leraning」(AIL)の公式サイトから

 アフガニスタンは通称「帝国の墓場」と呼ばれている。モンゴル帝国、ムガール帝国、大英帝国、そしてソ連、米国という大国がアフガンの支配を試みたが、その野望を実現できず敗北していったことから、誰が言い出したのか、「帝国の墓場」と呼ばれるようになったという。

 中央アジアと南アジアの交差点に位置し、外部からの侵略者を寄せ付けない山岳地帯だ。アフガンは東と南にパキスタン、西はイランに接し、北はトルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、そして北東に中国と国境を接している。

 賢明な人間、民族、国家は「歴史から学ぶ」が、世界制覇の野望に燃える中国の習近平国家主席は米国が出ていった空白を埋めようと触手をアフガンに伸ばしてきている。自分たちは最後は敗走すると知っていて他国に侵入する国はいない。中国共産党政権もアフガンが歴史書で「帝国の墓場」と呼ばれていることを知っているだろうが、やはり「自分たちは違う」といった思いが強いのだろう。大国(帝国)の傲慢さが最終的には敗走する要因となったように、中国共産党政権は今、傲慢になっている。「見ろ、米国が出ていった。米国の民主主義は敗北した」と豪語し、次は我々の番だという驕りが見え隠れする。

 それでは中国はタリバンと友好関係を維持しながら、アフガンを自国の支配下に置くことができるだろうか。中国にとってアフガンはどのような魅力がある国か。先ず考えられる点は、.ぅ薀鵑録少ない同胞国だ。アフガンを支配下に置くことで中国はイランと更に近くなる、⊇主席の提唱した「一帯一路」プロジェクトにもプラス、C羚颪魯▲侫ンに埋蔵されたレアアース〈希土類)に関心がある。アフガンには最大3兆ドル規模のレアアースが埋蔵されていると推定されている。レアアースは半導体やバッテリーなどの先端産業と軍事産業に広く利用されている、っ羚颪砲箸辰謄▲侫ンを管理下に置くことで自国のプレステージを高める政治効果が期待できる。

 海外中国メディア「大紀元」によると、中国外務省の華春瑩報道官は、「タリバンはアフガンの発展に対する中国の参加を期待している。中国はアフガンの平和と再建に建設的な役割をする」と表明、既に意欲満々だ。なお、中国の王毅外相は先月末、タリバンの指導者ガニ・バラーダル(Ghani Baradar)氏らと天津で会談、今月18日には、パキスタンのマクドゥーム・シャー・マヘムード・クレーシ外相と電話会談し、アフガンの政権移行がスムーズにいくため連携を強化することで一致するなど、活発な動きを見せている(中国国営新華社8月19日)。

 ところで、中国とタリバンの関係はうまく機能するだろうか。中国側の一方的なラブコールに終わる可能性が排除できないのだ。タリバンはイスラム原理主義を標榜し、国体はシャリア(イスラム法)建設にある。一方、中国は「宗教をアヘン」と考える共産主義独裁国家だ。中国共産党は神や仏を信じる国民は反国家的な存在であり、その団体、組織は反体制派と受け取っている。

 習主席は「宗教の中国化推進5カ年構想」(2018年〜2022年)を推進させ、宗教者に信仰を捨てさせ、共産主義思想、中国共産党の教えに忠実であるべきだと檄を飛ばしてきた。同主席は、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなければならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調する一方、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告している(「習近平主席の狙いは『宗教の中国化』」2020年6月12日参考)。

 国家像から見ても、中国とタリバンは全く180度異なっているわけだ。中国新疆ウイグル自治区ではウイグル人が共産党政権の厳格な同化政策を強いられている。ウイグル人はイスラム教スンニ派が多い。彼らが無神論国家中国共産党政権によって弾圧され続ければ、タリバンは黙認できるだろうか。タリバンも一枚岩ではない。ウイグル人問題を重視する強硬派がいる。タリバン指導者たちはウイグル人問題を黙認し、中国共産党政権と良好関係を締結し続けることはできなくなるだろう。

 中国は最近、中東外交に力を入れてきた。中東地域はサウジを盟主としたイスラム教という宗教が大きな影響を持つ地域だ。その地域に無神論国家を標榜する中国共産党政権が土足で入り込もうとしているわけだ。「中国の中東外交は今後も成功しない」とこのコラム欄でも書いてきた。例えば、王毅外相のトルコ訪問中に抗議デモが起きている。トルコには中国から逃げてきた多数のウイグル人が住んでいるのだ(「中国の対中東外交は破綻の運命に」2021年4月3日参考)。

 タリバン勢力は政権奪回直後はロシアや中国の大国の支援が重要となるから、タリバンと中国はしばらくは良好関係を維持するかもしれない。しかし、タリバン主導の新政権が定着して、国家運営がスムーズに動き出せば、タリバンは必ずその本来のカラー(イスラム原理主義)を出してくるだろう。その時、中国はタリバン政権を宥めることができるか。過去の「帝国」は最後にはアフガンから撤退を余儀なくされた。中国がその例外という保証は全くないのだ。

アフガンから緊急救援要請が届く

 アフガニスタンで女性の教育を推進してきたサケナ・ヤコ―ビ博士(Sakena Yacoobi)から17日、支援を求めるメールが届いた。同博士とはウィーンで開催された世界平和女性連合の会議で知り合った。それ以降、同博士から定期的に活動報告などのメールが届いた。博士は女性たちに教育の場を提供するために「Afghan Institut of Leraning」(AIL)という名称の非政府機関(NGO)の責任者だ。

Sakena_Yaccobi
▲アフガンで女性の教育に献身するサケナ・ヤコ―ビ博士

7955-o
▲AILの学習風景(左から2番目が博士)AIL公式サイトから

 イスラム原理主義組織タリバンが15日、アフガニスタンの首都カブールを占領し、アフガンを完全に掌握したというニュースが流れた時、アフガンで女性の教育推進活動を実施してきたヤコービ博士のNGOは大丈夫だろうかと懸念していた。米軍が管理していた20年の間、アフガンにも女性の地位向上、教育の普及などが見られたが、タリバンがアフガン全土を支配した今日、全てが元の木阿弥になってしまうのではないか、という心配だ。カブールの国際空港は国外脱出を願う人々で大混乱だ。

 ヤコ―ビ博士は、「これまで私が書いてきた手紙の中で最も厳しい内容となる」という書き出しで、ガニ政権が崩壊し、タリバンの支配下に陥てしまったアフガンの現状を報告している。

 以下、同博士の緊急支援アピールだ。

 親愛なる、友人、支持者、そして同僚の皆様、

 これは私が今まで書いた中で最も難しい手紙の1つです。20年後、私たちの政府はほとんど抵抗なく崩壊しました。私たちが一生懸命働いて勝ち得た憲法、私たちの女性が多くの犠牲を払って得た権利は、犬への残飯のように窓から投げ出されました。私たちの軍隊とガニ政府は逃亡し、私たちの女性と子供たちは無防備な状況に置かれ、支援なくタリバンに直面することになりました。世界はそれをまったく気にかけず、見守っていました。私たちは助けを求めて叫びながら懇願しました。アフガニスタンイスラム共和国は崩壊し、カブールは完全にカオスです。私の事務所とスタッフは無傷であり、神に感謝します。

 アフガニスタンの国は混乱しています。私の学校は今も残っています。今のところ、男の子と女の子を分けて授業をしている限り、続けることができると指示されています。タリバンがカンダハールを占領した最初の日、彼らは私の学校を訪ねてきました。ということは、私の学校は彼らにとっても重要であるに違いありません。私たちの女性学習センターは、主に女性にサービスを提供しているため、開いたままです。今のところ、私のスタッフは無傷です。これが真実であり続けることを願って祈っています。ラジオとテレビのメラジは、通知があるまで運営されないと言われています。その指示を待ちます。タリバンが学校を閉鎖するつもりはないと世界に告げたとき、タリバンが嘘をついていないことを願って祈っていますが、私たちの大学はすでに女性への扉を閉ざし、家に帰るように言われています。ブルカの売り上げは3倍になり、購入価格も3倍になりました。以前タリバンの支配下で生活していた女性たちは、今、これらの衣服を購入するために行きますが、アメリカの占領下で育った娘たちは、それらを着用することを拒否して、母親の顔にそれらを投げ返します。

 私たちは岐路に立つ国ですが、AILはAILが常に行ってきたことを行い続けます。私たちは、子供と女性のための安全な空間を提供し、教育し続けます。私たちは、施設にとどまることができる限り、食事と職業訓練および医療を提供し続けます。それらの建物に留まることができなくなったら、新しい建物を見つけて、そこから作業します。現在学校がある所ならどこでも、来週、来月、来年になってもそれは変わらないです。 AILは秘密裏に開始されました。必要に応じて今後も秘密裏に継続されます。私たちは恐れていますが、敗北することはありません。私たちの使命は変わりません。最悪の事態が到来した今、私たちはすべての州に学校を設立します。私たちは何を期待するかを知っています。私たちはタリバンをよく知っています。彼らがどのように機能するか、または彼らが何を期待するかについては疑問の余地はありません。私たちはそれらを管理する方法を知っています。そうします。

 今週末、多くの手紙が届き、電話が次々と鳴ります。そして「あなたをどのように手助けできるか」と尋ねてきました。人道支援が必要です。難民の状況は悪化しているだけです。私たちには30万人の国内難民と8万人の子供たちが避難所や食料を持っていません。物資が不足しています、援助機関はアメリカ人と一緒に去りました。 AILは去らないので、戦闘で家を含むすべてを失った人々を助けるために施設を拡張します。粉ミルク、衣類、学用品、薬、衛生用品が必要ですが、新型コロナウイルスはまだ存在しているため、石鹸と消毒剤が重要です。あなたの多くはあなたが他に何ができるかを尋ねました。そして、それに対して私は国連と政府当局者に連絡して、彼らが外交手段を通して私たちの女性と少女を保護するために持っているすべての可能なツールを使って欲しいと彼らに言います。私の国への侵略に対してパキスタンを制裁し、私の国民の安全を祈ってください。私たちの民主主義は今のところ後退しているかもしれません。しかし、理想はそれほど簡単に消えることはありません。風のささやきを殺すことはできません。タリバンは夢をつぶすことはできません。思ったより時間がかかっても私たちは勝ちます。

全てに愛をこめて
Dr. Sakena Yacoobi   


 Dear, Friends, Supporters, and Colleagues,

This is one of the most difficult letters I have ever written. After twenty years, our government collapsed with almost no resistance. The constitution we worked so hard for, the rights our women sacrificed so much to gain, thrown out the window like scraps for the dogs. Our military and the Ghani government fled, leaving our women and children to face the Taliban with no support. The world watched it happen, without care. We begged, screaming for help. So, now we see peace is again made on the back of women and children. It is what it is. The Islamic Republic of Afghanistan has fallen, and Kabul is in complete chaos. My office and staff are unharmed, for which we thank God.

The nation of Afghanistan is in turmoil. My schools still stand, as of now, we have been instructed that we can continue as long as we separate boys and girls. The day the Taliban took Kandahar, they planted their flags in the courtyard of three of them. My schools must be important, as they visited the very first day the Taliban took control. Our Women Learning Centers remain open as they primarily serve women. As of now, my staff is unharmed. We hope and pray this remains true. We have been told that Radio and TV Meraj are not to operate until we are given notice, we will wait for that instruction. We hope and pray that the Taliban wasn’t lying when they told the world they did not intend to shut the schools, but our universities have already shut their doors to women and told them to go home. Burqa sales have tripled, as have the prices to purchase them. Women who lived through the Taliban before, go now to purchase these garments, while the daughters raised under the American occupation throw them in the faces of their mothers, refusing to wear them.

We are a nation at a crossroads, but AIL will do what AIL has always done. We will continue to educate and provide a safe space for children and women. We will continue to offer food and job training and medical care for as long as we can remain in our facilities. When it is no longer possible to remain in those buildings, we will find new buildings, and work from there. Wherever we have schools now, we will have schools next week or next month or next year. AIL was started in secret and it will continue in secret if it must. While we are afraid, we are not defeated. Our mission remains the same. We will set up schools in every province, now that the worst has come. We know what to expect. We know the Taliban very well. There is no question of how they operate, or what they expect. We know how to manage them. We will do so.

Letter after letter, phone call after phone call, came in this weekend asking how you can help. We need humanitarian supplies. The refugee situation we updated you with last week and the week before has only deteriorated. We have 300,000 internal refugees and 80,000 children who are without shelter and food. Where we were short of supplies, now we are out. Those in need are overwhelming us. Aid agencies have left with the American’s. AIL will not be leaving, so we will expand our facilities to help those who lost everything, including their homes, in the fighting. We need dry milk, clothes, school supplies, medicine, hygiene items, and Covid is still present, so soap and sanitizers are critical. Many of you have asked what else you can do, and to that I say contact the UN and government officials and tell them you want them to use every possible tool they have to protect our women and girls through diplomatic means. Sanction Pakistan for their invasion of my country, and pray for the safety of my people.

Our democracy may have fallen for now. Ideas do not disappear so easily. One cannot kill whispers on the wind. The Taliban cannot crush a dream. We will prev AIL, even if it takes longer than we wanted it too.

Much love to you all,

Dr. Sakena Yacoobi
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Recent Comments
Archives
記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ