ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

パレスチナ

「ハマス」の罠にはまるな!

 イランのザリーフ外相は今月13日からスペインのマドリードを皮切りに欧州歴訪を開始した。同外相は16日、第2訪問国のイタリアのローマに到着したが、予定のウィーン訪問をキャンセルしている。理由は明確だ。オーストリア連邦首相府と外務省建物の屋上にイスラエル国旗が掲げられている時、イスラエルを最大の宿敵とするイランのザリーフ外相がその建物を訪問し、シャレンベルク外相と会談することは出来ないというわけだ。

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▲欧州歴訪で第2番目の訪問先のローマに到着したイランのザリーフ外相(イラン国営通信IRNA5月16日)

 同外相の言い分は理解できる。同外相がイスラエル国旗がたなびくウィーン外務省の建物に足を踏み入れるところをイラン国営通信IRNA記者が撮影し、テヘランに配送した場合を考えてほしい。イラン保守派聖職者、強硬派は「待ってました」といわんばかりに同外相を糾弾するだろう。外交力が高く評価されているザリーフ外相がそんな冒険を犯すことはないからだ。

 ザリーフ外相のウィーン訪問中止はウィーンで開催中のイラン核合意の復帰と米国の再加盟問題を協議中の交渉日程にも大きな影響が出てくることは避けられない。同外相がウィーン入りを拒否したことでイラン核合意の協議の行方にも不透明さが漂ってきたわけだ。

 オーストリアのクルツ首相は14日、自身の首相府の屋上にイスラエル国旗を掲げさせたことがどのような外交的影響を及ぼすかを事前に計算していただろうか。34歳のクルツ首相は「ハマスのミサイル攻撃でイスラエル国民に多くの犠牲が出ている」とし、イスラエル国民への連帯を表明するために、首相府官邸の屋上にイスラエル国旗を掲げさせた。問題はその行為がオーストリアがイスラエル支持を宣言したものと受け取られることだ。クルツ首相はイスラエル軍の反撃で多くの犠牲者が出ているガザ地区のパレスチナ人に対しては何も言及していないのだ。同首相の政策は、イスラエルを全面的に支援し、パレスチナ人の困窮に理解を示さなかったトランプ米前政権と似ている、と指摘する声が出ているほどだ。

 パレスチナを支援するトルコのイブラヒム・カリ―ン報道官は15日、ツイッターで、「ウィーンの首相府と外務省の建物の屋上にイスラエル国旗を掲げさせた行為は道徳的ではない」と批判しているほどだ。

 今回のイスラエル軍と「ハマス」の武力衝突は、東エルサレムでのパレスチナ人の動きをイスラエル軍が制限し、それに住民が反発して小競り合いとなったことが契機で始まったと言われているが、間違いだ。イスラエル軍とパレスチナ住民間の小衝突はこれまでも頻繁に起きてきたことで初めてではない。直接の原因は、パレスチナ暫定自治政府が15年ぶりに5月下旬に予定していた自治評議会選挙を延期したこと、アラブ諸国に見られだしたパレスチナ人問題への無関心に対し、「ハマス」が怒りを暴発させたからだ。「ハマス」はガザ地区に漂う閉塞感を打ち破るために、対イスラエル武装闘争に出てきたのだ。

 イスラエル軍と「ハマス」の今回の衝突は明らかに「ハマス」側に責任がある。そこから、今回の紛争の解決の道を模索すべきだ。軍事力で有利なイスラエル軍の攻撃、それに伴うパレスチナ側の膨大な被害を取り上げて、イスラエルの軍事攻勢を批判することは間違いだ。それこそ「ハマス」の狙いに嵌ることになる。「ハマス」にとって強者イスラエル軍に勝利する道はイスラエル軍の攻撃でパレスチナ側に大きな被害が出ることであり、それを国際社会にアピールすることで、イスラエルへの批判を高めることだ。

 イスラエル軍の空爆でガザ地区の国際メディアが事務所を構える建物が破壊された。AP通信もそのビルに入っていた。イスラエル側は空爆前にメディア関係者に退避するように警告している。イスラエル軍が同ビルを空爆対象としたのは、「ハマス」が国際メディア関係者が入っている建物を利用してきたからだ。ちょうど、子供や女性たちをイスラエル軍の空爆防止の盾に利用するように、「ハマス」は国際メディア関係者がたむろする同建物をイスラエル軍の空爆回避に利用してきたのだ。

 オーストリアの野党関係者はクルツ首相の「イスラエル国旗」問題について、「わが国の中立主義を無視している」と批判しているが、シャーレンベルク外相は、「わが国は中立主義国だが、テロに対しては容認しないし、静観しない」と反論している。

 今回の中東紛争で糾弾すべきは「ハマス」のテロ活動であり、イスラエル軍の応戦ではない。国際社会は「ハマス」の戦略に乗せられて、イスラエル批判の合唱を再び始めてきた。欧州の都市で15日、パレスチナ人への連帯とイスラエル軍の攻撃中止を求めるデモがロンドン、マドリード、ベルリンなどで行われた。マドリードでは2500人のデモ参加者がイスラエルとの協調を停止すべきだと呼びかけ、パリではデモ集会開催中止令にもかかわらず、親パレスチナ・グループがデモ集会を開いている、といった具合だ。

 欧州連合(EU)はガザ地区を実効支配している「ハマス」をテログループと認定している。繰り返すが、「ハマス」がイスラエルへ数千発のミサイルを撃つ行為は明らかにテロ攻撃だ。イスラエル国民だけではなく、「ハマス」に利用されているパレスチナ人もノーというべきだ。「ハマス」はテロ組織であり、パレスチナ人の権利を守る代表ではない。彼らは自身の目的を貫徹するためにパレスチナ人の女性、子供を盾に利用しているのだ。

「パレスチナ問題」をもう一度考えよう

 誰も真剣に考えてはいないが、常に取り上げられ、支援を受けてきたが、状況は一向に改善されないばかりか、むしろ悪化してきた。パレスチナ人の現状だ。アラブ諸国はそれぞれ国益が異なり、時には双方がいがみ合うという状況もあったが、イスラエルに領土を奪われてきたパレスチナ人問題となると結束し、パレスチナ人に連帯支援を表明してきた。その意味でパレスチナ人問題は全てのアラブ諸国を結束させる最良の政治課題だった。少なくとも、トランプ米政権がワシントンで発足するまではそうだった。

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▲踊りだしたパレスチナの人々(2012年11月29日、ウィーン国連内にて撮影)

 それがここ数年でパレスチナ民族を取り巻くアラブの政治環境は激変してきた。パレスチナ人側は依然、イスラエルとの2国共存建設の和平案を主張しているが、アラブ諸国にとってパレスチナ人問題はもはや議題の一つに過ぎず、それ以上ではなくなってきたのだ。

 アラブの盟主を誇示するサウジアラビアは、パレスチナ人の民族としての権利を擁護するが、行動は余り伴わない。リップ・サービスの域を超えなくなってきた。なぜならば、イスラエルとの関係改善を模索してきたからだ(「サウジとイスラエルが急接近」2017年11月26日参考)。

 実際、今年に入り、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン両国は9月15日、イスラエルと国交を回復し、エジプト、ヨルダンに次いでイスラエルと外交関係を締結したアラブ国家となった。UAEはパレスチナとの外交関係を断絶し、イスラエルと手を結んだのではない。同国のパレスチナ支援政策には基本的に変化はないが、イスラエルとの国交締結がそれ以上に重要となってきたからだ。

例えば、サウジの優先課題はここにきてシーア派代表・イランとの主導権争いに代わってきた。その結果、パレスチナ人問題は脇に置かれてきた。サウジにとって、イスラエルはもはや最大の敵ではなく、イランこそ最大の脅威と受け取られてきたからだ。

 スーダンは先月15日、イスラエルとの国交正常化に合意したばかりだ。ウィ―ン国連のスーダン外交官に、「なぜ今、イスラエルとの国交を改善するのか」と聞く機会があった。同外交官は、「スーダンは久しく米国とアラブとの対立の戦場で常にフロントに立って戦ってきたが、少々疲れてきたのだ。スーダンは自国の将来の発展を先ず考えるべきだという結論となった」と説明してくれた。アラブ諸国の本音を代表する声だろう。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は「アラブの連帯を崩した」としてUAEを非難した。アラブ連盟は2002年、イスラエルとの正常化はパレスチナ問題が解決された後」ということで合意してきたからだ。しかし、時代の趨勢を止めることはできない。パレスチナ側にとっては、イスラエルを全面支援し、実行してきた“トランプ米政権憎し”といったところだろう。

 11月3日の米大統領選で米民主党のバイデン氏が次期大統領に選出される可能性が出てきたことから、パレスチナ側は次の米政権に期待してきた。バイデン氏がパレスチナの独立を認め、2国共存案を支持し、イスラエルの入植地拡大に反対しているといわれるからだ。

 ちなみに、米民主党は少数民族を擁護する政党というイメージを築き上げてきた。今年に入り、警察官による黒人窒息死事件が起き、ブラック・ライヴズ・マター運動(BLM)という人種差別抗議デモ運動が米全土を覆った。ここでも民主党は運動を支援し、トランプ氏を白人主義者と批判し、「警察官」対「黒人」という対立構図を立ち上げ、強権を駆使して黒人を弾圧する大統領といったイメージを創り上げていった。

 民主党は黒人や少数民族系の国民の「犠牲者メンタリティ」を克服するように助言するのではなく、それを煽ってきた。なぜなら、黒人や少数民族は民主党の支持基盤だからだ。だから、黒人と警察の間で問題が生じるたびに、民主党はメディアを駆使して警察を批判した。その際、トランプ氏は常に少数民族を強権で迫害する張本人と受け取られてきた。要するに、米民主党は黒人を含む少数民族を自身の支持基盤とするために甘い言葉を使い、自身の利益のために利用してきたのだ(「成長を妨げる『犠牲者メンタリティー』」2019年2月24日参考)。

 繰り返すが、米民主党は少数民族問題を政争のアジェンダとするが、その解決に共和党以上に熱意があるとはどうしても思えないのだ。バイデン氏も今年8月、選挙戦で黒人社会を軽視するような失言している。本音は隠し切れないのだ。

 米国では共和党と民主党の2大政党が政権を交代してきた。それでは民主党の大統領が出てきたことで黒人人種差別問題は解決されただろうか。大統領選で黒人の人種差別問題がテーマ化され、差別撤回が大きな選挙争点となってきたが、黒人人種差別問題が解決されたとは聞かない。

 アッバス議長は8日、「バイデン氏と協力し、共に働くのを楽しみにしている」と歓迎しているが、米民主党の甘い声に期待を寄せ過ぎれば再び失望を味わうことになるだろう。

 イスラム過激武装組織「ハマス」などのテロを含む武力抗争ではイスラエルとの和平は永遠に実現できない。他のアラブ諸国の支援を受けながらも、それに依存せず自主的に対話を継続していく以外に他の選択肢はない。イスラエルにとっても同じだ。パレスチナ人との共存なくして持続的な平和は決して訪れないからだ。

 パレスチナ人を取り巻く環境は厳しい。アラブ諸国はイスラエルとの関係を模索し、その先端科学技術を学び、国民経済を活性化する努力を強めていくだろう。イスラエルと外交関係を結ぶアラブ諸国が今後も出てくることが予想される。

 固有の領土をもたない世界最大の少数民族クルド人、そして領土から追われたパレスチナ人の苦悩は当事国の民族でしか分からないだろう。国際社会は彼らに対し温かい支援を惜しんではならない。特に、「パレスチナ問題」を大国、強国の政争に利用したり、リップ・サービス外交は止め、両民族の未来を真剣に考えるべきだ。

 なお、地理的に中東から遠い日本はアラブ・イスラエル間の過去のしがらみからフリーだけに、中東問題で中立で公平な調停外交が出来る立場にある。日本の中東和平外交が期待される所以だ。イスラエル民族を尊敬し、パレスチナ人を愛する国と政治家の登場が願われる。

アラブでパレスチナへの関心薄れる

 中東のアラブ・イスラム諸国では過去、意見の対立があったとしてもパレスチナ人問題になると結束してきた。イスラエルに自国領土を奪われ、中東全域に散らばったパレスチナ人難民に対し同情し、経済支援を惜しまなかった。彼らにとって、イスラエルは最大の敵国だったからだ。それがトランプ大統領がホワイトハウスに就任して以来、パレスチナ人問題のプライオリティが低くなってきたのだ。

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▲ウィーン国連で掲揚されたパレスチナ国旗(2015年10月12日、ウィーンの国連広場で撮影)

 イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派代表のイランの間で「どちらが本当のイスラム教か」といった争いが1300年間、中東地域で展開されてきたが、問題がパレスチナ人の権利となると連携してきた。両国の共通の敵がイスラエルだったからだ。

 しかし、サウジの優先課題はここにきてシーア派代表、イランとの主導権争いに代わってきた。その結果、パレスチナ人問題は脇に置かれてきた。サウジにとって、イスラエルはもはや最大の敵ではなく、イランこそ最大の脅威と受け取られてきたからだ(「サウジとイスラエルが急接近」2017年11月26日参考)。

 イランはシリア内戦ではロシアと共にアサド政権に軍事支援をし、守勢気味だったアサド政権を支え、反体制派勢力やイスラム過激派テロ組織「イスラム国」(IS)を駆逐し、奪われた領土をほぼ奪回する成果を上げた。イエメンではイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派」を支援し、親サウジ政権の打倒を図る一方、モザイク国家と呼ばれ、キリスト教マロン派、スンニ派、シーア派3宗派が共存するレバノンでは、イランの軍事支援を受けたシーア派武装組織ヒズボラを陰で支援するなど、イランは中東アラブ諸国で影響力を急速に拡大してきた。

 これに危機感をもったのはサウジ、エジプト、そしてアラブ首長国連邦などだ。彼らは対イラン問題で結束してきた。トランプ米大統領は1月28日、新中東和平案を発表した。トルコやイランはパレスチナ人の自治権を無視したイスラエル寄りの和平案を厳しく批判したが、サウジやエジプトは新和平案を歓迎こそしないが、強い反対は控えている。というのも、両国にとって、対米、対イスラエルとの関係堅持がパレスチナ人問題より重要視されてきたからだ。例えば、サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子はトランプ米政権から支援を受けるイスラエルへの批判を避け出している。エジプトとハマスとの関係もここにきて冷えてきた。

 アラブ連盟は1日、カイロで緊急会議を開催し、トランプ米大統領が発表した新中東和平案について協議、パレスチナ人の自治権を無視したイスラエル寄りの和平案に対し、「完全で公正な和平案ではない」という理由で反対する決議を全会一致で採択したが、アラブ諸国は決して一枚岩ではないことが会議でも明らかになった。米・イスラエルとの連携を重視するサウジはトランプ氏の和平案への強い反対を控え、曖昧な姿勢を崩していない。

 一方、トルコはイランとの連携を深め、トランプ米大統領の中東和平案に対しては「政治的、領土的に全てイスラエルの意向を反映したものだ」として強く反対している。ヨルダンやカタールはパレスチナ人の立場を理解する一方、トランプ氏の新和平案には慎重な立場を持ち続けている。

 ちなみに、トランプ米大統領の和平案は、.茱襯瀬鸚彰澆離罐瀬篆容植地をイスラエル領土に併合、▲┘襯汽譽爐魯ぅ好薀┘襪良垈鎚の首都、テロ活動から手を引き、イスラエルを国家承認するならば、パレスチナの国家独立を容認、首都はパレスチナ側が求めてきた東エルサレム全体ではなくアブディス地区周辺部とする、な胴颪錬毅娃芦ドル以上をパレスチナに支援する投資計画、といった内容だ。

 和平案の中で最も重要な点は、イスラエルとパレスチナの両国の国境線を、1967年の第3次中東戦争前の国境線ではなく、ユダヤ人入植地をイスラエル側の領土に加えたことだ。パレスチナ側が最も強く反発している点だ。ただし、トランプ氏は同時に、イスラエル側に入植活動を今後4年間凍結するように要求、パレスチナ側の反発に一定の理解を示している。

 参考までに、アラブ連盟が2002年に提案した和平案によれば、アラブ諸国はイスラエルを国家承認し、国交関係を樹立。イスラエルは東エルサレムを首都としたパレスチナ国家を承認し、1967年以降占領した地域から撤退し、難民パレスチナ人の帰還問題にも対応するという内容だった。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は和平案が公表された後、「パレスチナ国家にエルサレムを含まない和平案は受け入れられない」と指摘し、「パレスチナは米国とイスラエル両国との関係を断絶する」と表明し、イスラエル寄りの和平案に強く反発している。

 アッバス議長はアラブ・イスラム諸国から昔のように全面的支持を得られないことを肌で感じてきているはずだ。イスラエルと外交関係があるのはエジプトとヨルダンの2国だが、サウジは近い将来、イスラエルと国交を締結する可能性が排除できない。パレスチナ問題を取り巻くアラブ・イスラム教国の情勢が変わってきたのだ。

 中東・北アフリカ諸国で“アラブの春”(民主化運動)が勃発して以来、汎アラブ主義は後退し、アラブ諸国ではパレスチナ問題への関心が薄れてきた。外交的にはパレスチナ人の権利を擁護するが、パレスチナ人のために国益を無視しても支援するアラブ諸国は少なくなってきたのだ。

 アラブ・イスラム諸国のパレスチナ問題へのコンセンサスはもはや期待できなくなった。トランプ氏の新和平案では、パレスチナにも独立国家の道が開かれるが、そのためには多くの譲歩が求められている。特に、エルサレム問題だ。アッバス議長は「エルサレム問題は売買(取引)できるものではない」と述べている。パレスチナ人は、独自の国家を有さない最大民族クルド人と共に、歴史の激動に揺れ動かされてきた悲しい民族だ。

パレスチナは“安倍外交”に熱い期待

 パレスチナ解放通信(WAFA)から記事が届いた。それによると、パレスチナ自治政府のアッバス議長の国際関係担当顧問、ナビル・シャート(Nabil Shaath)氏は4日、ラジオ放送局「パレスチナの声」とのインタビューで、「河野太郎外相はパレスチナの国家認知のため(日本の)国会議員の署名を集めている」、「国会議員たちはパレスチナの認知を要求し、日本のパレスチナ事務所をパレスチナ外交代表部に引き上げることを期待している」と答えている。

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▲ウィーン国連で掲揚されたパレスチナ国旗(2015年10月12日、ウィーンの国連広場で撮影)

 同顧問は、「日本はパレスチナを政治的、経済的に支援を続けている。日本政府は、ガザ地区の水供給計画を支援し、米国のパレスチナ人道支援削減決定後、その穴を埋めるためパレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を増額している」と新たに述べた。

 河野外相は昨年12月25日、中東5カ国を歴訪し、その最初の訪問国イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談し、そこで「日本が、停滞する中東和平プロセスを推進するため米国・イスラエルとパレスチナ側の仲介役を演じる考えがある」と伝えている

 河野外相は自身の公式サイトの中でも、「日本政府は、トランプ米大統領の『エルサレム首都』発言で険悪な関係となった米国とパレスチナ関係の橋渡しに積極的に取り組む意向だ」と述べている。

 トランプ米大統領は昨年12月6日、ホワイトハウスで、イスラエルの首都をエルサレムと見なし、米大使館をテルアビブからエルサレムに移転すると発表した。同発表はイスラエル国内で歓迎の声がある一方、パレスチナや中東・アラブ諸国だけでなく、欧州諸国からも「中東和平へのこれまでの努力を無にするものだ」といった批判の声が挙がっている。その矢先、河野外相は昨年末、主要国家の最初の外相として現地入りしたわけだ。

 問題は、戦後から米国追従の外交路線を歩んできた日本が中東地域で果たして独自路線、新たな仲介外交ができるだろうかだ。

 そこでトランプ大統領の「エルサレム首都」発言後の動向をまとめてみる。

【米国の立場】
 トランプ大統領は今年に入り、早速ツイッターを通じて、「米国の巨額の経済支援は感謝されていない」として対パレスチナ支援の削減を表明。それに対し、アッバス議長は、「米国はもはや和平プロセスの仲介者の資格がない」と激怒した。米国は国連のパレスチナ難民救済事業機関に毎年約3億ドルを拠出。トランプ大統領は対パレスチナ支援を削除することで、パレスチナ側に圧力をかけてきた。

【日本の立場】
 日本政府は昨年12月18日、国連安保理の「エルサレムの地位変更」を無効とする決議案に対し、米国に事前通達した後、「無効」賛成に回った。日本の基本方針は、.ぅ好薀┘襪肇僖譽好船覆裡温餠β検↓▲┘襯汽譽爐涼楼面簑蠅蓮屬△までも当時国間で協議」して決定、J胴颪力楕晋鮠弔隆慷燭鷲垈跳隋△箸いΓ嚇世澄

 パレスチナに対しては、日本は。妝裡劭廝舛了抉膓眩額、▲僖譽好船覆侶从囘自立を促進させる「平和と繁栄の回廊」構想への支援強化の2本を柱としている。

 先述したWAFAの記事(2月4日)に戻る。同記事の見出しは「Japan in process of recognizing State of Palestine」とかなり衝撃的だ。ただし、日本政府が公式の場でパレスチナの国家承認を表明したことはない。あくまでも「2カ国共存」という和平枠組みでの国家承認の道だ。WAFAのニュースはパレスチナ人の日本への熱い期待が込められているわけだ。

 中東の原油に依存する日本としては、中東の和平実現は日本の国益に合致するものだ。イスラエル寄りを深める米国との関係を配慮しながら、パレスチナ人の権利を保護し、2カ国共存の実現に向けて仲介役を果たすという、かなり込み入った外交が求められる。トランプ氏と個人的親密関係を樹立してきた安倍晋三首相にとってその真価が問われることになる。

「大使館移転案は2国家案の終焉」

 世界に12億人以上の信者を有する世界最大のキリスト教派、ローマ・カトリック教会の総本山バチカン市国で14日、パレスチナ自治政府の大使館が正式にオープンした。自治政府のアッバス議長は、「バチカンで大使館が開いたということは、ローマ法王がパレスチナ人を愛し、平和を愛している証拠だ」と述べ、ローマ法王フランシスコに感謝の辞を表明している。両者は今回を入れて5回、会合している。

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▲踊りだしたパレスチナの人々(2012年11月29日、ウィーン国連内にて撮影)

 それに先立ち、アッバス議長はフランシスコ法王と約20分間、会談した。パレスチナのTV放送によると、パリで15日開催の中東和平会議の行方やテロ対策で意見の交換が行われたという。
 一方、バチカンの声明文によると、パレスチナとイスラエルの双方は多くの犠牲者が出る武力闘争を停止し、中東の恒常的な和平実現のため持続的な解決を模索すべきだという点で一致。そして国際社会に対しては、「中東の関係国間の信頼を拡大し、平和実現のために貢献すべきだ」とアピールしている。

 アッバス議長に随伴してローマ入りしたパレスチナ自治政府高官は両首脳会談前に、「次期米大統領トランプ氏の駐イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転する案に対し、ローマ法王が明確な見解を表明することを期待している」と述べていることから、同議長はフランシスコ法王にイスラエルの米大使館の移転についてバチカンの支持を要請したものとみられる。

 実際、アッバス議長はイタリアのANSA通信に対し、「トランプ氏の米大使館のエルサレム移転案は中東の和平に貢献しない。2国家共存案の終焉を意味するだけだ。パレスチナは東エルサレムを首都とした独立国家を要求する」と述べている。

 バチカン放送によれば、フランシスコ法王とアッバス議長との会談では、エルサレムがアブラハムから派生したユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3宗派にとって重要な聖地であることを確認している。

 バチカンは2016年1月、パレスチナを正式に国家と認知している。バチカンはパレスチナとイスラエルの2国家共存案を支持している。ちなみに、パレスチナを国家と認知している国は目下、130カ国以上になった。国連は2012年、オブザーバー国の立場を与えている。多くの欧米諸国はパレスチナの国家承認は、パレスチナとイスラエル間の和平合意後に、という立場を崩していない。

 なお、フランシスコ法王は2014年6月8日、ユダヤ教代表のイスラエルのシモン・ペレス大統領(昨年9月28日死去)、そしてイスラム教代表のアッバス議長を招き、バチカン内の庭園で中東和平実現のための祈祷会を開催している。「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表が和平の為に共に祈祷を捧げた、ということで大きく報道されたことはまだ記憶に新しい。

 フランシスコ法王は祈祷会の最後に、「憎悪と暴力の悪循環を突破するためには“兄弟”という言葉がある。顔を天に向け、われわれの共通の父親を見つけることができれば、われわれは兄弟だと分かるのではないか」と述べている。この法王の発言はイスラエルとパレスチナが今最も必要としている内容ではないだろうか。

遺跡保存かショッピングモールか

 パレスチナのガザ地区で発見された初期キリスト教会のビザンチン教会跡にショッピングセンターが建設中だ。バチカン放送独語電子版がカトリック系通信社フィデス(Fides)の報道として伝えた。ショッピングセンターの建設中に、少なくとも1500年前の同教会跡が発見されたが、建設続行のためにブルドーザーで破壊されたという。

 そのニュースが伝わると、パレスチナのキリスト信者たちから怒りの声が出ているという。ヨルダン川西岸地区のアングリカン(聖公会)系教会のイブラヒム・ナイロウツ神父はパレスチナ自治政府宛てに抗議の書簡を送っている。
 一方、イスラエルのメディアは「ショッピングセンターが建設中の敷地にイスラム寺院やシナゴーグや古代の遺跡などが見つかっていたとすれば、今回と同じようなことが行われただろうか」と問いかけている。その論調には、ガザ地区の少数宗派キリスト教会関連の敷地跡だったから破壊された、といった批判が含まれていることは明らかだ。

 歴史的遺跡や建物を破壊するといえば、われわれは直ぐにイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の蛮行を想起する。ISは昨年8月21日、シリアで西暦4世紀ごろ建立された修道院マール・エリアン( Mar Elian )をブルドーザーで破壊した。シリアの砂漠に立つ修道院はこれまで多くの紛争や戦闘を目撃してきたが、生き伸びてきた。しかし、ISは修道院破壊の理由を、「同修道院には3世紀のキリスト教の殉教者聖人エリアンが祭られている。これは神の神性を蹂躙するものだ」と説明している。要するに、「偶像崇拝」というのだ。

 ISはイラク内の占領地でも世界的遺産を次々と破壊している。ISは昨年2月、イラク北部のモスル博物館に収蔵されていた彫像を粉々に破壊し、古代ローマの主要都市ハトラでも破壊を繰り返した。同年4月には、イラク北部にある古代アッシリアのニムルド遺跡を爆発した、といった具合だ。
 
 もちろん、ISの蛮行とガザ地区の教会跡にショッピングセンターを建設することを同列に扱うことはできない。ISは破壊魔であり、何も建設しない。ガザ地区の場合、ショッピングセンター建設中に教会遺跡が発見された結果だ。想定外だった。

 人類の歴史を記した遺跡を保管することは現代に生きている人間の責任だ。だから、歴史的遺跡を可能な限り保管すべきだが、昔の遺跡や建物を破壊し、その敷地に新しい建物や施設を建設することが全て良くないとはいえない。現在、生きている人間の生活を改善するためにどうしても必要なケースが考えられるからだ。また、全ての歴史的遺跡を完全に保管することは物理的にも出来ない。だから、歴史家、遺跡専門家たちを交えて慎重に話しあわなければならないだろう。遺跡を移動させるとか、その一部を保管するといった処置も今日、可能だからだ。

 明確な点は、イスラエルとパレスチナ間で紛争が続いている時、少数宗派の遺跡破壊は紛争を煽る危険性があるということだ。ガザ地区の場合、ブルドーザーで教会跡を破壊する前に、ショッピングセンター建設側はその地域の少数宗派のキリスト信者たちと話し合いを持つべきだった。

バチカン、パレスチナ国の承認へ

 世界に約12億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会の総本山があるバチカン市国はパレスチナの国家承認に踏み込むことを決定し、パレスチナ交渉団との最終文書(基本協定)の作成をこのほど完了した。
 バチカンとパレスチナ両国作業グループが13日明らかにしたところによると、「最終的な文書作成で満足いく進展があった。文書は調印を待つだけだ。正式の調印式は近いうちに行われるだろう」という。

 バチカン国務省外務局のアントワン・ カミレリ次官補はバチカン日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノの14日付のインタビューの中で、「最終文書は、通常のバチカンの外交文書と同様だ。パレスチナ内のローマ・カトリック教会の地位、信仰の自由の保証などが記述されている。その他、パレスチナとイスラエルの2国家案の枠組みでの和平実現を支持する旨が明記されている」と説明している。

 バチカンは2013年末以来、非公式だがパレスチナを国家と呼んできたが、ここにきて正式に国家承認することになったわけだ。バチカンとパレスチナ解放戦線(PLO)は2000年、基本原則に関する協定を締結し、04年にはその内容を具体化するために委員会設置を決定した。そして、前法王べネディクト16世が2009年、ベツレヘムを訪問し、バチカンとパレスチナ間の関係促進で一致した経緯がある。

 バチカンのパレスチナ国家承認というニュースが流れると、イスラエル外務省は、「バチカンの決定に失望した」と表明。一方、パレスチナ自治政府側は、「平和と公平の実現に貢献する決定だ」と高く評価している。

 フランシスコ法王は昨年6月8日、中東和平の実現のために、「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表として、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領、そしてイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長をバチカンに招き、祈祷会を行うなど、中東和平に努力している。


 バチカンからの情報によると、パレスチナ自治政府のアッバス議長は16日、ローマ入りしてフランシスコ法王を謁見するという。同議長は17日、サン・ピエトロ広場で挙行されるパレスチナ出身の2人の修道女の列聖式に参加する予定だ。

 なお、国連総会は12年11月29日、パレスチナを「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を採択したが、パレスチナを国家承認している国は既に130カ国を超える。パレスチナは2011年10月末、パリに本部を置くユネスコ(国連教育科学文化機関)に加盟したが、今年4月1日には国際刑事裁判所(ICC)に正式に加盟するなど、国家承認国との関係を強化し、パレスチナの国際社会での地位向上に努力している。

パレスチナの子供たちは優秀だ

 当方は5年前、「国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書』によれば、パレスチナ人の教育水準が一般的に高く、難民キャンプなどに住む子供たちは非常に優秀だ」という内容のコラムを書いた。その内容は今日でも変わらない。

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▲踊りだしたパレスチナの人々(2012年11月29日、ウィーン国連内にて撮影)

 イラク出身の中東問題専門家アミール・ベアティ氏は、「パレスチナの子供たちも非常に優秀だ。アラブの大国エジプトより、就学率は高い。子供たちは幼い時から親から教えられなくても自分でものを考え、早い時期から政治意識にも芽生える。換言すれば、祖国が他国に占領されている場合、自然に『どうして占領されているのか』、『なぜ、母国が戻ってこないのか』等の疑問を抱く。ハマス(イスラム根本主義組織)がガザ地区でパレスチナ人の子供の教育に力を入れる。多くのパレスチン人は故郷を追われ、隣国ヨルダンや他のアラブ諸国に移住する。だから、パレスチナ民族は他国や他文化社会に適応する能力も有している。もちろん、親たちはどこに移住しても子供たちに教育の重要さを教え、高等教育への機会を何とか与えようと努力する」という。
 “世界のディアスボラ”と呼ばれてきたユダヤ人が子弟の教育に熱心であることは良く知られている。異国に住んでいる場合、財物は余り価値がない。いつ無くなったり、奪われたりするか分からないからだ。だから、彼らは生き延びていくために教育に投資する。ノーベル賞受賞者にユダヤ人が多いのは偶然ではないわけだ。

 今年5月、ヨルダンの首都アンマンの国際会議でパレスチナ人医師、現トロント大学准教授のイゼルディン・アブエライシュ氏とインタビューする機会があった。インタビュー内容はこのコラム欄でも紹介した(「憎しみは自らを亡ぼす病だ」2014年5月14日参考)。同氏は2人の娘さんをイスラエルの砲撃で失っているが、その娘さんは生前、将来は医者、もう一人は弁護士になりたいという願いを持っていたという。彼女たちは難民キャンプで両親と共に大きくなった。そして勉強をしろと強制したわけではないが、娘さんは学んでいった。自分から「父親のように医者になって人々を助けたい」と考え、もう一人は弁護士となってパレスチナ人の人権を守りたいと考えていたというのだ。

 その2人の娘さんを失った同氏は学業に励む中東女生たちを支援する奨学金基金「Daughters for life Foundatoin 」を創設し、多くの学生たちを応援してきた。同氏自身、パレスチナ人難民キャンプで成長し、エジプトのカイロ大学医学部を卒業後、ロンドン大学、ハーバード大学で産婦人科を習得。その後、パレスチナ人の医者として初めてイスラエルの病院で勤務した体験を有する。「学ぶ」ことの大切さを誰よりも知っているパレスチナ人だ。

 日本は長い平和な時代を過ごしてきた。日本人の就学率は現在、ほぼ100%といわれている。単一民族ということもあって相互の意思相通には余り苦労がないが、外国語学習では多民族国家の国民と比べると見劣りする面がある。それ以外の学問分野では日本人の優秀さは国際社会で久しく認められている。
 パレスチナ人と日本人は正反対の環境下にあるが、双方とも教育に熱心な民族だ。前者は厳しい環境で生きる知恵を学んでいく一方、平和で恵まれた環境下の日本人の子供たちの場合、学習の動機が国家、民族のためというより、個人的な願いが優先され、将来、国のために貢献したいといった考えは少なくなった。いずれにしても、パレスチナ人の子供たちが優秀であるというニュースは、パレスチナ人の未来を明るくさせるものだ。

 「世界難民の日」の20日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は昨年の難民総数を公表した。それによると難民総数は約5120万人で、その内訳は、ジュネーブ難民協定に一致する難民数約1270万人、国内避難民3330万人、難民申請者約110万人だった。難民が最も多かった国はアフガニスタン、そしてシリア、ソマリア、スーダンと続く。そして難民のほぼ2人に1人が18歳以下の子供たちだ。そのニュースを読んだ時、先述した5年前のコラムを思い出した次第だ。難民の子供たちが厳しい環境下にも負けず多くのことを学んでいくならば、難民出身の世界的な指導者が近い将来、生まれてくるかもしれない。

忘れられる「パレスチナ人問題」

 イスラエルとパレスチナの交渉期限の今月末が差し迫ってきた。よほど楽天主義者でない限り、「問題の解決は可能だ」とは言えなくなった。

 いつものように、イスラエルとパレスチナの双方が「交渉が暗礁に乗り上げたのは相手側の責任だ」と弁明する用意をしている。

 パレスチナ側は「イスラエルが約束していたパレスチナ囚人の釈放を実行しなかったからだ」とし、15の国連・国際条約の加盟を申し込んだ。「パレスチナ人国家」へ更に一歩駒を進めた感じだ。
 それに対し、イスラエル側が「パレスチナ側は主権国家の道を一方的に進めている」と強く反発し、パレスチナ自治政府に代わって徴収している関税・税収入の譲渡停止などの経済制裁を施行したばかりだ。

 一方、イスラエルとパレスチナ間の平和交渉に全力を投資し、昨年7月以来、多くの時間を費やしてきたケリー国務長官は「米国がいつまでも時間を有していると考えるべきでない」と、交渉が進まないことにイライラしてきている。

 昨年再開した交渉はどうなったのか。イスラエルとパレスチナ両者は一応、2国家共存で一致しているが、国家建設で不可欠な国境線の設定の見通しはない。そればかりかエルサレムの地位問題、難民帰還問題、入植地問題、イスラエルの安全保障問題など主要改題は未解決のままだ。

 パレスチナ側は「イスラエル側は問題解決の意思がない」という。多分、これは正鵠を射ているだろう。イスラエルはパレスチナ国家の建設をさまざまな理由を付けて防ごうとしていることは周知の事実だ。イスラエル側は、パレスチナ側の統治能力のなさや内部の権力争いに助けられている面も否定できない。

 パレスチナ問題に解決の道が本当にないのか、といえばそうではない。イスラエル人とパレスチナ人が一つの国家の下で共存すればいいのだ。国境線を設定する必要もない。ただし、この共存案の致命的問題は、パレスチナ人が近い将来、国家の過半数を占め、イスラエル人が少数派に落ちてしまう危険性が出てくることだ。だから、イスラエル側はパレスチナ人と一つの国家の旗のもとで共存できないわけだ。選挙をすれば、人口の多いパレスチナ人が多くの行政区を合法的に掌握できるからだ。

 中東・北アフリカ諸国で“アラブの春”(民主化運動)が勃発して以来、汎アラブ主義は後退し、アラブ諸国でパレスチナ問題への関心も薄れてきた。

 一方、欧米諸国はウクライナ危機に直面し、大国ロシアと対抗するために内部の結束が急務となってきた。解決の見通しのないパレスチナ問題に時間を費やすことができなくなりつつある。パレスチナ問題で解決の筋道をつけ、ノーベル平和賞でも、と密かに考えていたケリー米国務長官もここにきて疲れが目立ち始めたのだ。
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