ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

ウクライナ

激化するロシア軍の弾道ミサイル攻撃

 ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、キエフ・ペチェルスカ・ラヴラ(キーウ・ペチェールシク大修道院)創建975周年記念で演説を行った。ウクライナの首都キーウにあるキリスト教正教会の聖地、キーウ・ペチェールシク大修道院は1051年の創建から今年で975年を迎えた。同大統領は「今日は祝日だ。私たちはラブラの975周年を記念する。とても象徴的な意味を持っている。ロシアのシャヘド攻撃の後、私たちのラヴラが火災から救われたとき、私たちは皆、何が救われてたのか、何が危険にさらされているのかを実感したはずだ。それは単なる建物や壁の問題ではない。ロシアの文化破壊に屈しないウクライナの精神的・文化的アイデンティティの象徴だ」と強調している。

 大修道院はユネスコの世界遺産(危機遺産)に登録されているが、2026年6月にロシア軍の無人機・ミサイル攻撃により敷地内のウスペンスキー大聖堂(生神女就寝大聖堂)の屋根などが炎上する被害を受けた。ゼレンスキー大統領や国際機関(ユネスコ事務局長など)が参列し、修道院の歴史を伝える「国家の精神的至宝」と題した特別展が開幕された。また、1000周年に向けた「共同の鐘つき」という新たな伝統がスタートした。ゼレンスキー氏によれば、この975周年記念は、単なる歴史の節目にとどまらず、ウクライナ独自の歴史的ルーツ(キーウ・ルーシの伝統)を証明し、戦火から国を挙げた文化遺産を保護・アピールするための極めて重要な契機というのだ。

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▲キエフ・ペチェルスク修道院975周年記念行事、2026年8月15日、ウクライナ大統領府公式サイトから  

ところで、キーウからの情報によると、ロシア軍は16日未明にかけて、再びウクライナの首都キーウを弾道ミサイルで攻撃した。ウクライナの他の地域でも新たな攻撃が行われ、当局によると死傷者が出ている。ゼレンスキー大統領によると、同大統領の出身地である工業都市クリヴィー・リフへの弾道ミサイルとドローンによる攻撃で、2人が死亡した。また、北東部のスームィでも1人の死亡が報告されている。

 ウクライナ当局によると、ザポリージャ州でもロシアのミサイル攻撃により2人が死亡した。キーウの当局は夜間に空襲警報を発令し、弾道ミサイルの脅威を警告した。キーウのヴィタリー・クリチコ市長は、住民に対し、避難所にとどまるよう呼びかけた。市内の2つの地区で火災が報告され、消防隊が出動した。3人が負傷。キーウ州のティムール・トカチェンコ知事は、周辺地域でのドローン攻撃により、子供1人を含むさらに3人が負傷したと明らかにした。ウクライナ空軍はまた、テレグラムを通じて、クリヴィー・リフに加え、工業都市クレメンチュクを含む国内の他の地域でも、ミサイル、滑空爆弾、ドローンによる攻撃があったと報告している。

 開戦から4年半が経過し、ウクライナ軍のミサイル防衛用弾薬が不足する中、ロシアは最近、キーウやその他の都市に対する弾道ミサイル攻撃を強化している。米国製の「パトリオット」システムは、弾道ミサイルに対する最も有効な防衛手段だが、ウクライナ軍はこのシステムをいくつか保有しているが、迎撃ミサ弾道ミサイル迎撃弾の不足に悩まされている。

 戦争研究所(ISW)によると、ロシアが5日夜に発射した28発のミサイルに対し、ウクライナ軍は1発も迎撃することができなかった。ロシアは、ウクライナの弾道ミサイル迎撃弾の備蓄が枯渇している状況を知っている。ロシア軍が夜間に発射したミサイルはすべて、弾道ミサイル、あるいは弾道軌道を描いて飛来するミサイルであり、これらを迎撃可能なのは米国製の「パトリオット」システムや同等のシステムに限られるからだ。

 ゼレンスキー大統領によると、主に中東での紛争の影響により、2026年の初め以降、ウクライナが受け取る弾道ミサイル迎撃弾の数が3分の1に減少しているという。ロシアは2026年7月、ウクライナに対して過去最多のミサイルを発射した。

 「キーウ・インディペンデント」紙は軍のデータを引用し、7月に発射された195発の弾道ミサイルのうち、迎撃に成功したのはわずか29発だったと報じた。また、40発は標的に命中しなかった。国防省は「7月、ウクライナの防空部隊は、弾道ミサイルによるテロ攻撃に対抗するための迎撃ミサイルが極端に不足する中で活動していた」と述べている。ウクライナは数ヶ月にわたり、米国から供与された「パトリオット」防空システム用の迎撃ミサイル不足に悩まされてきた。これは同国が保有する兵器の中で、ロシアの弾道ミサイルを撃墜できる唯一のものだ。ロシアは今年に入り前線での進撃が著しく鈍化する一方で、迎撃が困難なこれらのミサイルを用いてキーウやその他の都市への攻撃を強化している。ロシアによる全面侵攻の開始以来、ウクライナにとって大きな課題は防空ミサイルの確保だ。そのため、米国製ミサイル「パトリオット」の国内生産許可に対する期待は高まっていたが、依然不透明だ。

 なお、ウクライナのゼレンスキー大統領は8日、北朝鮮がロシアに3万〜5万人を派兵することが決まったとの見方を示した。地元テレビによるインタビュー内容の一部をSNSに投稿した。ロイター通信によると、北朝鮮は約90名からなるミサイル部隊の展開を開始し、ウクライナ攻撃用として120発の弾道ミサイルを移送する準備を進めている。ロシアは同部隊を自国の第112ミサイル旅団に編入し、ウクライナ攻撃用に最大120発の弾道ミサイルと6基の発射装置を配備する計画という。北朝鮮は、KN-23およびKN-24ミサイル40発からなる新たな一団を納入済みだ。

 ちなみに、ウクライナ軍の兵力は約88万人だが、ウクライナにも約1万6000人の外国人兵士がキーウ側で戦っている。公式統計によると、ロシアの侵略戦争に対する防衛戦において、ウクライナは72カ国から集まった1万6000人弱の外国人の支援を受けている。外国人兵士の約40%が中南米諸国の出身者で占められている。ウクライナで戦う外国人兵士は主に自国の軍隊で戦闘経験を積んだ元軍人が多く、経済的な動機(月給約3,000〜4,000ドル、前線手当等で最大約7,000ドル)から志願するケースが目立つ。

イランの「物流の聖域」カスピ海ルート

 ウクライナ軍が7月25日にカスピ海上で航行していたイラン所有の貨物船を攻撃無人機で攻撃し、火災を引き起こした件で、イラン側はウクライナに報復を開始する予定だったが、報復攻撃を断念している。テヘラン指導部内で当時、報復支持派と現実派の間で激しい対立があったという。強硬派のイラン革命防衛隊(IRGC)は最高指導者アリ・ハメネイ師の死後、テヘランの実権を掌握しているが、今回はウクライナへの報復を避けている。その疑問に迫る。

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▲カスピ海、イラン国営通信IRNA公式サイトから、2026年8月9日

 海外イランメディア「イラン・インターナショナル」のマリヤム・シナイー記者は「イラン当局者はウクライナ軍の攻撃を非難し、決して黙認はしないと誓ったが、テヘランの新たな戦線の拡大がイランの立場を強化するか、さらに負担をかけるかで指導部の間で意見が分かれていた」と指摘し、ウクライナ軍の攻撃後、強硬派と現実派の間で激しい論争があったことを明らかにしている。

 イランは攻撃直後、「民間商船への攻撃は国際法違反だ」と激怒し、ウクライナの臨時代理大使を召喚して強く抗議した。IRGCは、ウクライナ国内の3つの拠点を対象に、弾道ミサイルを用いた限定的な報復攻撃の具体案まで策定していた。ウクライナへの報復攻撃は開始寸前だったわけだ。

 強硬派の日刊紙「カイハン」はウクライナ軍のイラン貨物船への攻撃を「戦略的警告」と表現し、その目的はイランを新たな北部戦線に引き込むことだと警告した。さらに「キーウが主役ではなく、欧州と北大西洋条約機構(NATO)がその背後にいる。キーウはその代理役を演じているだけだ」と強調している。

 軍事アナリストのニマ・アクバルハニ氏は国営放送IRIBでさらに踏み込み、「テヘランはキーウ自体ではなくウクライナのヨーロッパ支持者に報復すべきだ。戦略的かつ正確な対応は、感情的な行動ではなく、ヨーロッパの利益を標的にすることだ。ゼレンスキー(ウクライナ大統領)を抑えられるのは、彼の戦争に資金を出している者だけだ」と述べている。

 一方、「報復」が利益よりリスクの方が大きい、と警告する声もあった。モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長に近い保守派政治活動家のアリ・ゴルハキ氏は、「ウクライナに対する直接行動は米国と共に欧州諸国をも敵に回す可能性がある」と指摘、「イランはヨーロッパ全体がアメリカと共にイランに対抗してくるような事態が生じないように警戒しなければならない」と自制を呼びかけている。

 また、元外交官のクーロシュ・アフマディ氏は、北部戦線の出現がイランに軍事資産をカスピ海地域に再配置せざるを得ず、他の地域に新たな脆弱性を生む可能性がある。また、イランが黒海地域やウクライナ国内の標的を攻撃した場合、米国、ヨーロッパ、トルコ、ロシアがどのように反応するか不確かだと疑問を呈している。

 軍事アナリストのモーセン・レイハニ氏は、Xの投稿で、テヘランが直面する現実的な障害を指摘、「カスピ海からのオデッサ(ウクライナの黒海沿岸の都市)へのドローン攻撃にはロシアの協力が必要であり、イラン北西部から発射されたミサイルはトルコ領空を通過しなければならず、NATOの関与リスクがある。キーウのような都市への攻撃には約1,700〜2,500キロメートルの射程を持つミサイルが必要になる」と説明している。

 そして最終的には両国間の外交で事態のエスカレートを避けるということで一致したというのだ。イランのアラグチ外相は、「ウクライナのシビハ外相が攻撃は意図的でなかったと保証し、ウクライナはエスカレーションを望んでいないと述べた」と報告している。ただし、イランは事態のエスカレーションを避けるが、死者や被害に対する賠償を求めたという。

 ところで、テヘランとキーウの関係は、イラン船攻撃前からすでに緊張していた。2020年1月8日、イランの首都テヘランからキーウへ向かっていた民間旅客機が、イランのイスラム革命防衛隊によって地対空ミサイルで撃墜された。この誤認撃墜により、乗組員と乗客176人全員が死亡した。その後、両国関係は長期的な断絶関係となった。そしてイランによるシャヒードドローンや生産技術のロシア移転をめぐって緊張が深まっていった経緯がある。

 キーウはテヘランがモスクワの戦争に直接関与していると見ている。西側情報機関は、イランはロシアにドローンや弾道ミサイルなどの軍需品を提供し、ロシアは対価として穀物や中東の米軍基地に関する情報などを提供している、と分析している。

 ちなみに、ウクライナ軍が7月25日にカスピ海のイラン関連船舶を長距離自爆ドローンで攻撃したのは、イランがカスピ海ルートを使ってロシアへ軍事物資や兵器を輸送し、ロシアのウクライナ侵略を直接的に支援しているため、その海上輸送網を断つ狙いがあったことは間違いない。ロシアとイランを結ぶ軍事・経済的な補給線としてカスピ海が使われており、ウクライナ側はこの補給路を標的にしたわけだ。ロシア・イラン間の軍事輸送ルート(カスピ海ルート)の実態は、欧米の監視や制裁、および米海軍の物理的な介入が一切届かない「巨大な密輸・物流の聖域」として機能しているといわれる。

 ロシアは船舶攻撃後、テヘランを強く支持した。モスクワの外務省報道官マリア・ザハロワ氏は、「ウクライナがカスピ海沿岸諸国の地域安全保障に明確な脅威をもたらす」と述べ、クレムリンのペスコフ報道官はイラン船への攻撃を「イラン自体への攻撃を意味する」と強調している。

 なお、カスピ海事務局長のナビウッラー・アザミ氏はIRNAとのインタビューで、「過去30年間、カスピ海はイランの中でも数少ない周辺地域の一つであり、地域外の軍事勢力からの直接的な競争から免れてきた。現状でこの状況を維持することは、外交上だけでなく、安全保障リスクの拡大を防ぐためにも戦略的に必要だ」と主張している。

 イラン側がウクライナ軍の貨物船攻撃に対して報復攻撃に乗り出せば、米国や欧州の監視外にあったカスピ海の実態が国際社会に知られる切っ掛けともなる。イランはそれを避けたいため、キーウの攻撃に対しては報復攻撃を断念する選択肢を選んだのではないか。

ブルガリアとウクライナ間で無人機騒動

 戦争が長くなると敵国との関係だけではなく、同盟国との間でもいがみ合いや争いが生まれてくるものだ。ロシア軍が2022年2月24日、ウクライナに侵攻して以来、戦争は5年目に突入しているが、キーウ政府はウクライナを支援してきた同盟国との関係で問題が出てきている。同盟国の支援疲れ、ウクライナの戦争疲れ、といった側面もあるが、戦場以外の問題や誤射など技術的ミスが外交関係を刺々しくさせている。

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▲無人機対策の重要性を訴えるルーメン・ラデフ首相、ブルガリア首相府公式サイトから

 ロシア軍がウクライナに侵攻した時、避難するウクライナ国民を最も多く受け入れたのはポーランドだった。ポーランド人は歴史的に反ロシア的傾向が強いが、国民は国境の駅に到着したウクライナ避難民を温かく迎え入れてきた。その後、ポーランドの農民からウクライナ産農産物の輸出問題で一時期不満の声が聞かれたことがあった。

 そして今年5月末、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアと戦う自国の精鋭特殊部隊に対し、ウクライナ蜂起軍(UPA)の英雄にちなんだ名誉称号を授与する大統領令に署名して以来、ウクライナとポーランド両国の歴史認識を巡る外交問題が表面化した。

 ウクライナ蜂起軍(UPA)は、1942年に設立され1950年代まで活動したウクライナ民族主義者組織(OUN)の傘下組織だ。UPAは第二次世界大戦中、現在のウクライナでポーランド人虐殺を行った組織だ。ウクライナ大統領が自軍の部隊にUPAの称号を授与したと報じられると、ポーランドのナブロツキ大統領は「虐殺者を英雄視している」として、ゼレンスキー氏に授与した最高勲章(白鷲勲章)の剥奪を決定するなど、両国間で外交摩擦が生まれたことはまだ記憶に新しい。

 そして今度はウクライナの攻撃無人機がブルガリア領内で爆発するという事件が発生した。爆発物を積載したドローンは8日、欧州連合(EU)および北大西洋条約機構(NATO)加盟国の隣国ルーマニアとの国境付近で爆発した。爆発は、トルコとウクライナを結ぶ「トランス・バルカン・ガスパイプライン」のコンプレッサー・ステーション(圧縮機所)から約1000メートルの地点で発生した。負傷者は出なかった。ブルガリアのラデフ首相によると、ドローンは黒海に近いカルダム近郊のヒマワリ畑に墜落した。ブルガリア国防省は8日、「残骸の初期調査の結果、当該機体がウクライナ軍によって頻繁に使用されている種類のドローンであった」と発表した。

 ブルガリア国内の戦略的に重要なガスパイプライン付近で、ウクライナ製とみられるドローンが爆発したことを受け、ソフィアとキーウの間で外交的な摩擦が生じてきた。ブルガリア側が初期調査に着手する一方、ウクライナ側も事態の解明に協力する姿勢を示した。ペトロヴァ外務次官は10日、駐ブルガリア・ウクライナ大使を呼び出し、会談を行う予定だ。

 キーウ側は、意図的にブルガリアへ向けて機体を飛ばしたことを否定しつつ、ソフィア側との共同調査に対して、全面的に応じると表明した。キーウのウクライナ外務省報道官は、「ウクライナ軍が意図的にブルガリアへ向けて何らかの機体を差し向けたことはない、と断言する」と述べた。ただし、同報道官は、当該ドローンが実際にウクライナ製であるかどうかについては明言を避けた。一方、ブルガリア国防省は、「現時点では、これが意図的な事案であったことを示す兆候はない」と発表し、事案の早期鎮静化に努めている。

 ラデフ首相によると、ドローンには「相当量」の爆発物が積載されていた。安全保障閣僚会議の緊急会合後、同首相は「ドローンを捕捉し無力化することは大きな課題となっている」と述べ、監視体制の強化、さらにドローンの探知および迎撃措置を講じるため、国境地帯へ軍隊が派遣される予定という。

 ちなみに、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で5日未明、ライプツィヒ・ハレ空港の「南滑走路」で、空港職員が正体不明のドローン(UAV)を発見した。そのドローンには爆弾が搭載されていたが、起爆装置が故障していたため幸い爆破せずに大惨事を免れたが、国民に大きなショックを与えている。連邦検察が重要インフラに対する「重大な攻撃」としてテロ容疑で捜査を開始したばかりだ。

 ドイツや東欧のNATO加盟国でドローンに関連する事案が相次いでいる。ロシアによる対ウクライナ侵攻の開始以来、ルーマニアでは自国領空をドローンが飛行したり、領内に墜落したりする事例が複数確認されている。

 ウクライナ製ドローンがNATO加盟国内で爆発し、被害が出た場合、欧州諸国のウクライナ支援にも影響を与えることは必至だ。ウクライナとNATO諸国間に亀裂が生じる危険性すら排除できない。そうなれば、ロシア側の思うつぼとなる。

ウクライナ戦争では、無人機は戦況を変えるゲームチェンジャーとなってきた。単に「敵を倒せるから」ではなく、1機わずか数千ドル(数十万円)の自爆ドローンや、ウクライナ国産の低コスト長距離ドローン(Blyskavkaなど)が、数億円〜数十億円のロシア軍の戦車、装甲車、防空システム、さらには後方の製油所を破壊できるからだ。

 ドローンは今後も大きな役割を担っていくだろう。ただし、ドイツ東部ライプツィヒ・ハレ空港で発見された「正体不明」の爆弾搭載無人機が示すように、数千ドルのドローンは取り返しのつかない大惨事を起こす危険性を有していることを忘れてはならない。

戦況を根底から変えた「無人機」の登場

 ウクライナ軍参謀本部は31日、ウクライナにおけるロシア軍の損失に関する新たな数値を公表した。それによると、2022年2月24日以降、ロシアはウクライナで約144万6,150人の兵士を失った。直近の24時間だけでも、損失数は計1,340人に上る。また、ウクライナ側の発表によれば、全面侵攻開始以来のロシア軍の総損失数は、戦車1万2,231両、砲システム4万7,045門、防空システム1,525基、航空機439機、ヘリコプター354機、ドローン43万5,665機、艦船34隻、潜水艦2隻に達している。同情報の検証は難しいが、ロシア軍側に想定以上の人的・物的被害が出ていることはほぼ間違いないところだ。

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▲ゼレンスキー大統領、ワシントンでトランプ米大統領と会見、2026年7月28日、ウクライナ大統領府公式サイトから

 ところで、「トランプ氏、キ―ウへのパトリオット・ライセンス生産に慎重姿勢を示した」というニュースが31日流れてきた。ロシアによる全面侵攻の開始以来、ウクライナにとって大きな課題は防空ミサイルの確保だ。そのため、米国製ミサイル「パトリオット」の国内生産許可に対する期待は高まっていたが、それが突然、不透明になってきたのだ。

 ウクライナは防空能力の強化を急いでいるが、米国製ミサイルのライセンス生産という待望の計画において障害に直面しているのかもしれない。ウクライナのオルハ・ステファニシナ駐米大使によると、ウクライナ政府はパトリオット迎撃ミサイルを自国で生産する許可を求めて米国防総省と交渉を行っている。しかし、この手続きには1年から5年を要する可能性がある。英紙フィナンシャル・タイムズの報道によれば、トランプ米大統領もこの計画を承認するかどうか確信を持てずにいる。同紙は、トランプ大統領が電話会談の中で「あれは極めて特殊な兵器であり、誰にライセンスを供与するかについては慎重にならざるを得ない」と語ったというのだ。

 同大使が説明したところによると、パトリオットの製造元であるレイセオン社の代表者は既にウクライナを訪問しており、同防空システム用の迎撃ミサイル「PAC-3」を製造するロッキード・マーティン社も専門家チームの派遣に向けて動いているが、パトリオットのライセンス生産を最初に言い出したトランプ氏がここにきて揺れ出しているのだ。ステファ二シナ大使は「ロシア軍の連日の攻撃による被害は凄まじい。昨夜も、その前の晩も、30から40発もの弾道ミサイルが撃ち込まれた」という。ちなみに、ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ホワイトハウスでトランプ氏と会談した。その直後のゼレンスキー氏の発言にはまだパトリオット・ライセンス生産に期待が溢れていた。

 ウクライナ戦争は既に5年目に入っている。その間、ウクライナは欧米諸国に武器の供与を求め続けてきた。それに対し、欧米諸国の返答は常に好意的だったわけではない。たとえば、ドイツの主用攻撃型戦車「レオパルト2」のウクライナへの供与問題の時もそうだった。「レオパルト2」の供与を躊躇するドイツに対し、欧米諸国から圧力が強まった。最終的にはショルツ首相(当時)がバイデン米大統領(当時)との協議の末、アメリカとドイツ両政府は2023年1月25日、ウクライナに戦車を供与すると発表した。アメリカは「M1エイブラムス」31台を、ドイツは「レオパルト2」14台をそれぞれ送ることで決着した経緯がある。

 また、ドイツが誇るタウルス巡航ミサイルも「ロシアとの戦争をエスカレートさせる危険がある」ということでウクライナへの供与は見送られた。。欧州では英国とフランスが既に同様の巡行ミサイルをウクライナに供与しているが、英国の「ストームシャドウ」とフランスの「スカルプ」と呼ばれる巡行ミサイルはタウルスより精度が低く、射程距離も大幅に短い。タウルスの射程距離は500キロだ。ショルツ首相は当時、「ドイツを戦争に引きずり込む恐れが出てくる」と懸念し、一貫して拒否してきた。

 一方、米国の巡航ミサイル「トマホーク」をウクライナに供与する話が持ち上がったことがあった。トランプ政権発足後、ゼレンスキー大統領からの直接の要請や、J.D.ヴァンス副大統領による「欧州経由でのウクライナへの売却検討」への言及があり、一時は前向きな姿勢が見られた。ペンタゴン(米国防総省)側も「米軍の備蓄に影響を与えない」とする評価書をホワイトハウスに提出していたが、プーチン大統領との電話会談や、米軍自身の必要性を再考した結果、トランプ大統領は「自国を守るために必要なものを手放したくない」として方針を翻し、ウクライナへのトマホーク供与の要請を正式に却下した。

 ちなみに、供与が見送られた主な理由は米軍の在庫不足と太平洋優先だ。また、トマホークは本来、軍艦や潜水艦から発射する兵器だ。海軍力をほぼ持たないウクライナが運用するには、新開発の地上発射システム(タイフォンなど)が必要となるが、この発射機自体の保有数が米軍内でも非常に限られているなどの理由だ。射程が約1,600kmにおよぶトマホークをウクライナに渡せば、ロシア首都モスクワを含む広大な本土深部への攻撃が可能になるため、ロシア側が「重大な局面の拡大(エスカレーション)」を招くとして激しく警告していた。

 欧米から精密な武器を得ることが難しいことが判明したことで、ウクライナは方針を切り替えている。ウクライナは、既存の滑空爆弾を精密誘導ジェット爆弾に改造する「ウクライナ版トマホーク・ライト」とも呼べる独自の長射程兵器を国内で量産・実戦配備する動きを強めている。専門家や欧州の政界からは、米国に依存するのではなく、欧州諸国がウクライナのミサイル産業に資金を直接投入し、共同で長射程兵器を開発・増産すべきだという議論が支配的になってきている。

 「タウルスの供与」の話が飛び出した時、メディアは「ゲームチェンジになる奇跡の武器(Wunderwaffen)だ」といった論調で報じた。しかし、タウルスのウクライナ供与は見送られた。それに代わって製造コストが低い攻撃無人機がゲームチェンジャーとして表舞台に出てきたのだ。

 メディアが「奇跡の武器(ヴンダーヴァッフェ)」や「ゲームチェンジャー」ともてはやした高額な西側兵器よりも、製造コストが極めて低い「安価な攻撃無人機(ドローン)」のほうが、結果として戦況を根底から変えてきたのだ。

 ロシア軍のような大国相手の消耗戦では、高性能なミサイル(1発数億円)を数十〜数百発送ったところで、戦線の一部を一時的に変えることはできても、戦争全体の勝敗を決めることは難しい。ロシア側もすぐにその兵器の戦術を学習し、電子戦(ジャミング)や防空網で対策する。

 ドローンがゲームチェンジャーとなった理由は、単に「敵を倒せるから」ではなく、「戦争の経済学(コスト)」と「戦術の前提」をひっくり返したからだ。1機わずか数千ドル(数十万円)の自爆ドローンや、ウクライナ国産の低コスト長距離ドローン(Blyskavkaなど)が、数億円〜数十億円のロシア軍の戦車、装甲車、防空システム、さらには後方の製油所を破壊している。1発数億円もする西側の「パトリオット」などの迎撃ミサイルを、ロシア側が放つ安価な「シャヘド」などの自爆ドローン(1機数万ドル)の迎撃に消費させられ、防空側の経済的破綻を引き起こす。ウクライナはこれに対抗するため、さらに安価な「1機1,000ドルの迎撃用ドローン(P1-SUNなど)」を開発して対抗しているわけだ。

 ウクライナは現在、西側の高額なミサイル供与を待ち続けるのをやめ、自国で「タウルス級の射程(500km以上)」を持つ長距離ドローンや巡航ミサイルの大量量産に成功している。ドイツのピストリウス国防相は記者会見で、「ウクライナは自国製の長距離ドローンやシステムでロシアのインフラに甚大な損害を与えており、もはやドイツのタウルスは必要としていない」と明言した。高額な西側の「奇跡の兵器」に頼る時代は終わり、安価で大量生産可能な無人機が戦場でその主導権を握ってきているわけだ。

 いずれにしても、ウクライナが国内で必要な武器、ミサイルを完全に自国生産できるようになるためにまだ時間が必要だろう。パトリオットのライセンス生産にゴー・サインが出たとしても実際に利用できるまでには数年かかる。その意味で、防空体制の強化という点では、ウクライナは欧米から強固な防空システムの支援を必要としている、という現実には変わらない。

ウクライナ軍指導部交代は「喧嘩両成敗」

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、オレクサンドル・シルスキー軍総司令官を解任し、その後任にミハイロ・ドラパテイ少将を指名したことを明らかにした。今回の軍トップ人事は、国民的人気のあったミハイロ・フェドロフ国防相が事実上解任されたことに抗議する国民のデモが国内各地で6日間にわたり行われたことを受け、ゼレンスキー大統領が軍の指導部交代に乗り出した結果だ。

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▲軍トップの交代を発表するゼレンスキー大統領、ウクライナ大統領府公式サイト、2026年7月21日

 ゼレンスキー大統領は21日、国民向けの演説で今回の軍トップの人事の経緯を説明し、「ミハイロ・ドラパティ氏をウクライナ軍の新たな総司令官に任命することを決定した」と報告。退任するシルスキー氏については「キーウ防衛、ハルキウでの反攻作戦、そしてクルスク作戦においてウクライナのために成果を上げた。私たちは長い道のりを歩んできた。ウクライナの防衛戦は続いており、すべての兵士は尊厳をもって遇されるべきだ。前線におけるウクライナの強固な態勢を築いたシルスキー氏とすべての兵士に感謝の意を表する。また、このビジョンを共有してくれたミハイロ・ドラパティ氏にも感謝する」と述べ、今回の軍トップの交代劇が円満に行われたことを強調した。

 ゼレンスキー氏はまた、「ミハイロ・フェドロフ氏とも会談を行った。私は彼に対し、国の技術力を結集し、その継続的な発展を確実なものにできるような、ふさわしい指導的地位を提案した」と述べ、「我々の願いは皆同じだ。それは敵を打ち負かし、前線での戦いとロシアへの圧力行使を通じて、ロシアを和平へと追い込むための条件を作り出すことだ」と説明、軍指導部の結束と連帯を呼び掛けた。

 今回の軍指導部の交代劇はミハイロ・フェドロフ前国防相の突然に解任から始まった。フェドロフ氏は今年1月に国防相に就任してまだ半年余りに過ぎなかった。フェドロフ氏は14日、オンラインサービス「テレグラム」上で、「国防相としてウクライナ国民に奉仕できたことは名誉だった」と述べ、解任されたことを明らかにしている。国防相だったフェドロフ氏とシルスキー軍総司令官との間に対立があったと言われた。

 フェドロフ氏は2019年の選挙でゼレンスキー氏のメディア戦略を主導し、その後、新設されたデジタル変革省のトップに就任した。長らくゼレンスキー氏の側近として知られてきた。国防相に就任してからは、混乱状態にある国防省の抜本的な改革に乗り出し、無人機によるロシア攻撃を主導。ロシアの長距離ドローンをより低コストかつ効果的に迎撃できるようになった。ロシア本土や占領下のクリミアに対するウクライナ軍の成果はフェドロフ氏の功績でもある。

 ゼレンスキー大統領は21日の演説の中で、フェドロフ氏に対し、国の技術部門を率いる「適切なポスト」を提示したと述べた。なお、エフゲニー・フマラ保安庁長官代行が暫定的に国防相の職務を引き継くことが決まっている。

 なお、新たに就任した43歳のドラパティ氏は「新世代のジェネラル」として軍内部や市民、改革派からも高い期待と支持を集めている。ロイター通信によると、新総司令官のドラパティ氏については「新世代の指揮官」として国民や退役軍人から好意的に受け止められているという。

 ちなみに、欧州の代表的な主要メディアは、戦時下の「政治危機」や「新旧世代の衝突」という見出しでウクライナ軍のトップ交代を報じている。

 ドイツ公共放送のドイチェ・ヴェレ( DW )News は、今回の人事刷新を「開戦以来、最大規模の軍指導部の権力闘争」と表現し、ソ連型軍事教育を受けた「戦争の英雄」シルスキー氏(守旧派)と、無人機戦を主導した「テックの神」フェドロフ氏の世代対立を詳細に分析。「国民の大多数がフェドロフ氏の更迭に反対し、激しい抗議を行ったことで、ゼレンスキー大統領は欧州指導者らからの『結束を維持せよ』という強い圧力に直面せざるを得なかった」と報じた。

 また、デモという世論の圧力が戦時下の決定を覆した(民主主義の証明)一方で、ゼレンスキー大統領の政治的基盤の弱体化や、文民統制の後退が懸念される、といった論調も聞かれる。

 いずれにしても、シルスキー氏は軍総司令官のポストから退任を強いられ、フェドロフ氏は国防相という立場から解任された。その結果を見る限りでは、ゼレンスキー氏の人事は、典型的な「喧嘩両成敗」だ。

キーウでは首相と国防相が頻繁に交代する

 ウクライナのゼレンスキー大統領は首相と国防相を変える意向だ。同国ではロシア軍のウクライナ侵攻以来、これまで首相は3回、国防相は4回目の交代となる。ゼレンスキー大統領は12日、ユリア・スビリデンコ首相を含む内閣改造を着手し、議会が14日大統領の改造案を承認した。大統領は「ウクライナは現在、重要な転換点に遭遇している」と述べ、「新たな課題と新たな任務」を内閣改造の理由に挙げている。ゼレンスキー大統領はこの機会を捉え、大規模な内閣改造を行う考えとも言われる。

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▲ゼレンスキー大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、ドローン取引への第一歩を示す文書に署名、2026年7月15日、ウクライナ大統領府公式サイトから

 ゼレンスキー大統領は12日、スビリデンコ首相に辞任を要請した。経済専門家である首相は、就任から1年たらずだ。40歳のテクノクラート(実務型官僚)の首相がこれほど早く更迭されるとは、本人を含め誰も予想していなかったことだ。同時に、ゼレンスキー氏はスビリデンコ氏に、駐米大使としてワシントンに派遣したい意向を打診したという。

 一国の首相ポストから駐米大使への人事は格下げを意味するが、ロシアと戦闘中のウクライナにとっては米国との関係は国の命運を左右するほど重要だ。特に、トランプ米大統領との関係は猶更そうだろう。

 ゼレンスキー大統領はトルコの首都アンカラで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会談でトランプ氏と対面会談し、キーウが願ってきたパトリオットの製造ライセンスの許可を得たばかりだ。米国との関係強化という観点からも英語も堪能で閣僚経験の豊富なスビリデンコ氏の役割が重要となる。スビリデンコ氏はトランプ氏の側近グループとも良好な関係を築いている。特にスコット・ベッセント米財務長官との関係は良好で、資源に関する協定の交渉においてホットな外交交渉を経験している。

 現地メディアによると、今回の内閣改造の直接的な引き金は、ウクライナの駐米大使であるオリハ・ステファニシナ氏の退任要望だ。同氏は、EU・NATO統合担当大臣を務めていた戦争初年度に行われた不動産購入をめぐる汚職捜査に関連していた疑いがもたれているという。昨年、ウクライナのメディアは、ステファニシナ氏の母親がキエフ中心部のアパートを市場価格を大幅に下回る価格で購入した、と報じた。ステファニシナ氏は正式に訴追される可能性がある。ロシアのプロパガンダにとって格好の攻撃対象となる。ステファニシナ氏は2025年8月にワシントンでの任務に就いたばかりだった。

 スビリデンコ首相の後任には現在国有エネルギー企業「ナフトガス」のトップを務めるセルヒー・コレツキー氏の名前が挙がっている。国営エネルギー企業ナフトガス(Naftogaz)のCEOである同氏は、アンカラでの会談に同席し、トランプ氏との写真をソーシャルメディアに投稿している。キーウでは、コレツキー氏は極めて有能な経営者と見なされている。特に、ロシアによる絶え間ない空爆という困難な状況下でナフトガスを効果的に運営してきたと評価されている。

 ゼレンスキー大統領は記者会見で、特に冬に向けた備えが進められている現状において、コレツキー氏はその任に最適であると評した。ロシアによるエネルギーインフラへの攻撃により、寒冷期に再びエネルギー供給の問題が生じることへの懸念が根強い。なお、内閣改造には議会の承認が必要となる。

 メディアが注目しているのはミハイロ・フェドロフ国防相の動向だ。今年1月に国防相に就任してまだ半年余りに過ぎない。フェドロフ氏は14日、オンラインサービス「テレグラム」上で、「国防相としてウクライナ国民に奉仕できたことは大きな名誉だった」と述べ、解任されたことを明らかにしている。
 フェドロフ氏の解任の背後には軍総司令官オレクサンドル・シルスキー氏との対立があるといわれる。さらに、徴集兵の強制動員をめぐる問題でも成果がないと批判されてきた。

 フェドロフ氏は2019年の選挙でゼレンスキー氏のメディア戦略を主導し、その後、新設されたデジタル変革省のトップに就任した。長らくゼレンスキー氏の側近として知られてきた。国防相に就任してからは、無人機によるロシア攻撃を主導し、国民の間でも人気があったが、国防省内の制服組との関係で問題があったのだろう。

 フェドロフ氏は、混乱状態にある国防省の抜本的な改革を目指してきた。同氏が主導した防空体制の改革により、ロシアの長距離ドローンをより低コストかつ効果的に迎撃できるようになった。ロシア本土や占領下のクリミアに対するウクライナ軍の成果はフェドロフ氏の功績でもある。

 ちなみに、35歳と若く、ウクライナ政界の「期待の星」と見られてきたフェドロフ氏は次期大統領選に出馬の意欲を示している。報道によれば、ゼレンスキー大統領は現内務相のイホル・クリメンコ氏を新国防相に指名する考えだという。

 ウクライナでは過去、首相と国防相が頻繁に交代してきたが、それなりの理由はある。国防相の交代劇では、軍改革を巡るトップ間の確執や軍事作戦の相違がある。首相の交代では、インフラ・エネルギー防衛での対応で迅速に体制を切り替える必要が出てくる。今回のコレツキ―氏の抜擢などはそうだ。忘れてならない点は、ウクライナは戦時下にあるという事実だ。ゼレンスキー氏にとって、戦時体制の硬直化を防ぐという狙いがあるはずだ。

ロシアのぺスコフ大統領報道官「戦争だ」

 ウクライナは13日夜、ウラル山脈に近いロシアのバシコルトスタン共和国にある製油所を攻撃した。同共和国のラディ・ハビロフ首長はテレグラムで、サラヴァトの工業地帯が大規模な攻撃を受けたことを認め、「ドローンの残骸の落下により、数カ所で煙が上がっている」と報告した。報道によると、石油処理施設で火災が発生した。サラヴァトは前線から1,400キロメートル以上離れた場所に位置している。石油会社ガスプロム・ネフチが所有するこの製油所は、年間700万トン以上の原油処理能力を有している。

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▲ロシア連邦大統領府の執務室で中国代表団との会談が行われた,2026年7月8日、クレムリン公式サイトから

 その直後、ロシア南部クラスノダール地方の危機管理チームは、アフィプスキー集落近郊にある石油精製所が再び攻撃を受けたと報告した。同チームはテレグラムのチャンネルで、施設で火災が発生したことを明らかにした。

 ここ数ヶ月、ウクライナはロシア国内の石油関連施設への攻撃を強化している。その影響は顕著に表れており、石油の処理量は過去20年以上で最低の水準にまで落ち込んでいる。多くのガソリンスタンドでは在庫が尽き、燃料の供給を制限しているところもある。ドライバーは給油のために長い列に並ばざるを得ない状況という。

 オーストリア国防省のマルクス・ライスナー大佐は13日、ドイツ民間放送ニュース専門局ntvとのインタビューで「ウクライナ軍がここ数週間から数ヶ月の間に戦果を挙げている。特に中・長距離ドローンによる攻撃での成功が顕著だ。これには米国企業のAI技術やCIA(中央情報局)の偵察データが活用されている」という。

 トランプ大統領は先週、ロシアのプーチン氏と電話会談を行い、その内容を「非常に良かった」と評していたが、カリーニングラードに配備されたロシアのミサイルの脅威に対抗するため、ドイツが米国の巡航ミサイル「トマホーク」を導入することに同意するなど、硬軟取り混ぜた政策を駆使している。

 トランプ氏はウクライナの最近の軍事攻勢を受け、プーチン氏が停戦交渉に応じる可能性が出てきたと考えているのかもしれない。マルコ・ルビオ米国務長官は、アンカラでのNATO首脳会議において、「管理されたエスカレーション(段階的緊張激化)」と表現している。米国は、遅くとも年内にはロシアを交渉のテーブルに着かせることを目指し、ロシアに圧力をかけているわけだ。それが功を奏するかどうかは今後の展開次第だろう。

 いずれにしても、ウクライナ軍の成果は測定可能であり、ロシアの燃料産業が被っている打撃は甚大だ。石油生産施設や埋蔵地は、修復不可能な被害を次々と受けている。プーチン大統領自身が先月28日、危機管理会議の招集を余儀なくされ、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官も、突如としてこの紛争を「戦争」と呼ぶようになった。ロシア側が追い詰められていることは明らかだ(「ロシア、燃料不足解消のため備蓄を放出」2026年7月2日参考)。

 ただし、ロシアの戦力が尽きた、ということはない。空爆の破壊力は依然として衰えておらず、オデッサが巡航ミサイルで攻撃されたばかりだ。ウクライナ側は現在、こうした攻撃の迎撃に極めて苦慮している。「パトリオット」ミサイルの弾薬が深刻に不足しているため、首都キーウの防衛体制も危うい状況にある。

 ところで、独週刊誌シュピーゲルなどの国際的なメディアによる調査から、中国とロシアの軍事・情報分野における協力関係が、これまで知られていた水準をはるかに超えて深化していることが確認された。これらの事実は、合同フォーラムから流出した文書に基づくものであり、中国側が積極的に関与している実態を明らかにしている。中国政府はこれまでロシアとウクライナ間の戦争では建前上は中立的な立場という姿勢をとり続けてきた。

 文書から判明した主な内容は、� ̄�宙空間を利用したインターネット網への標的化:中国の防衛専門家らは、ウクライナ軍にとって不可欠な衛星インフラである「スターリンク」を無力化するための具体的な計画や対抗策について議論してきた。こうした対抗策には、サイバー攻撃やネットワークの妨害などが含まれる。��秘密裏の軍事訓練:欧州の諜報機関による分析では、中国が自国の施設において、ドローン技術や電子戦に関するロシア兵への訓練を具体的に行っている。�7殻盈祥僉淵妊絅▲襯罅璽后棒宿覆陵⊇弌�中国は、ドローン用など軍民双方の用途を持つ重要な構成部品をロシアに継続的に供給している。

 ライスナー大佐によると、ロシアと中国は軍事的なパートナーシップを構築しており、その関係は、両国が認めている以上に緊密なものという。中国は、ロシアが戦争で敗北するのを防ぐために、ハイテク技術や能力をロシアに提供する一方、中国は、ロシアが新型兵器システムで得た経験を自国の軍の近代化に活用している。

 なお、中国の王毅外相は昨年、EUの外交政策責任者であるカヤ・カッラス氏に対し、ロシアがウクライナ戦争に敗北することは望まないと直接伝えている。ロシアの敗北は、米国が再び中国へと関心を向けるきっかけになるからだ。

 ちなみに、エストニアのマルグス・ツァフナ外相(49)はドイツのメディアネットワーク「RND」とのインタビューで、「プーチン氏は交渉のテーブルに着くのか、それとも劇的な最期を迎えるのか、現時点ではそのどちらのシナリオもあり得る。ロシア大統領への圧力が強まっており、プーチン氏の側近の間でさえウクライナ戦争に対する疑念が広がっている。オリガルヒ(新興財閥)の間でさえ、プーチン氏の戦争に疑問を抱く人が増えている。わずか1年前には多くの人が勝利を信じていたものの、現在は状況が一変している」と指摘している。

クリミア半島で非常事態宣言

 2014年以来、ロシアが併合してきたクリミア半島でロシア当局は26日、非常事態を宣言した。ウクライナ軍による度重なるドローン攻撃は、これまでロシアの補給路、エネルギーインフラ、軍用車両などを破壊してきた。クリミアでは停電が頻繁に発生しており、燃料の販売も大部分が停止している。

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▲ウクライナ復興会議の参加国代表らとの記念写真(前列中央がウクライナのスビリデンコ首相、ポーランドのグダニスクで、ウクライナ政府公式サイトから、2026年6月25日

 セルゲイ・アクショーノフ知事は26日、「クリミアでの非常事態宣言は経済的な問題への対処を容易にするためのものだ」と述べた。ウクライナは5月以来、エネルギー不足を引き起こす狙いで、クリミアへの供給を担うインフラや燃料輸送車を攻撃し続けている。同知事は「ロシア軍が半島を完全に防衛することは不可能だ」と述べた。

 同知事によれば、非常事態宣言という法的枠組みにより、「あらゆる重要部門の業務維持に関わる問題を、可能な限り迅速に解決することが可能になる」という。この措置は追加資金の拠出を円滑にすることを意図しており、理論上は地元住民に対する制限措置を課すことも可能にするものだ。

 ちなみに、ロシア国防省によると、26日未明にかけて、クリミアやモスクワ地域などの標的に向かっていたウクライナのドローン660機をロシアの防空部隊が撃墜した。

 現地からの情報によると、クリミアでは、ウクライナ軍の攻撃で停電が発生している。最近では、個人や社用車向けの燃料販売が停止された。それは、ロシアからの観光客で街やビーチが賑わうはずの休暇シーズンの真っ只中でのことだ。価格は高騰し、日常生活に深刻な支障が出ている。

 アクショーノフ氏は「クリミアは困難な時期に直面しており、燃料問題が最も深刻な課題だ。これがいつまで続くか正確には言えない。具体的な対応計画を公表することもできない。しかし、我々は対策を講じている」と指摘している。

 近隣のミコライウ州にあるキンブルン半島をめぐる状況も同様だ。全長約40キロメートルに及ぶこの半島は、黒海に注ぐドニエプル川の河口に向かって突き出している。ウクライナ軍は数週間にわたり、同地のロシア軍への攻撃を続けてきた。通信社ウクルインフォルムによると、2週間前にはパルチザン(抵抗運動組織)が、ロシア軍の連隊を撃退した。そして25日、戦略的に重要なこの半島にウクライナ国旗が掲げられている様子を捉えた画像がソーシャルメディア上で拡散された。

 報道によると、ロシアのヴォルゴグラード州のアンドレイ・ボチャロフ知事は27日、ロシアの主要都市ヴォルゴグラードに対し、夜間にウクライナによる攻撃があったことを認めた。同知事はテレグラムへの投稿で、少なくとも10人が負傷し、工場の生産施設が損傷したと述べた。ロシアおよびウクライナのメディアの未確認情報では、ウクライナの巡行ミサイルが兵器工場「チタン・バリリカディ(Titan-Barrikady)」を攻撃したという。

 ロシア軍は現在、前線でほとんど進展を見せていないが、プーチン大統領は戦争の目的を放棄するつもりはないという。ゼレンスキー大統領によると、ウクライナはロシアを交渉のテーブルに着かせるための努力を続けており、「プーチン氏の側近らに対し、首脳会談の実現や戦争の終結は可能であると伝えてきた」という。具体的な詳細については明らかにされていない。ベラルーシのルカシェンコ大統領は先般、ゼレンスキー大統領の特使らとの会談について報告している。外交面において、ルカシェンコ氏はプーチン氏の最も親密なパートナーだ。

 ロシアとウクライナの代表団は、米国による仲介の下、2月にアラブ首長国連邦(UAE)で戦争終結に向けた交渉を行ったが、具体的な成果はなかった。その後、イランとの戦闘もあって、米国はウクライナ紛争に関する仲介の取り組みを大幅に縮小した。

 ゼレンスキー氏は演説の中で、最近行われた捕虜交換を評価し、さらなる捕虜交換への期待を示すとともに、戦争の早期終結を改めて求めた。また、ロシア領内深部の標的を狙ったドローン攻撃については、モスクワが引き起こした戦争に対する正当な対応であると述べた。

 なお、ポーランド北部グダニスクで25日、ウクライナの復興支援に向けた国際会議が2日間の日程で開催された。エネルギーインフラの強靱化や投資の呼び込み、防衛産業の協力が議題。ゼレンスキー大統領に代わってウクライナから会議に参加したスビリデンコ首相が発表したところによると、ウクライナ復興を協議する「ウクライナ復興会議」で、各国代表らが総額100億ユーロ(約1兆8400億円)を超える計160件の合意文書に署名したという。

G7首脳「ウクライナへの揺るぎない支援」

 フランス東部エビアンで開催された先進7カ国首脳会談(G7サミット)2日目の16日午前、ウクライナのゼレンスキー大統領を招きウクライナ会議が開かれた。G7首脳は、ロシアの侵攻が続くウクライナに「揺るぎない支援」を表明する一方、ロシアに対しては石油・ガス分野への追加制裁を発表するなど、ウクライナ戦争終結に向けた取り組みを強化する意向だ。また、ウクライナへの長距離兵器と防空能力の供与拡大にも合意した。この支援拡大は、今年に入って戦場で健闘するウクライナ軍の新たな勢いを後押しすることが狙いだ。

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▲G7首脳会談でウクライナ問題を協議、2026年6月16日、ウクライナ大統領府公式サイトから

 イラン戦争の終結に全力を投入してきたトランプ米大統領も、ウクライナ戦争終結に向けて取り組む意向を表明した。ウクライナ問題では過去、ロシア寄りと受け取られてきたトランプ大統領とウクライナ全面支援を実施する欧州諸国との間で亀裂が見られたが、エビアン会議では欧米がウクライナ支援で結束することが再確認されたかたちだ。

 ウクライナ側の優先順位は防空ミサイルの増設と生産許可、冬季支援パッケージ、そしてロシアへの圧力強化だ。ゼレンスキー大統領は同日、トランプ大統領との個別会談を行い、弾道防弾システムやミサイルの生産ライセンス取得の可能性について協議した。会議では、インフラの物理的保護のためのエネルギー支援や追加資金についても取り上げられた。参加国は、戦争が続き不足が生じた場合に備えてウクライナにディーゼル、ガス、ガソリンを支援することで合意した。

 ゼレンスキー大統領は会議ではロシアの空爆後の写真やウクライナの緊急サービスが火災を消し止めている様子を紹介。G7指導者たちはロシア軍のウクライナの民間インフラ、キエフ・ペチェルスク修道院、市民への攻撃を非難した。ゼレンスキー氏は、最近ロシアの影の艦隊からタンカーを拿捕した英国に感謝の意を表し、「他のG7諸国も同様の措置を計画している。我々皆が戦争を止めなければならないと信じている。プーチン大統領だけは戦争を終わらせたくないのだ。強制しても戦争を終わらせるためには、制裁を通じてロシアに圧力を行使することでわれわれは一致している」と説明した(ウクライナ大統領府サイト)。

 トランプ大統領は、現在停止中の対ロシア石油制裁の再開を示唆した。しかし、具体的な時期は明言しなかった。トランプ大統領が単に制裁を現状維持に戻すのか、それともロシアに打撃を与えるための追加制裁を検討しているのかは不明だ。ちなみに、トランプ氏はG7サミット会談前にもロシアのプーチン大統領と電話会談をしたことを明らかにし、「ウクライナ問題でのプーチン氏の考えには変化はなかった」と説明、プーチン氏には戦争終結に向けた交渉を開始するよう改めて呼びかけたと述べた。

 ゼレンスキー大統領と個別会議したメルツ独首相はキエフの最近の軍事的成功を踏まえ、「ウクライナ戦争において外交の窓が徐々に再び開くかもしれない」と希望を表明し、トランプ米大統領の対応について「非常に協力的だった。欧州と米国が戦争終結に向けてあらゆる努力を尽くすだろう」と強調した。メルツ氏によれば、今週末のEU首脳会議で新たな制裁措置についても協議する予定だ。ロシアに対する21番目の制裁パッケージだ。

 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は戦争終結に向けた取り組みが新たな勢いを得るとの見方を示し、「ウクライナにとって潮目が変わりつつある。ウクライナは勇敢に戦線を維持している一方、ロシアの疲弊はますます明らかになっている。2026年の状況は2025年とは大きく異なるだろう」と述べた。

 また、スターマー首相はロシアに対する追加制裁の目的について、「ロシアの戦争機構を停止させ、欧州大陸に平和を取り戻すことだ」と述べた。英国では70件の新たな制裁が計画されている。これらの制裁は、ロシアが石油・ガス輸出制裁を回避するために利用している「影の艦隊」に属するタンカー20隻などを対象とする見込みだ。カナダのカーニー首相も同様にロシアへの追加制裁を発表した。カナダ政府によると、ロシアの「影の艦隊」に関与する160以上の組織を対象としている。制裁対象にはロシアの兵器産業と偽情報工作に関与する組織も含まれる。

 G7首脳会談のホスト国、フランスのマクロン大統領は、今回のサミットを「戦略的覚醒の瞬間」と表現した。なお、メルツ首相をはじめとするサミット参加者はトランプ大統領がサミットでウクライナ問題に対して前向きな姿勢を示したことを歓迎している。トランプ氏は「一つのこと(イラン戦争の終結問題)が終わった今、次のことに集中し、それを成し遂げることができる」と述べている。

完全自律型ドローンが戦場を制覇する時

 衝撃的なニュースが流れてきた。ドイツ民間放送ニュース専門局NTVが12日、キーウからの情報として報じたところによると、ウクライナは前線で人工知能(AI)搭載完全自律型ドローンの試験を実施し、ドローンが自律的に人を殺害したという。ロシアとウクライナは戦闘用ドローンへのAI搭載技術の開発・配備をめぐる技術競争を繰り広げてきた。AIによって人の操縦なく自律的に人を殺傷する無人機は技術的には以前から製造可能だった。専門家によると、ウクライナの最前線ではまだそのような無人機は実用化されていないという。

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▲特別軍事作戦に参加する軍人との会合に参加したプーチン大統領、クレムリン公式サイトから,2026年6月12日

 この情報は、英国の科学雑誌「ニュー・サイエンティスト」が、試験に技術を提供したドローンメーカーのアレクサンダー・コハノフスキー氏の発言を引用して報じた。「我々は試験を行った。大規模に使用したことはない。この実験は、ウクライナ軍の反攻作戦の一環として、約2年前にバフムートとチャシフ・ヤール近郊で、名称不明の軍事部隊によって実施された」という。実験後、ウクライナ軍は調査のため、有人ドローンを現場に派遣し、自律型ドローンが兵士数名とトラック1台を破壊したことを確認している。

 通常、自律型ドローンとは、人間のコントローラーによる操縦を必要とせず、AIや各種センサーを駆使して自ら周囲の状況を判断し、飛行・タスク実行を行うドローン。あらかじめ設定されたルートを飛ぶ「自動飛行」とは異なり、障害物の回避や目標物の追跡、状況に応じた経路の再計算をリアルタイムで独自に行える。ウクライナが実験した無人機はさらに一方進み、無人機自らの判断で殺害できる完全自律型ドローンだ。

 報告書によると、内部コードネーム「ターミネーター」と呼ばれる10機のクアッドコプター型ドローンが使用された。これらのドローンは、前線に向かって飛行し、約10分で3〜5キロメートルを移動した後、「ターミネーターモード」に切り替えるようにプログラムされていた。それ以後はAIモデルが引き継ぎ、自律的に標的を探し出し、攻撃を行った。

 人工知能は戦車や接近するシャヘド・ドローンを確実に探知できるが、ロシア兵とウクライナ兵、あるいは戦闘員と民間人を区別することはできない。また、自律型システムは、電波妨害下でも正確に攻撃できるメリットがある反面、無人機自身が命を自律的に奪うことに対し、倫理的な課題が出てくる。

 米国のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)の元ウクライナ政府顧問ケイト・ボンダー氏は、テクノロジー誌「IEEE Spectrum」で、「軍隊が戦闘において完全に機械に依存するようになるまでには、おそらくあと10年から15年かかるだろう」と予測している。

 AIの軍事利用は増加の一途を辿っている。年初以来、ウクライナは占領地におけるロシアの補給路へのドローン攻撃を強化している。兵士がドローンを目標地域まで操縦するが、その後はAIによって選択された目標を攻撃する。

 IEEE Spectrum誌によると、ウクライナ企業は命中率を高める目的でドローンに自律モジュールを後付けしている。一方、ロシアはネットワーク接続され、サーマルイメージングカメラを搭載したインテリジェントなShahedドローンへの依存度を高めている。

 現在、前線における人的被害の75〜85%はドローンによるものだという。ウクライナは2025年までに400万台の無人ロボットシステムを生産したと推定されており、2026年には500万台から600万台に達する見込みである。この数字には、グレーゾーンで運用される地上ロボットや、航空戦を補完するドローンボートは含まれていない。

 兵力不足を解決し、人的犠牲を最小限に防ぐために、無人機、ロボット兵器が今後、戦場で益々重要な役割を果たすことは間違いない。それに伴い、戦争の仕方、戦略に変化が出てくることは必至だろう(「ロボット軍用犬が戦場に登場する時」2024年6月1日参考)。

 国連は、ウクライナで5月に民間人の死傷者数が2022年4月以来最多を記録したと発表した。人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書によると、5月には少なくとも274人が死亡、1,763人が負傷した。これは、死者191人、負傷者865人が記録された2025年5月と比較して93%の増加だ。報告書によると、死傷者の45%はロケット弾やドローン攻撃によるもの。前線付近では、短距離ドローンが民間人の死傷者の主な原因となっている。

 13日早朝の外電によると、ロシア南部でウクライナのドローンによる攻撃があり、1人が死亡、3人が負傷した。クラスノダール地方のベニアミン・コンドラティエフ知事は「ウクライナのドローンがテムリュク地区を攻撃した」と述べた。この攻撃により、ロシアとクリミア半島を隔てるケルチ海峡に近いアゾフ海沿岸のテムリュク地区にある港湾ターミナルが被害を受けた。

 ウクライナ軍はここにきてロシアの石油産業に対するドローン攻撃を反撃手段として用い、モスクワへの圧力を強めてきた。ロシア当局は最近、ガソリンの流通を制限している。

 なお、NTVが12日に報じたところによると、ロシア兵士たちはプーチン大統領に対し、ウクライナのドローンによる脅威の高まりについて直訴している。兵士たちは、ウクライナ軍が使用するドローンによって引き起こされる問題について詳細に報告したという。ウクライナ軍はスターリンク衛星通信ネットワークを利用しているが、ロシアは年初にこのネットワークへのアクセスを失った。プーチン大統領は、モスクワの防衛強化を指示した。
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