ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

イタリア

メローニ伊首相の“華麗な変身”

 選挙戦では各政党は選挙プログラムを発表する。有権者はその公約をみて投票する。ドイツのショルツ政権は2021年12月8日、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党から成る連立政権を発足させたが、それに先立ち、3党は同年11月24日に合意した連立協定(178頁)を公表し、任期の4年間で優先して取り組む政治課題をまとめた。

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▲日伊首脳会談の臨むメローニ首相(2023年5月18日、G7広島サミットで、首相官邸公式サイトから)

 そのショルツ連立政権は発足から中間点に差し迫ってきた。ショルツ首相は8月末、「3党連立政権は政権発足以来、既に公約の半分以上を実施した」と豪語し、メディアの世論調査では支持率が低迷な連立政権だが、実際は「実行する政権だ」とアピールした。例えば、ショルツ政権は脱原発政策を今年4月に成就し、大麻の部分的解除を実施したばかりだ。

 イタリアではジョルジャ・メローニ首相の率いる極右政党「イタリアの同胞」を中心とした右派連立政権が発足して9月22日で1年目を迎えた。ところで、メローニ首相の与党「イタリアの同胞」は選挙戦では反欧州連合(EU)政策、難民殺到防止に海上封鎖を主張、外交ではロシア寄りの姿勢をみせ、多文化主義には反対し、左翼的文化価値観に対して厳しく批判してきたが、政権発足後、親EU政策を展開させる一方、難民対策でもEUと連携してチュニジアと難民対策で協調するなど、選挙前の強硬な政治路線は巧みに修正されてきている(「チュニジアは“第2のトルコ”に」2023年7月18日参考)。

 対EU政策でも、「わが国はこれまでドイツやフランスの利益を支持するだけで終わり、わが国のアイデンティティを擁護する姿勢が乏しかった。巨大な債務、低賃金、難民問題、これらの問題に対してわが国の指導者は欧州が悪いからだと説明してきた。しかしイタリアに必要なものは本当の愛国心だ。わが国を守る精神だ」と主張してきた。そのメローニ首相はここにきてEUとの協調政策を模索し出している。

 メローニ女史は2012年にネオファシズム政党と呼ばれる「同胞」(Fratelli d'Italia)を結成し、14年に党首に就任。10年前の選挙では得票率1・96%に過ぎなかったが、昨年9月の総選挙で26%を獲得した。

 メローニ首相は1996年、「イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニはいい指導者だった」と堂々と語るなど、ネオファシストと受け取られた。メローニ氏が首相になった時、バイデン米大統領は「イタリアの民主主義が後退する」と懸念を表明していたほどだ。そのバイデン大統領は7月末、ホワイトハウスでメローニ首相と会談し、「われわれは友達になった」と言っている。

 ロシア寄りだったメローニ首相はウクライナ戦争勃発後、ウクライナを支援するなど欧米諸国と歩調を合わせ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国からも人気を呼んでいる。また、対中政策では、イタリアは2019年に中国の習近平国家主席が提唱した新シルクロード「一帯一路」にG7メンバーとして初めて参加したが、米国などから非難を受けてきた。しかし、クロセット国防相は7月30日、「同プロジェクトには失望した」と表明するなど、メローニ政権は「一帯一路」からの離脱を検討中といわれる。メディア情報によると、「12月までに決断する」という。

 政権発足後、メローニ首相の口からはムッソリーニといった名前が飛び出すことはないばかりか、自身が結党した政党メンバーに対して、過激な発言を慎むように要請、現在は「国民的保守運動を推進していきたい」と述べ出している。「メローニ女史にとって極右政治という衣服はもはや着心地が悪いのだ。世界の政治舞台で華やかに動き回りたくなったのではないか」と冷静に受け取る声も聞かれる。

 選挙公約を破棄すれば、有権者には激怒され、メディアからも言語不一致として叩かれるものだが、メローニ首相に対する国民の評価はむしろ改善し、「イタリア初の女性首相のメローニ氏は長期政権を目指している」など好意的な論調が聞かれ出している。

 イタリアでは、終戦後に誕生した共和国を第1共和国とすれば、1994年シルビオ・ベルルスコーニ氏が率いる中道右派「フォルツァ・イタリア(FI)」政権を第2共和国、そして第3共和国はメローニ首相の「同胞」主導のもとに始まる、といった予測すら聞こえるほどだ。

 メローニ首相は公約を無視してというより、捉われない新しい政治スタイルを目指しているのだ。独週刊誌シュピーゲル9月16日号は、5ページに渡ってメローニ政権発足1年目を特集していたが、その特集の見出しは「メローニ・モデル」(Das MeloniーModell)だ。シュピーゲル記者は、「メローニ首相は以前はハンガリーのオルバン首相を模範としてきたが、現在はオルバン主義から離れ、新しい欧州右派の独自のメローニ・モデルを目指している」と述べている。

イタリア警察の捜査力と執念は凄い

 イタリア警察の捜査力、犯人をどこまでも追跡するその執念は並大抵ではない。2014年以来、逃走中のマフィアがユーチューブ(You Tube)の有名な料理番組の動画に登場していたところ、警察官に逮捕された話はこの欄でも紹介したが、今回は2002年以来、同じく逃走中で行方不明のシチリアのマフィアをグーグル(Google)のストリートビューで見たイタリア捜査官が「彼だ!」と分かって2年間余りの慎重な調査後、昨年12月、スペイン警察と連携して逮捕したのだ。

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▲イタリア国家警察(ウィキぺディアから)

 前者はユーチューブの動画、後者はグーグルのインターネット地図で偶然、捜査官が長い間、行方を追っていたマフィアを見つけ出したのだ。前者は行方不明になって7年が経過している。両者ともラッキーだったともいえるが、捜査官が行方不明になったマフィアを必ず逮捕するという執念がなければ、幸運を引き寄せることはできない。後者の場合、行方不明から13年以上の年月を経ている。逃亡中のマフィアもをその間、外貌を変えているだろう。にもかかわらず、イタリア捜査官が「彼だ」と識別した眼力は驚くべきものだ。

 まず2件の事件を簡単に紹介する。2014年、オランダにコカインを密輸していた容疑で警察官に追及されていたイタリア・マフィアのンドランゲタ(Ndrangheta)メンバー、ビアルト容疑者(Marc Feren Claude Biart)はその直後、姿を消した。インターポール(国際刑事警察機構)が懸命にその行方を追ったが、捜査は迷宮入りの様相を深めていた。ところが、ひょんなことからマフィアの潜伏先が判明したのだ。その貴重な情報を提供したのは、なんとユーチューブの料理番組だった。

 イタリア人のビアルト容疑者の趣味は料理で、イタリア料理を作る事が大好きだった。彼はドミニカ共和国に逃げ、そこで5年余り静かな潜伏生活を過ごしてきたが、時間があるので相棒の女性と共にユーチューブで料理の動画を流すことにした。もちろん、その動画で顔を見せるわけにはいかないから、料理する手だけを撮影して放映した。

 ビアルト容疑者はユーチューブの評判がいいこともあって、料理番組に夢中になっていた。その矢先、イタリア警察は料理人となって潜伏中の彼を逮捕したのだ。動画ではマフィアは顔を見せていない。どうして警察側は身元を確認できたのかだ。その疑問を解くのはマフィアが手に彫っていた入れ墨だった。料理番組の動画では料理人の顔は映らないが、手は見える。その手に彫っていた入れ墨が映っていたのだ。そして、それに見覚えのある関係者がイタリア警察に連絡したことから、2014年から姿を消してきたビアルト容疑者の在処が分かり逮捕されたわけだ。入れ墨が事件の解決に大きな役割を果たしたのだ(「伊マフィアと入れ墨と料理の動画」2021年4月2日参考)。

 次の事件では、イタリア捜査官はグーグルマップのストリートビュー画像を見て、行方不明のマフィアだと判断した。スペインのガラパガールの町で果物と野菜の屋台の前で食材を探している男がその行方を追っていたマフィアだと直感し、スペイン警察と連携をとって調査を進め、マフィアがマドリードに潜伏していることを掴んで、昨年12月17日、スペイン警察と連携して犯人を逮捕したのだ。

 地元のローカル紙「ラ・レプッブリカ」によると、町にはシチリア料理を提供するレストランがあり、そのレストランはソーシャルネットワークにシェフの写真を投稿していた。あごの傷跡から、捜査官はそれが指名手配者であるとすぐに分かったという。マフィアは過去、殺人や麻薬密売などを行い、有名なコーザノストラ(Cosa Nostra)のカウンター組織であるシチリア・マフィア「スティッダ」(Stidda)に所属していた。彼は一時、逮捕されたが、2002年、ローマの悪名高い刑務所レビビアから逃走した。イタリアのメディアによれば、犯人は終身刑だったという。

 犯人捜査で大きな役割を果たしたのはグーグルのストリートビューだ。当方にはこんな経験がある。ある時、息子が「パパがこんなところに写ってるよ」と言ってスクリーンショットを送ってきた。理髪店を探すためにグーグルのストリートビューを見ていたという。すると、緑色のリュックサックを背負ったアジア系男性が歩いている。「すぐパパだと分かったけど、偶然にしても余りにもおかしくて笑ったよ」という。当方はきっと近くの店で何かを買って帰るところだったのだろうが、写されているとは我知らず、だ。リュックサックの男はまさに当方だった。

 だからイタリア警察が20年前に逃走したマフィアをグーグルのストリートビューで見つけたという話を読んだとき、今やどこにいても、いつ誰に見られているか分からない時代なのだと感じた次第だ。

 奇しくも、2人のマフィアにとって、好きな「料理」が命とりとなった。イタリア人の人生哲学は「ドルチェ・ヴィータ」と呼ばれ、人生を楽しむことを大切にする。ビアルト容疑者の趣味は料理で、イタリア料理を作る事が大好きだった。別のマフィアはシチリア料理店を経営していた、といった具合だ。逃走中のマフィアたちは、捜査官の追及とともに、動画をアップしたり、ストリートビューに映り込むことを警戒し始めたことだろう。

「母の日」と奇跡のテノール歌手の話

 9日は「母の日」だ。世界各地で子供たちからお祝いの言葉やカーネーションなどの花を受け取る母親が多いことだろう。母親を早く亡くした人にとっては生前の母親の思い出に浸る日となるだろう。

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▲「母の日」にプレゼントされるカーネーション(ウィキぺディアから)

 「母の日」といえば、当方は直ぐにユダヤ人の名言を思い出す。「神は常に貴方の傍にいれないので母を貴方のもとに遣わした」という言葉だ。正直言って驚いた。旧約聖書の神は厳格な父親のような存在だが、その旧約の神を信望するユダヤ人が神に母親のような役割があることを指摘しているからだ。旧約時代の神は戒めに従わない人間を罰し、他民族によって滅ぼさせてきた。モーセの「出エジプト」時代を思い出しても、神は異教の教えを許さなかった。先のユダヤ人の名言は、ユダヤ民族の心の中に母性的神、愛し、許す神を求めていく信仰が芽生えていったことを示唆しているのだ。日本のカトリック教作家・遠藤周作は生涯、母親のような神を求めていたように、ユダヤ人はキリスト教が生まれる前から神の中に母性的神性を模索してきたのかもしれない。

 「母の日」の2日前、アマゾン・プライムのビデオで世界的テノール歌手アンドレア・ボチェッリの自伝小説の映画「ミュージック・オブ・サイレンス」(監督マイケル・ラドフォード)を観た。2017年に公開された映画だ。

 当方は音楽の都ウィ―ンに久しく住みながらクラシックには疎いが、イタリア人の盲目のテノール歌手ボチェッリの名前は知っていた。奇跡のテノール歌手と呼ばれるボチェッリのアルバムは1億枚以上売られているという。新型コロナウイルスの感染で自宅にいる時間が多くなった当方はひょんなことからCarly Paoliが出演する「Music for Mercy」のライブコンサートのビデオでボチェッリが歌っているのを聞いて、凄い歌手だと改めて感じた。

 1時間55分の映画はボチェッリの自伝小説に基づいたもので、イタリアの美しいトスカーナ地方の風景を背景に、アモス(映画の中ではアンドレアではなく、アモスと呼ばれている。ボチェッリ自身、最もトスカニー的な名前と述べている)は1958年9月に生まれた。母親は赤ん坊のアモスが激しく泣くのをみて「何かおかしい」と気が付き、「赤ん坊は泣くものだ」という夫の言葉を振り切って病院に行く。そこで視力が脆弱だと分かる。しかし、アモスはまだ光は見え、両親のシルエットは見えた。その数年後、アモスは12歳の時、光が見えなくなったことに気が付き、両親に告げる。母親はアモスの傍に駆け寄って嗚咽する場面は映画の中で最も心が動かされるシーンだ。

 叔父がアモスにはオペラ歌手の才能があると気が付き、地元のコンサートに参加させた。アモスは優勝したが、オペラ批評家から「貴方にはオペラの才能はない」と指摘され、失望。その後、弁護士になる為に法学を学び出す。さまざまなハンディがあったが、友人や叔父の助けを受け、無事卒業することができた。

 アモスは当時、学費を稼ぐためにミュージック・バーでピアノを弾き、歌っていたが、オペラ批評家から言われた「オペラ歌手として才能がない」という言葉を忘れることができず、少々自暴自棄になっていた。両親からの自立を願っていたアモスはある日、ピアノの調律師から近くにスペイン人の歌の先生がいることを聞く。アモスはそこで生涯最良のマエストロ(伊巨匠、師)に出会い、歌の指導を受けることになる。師(映画「怪傑ゾロ」役のアント二オ・バンデラスが演じている)はアモスに「テノール歌手となれるためには規律ある生活をしなければならない」と諭す。紆余曲折があったが、イタリアの有名ポップ歌手ズッケロと一緒に共演できるチャンスを得て、世界的なテノール歌手となっていく。

 ボチェッリの話を聞くと、日本の盲目の天才ピアニスト辻本伸行氏を思い出す。彼はボチェッリとは違い、生まれた時から全盲だった。もし見えたら何を見たいですかと質問された時、同氏は「お母さんを見たい」と答えたという。ボチェッリは目が見えなくなって失望していた時、母親が慰めに来る。母親は「お前は何も見えないのか」と寂しく聞くと、アモスは「お母さんが傍に立っているのを知っているよ」と答える。

 叔父はアモスに「音楽は人を幸せにする」と述べ、音楽の道に行くように説得する場面は印象的だ。マエストロはアモスに「君は(目が見えないから)周囲の動きに左右されない。だから喋らず、心の声に集中し、そこから生まれる声で歌え」と述べている。同映画は英語では「ザ・ミュージック・オブ・サイレンス」と呼ばれているのも頷ける。アンドレア・ボチェッリの歌声は心の中のサイレンスから生まれてきたものだろう。放浪の民、ユダヤ人には神が遣わした母親が傍にいるように、ボチェッリは視力を失った後も母親のシルエットをみていたのだろうか。

 今日は、世界の母親に感謝を贈る日としたいものだ。

伊地方検察がWHOを告発した内容

 イタリア北部ベルガム検察当局は、スイスのジュネーブに本部を置く世界保健機関(WHO)とラニエリ・ゲラ前事務局長補(現テドロス事務局長特別顧問)を中国武漢発の新型コロナウイルスの初期対応でイタリア政府に虚偽の情報を提供した疑いで告発している。 スイス放送協会のウエブサイト「スイス・インフォ」のニュースレター(4月22日)が同国日刊紙ル・タン(4月13日)の情報として報じた。

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▲世界保健総会風景(WHO公式サイトから)

 スイスインフォによると、「日刊紙ル・タンが入手したベルガモ検察局の国際司法共助の要請書によると、イタリアが(新型コロナの流行に対して)どれほど準備不足だったかを隠ぺいするために伊政府とWHOが共謀していたことが明らかになっている」というのだ。

 全ての感染症の対応には初期の対応が最も重要だ。それを間違えれば、多くの死者、感染者が増える一方、迅速に対応すれば「イタリアにパンデミックへのより良い備えがあれば、新型コロナ第1波で少なくとも1万人の命を救うことができたはずだ」(イタリア軍ピエル・パオロ・ルネリ元司令官)ということになる。米ジョンズホプキンス大の集計によると、4月30日現在、世界で1億5000万人が感染している。

 中国共産党政権が武漢発の新型コロナウイルスの初期の感染状況、患者のデータを迅速に公表していたならば、現在のような多くの人々が犠牲になることなく終わったかもしれない。中国共産党政権の初期の対応は「感染症によるジェノサイド」といわれても仕方がない。

 スイス日刊紙ル・タンの報道によれば、昨年5月13日、伊ベネチアのWHO事務所に所属するイタリア人研究者フランチェスコ・ザンボン氏を筆頭に欧州の科学者11人が「前例のない挑戦、新型コロナウイルス感染症へのイタリアの初期対応」と題した報告書を発表したが、WHOは24時間後にその報告書を撤回したというのだ。

 102頁に及ぶ報告書が撤回された理由として、「WHO欧州地域事務局が早まって発表した地域的な文書だ。報告書に記載されたデータや情報には、確認されていなかったため、不正確な点や矛盾点がある。発表するべきではなかった」と弁明しているが、実際は、報告書がイタリア政府の初期対応の遅れを指摘する一方、WHOとイタリア政府がその報告書の内容を隠蔽するため連携していたのだ。ゲラ氏は2014年から17年の間、伊保健省予防局の局長を務めた人物だ。ゲラ氏の局長時代の責任も問われることになりかねないはずだ。

 ゲラ氏は今も、WHOのテドロス事務局長の特別顧問を務めている。テドロス事務局長の関与は現時点では不明だが、5月に開催予定の世界保健総会で加盟国から動議が出てくるかもしれない。

 報告書の作成者の1人、伊ベネチアのWHO事務所に所属するイタリア人研究者フランチェスコ・ザンボン氏は、「問題となっているのは世界が必要としているWHOという組織だ。加盟国に対するWHOの独立性の問題だ。なぜなら、我々の報告書のように、ある政府(この事件ではイタリア)の気分を損ねるという理由で報告書が修正されなければならないとしたら、中国についてはどうかを想像してほしい」と述べている。

 感染症の場合、その発生源の検証と共に、重要な問題は感染初期時期の検証だ。中国当局は昨年1月20日、ヒトからヒトへの感染を認め、同23日に武漢市でロックダウン(都市封鎖)を実施し、初の感染確認は2019年12月8日と主張してきたが、欧米側の情報によると、2019年秋に新型コロナが既に発生していたという報告が多数ある。

 もし「2019年秋説」が事実とすれば、武漢市が閉鎖される前に多くの感染者が国外に旅行していた可能性が考えられる。イタリア高等衛生研究所によると、同国北部の2都市に新型コロナウイルスが2019年12月に存在していたことが、同研究所が行った下水調査で判明した。ミラノやトリノの下水から2019年12月18日に採取されたサンプルに新型コロナウイルス「Sars-Cov-2」の遺伝子の痕跡が発見されたからだ。イタリア北部ロンバルディア州で新型コロナが爆発的に感染する数カ月前に同国で新型コロナが広がっていたことになる(「Covid-19の最初の感染時期を探れ」2021年1月31日参考)。

中国武漢発の新型コロナが感染拡散した直後、テドロス事務局長は昨年1月28日、中国北京を訪問し、習近平国家主席と会談、中国の新型コロナ感染の対応を評価し、称賛した。親中国寄りの事務局長の姿勢に批判の声が高まったことはまだ記憶に新しい。

 また、WHOは今年1月末から2月にかけ、中国武漢に現地視察団を派遣したが、視察後の記者会見では「武漢ウイルス研究所」からのコロナウイルス流出説をあっさり否定し、「動物から中間宿主を通じて人に感染した」可能性や、「冷凍食品を通じて外部から侵入した」という中国側の主張に理解を示すなど、調査結果は明らかに中国側寄りだった(「WHO『武漢現地調査』の成果は?」2021年2月13日参考)。

 スイス日刊紙の上記の内容はWHOの信頼性を一層揺るがす出来事だ。その張本人が依然、WHOの指導者の1人として勤務しているのだ。WHOの抜本的な刷新が急務だ。

 (同コラムはスイスインフォの記事に基づく。詳細な記事内容はスイスインフォ日本語版で入手可能)。

伊マフィアと入れ墨と料理の動画

 世の中にはちょっと考えられないような事件や出来事が生じるものだ。以下は、4月1日エイプリルフール用の話ではない。イタリアのマフィアの話だ。2014年、オランダにコカインを密輸していた容疑で警察官に追及されていたイタリア・マフィアのンドランゲタ(Ndrangheta)メンバー、ビアルト容疑者(Marc Feren Claude Biart)はその直後、姿を消した。インターポール(国際刑事警察機構)が懸命にその行方を追ったが、今月に入るまで分からなかった。事件は迷宮入りの様相を深めていた。

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▲「刺青」をしているところ(マシーン彫り)=ウィキぺディアから

 ところが、ひょんなことからマフィアの潜伏先が判明したのだ。その貴重な情報を提供したのは、なんとユーチューブ(You Tube)の料理番組だった。独の代表紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)電子版が先月末報じた実話だ。

 イタリア人の人生哲学は「ドルチェ・ヴィータ」と呼ばれ、人生を楽しむことを大切にする。イタリア人のビアルト容疑者の趣味は料理で、イタリア料理を作る事が大好きだった。彼はドミニカ共和国に逃げ、そこで5年余り静かな潜伏生活を過ごしてきたが、時間があるので相棒の女性と共にユーチューブで料理番組の動画を流すことにした。もちろん、その動画で顔を見せるわけにはいかないから、料理する手だけを撮影して放映した。

 ビアルト容疑者(53)がユーチューブの評判がいいこともあって料理番組に邁進していた。その矢先、イタリア警察は料理人となって潜伏中のマフィアを逮捕したのだ。

 動画ではマフィアは顔を見せていない。どうして警察側はマフィアの身元を確認できたのかだ。その疑問を解くのはマフィアが手に彫っていた入れ墨だ。料理番組の動画では料理人の彼の顔は映らないが、手は見える。その手に彫っていた入れ墨が動画の中に映り込んでいたのだ。そして、その入れ墨に覚えのある関係者がイタリア警察に連絡したことから、2014年から姿を消してきたビアルト容疑者は逮捕されたわけだ。入れ墨が事件の解決に大きな役割を果たしたのだ。

 入れ墨といえば、米FOX制作のサスペンスドラマ「プリズン・ブレイク」(ウェントワース・ミラー主演)を思い出す読者もいるだろう。覚えのない殺人で死刑囚になった兄を救う為に銀行泥棒を演じて兄が収監されているフォックスリバー刑務所に入り、兄を救い出すという話だ。その前に、主人公の弟は脱獄するために刑務所の構造やその逃亡先まで詳細に描いた入れ墨を背中にする。その入れ墨に秘められた情報をもとに脱獄する話だ。そこでも入れ墨が大きな役割を果たしている。

 このコラム欄でも欧州の入れ墨ブームについて書いたことがある(「ドイツの若い女性は『刺青』がお好き」2019年7月4日参考)。独週刊誌シュピーゲル(2019年6月22日号)によると、ドイツでは2017年の段階で、5人に1人が自分の体に刺青(タトゥー)を入れ、25歳から34歳の女性に限ると、その割合は2人に1人となるという。記事を読んで正直驚いた。刺青は欧州社会では市民権を完全に獲得しているわけだ。

 オーストリアでもドイツと同じ傾向がみられる。16歳から30歳までの若い世代では25%が刺青をしている。同国には600人以上のプロの刺青師がいる。そのほか、ハンガリーやチェコから不法な刺青師が入ってきている。

 考古学によると、刺青の歴史は人類歴史と同じように長い。刺青は自身が所属している社会、グループを表示する一方、それに対して忠誠を表明する手段のように受け取られていたという。現代の若者は愛する人の名前を腕や胸に刺青する場合が結構多い。刺青することで変わらない愛を自分の体に表現するわけだ。

 体中に刺青をしている元プロサッカー界の英雄デビッド・ベッカムを思い出してほしい。当方が好きな米CBS映画シリーズ「ハワイ・ファイブオー」の主演アレックス・オローリンも両腕に刺青をしている。有名人の刺青に刺激されて、体に刺青をする若者は増えてきた。

 欧州では多くの若い世代が一種のモードとして体に刺青を入れるが、その刺青を消すための方法もレーザー除去から皮膚移植など多種多様に出てきている、早まって刺青をしたが、その刺青が重荷となってきたので消したい、と刺青師に泣きつく若者もいるという。

 先のイタリアのマフィアの話に戻る。多分、彼は手の入れ墨で自分の居所が割れるとは考えていなかったはずだ。警察官が自分の潜伏地に現れた時、驚いただろう。貴重な情報を提供した入れ墨がどのようなものであったかについては、FAZの記事は何も説明していない。多分、プリズン・ブレイクの主人公のような奇抜なデザインだったはずだ。

ベルガモ市民「救急車のサイレン怖い」

 イタリア北部ロンバルディア州のベルガモ(Bergamo)市に住む親戚の子供が夏休みを利用して1週間ほどオーストリアのニーダーエステライヒ州にいる息子夫婦を訪ねてきた。10歳の男の子ダビデ君だ。来る時と帰りの迎えの時は母親が連れ添った。シングル・マザーの彼女は、息子に夏休みの楽しみを作ってあげたいと計画し、実妹が住むオーストリアの息子夫婦にお願いしたわけだ。大好きな息子夫婦に再会したダビデ君は大喜びだ。以前会った時はまだ暴れん坊の子供だったが、今回の写真を見れば、しっかりした少年に成長している。

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▲ベルガモ市の風景(2014年6月、イタリア北部ロンバルディア州ベルガモ市で撮影)

 息子夫婦は、来る前から子供の喜ぶプランを考えていたに違いない。息子が送ってきた写真を見れば、暑い日には広い屋外プールでじゅうぶん泳いで楽しみ、涼しいガーデンの夕食、3D体験ミュージアムで遊んだり、キャンプ場のロッジ風の所で宿泊したりと盛りだくさんのプランだったようだ。ダビデ君にとって、久しぶりの楽しい夏休みを過ごせたわけだ。昔のダビデ君のように大暴れしながら息子夫婦と楽しんだという。

 時間はあっというまに過ぎる。母親がベルガモから迎えに来たが、ダビデ君は息子夫婦と別れるのが悲しくて泣き、ダビデのおばさんである息子の嫁も泣いたという。ベルガモでは新型コロナウイルスの感染防止のためにダビデ君は友達と遊ぶこともできず、祖父母宅でテレビを見たり、ゲームをしながら過ごしてきたのかもしれない。

 中国武漢から発生した新型コロナウイルス(covid-19)は当初、欧州ではイタリアで大感染が発生し、同国北部のロンバルディア州のベルガモでは連日、感染者が出て、多くの死者が出た。今年3月19日、イタリアの新型コロナ感染者は4万1035人、死者は3450人となった。新型肺炎の発生地中国の3245人を上回り、死者数は世界で最多となったほどだ。イタリアの中でもベルガモは大変だった。この人口12万人の小都市の感染者数が増え、武漢のような大都市ではないが「イタリアの武漢」と呼ばれた。

 同市の医療は崩壊し、重症者を収容するベッドはなく、南部州に患者を転送するなど、対応に苦しんだ。ベルガモ病院の医者が、「ベルガモを助けてほしい」と緊急メッセージをソーシャルネットワーク(SNS)で発信した。防護服が限られ、医療器材が不足して、重症患者を治療できない医者の苦しさを訴えていた。

 死者を埋葬する墓地の場所もなくなり、軍隊が遺体を南部州に運ぶ一方、遺体をまとめて火葬せざるを得ない状況だった。ベルガモはローマ・カトリック教会の信者が多く、遺体は本来、埋葬することになっているが、その場所も時間もなくなってきたからだ。ベルガモにはローカル新聞があるが、新型肺炎で亡くなった市民の訃報欄が10頁にもなったほどだ。紙面には新型肺炎の犠牲者の写真が載せられ、それを読む市民の心を揺さぶった(「“欧州の武漢”ベルガモ市を救え!!」2020年3月21日参考)。

 あれから5カ月が過ぎた。新型コロナは依然、感染を広めているが、イタリアでは感染ピークは過ぎたと受け取られ、規制緩和と経済活動の再開のバランスを取りながら復興に乗り出してきた。

 ところで、ベルガモ市では救急車のサイレンを聞くと精神的に落ち着きを失い、パニック症状に陥る市民が少なくないという。そこで救急車はサイレンを鳴らさずに市内を走ることにした。サイレン音を聞くと今年3月の悪夢が蘇る市民の願いを受けた処置だ。死者を追悼する教会の鐘だけが響く。

 感染して病院に運ばれた市民が家族から引き離され、病院で1人で亡くなるケースが多かった。一旦別れれば、ひょとしたら再会できないかもしれないという思いが市民にはあった。ダビデ君の涙はそのような思いがあったのかもしれない。ベルガモの多くの市民がそのようにして家族、親族と永遠の別れをしてきたのをダビデ君は見てきたのだろう。

 イラク戦争やアフガニスタンから帰国した米軍兵士が帰国後、社会に再統合できず、大きな音を聞くと震え、どこかに身を隠そうとするといったパニック症状をおこすケースがある。心理学的には心的外傷後ストレス障害(PTSD)だ。新型コロナ感染でベルガモ市民も米軍兵士のように心に大きな痛みを受けたはずだ。

 新型コロナの感染第2波が到来したといわれる。ベルガモ市民が明るい笑顔と笑い声を取り戻す日が早く到来することを願う。

新型肺炎の治療に取り組む医師たち

 イタリア北部ロンバルディア州は今、中国武漢発の新型コロナウイルスの最大感染地となっている。感染者が殺到する同州の病院は患者で溢れ、医療は崩壊し、重症者を収容するベッドはない。感染者がまだ少ない南部州に転送するなど、イタリア保健当局は対応に苦しんでいる。

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▲「イタリア北部ロンバルディア州で新型肺炎の感染者が多いのはなぜか」を報じるオーストリア代表紙プレッセ3月24日

 同州でも感染者が多いベルガモ市の病院に勤務する医師がソーシャルネットワーク(SNS)を通じて緊急支援のアピールを発信し、イタリア全土ばかりか、欧州でも大きな反響を呼んだ。医師は、「患者の急増で病院では医師が使える防御服は限られ、重症患者用の人工呼吸器が不足している」と訴えた。イタリアでは医師不足を補うために、大学で勉強を終えたばかりの医学生を病院の現場に送っているほどだ。

 オーストリア代表紙プレッセに新型コロナの治療のために戦うロンバルディア州の病院の風景を報じ、1枚の写真を掲載していた。病院のフロアに1人の若い医師が頭を抱えて座り込んでいる。そこに先輩の医師が声をかけている。多分、若い医師を慰めているのだろう。

 フランス通信(AFP)の写真記者が撮影した写真は大きな反響を呼び、多くの欧米メディアで掲載されたほどだ。新型コロナ対策のために戦っている医師が疲労困憊で座り込んでいるとも解釈できるが、当方はそれ以上にもっと深刻なシーンではないかと考えた。若い医師は集中治療室のベットは限られ、人工呼吸器は不足している中、どの患者を優先して治癒し、どの患者を後回しにせざるを得ないかの選択(トリアージ)を強いられてきたのではないか。すなわち、患者の生死を自分が決定しなればならない現場の重い選択に悩み、体力的にも精神的にも疲れ切ってしまったのではないだろうか。

 医師になる以上、人命の救助が目標だ。その医療で多くの重病患者を救いたいと願って医学の道を歩みだした医師が多いはずだ。米TV番組「Good Doctor」を思い出す。オリジナルは韓国のドラマだが、番組では舞台を米カリフォルニア州の聖ボナベントゥラ病院に移し、そこで勤務する自閉症でサヴァン症候群で特殊能力を持つ外科研究医のショーン・マーフィー(主人公)の歩みを描いている。

 病院側はマーフィーを勤務させるかどうかで議論が分かれた。病院関係者の前で「なぜ医師となったか」を問われたマーフィーは「弟とウサギが亡くなった。自分は彼らを助けたかった」と淡々と語ると、病院のお歴々の心を動かした。マーフィーは同病院で働くことができるようになった。

 マーフィーは難しい話をしたのではない。人を助けたい、という医師として当然の思いを吐露しただけだ。しかし、医師の世界でも長く働いていると、名誉や地位を優先することが多くなる。マーフィーの話を聞いた医師たちは忘れかけていた医師としての原点を思い出したわけだ。

 中国湖北省武漢市中心病院の眼科医、李文亮氏(33)は昨年12月の段階で通常ではないウイルスが広がってきたことを発見、地元当局に警告を発する一方、対策を訴えたが、そのアピールは無視され、新型コロナウイルスの発生の事実はその後も隠蔽された。医師はSNSなどを通じて新型肺炎を警告したため、当局から一時拘束される。最終的には、本人も感染して2月7日、死去した。この話が世界に報じられると、李文亮氏は一躍英雄となった。その一方、中国共産党政権が新型コロナの発生を隠蔽してきたために、多くの感染者が出ることになったとして、批判の声が出てきた。

 中国武漢市では多くの医師たちが患者から感染し、死去した。休むこともできず、多くの患者の治療に走り回ってきた中国の数多くの医師たち、そして今、欧州各地で発生不明の新型コロナ対策のために自身の命を危険にさらしなが救命活動に従事する医療者たち。彼らの献身的な歩みが必ず実を結ぶことを祈りたい。欧州では新型コロナ患者を治療する医師,看護師たちの労を称えるため、自宅のバルコニーから拍手を送る人々が出てきている。

 世界のウイルス専門学者は新型コロナ肺炎の治療薬、ワクチン製造のために研究開発を始めている。まさに、時間との闘いだ。官民が一体となって新型コロナ治療薬製造で連携してきた。評価するにはまだ時期尚早からもしれないが、世界の指導者、政治家にも新型コロナ対策で連帯の動きが見られてきた。

 3月20日の「春分の日」が過ぎた。日毎、太陽が昇る時間は早まり、日が長くなる。新型コロナとの決死の戦いを展開している世界の医師たちに、改めて拍手を送りたい。

中国の医療器材支援に感謝すべきか

 中国湖北省武漢から発生した新型コロナウイルス(covid-19)は今日、世界全域でその猛威をふるい、多数の感染者、犠牲者が出ている。新型肺炎の死者数では欧州のイタリアは中国のそれを大きく上回り、世界最大の感染地となってしまった。

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▲新型コロナウイルス対策に奔走するコンテ伊首相(イタリア首相府公式サイトから)

 同国北部ロンバルディア州では感染者の急増で医療機関は崩壊寸前。感染防御服、消毒液、マスク、人工呼吸器などの不足は深刻で、ベルガモ病院の医者はソーシャルネットワーク(SNS)を通じて「助けてほしい」と緊急アピールしたばかりだ。

 そのアピールに対し、新型コロナ感染当初、単なる「季節性伝染病のインフルエンザ」と同様に受け取ってきた欧州各国は入国を制限、禁止し、国民に外出禁止を発令するなど対応に乗り出してきた。感染当初、ドイツやフランスは新型肺炎の感染拡大で市場に不足してきたマスクや人工呼吸器の輸出を禁止し、“自国ファースト”を実行したが、ドイツ政府は医療器材の輸出禁止を撤回し、連帯感を示すなど、欧州連合(EU)域内のイタリア支援がここにきて動き出してきた。

 それとは別に、ロシアのプーチン大統領はマスクや移動消毒液散布器、医師団の派遣を決定した。そして中国から先日、大量の防御服、マスクなど約30トンの医療物質がイタリアに送られてきた。欧州メディアも中国のイタリア支援を大きく報道した。医療器材の不足に悩んできたコンテ政府は、「困った時の支援こそ本当の連帯だ」と感動し、中国側の救援物資に感謝を表明している。

 大震災などで大きなダメージを受けた国が救援物資や経済支援を受けた場合、ありがたく感じるのは当然であり、イタリア政府が中国からの救済物資に感謝したことに異議を唱える考えはまったくない。

 本題に入る前に、余談だが、武漢肺炎が猛威を発揮してきた直後、日本政府はいち早く100万枚のマスクを中国に緊急支援した。それを受け取った中国が感謝を表明したことはメディアでも大きく報道された。韓国もその時、ひょっとしてもっと多くのマスクを支援したかもしれないが、中国政府の韓国への感謝が届かなかったのか、遅かったのか、ソウル側は、「中国は日本へは感謝したが、わが国には……」と呟いたという記事が配信されてきた。それを読んで、「謝罪」を何時も相手に求める国は「感謝」も要求するものだ、と感じさせられた。

 今回のコラムのテーマは、中国の救済支援にコンテ政府のようにもろ手を挙げて感謝すべきかどうかだ。「感謝」は不満や批判ではないので、多すぎて困るということはないが、/祁診抉蠅寮こε流行(パンデミック)は中国の武漢から発生したこと、△修良埔融を中国共産党政権は隠蔽しようとした、この事実の2点から、中国側の支援を無条件に感謝するわけにはいかないのだ。相手を傷つけ、流血させた側が血止め用絆創膏を提供したとしても、血を流す相手は素直に「ありがとう」といえるだろうか。

 中国の救援物質について、”雋素抉蠅妊ぅ瓠璽犬魄化させたので、イメージ回復の狙いがある。■釘媾国が新型肺炎対策で不協和音が聞かれる時だけに、親中派のイタリアを支援し、欧州の中国の政治的影響力を誇示する、といった憶測分析が聞かれる。

 それだけではない。武漢肺炎はたまたま中国で発生したが、新型コロナウイルスは中国を含む“世界の感染病”だというプロパガンダだろう。中国共産党政権は、「わが国は過去数カ月間でその感染病を抑えることに成功した。成功談と体験を欧州にも提供する」といった思惑すら見え隠れする。一方、欧州側は感染防止に忙しく、この新型肺炎がどこから来たのか、といったテーマはどうしても後回しになってしまうのだ。

 支援しているのに、文句を言われ、中国側は気分は悪いだろうが、共産党政権の独裁国家の中国の場合、そうはいかないのだ。国民を弾圧し、チベット系、ウイグル人ら少数民族を迫害し、キリスト者ら宗教者を弾圧している中国はやはり批判を受けるべき国だからだ。法輪功の青年の臓器を生きたまま取り出し、共産党幹部やその家族に移植。臓器が取られた遺体は埋葬されることなく、捨てられる。そのような国に対し、どうして寛容であることができるだろうか。

 中国共産党政権のイタリア支援の場合、中国側は多くの犠牲者を出したイタリア国民に対し、先ず謝罪を表明すべきだろう。そして救援物質がその償い品であることを明確に説明すべきだ。

 イタリアは人工呼吸器、防御服が緊急に必要だ。だから、それらの機材が中国から届こうが、ブリュッセルから提供されようが、緊急テーマではないが、支援国と受け手側の双方にとって事がスムーズに進むためには、やはり事の経緯を無視すべきではない。中国共産党政権は恣意的にその経緯をぼかし、支援したという既成事実を積み重ねていくことで、「事件の核心」をここでも隠蔽しようとしているからだ。

“欧州の武漢”ベルガモ市を救え!!

 イタリア政府は19日、新型コロナウイルス(covid-19)による感染者は4万1035人、死者は3450人となったと発表した。新型肺炎の発生地中国の3245人を上回り、死者数は世界で最多となった。時間の問題とみられていたが、そのニュースを聞いた時、武漢肺炎で苦しむイタリア国民の苦境を思い、心が痛くなった。

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▲ロンバルディア州都ミラノの「大聖堂」(2012年8月、撮影)

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▲ベルガモ近郊にある「聖ヨハネ23世の生家」内にあるヨハネ23世の銅像(2013年9月26日、撮影)

 イタリアの最大感染地は同国北部ロンバルディア州だ。その州の中でも人口12万人の小都市ベルガモ市(Bergamo)の感染者数が最も多い、どこの誰が言い出したのかは知らないが、武漢のような大都市ではないベルガモが「イタリアの武漢」と呼ばれ出した。

 同市の医療は崩壊し、重症者を収容するベッドはなく、感染者がまだ少ない南部州に患者を転送するなど、対応に苦しんでいる。ベルガモ病院の医者が、「ベルガモを助けてほしい」と緊急メッセージをソーシャルネットワーク(SNS)で発信していた。防御服が限られ、医療器材が不足して、重症患者を治療できない医者の苦しさを訴えていた。

 死者を埋葬する墓地の場所もなくなり、軍隊が遺体を南部州に運ぶ一方、遺体をまとめて火葬せざるを得ない状況だ。ベルガモはローマ・カトリック教会の信者が多く、遺体は本来、埋葬することになっているが、その場所も時間ももはやなくなってきたという状況だ。

 ベルガモにはローカル新聞があるが、新型肺炎で亡くなった市民の訃報欄が10頁にもなるという。紙面には新型肺炎の犠牲者の写真が載せられ、それを読む市民の心を揺さぶっている。

 ローマ・カトリック教会の最高指導者フランシスコ教皇はイタリア日刊紙ラ・レプッブリカとのインタビューの中で、新型肺炎で苦しむイタリア国民への連帯と隣人愛を説き、「私は主に、この伝染病を一刻も早く終わらせてくださいと祈った」と述べている。18日付のバチカンニュースが報じている。

 間もなく、キリスト教会の最大の祝日、復活祭(イースター)が来月12日訪れる。イエスが人類の罪を背負って十字架で亡くなったが、その3日後に復活したことを祝う日だ。

 新旧キリスト教会、正教会の全キリスト信者たちが祝う日だが、2020年の復活祭はどうなるだろうか。バチカンのサンピエトロ広場で世界から集まった信者と共に復活祭を祝うことは難しくなった。バチカン宮殿内で行われ、その様子を世界の信者たちはオンラインで共有することになるだろう。ベルガモ市民は今年の復活祭をどのような思いで迎えるだろうか。突然、新型肺炎で亡くなった祖父母や兄弟姉妹のことをきっと思い出すだろう。

 当方は2013年9月、ベルガモ郊外にあるヨハネ23世(在位1958年10月〜63年6月)の生家を訪れた時、多くの巡礼者に出会った。ポルトガルのファテイマの聖母マリア降臨地でもそうだったが、巡礼者、病に悩む人、病人を抱える家族たちが奇跡を求めて巡礼地を訪ねてくる。ヨハネ23世は教会の近代化を推進させた第2バチカン公会議の提唱者だ。

 聖ヨハネ23世の生家には同23世の銅像があるが、その銅像の手、唇周辺は色が剥げている。その訳を関係者に聞くと、「巡礼者たちがヨハネ23世に触れば病が癒されると信じて、ヨハネ23世銅像の手や唇を触るから、そこだけ色が剥げてきたのです」という。

 新型コロナ肺炎に苦しむベルガモ市民は市が封鎖された今日、もはや外出ができないから、この伝染病が一刻も早く終息することを家で祈っているだろう(「『聖人』と奇跡を願う人々」2013年10月2日参考)。

 当方はベルガモには多くの知人、友人がいるので、彼らの動向を心配している。ベルガモの現状は目を覆いたくなるほどだ。「あのベルガモが新型肺炎のイタリア最大の感染地となった」という事実が今でも理解できない。どうして、なぜ、という思いが湧いてくるのだ(「『武漢肺炎』と独伊『感染自治体』の関係」2020年3月20日参考)。

 市内で会社を経営するカルロ・ツォナト氏は、「新型コロナウイルスは我々のライフスタイルを激変させるだろう」と述べていた。ベルガモ市民が新型肺炎の試練を乗り越え、温かい太陽の日差しを受けながら市内を自由に散歩できる日が早く到来することを願っている。

花を買った婦人と白熊の赤ちゃん

 英紙ガ―ディアン電子版16日付に1枚の写真が掲載されていた。撮影場所はイタリアのミラノ市内だ。同市はイタリア北部ロンバルディアの中心都市であり、新型コロナウイルスが猛威を振っている所である。その市内で60歳ぐらいの婦人が買物を終えて、家に向かっているところを撮った写真だ。当方が驚いたのは婦人が手にしていた買い物袋の中に一束の花が顔を覗かせていたことだ。

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▲ウィーンのシェーンブルン動物園の白熊の赤ちゃん(シェーンブルン動物園公式サイトから)

 新型コロナウイルスは今、イタリア北部を襲撃し、南部にまで広がってきた。北部ロンバルディアでは急増する感染者を収容できず、医療システムは崩壊状況だ。重症患者用の酸素供給器が不足し、集中治療室ベットがなくなった病院が出てきた、そのため、重症患者を南部地域の病院に転送するケースが増えてきた。

 イタリアでも最大の感染地ベルガモ市では毎日、多くの市民が死亡している。同市のローカル新聞の訃報欄は10頁を超えるという。多い死者を埋葬できないため、遺体を一緒に火葬しているというのだ。

 学校は休みになり、外出制限を実施する国が増えている。食料品の不足を恐れる国民がスーパーで麺類、ライスばかりか、トイレットペーパーなどを買い漁るシーンも出てきた。そんな日、写真を見る限りでは、1人の婦人が買い物袋を持って歩いている。その買物袋の中にはパンやミルクだけではなく、花もあった。

 ミラノの婦人はスーパーで一束の花を買って帰るところだったのだろう。亡くなった人への供え物の花だったかもしれないが、当方は婦人が自分の部屋に春の香りを放つ花を欲しかったからではないか、と勝手に想像している。

 当方は東西欧州が分断されていた冷戦時代、ハンガリーに初めて取材に入った。ブタペストで小さな花屋さんを見つけた時、驚くと共に感動を覚えたことがある。東欧共産政権下では言論や信仰の自由は抑圧され、多くの国民は厳しい日々を送っていた。そのような苦境下でも人は花を買うものだ、ということを知ったからだ。

 人は生活に余裕が出てきた時、花を買い、それを愛でるものだ、と考えてきた当方は驚いた。なけなしの金で人はパンではなく、花を買うことがある、明日が分からないのに花を買う人がいる……、これは当時の当方にとっては大きな発見だった。

 ミラノ市の婦人が花を買って帰るところを撮影したカメラマンは買い物袋に花を見つけたので素早くカメラのシャッターを押したのだろうか。彼も当方と同じような感動を覚えたのか。それとも単なる偶然に過ぎなかったのか。

 オーストリアでは16日から外出は制限され、レストランや喫茶店は閉鎖され、食料品や日常品を売るスーパーと薬局、ドラッグストアだけが営業している。クルツ首相はこの緊急期間の国民の日常生活を保障すると約束したが、人々はやはり不安を払しょくできない。スーパーは混乱する、同時に、現金を口座から下ろす人々が増え、オーストリア日刊紙エステライヒによると、「通常の7倍の現金が先週末引き下ろされた」と報じていた。銀行の崩壊を予想する人々もいるわけだ。

 ウィーンには世界的に有名なシェーンブルン動物園がある、そこで白熊の赤ちゃんが生まれたと報じられると、白熊の赤ちゃんは一躍人気者となり外に出されるや否や、人々は白熊を見に殺到した。しかし、新型コロナウイルスが広がったため博物館や美術館と同様、動物園も閉鎖になった。

 多くの市民から白熊の赤ちゃんの様子を聞く問い合わせがあったため、動物園が「白熊の赤ちゃんの日々を撮ったビデオをオンラインで流す」と発表すると、人々は大喜びしたというのだ。ちなみに、動物のエサを売る動物屋さんは、スーパーや薬局と同様、この期間オープンされている。

 マクロン仏大統領は16日の国民向け演説で、「我々は戦争状況下にある」と述べていたが、その“戦時下”でも花を買う人々、動物園の白熊の赤ちゃんのことを忘れない人々、がいるわけだ。

 欧州の最大の感染国イタリアでは、感染リスク年齢の祖父母に会えない子供たちが、「全て良くなるよ」という呼びかけた標語が人々の心を動かし、中止になったコンサートの代わりに「バルコニーのコンサート」を演じている人々が話題になっている。

 音楽、花、動物たちは、人を慰め、喜びを与えてくれるものだ。苦境の時、そのことに感謝したい。
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