ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

オーストリア

オーストリアで銃規制法の強化案

 オーストリアのゲルハルト・カーナー内相は4日、記者会見で銃規制法の強化案を発表した。同法案は同日、議会内務委員会に提出され、2週間の審査が承認された。同法案は国民議会で審議し、10月の連邦議会の決定を受け、同法案の最初の部分は直ちに施行される予定だ。

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▲記者会見で銃規制法の強化法案を発表するカーナー内相(中央)、オーストリア内務省公式サイトから、2025年9月4日

 銃規制法強化案によると、銃器のカテゴリーB(拳銃、連発散弾銃、半自動小銃)の購入年齢の最低年齢は従来の21歳から25歳に、カテゴリーC(ライフル銃または滑腔銃)は18歳から21歳にそれぞれ引き上げられる。ちなみに、カテゴリーAは禁止武器および軍需品で、一般国民は購入できない。銃器は今後、登録販売業者からのみ購入可能となり、個人からの購入はできない。狩猟者やスポーツ射撃者は対象外だ。「同法案は、安全性が強化される一方で、銃器を責任を持って扱わなければならない人々に不必要な制限が課されることはない」という。

 また、銃器当局が登録手続き中に精神疾患に関する情報を入手できるようにすると共に、銃器購入後配達までのクーリング・オフ期間は3日から4週間に延長される。

 同国が銃規制法の強化に乗り出すことになった直接の契機は、オーストリア南部シュタイアーマルク州の州都グラーツの高校で6月10日に発生した銃乱射事件だ。同学校の元生徒が突然、2丁の武器、拳銃と散弾銃を持って教室に乱入して乱射し、先生1人と生徒9人が死去し、十数人が重軽傷を負った。容疑者(当時21歳)は犯行後、校内のトイレで自殺した。

 警察当局によると、犯行は単独で、容疑者は前科はなく、武器も合法的に犯行直前に購入していた。オーストリアでは18歳以上になれば、武器を購入し、所持できる。容疑者は武器許可証を持っていた。武器法によると、武器は3分類され、容疑者が所有していた武器はカテゴリーBに入り、購入前には精神的診察を受けていた。ちなみに、同国内務省によると、オーストリアでは今年4月現在、約37万人が約150万丁の武器を所有している。

 オーストリアの戦後で最悪の銃乱射事件(犠牲者10人と容疑者1人、計11人が死去)を受け、ストッカー政権は「国の悲劇だ」と述べ、銃規制法の強化に乗り出すことになったわけだ。

 一部のメディアでは、オーストリアは欧州でも銃所有がかなり自由で、銃社会だと報じていたが、銃の購入と銃携帯には厳格な武器法が施行されている。ただ、バルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の影響などもあって、かなりの武器がオーストリア国内に不法に流れ込んでいる。

 なお、政府の銃規制法の改正案について、野党第1党の極右政党「自由党」は4日、プレスリリースを通じ、「同改正案は国民の自由と市民権への不相応な干渉に当たる。また、改正法案は単なる場当たり的な立法だ」と指摘し、反対を表明している。それ以外の政党は同改正法案を支持している。

 オーストリア心理学者協会(BOP)はプレスリリースで、銃規制強化計画を歓迎する旨を表明した。特に、カテゴリーCの銃器にも臨床心理学的評価を義務付ける提案と、5年ごとの心理的フォローアップ検査の実施、年齢制限の引き上げと定期的な見直し等々も歓迎している。

 ちなみに、心理的適性検査の場合、遡及適用も可能となる。今年6月以降、カテゴリーBの武器の新規申請はすべて、適性検査を実施する必要がある。カテゴリーCについては、遡及適用は2年間まで適用される。

 カーナー内相は記者会見で、グラーツの学校で発生した銃乱射事件を想起し、「オーストリアの歴史における悲劇的な節目であった。社会と政治家にとって、現状維持では済まされないことは明らかだった」と述べている。

ガザ問題を巡り「外交官たちの蜂起」

 イスラエルのネタニヤフ首相がパレスチナ自治区ガザの完全制覇を決め、ガザへの攻撃を始めた。一方、ガザに住む50万人以上のパレスチナ住民はイスラエル軍の攻撃から避難する一方、食料や水、医療を手に入れるために苦戦、多くのパレスチナ人が飢餓状況下に陥っている。米国を除く国連安保理理事14カ国は27日、ガザで「飢饉が発生している」と報告されたことについて、「人為的な危機だ」と懸念する声明を発表したばかりだ。イスラエル軍のガザ攻撃を批判する声が国際社会ばかりか国内からも高まってきているが、ネタニヤフ首相は目下、ガザ攻撃を再考する考えはない。

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▲マインル=ライジンガ―外相、アルプバッハ・フォールムで、2025年8月25日、オーストリア外務省公式サイトから

 そのような中、オーストリアの外交官や元外相たちがストッカー現政府宛てに公開書簡を送り、ガザ戦争に関する政府の方針を変え、イスラエルのネタニヤフ首相に政策変更を強く求めるだけではなく、イスラエルと欧州連合(EU)の連合協定の停止など制裁を支持すべきだと主張している。なお、同書簡はオーストリア代表紙「プレッセ」(8月27日付)に掲載され、大きな反響を呼んでいる。

 公開書簡では「国際社会は、ガザにおけるルールに基づく戦後秩序の崩壊をリアルタイムで目の当たりにしている。飢餓を戦争の武器として利用し、民間インフラを完全に破壊し、民間人、医療従事者、ジャーナリストを標的とした殺害を行っている。国連人権システムと国際刑事司法制度の関係者は過去2年間、中傷と脅迫を受け、公認の援助団体は信用を失墜させられた。イスラエル指導部は現在、パレスチナ住民の強制追放を公然と主張しており、これはイスラエルをパーリア国家へと変貌させるだろう」と警告を発している。

 公開書簡の署名者には、ベニータ・フェレロ=ヴァルトナー元外相、ペーター・ヤンコヴィッチ元外相、ヴォルフガング・ヴァルトナー元外相、元ボスニア国際代表のヴォルフガング・ペトリッチ氏とヴァレンティン・インツコ氏、元EU大使ハンス=ディートマール・シュヴァイスグート氏、元ワシントン大使エヴァ・ノヴォトニー氏ら26人の外交官、元外交官らが入っている。

 「オーストリアも、ガザにおける耐え難い苦しみを終わらせ、ハマスの手から残りの人質を最終的に解放するために、国際社会の圧倒的多数に加わるべき時が来た」と、現リビア大使バーバラ・グロッセ氏、ヨルダン駐在大使マリーケ・ジンブルク氏、そして外務省西バルカン担当特別代表ウルリケ・ハルトマン氏を含む外交官たちは述べている。
 
 公務員の立場で政治的発言することについて、ペトリッチ氏は「状況が極端で、国際法のあらゆるルールに違反し、文明国間で通常行われるあらゆる事柄を無視している場合、それは例外であると私は考える」と指摘、公務員も声を上げなければならないと主張している。

 26人の外交官の公開書簡に対し、ベアテ・マインル=ライジンガー現外相は28日、ガザ戦争に関するオーストリア政府のこれまでの方針を堅持すると発表した。

 同外相は7月、30カ国外相による敵対行為の即時停止を求める共同アピールに署名したが、今回の外交官たちの公開書簡に対して、「オーストリアは、イスラエルの安全保障、生存権、そして正当な自衛権に全面的にコミットしている。2023年10月7日にハマスが行った蛮行なテロ攻撃を強く非難し、全ての人質の即時解放を求める。同時に、パレスチナ民間人の苦しみは、無関心ではいられない。民間人の保護と国際法の尊重が不可欠だ」と説明している。

 なお、駐オーストリア・イスラエル大使のデイヴィッド・ロート氏は27日、公開書簡への憤りを表明している。曰く「この戦争の責任者であるテロ組織ハマスに責任を問う代わりに、この書簡はイスラエルを非難し、中東で唯一の民主主義国であり、オーストリアの緊密な同盟国であるイスラエルに対する前例のないEU制裁を支持するよう求めている」と公開書簡の署名者を批判している。

 公開書簡は最後、「オーストリアは決断を迫られている」として、「オーストリアもまた、今こそ自らの発言がどれほど真剣なものか、決断を迫られている。EU・イスラエル連合協定および資金プログラムの停止、そして貿易制限の導入は、真剣に検討されるべきである。とりわけ、人権侵害、戦争犯罪、そして人道に対する罪を犯したり支援したりする者に対する包括的な武器禁輸措置と制裁が不可欠だ。オーストリアもまた、ガザにおける耐え難い苦しみに終止符を打ち、ハマスの手から残された人質の解放を最終的に確保するために、国際社会の圧倒的多数の声に加わるべき時が来ている」と明記している。


 上記の問題について、当方の見解を少し書き足したい。まず、今回のガザ戦闘はハマスの「奇襲テロ」(2023年10月7日)が契機となって始まったことを忘れてはならないだろう。その意味で、イスラエルのハマスへの報復攻撃には正当性がある。同時に、アラブ諸国に取り囲まれたイスラエル国家の生存権を尊重すべきだ。

 問題は、ネタニヤフ首相は1200人以上のユダヤ人が虐殺され、120人以上が人質にされた「ハマスの蛮行」を絶対に許せない、という姿勢は理解できるが、報復、憎悪からは本当の解決は難しいことだ。ネタニヤフ首相は「ハマスの壊滅」を目指しているが、第2、第3のハマスがガザの廃墟から新たに生まれてくるだろう。ある時点で報復をやめ、共存の道を模索していかなければならない。さもなければ、戦いは永遠に続く。ユダヤ民族は受難の民族だが、パレスチナ人も同様だ。

オーストリアで戦後最悪の銃乱射事件

 先ず、事件を可能な限り再現してみる。

 オーストリア南部シュタイアーマルク州の州都グラーツの高校で10日午前10時(現地時間)、銃乱射事件が発生し、先生1人と生徒9人が死去し、十数人が重軽傷を負った。容疑者(21歳)は犯行後、校内のトイレで自殺した。

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▲グラーツ市内の銃乱射事件、オーストリア国営放送(ORF)の中継から,2025年6月10日

 オーストリアの戦後で最悪の銃乱射事件(犠牲者数10人と容疑者1人、計11人が死去)となったことを受け、ストッカー首相は同日午後、グラーツ入りして、記者会見で「オーストリアにとって今日は暗黒の日だ。国の悲劇だ」と述べ、公的機関では国旗を半旗にし、11日から3日間を服喪期間とすると宣言し、全てのイベントを中止する意向を明らかにした。

 同日午後7時半、グラーツ市のカトリック教会聖堂で追悼集会が開かれた。翌日の11日午前10時、全土で1分間の黙祷が行われた。

 グラーツ市は同国2番目に大きい都市で、事件の現場の学校(生徒数約400人)は中央駅から近いところにある。銃乱射の連絡が入ると、テロ対策部隊「コブラ」を含む300人以上の警察官が動員され、学校周囲は閉鎖、上空にはヘリコプターが旋回した。聖霊降臨祭の休暇が終わり、学校が再開されたばかり。大学入試資格試験(マトゥ―ラ)も終わり、来月から始まる夏季休暇が近いこともあって生徒たちの間にも明るい雰囲気が漂っていた。そのようなとき、同学校の元生徒が突然、2丁の武器、拳銃と散弾銃を持って教室に乱入して乱射し、教室は一瞬に銃声と悲鳴の声が響いたという。

 警察当局によると、犯行は単独で、容疑者は前科はなく、武器も合法的に犯行直前に購入している。オーストリアでは18歳以上になれば、武器を購入し、所持できる。容疑者は武器許可証を持っていた。武器法によると、武器は3分類され、容疑者が所有していた武器はカテゴリーBに入り、購入前には精神的診察を受けることになっている。ちなみに、同国内務省によると、オーストリアでは今年4月現在、約37万人が約150万丁の武器を所有している。

 一部のメディアでは、オーストリアは欧州でも銃所有がかなり自由で、銃社会だと報じているが、銃の購入と銃携帯には厳格な武器法が施行されている。ただ、バルカン半島のボスニア・ヘルツエゴビナ紛争の影響などもあって、かなりの武器がオーストリア国内に流れ込んでいる。同国では銃乱射事件は少ない。

 公安総局長のフランツ・ルフ氏によると、容疑者のアパートには遺書らしいものが発見されたという。ただし、その遺書からは犯行動機については何も記述されていなかった。また、犯人のアパートでパイプ爆弾が発見されたが、爆弾は機能していなかったという。
 同国のメディアでは「容疑者は学校時代にいじめにあっていたことを恨み、自分が通っていた学校を襲撃したのではないか」といった憶測情報が流れている。容疑者は学校を中途で退学している。その後、職業斡旋所を訪問したことが分かっているが、事件直前の詳細な動向は明らかではない。

 当方は1980年代、約半年ほどグラーツ市に住んでいた。首都ウィーンとは異なり、民族色が強く、市民は素朴でシュタイリッシュと呼ばれるドイツ語の方言を話す。ちょうど10年前の2015年6月、グラーツで一人の男が歩行者道路を車で暴走し、3人を殺害、36人が負傷するという暴走事件が起きたことがある。今回の銃乱射事件でグラーツ市民は大きなショックを受け、悲しみに沈んでいる。

JJの「イスラエル・ボイコット」発言

 「口は災いの元」という格言があるが、第69回ユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝したオーストリア代表、男性歌手JJ(本名ヨハネス・ピーチ、24)はそのことを身に浸みて感じているかもしれない。JJはスペインの日刊紙「エル・パイス」に21日掲載されたインタビューの中で、「イスラエルが大会に参加していることは非常に残念だ。来年はイスラエル抜きでウィーンで開催されることを望む」と語り、イスラエル・ボイコットを呼びかけたのだ。

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▲ドイツのシュタインマイヤー大統領と会合するネタニヤフ首相,2025年5月13日、イスラエル首相府公式サイトから

 JJの発言が報じられると、オーストリア国内で当惑と反発の声が出てきた。JJは「自分の発言が誤解されている」と弁明したが、どのように誤解されたのか、といった説明はない。JJは「ロシアが除外され、イスラエルが除外されなかったことに非常に失望している。両者とも侵略者だ」と述べているのだ。JJは22日、反響の大きさに驚いて発言内容を撤回している。

 その直後だ。ワシントンでイスラエル大使館の2人の職員が親パレスチナの容疑者に射殺されるという事件が起きた。JJは同ニュースを報じるソーシャルネットワークのサイトに‘like‘と書き入れていたのだ。さすがに、殺人を擁護するように受け取られる危険性を感じたのか、JJは‘like‘を直ぐに消去している。

 JJが19日、バーゼルでのユーロビジョン(ESC)から凱旋帰国した時、ストッカー首相、バブラー副首相、マインル=ライジンガー外相ら政府首脳、そしてオーストリア国営放送(ORF)のヴァイスマン会長から熱烈の歓迎を受けた。ストッカー首相はJJに、「あなたの優勝は国民を鼓舞するものだ」と語りかけていた。JJは次期ESCコンテストで司会役を任されるのではないか、といった情報も流れていた。そのような矢先、JJの発言が報じられたわけだ。

 JJの発言に関するストッカー首相の反応は伝わっていないが、政府首脳陣は苦悩を隠せられないだろう。ORFのヴァイスマン会長は22日、「JJの発言はあくまでも彼個人の発言であり、ORFとは全く関係がない。ORFにとって、ESCの焦点は音楽と芸術パフォーマンスにある。EBU(欧州放送共同体)は、政治とエンターテインメントを区別する明確なガイドラインを定めている。EBUは参加国または参加除外国を決定する唯一の機関だ」と述べ、、JJ発言で沸き上がった熱気帯びた論議の鎮静化に努めている。

 なお、ユーロヴィジョンを主催するEBUはロシアに対しては参加を拒否しているが、イスラエル代表の参加は認めている。JJの立場からいえば、ロシアを拒否しながら、どうしてガザで多くのパレスチナ人を殺害しているイスラエルの参加は認めるのか、といったダブルスタンダートへの疑問だ。
 オーストリアのメディアによると、「昨年の歌のコンテストでスイス代表として優勝したネモも、イスラエルを除外することを支持する意見を公然と表明した。最近、歌のコンテストの元参加者70人が公開書簡で同様の意見を表明している」という。どうやら、「イスラエル・ボイコット」を叫ぶ歌手たちはJJだけではないようだ。

 ただ、忘れてはならない点は、ウクライナに軍事侵攻したロシアとイスラム過激派テロ組織「ハマス」の奇襲テロで1200人以上の国民を殺害されたイスラエル側の報復攻撃を同じ次元で論じるべきではないことだ。実際、オーストリア国民議会元議長ヴォルフガング・ソボトカ氏は「イスラエルをESCから除外し、ロシアと同等に扱うというのは完全に見当違いであり、歴史を無視している」と主張している。

 参考までに、ファン・デア・ベレン大統領が23日、日刊紙「クローネン・ツァイトゥング」紙で、「『イスラエル国家に対する揺るぎない姿勢』と『特にガザ問題におけるイスラエルのネタニヤフ首相の現政権』の間は区別されなければならない」と語っている。要するに、「ネタニヤフ政府の行動に対する必要な批判を排除することなく、イスラエル(国家)を支持することが重要だ」というわけだ。

 ちなみに、オーストリアにはナチス・ドイツ軍と連携してユダヤ民族の虐殺(ホロコースト)に関与してきたという歴史的負い目があって、戦後はほぼ無条件にイスラエル支持を表明してきた経緯がある。JJの言動は、戦後から続けてきたオーストリアの国是(国家理念)への挑戦のように受け取られたのかもしれない。

 

欧州最大音楽祭の優勝国の「悩み」

 第69回ユーロビジョン・ソング・コンテストでオーストリア代表、男性歌手JJ(ヨハネス・ピーチ、24)さんが優勝した。オーストリア人が優勝したのは2014年のConchita Wurst(コンチタ・ヴルスト)さん以来で、通算3回目だ。ヴルストさんの時もそうだったが、同国ではJJさんの話題で持ちきりだ。バーゼルから凱旋帰国したJJさんは19日、ストッカー首相、バブラー副首相、マインル=ライジンガー外相ら政府首脳から熱烈の歓迎を受けたばかりだ。

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▲ESC優勝者オーストリアのJJさん、ESC公式サイトから、2025年5月17日

 なぜ今頃、ユーロビジョン・ソング・コンテスト(ESC)の話をするのか、といわれるかもしれない。ここでは既に報じられたコンテストの内容を書くためではなく、JJさんの「優勝」後の話を伝えたいからだ。

 ストッカー首相はJJさんを前に、「あなたの優勝は国民を鼓舞するものだ」と笑顔で語りかけていた。それは事実だろうが、政府関係者ばかりか、ESCを放映するオーストリア国営放送(ORF)のヴァイスマン会長には別の悩みが出てきたのだ。

 欧州最大の国別音楽祭で優勝することは歌手だけではなく、国にとっても栄誉なことだ。そして優勝国は来年のESC開催地の権利を得る。即ち、2026年のESCは多分、音楽の都ウィーンで開催されることになるだろう。そこまではいいが、そのイベントを開催するためには巨額の費用がかかるのだ。都合が悪いことは、オーストリアの国民経済は現在、隣国ドイツと同様、リセッションであり、膨大な財政赤字を抱え、節約財政が要求されている時だからだ。1億5000万人以上の視聴者があるといわれる巨大な音楽祭を開催する財政的余力はないのだ。「ESCの優勝国」と言って喜んでばかりはいられないのだ。

 それではどのぐらいの費用が掛かるのか。スイスのバーゼルで開催されてESCの費用は約6000万ユーロ(約98億円)だった。それを開催地のバーゼル市とESCを放映するスイス公共放送(SRF)が支払う。約2130万ユーロをSRFが支払い、残りはバーゼル市とユーロビジョン(EBU)が負担するという。参考までに、ヴルストさんが優勝した後、、ウィーンで開催された2015年のESCの費用は2500万ユーロだった。関係者によると、「全てのコストが高くなっている」という。

 もちろん、欧州最大の音楽祭の開催は収入も入る。チケット代から広告代、放送権の他、ホテルや飲食業者にもその恩恵がある。しかし、2026年ウィーン開催の場合、ESCを放映するORFにとって、放送権や広告代を差し引いたとしても少なくとも約2000万ユーロは負担しなければならなくなる。

 そこでORF関係者はESC開催を優先にして、他の費用が掛かる番組を中止することを検討しているという。日刊紙「oe24」によると、‘ダンシング・スターズ‘の中止という話が出ている。


ウィーン市議会選で‘赤の砦‘は健在

 2日遅れとなったが、27日に実施されたウィーン市議会選挙の結果を報告する。第1党はルドヴィク市長(64)が率いる与党社会民主党(SPO)で得票率約39・4%で断トツ。それを追って極右政党「自由党」(FPO)で20・4%で前回(2020年)比でほぼ倍の得票率を獲得した。そのほか、「緑の党」14・5%、リベラル派政党「ネオス」10・00%、保守派政党「国民党」9.7%だった。投票率は約61・9%で前回比で下がった。

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▲赤の砦を守ったウィーン市のルドヴィク市長、ウィーン市公式サイトから

 ウィーン市議会は‘赤の砦‘と呼ばれ、終戦から現在まで社民党(前社会党)が第1党で統治してきた。ルドヴィク市長の社民党は前回比で2・24%得票率を落としたが、他の政党の追随を許さない強さがあった。選挙で得票率40%前後を獲得できる政党は今日、非常にまれだ。社会福祉政策、交通網、住居、治安状況で他の欧州の都市を凌いでいる。音楽の都として世界から多くの観光客を呼ぶ一方、ドナウ川沿線には国連都市を誘致するなどインタナショナルなインフラを完備し、ウィーン市は国際会議の開催地ナンバーワンを続けている。

 問題点は難民・移民の殺到だ。ウィーン市はあと数年で200万都市になるが、人口増加の背景には移民・難民の増加がある。ウィーン市の公共学校ではイスラム系生徒の数がカトリック系生徒の数を上回っている。その結果、ドイツ語ができない生徒が増え、ひいては学力の低下がみられる。ウィーンのオーストリア人家庭では経済的に可能ならば、公共学校に子供を送らず、私立学校に通わせるケースが出てきている。

 市の財政は赤字だが、観光業が順調に成長している限り、市の財政運営はまだ破綻することはない。ただ、新型コロナのパンデミックやウクライナ戦争の影響でエネルギー価格は急騰し、物価高を誘発して市民の生活は苦しくなってきている。そのような中、シリア人の難民家庭が月4000ユーロを超える支援を受けていることが報じられ、市民の中に社民党主導の難民政策への批判の声が聞かれる。

 極右「自由党」は選挙戦では社民党の難民政策を批判してきたが、ルドヴィク市長の赤の砦を脅かすことは今回もできなかった。それほど70年余りの間で築かれてきた社民党の政治基盤、ネットワークは強固というわけだ。

 選挙後、ルドヴィク市長が主導する連立交渉が始まっているが、大方の予想で社民党とネオスの現連立政権が再現されるものとみられている。ルドヴィク市長は「迅速に連立政権を発足させたい」と述べている。一方、ウィーン市自由党のネップ党首は「わが党はいつでも政権入りする用意があるが、社民党はわが党の政権参加を拒否している。わが党に投票した20%の市民の声を殺している。民主主義に反する。いずれにしても、わが党は野党として社民党の政策、腐敗やスキャンダルを暴いていく」と強調している。

 ちなみに、自由党は選挙の度に得票率を伸ばすが、他の政党が自由党との連立を拒否していることもあって、政権担当は難しい。昨年9月末の国民議会選挙で自由党は初めて第1党に躍進、キックル党首は首相ポストをほぼ手に入れていたが、土壇場で国民党との連立交渉が破綻したばかりだ。

音楽の都ウィ―ンの市議会選の見通し

 ウィーン市議会選挙(定数100)が今月27日、実施される。現地の複数のメディア報道によれば、ルドヴィク現市長の与党「社会民主党」(SPO)の第1党はほぼ確実視されているが、2020年の前回選挙の得票率41・6%を維持するのは難しいと予想されている。一方、前回の市議会選で党スキャンダル事件〈イビザ事件)が発覚して得票率が急落した極右政党「自由党」が再び勢いを回復する動きを見せている。また、社民党の連立政権ジュニア・パートナー、リベラル派の「ネオス」と野党「緑の党」が支持率を伸ばしてきた。そのほか、「共産党・左翼」同盟と前自由党党首のシュトラーヒェ氏が率いる「チームHCシュトラーヒェ」(HC)が市議会選の議席獲得を狙っている。有権者数は約111万人。

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▲ウィ―ン市長ルドヴィク氏、ウィ―ン市当局公式サイトから

 先ず、前回の市議会選挙(2020年10月11日実施)の結果を振り返る。ルドヴィク市長率いる社民党は得票率を2015年の選挙より2.0ポイント増の41.6%に伸ばし、大差で第1党の地位を保った。「緑の党」は14.8%(3.0ポイント増)、リベラル派の「ネオス」も7.5%(1.3ポイント増)と得票率を伸ばした。

 一方、2015年には30.8%を得票した極右の自由党は、前党首のスキャンダルや党の分裂が影響し、7.1%(23.7ポイント減)と惨敗した。多くの自由党支持者の票が、中道右派の国民党に流れたとみられ、国民党の得票率は20.4%(11.2ポイント増)となり、第2党に躍進した。投票率は65.3%と過去2番目に低かった。

 ウィ―ン市議会は‘赤の砦‘と呼ばれ、戦後から現在まで社民党が統治してきた。交通網を完備し、観光都市、国際会議の開催地としての評判を確保し、国際原子力機関(IAEA)や国連犯罪麻薬監視機関(UNODC)などの本部を誘致して第3の国連都市と呼ばれてきた。「世界で最も住みやすい都市」にこれまで何度も選出された。一方、冷戦時代、東西両欧州の架け橋として約200万人の政治亡命者が旧ソ連・東欧諸国から殺到した。また2015以降、中東・北アフリカから多くの難民が入ってきた結果、移民・難民問題が大きな政治問題となってきている。

 選挙争点は教育、住居問題などの他、増加する難民対策だ。小・中等公共学校でイスラム系出身の家庭の生徒がカトリック教の家庭の子供より多くなったことが明らかになったばかりだ。ウィーン市教育関係者はドイツ語を話せない生徒が多くなり、頭を抱えている。ドイツ語学習を如何に徹底するかなどが今回の選挙でもテーマとなっている。ウィ―ン市はあと数年で200万人都市入りするが、人口増加の主因は移民・難民の増加だ。換言すれば、イスラム系移民・難民の増加だ。

 最後に、ウィ―ン市議会選の見通しを簡単に紹介する。SPOの第1党は確実だが、前回より得票率を少し落とすだろう。その最大の理由はFPOが支持率20%を超える勢いを見せているからだ。シリア出身の子だくさんの難民家庭が月4000ユーロ以上の援助金を受けていることが報道されると、ウィーン市民の平均賃金の倍以上の手当てが働いてもいない難民に補助されていることに市民の不満と疑惑が高まった。そのため、SPO主導の難民政策への批判の声が再び強まってきている。一方、FPOはイビザ騒動の影響も薄れてきていることもあって、2015年の選挙時の得票率31%に迫る支持を集めるのではないかと予想されている。

 オーストリア連邦レベルでは与党第1党の国民党は前回の選挙ではFPO離れした票を吸収して20%を超える得票率を得て第2党になったが、今回は選挙戦が始まる直前、国民党のマーラー党首の不正容疑問題がメディアに流れたこともあって、支持率を落としている。一方、都市に強い「緑の党」と連邦レベルで初の政権入りした「ネオス」は得票率をアップさせることが考えられる。

オーストリアで3党連立の新政権発足へ

 アルプスの小国オーストリアで27日、中道右派「国民党」、社会民主党、リベラル派「ネオス」の3党は連立政権を発足することで合意した。新政権の閣僚が決定し、ネオスが3月2日の党総会で連合参加の承認を得たならば、3日にも新政権が正式に発足する運びだ。3党の連立政権は同国では初の試みだ。新政権の任期は5年。

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▲次期首相の国民党党首のクリスティアン・ストッカー氏、国民党公式サイトから

 新政権発足は難産だった。国民議会選挙が昨年9月29日に実施された。投票結果で第2党の「国民党」が主導となって社会民主党、そしてリベラル派「ネオス」の3党が連立交渉を始めたが、ネオスが離脱。次に国民党と社民党の2党、そして国民党と第1党の極右「自由党」の2党の連立交渉が次々と行われたが、いずれも合意に至らずに終わった。自由党は新たな選挙の実施を要求したが、国民党は一度は破綻した社民党とネオスとの3党連立交渉を再開し、ようやく連立政権の発足にたどり着いたわけだ。総選挙から新政権合意まで5カ月余りが経過した。同国では最長記録だ。
(国民議会選挙の結果、極右政党「自由党」が約28・8%の得票率で連邦レベルで初めて第1党に躍進。「国民党」は26・3%、社会民主党21・1%、リベラル政党「ネオス」9・2%、そして「緑の党」8・3%だった)

 3党が合意した政府プログラムは「今、正しいことを、オーストリアのために」というタイトルで210頁に及ぶ。国民党のクリスティアン・ストッカー党首(64)、社民党のアンドレアス・バブラー党首(52)、ネオスのベアーテ・マインル=ライジンガー党首(46)は27日、ファン・デア・ベレン大統領に最終的な政府樹立のプロセスを報告した後、記者会見を開き、政府プログラムを発表した。
 
 政府プログラムは「合意と実用性」を重視、「大切な点は党の利益のためではなく、オーストリアのために」をキャッチフレーズにし、3党間の連携の重要性を記している。閣僚ポストは国民党が首相、内相、経済相、国防相など6閣僚、社民党は副首相、財務相、法務相など6閣僚、ネオスは外相と文相の2ポストを得る。そのほか、7次官級(国家書記官)ポストが予定されている。

 以下、オーストリア国営放送のヴェブサイトの記事を参考に、政府プログラムの概要を紹介する。

 財政問題では、政府はEUの財政規則に基づき、 財政健全化を進める方針だ。今後7年間で財政の健全化を図る。2025年の予算は63億ユーロ、翌年26年は87億ユーロ(約1.5兆円)となっている。

 移民政策で、内務省を担当する国民党が主導となって厳格な政策を実施し、家族の呼び寄せを一時的に禁止し、14歳未満の未成年者(イスラム教徒の女性)のスカーフ着用禁止が明記されている。

 ちなみに、オーストリア南部ケルンテン州のフィラッハで2月15日、23歳のシリア人がナイフで路上の通行人を襲撃し、1人の14歳の男性を殺害、5人に重軽傷を負わす事件が起きたばかりだ。カルナー内相は16日、フィラッハで記者会見を開き、「容疑者はイスラム過激テロ組織『イスラム国』(IS)シンパで、犯行は宗教的動機に基づくテロだ」と説明した。家宅捜査された容疑者の家にはISの旗があった。カルナー内相は新政権でも内相を務める予定だ。

 社会政策では、貧困対策の一環として 「子ども基礎保障」 を導入し、2030年までに子どもの貧困を 半減 することを目指す。現在の社会保障制度は 「新・社会保障制度」 に改定され、統一の給付額を設けること、家賃値上げの凍結などが記されている。

 オーストリア軍の強化計画は継続され、欧州の防空システム 「スカイシールド」 にも参加する。公共放送(ORF)の受信料は据え置き。自由党は受信料の廃止を強く要求してきた。また、学校給食の充実、幼稚園の2年義務制などが挙がっている。

 教育分野では、ネオスが主導となって教育改革を実施、学校でのスマートフォン禁止 と 全日制学校の拡充 保護者の責任を強化 し、学校での問題児、生徒に対する対応の厳格化などが目標となっている。

 同国の議会政党は5政党で、国民党、社民党、ネオスの3党が与党、自由党と緑の党の2党が野党となる。なお、自由党は総選挙では第1党に躍進し、キックル党首は国民党との連立交渉を行ったが、内相のポストを主張し、国民党との間で閣僚の分割問題で妥協を拒否したため、連立交渉が暗礁に乗り上げた経緯がある。

フィルターバブル現象の恐怖

 オーストリア南部ケルンテン州のフィラッハで15日、23歳のシリア人がナイフで路上の通行人を襲撃し、1人の14歳の男性を殺害、5人に重軽傷を負わす事件が起きた。ナイフで通行人を襲撃する容疑者を目撃した42歳の男性が自分の車を容疑者にぶつけ、犯行をストップ。駆け付けた警察官が容疑者を逮捕した。コラム欄で報告済みだ。

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▲テロ事件の犠牲者を追悼する人々とロウソク、2025年02月16日、オーストリア国営放送の中継からスクリーンショット

 カルナー内相は16日、フィラッハで記者会見を開き、「容疑者はイスラム過激テロ組織『イスラム国』(IS)シンパで、犯行は宗教的動機に基づくテロだ」と説明した。家宅捜査された容疑者の家にはISの旗があったという。犯行は単独と見られている。

 捜査が進むにつれて浮かび上がってきた事実は、平凡なシリア出身の青年がオンラインを通じて短期間でイスラム過激派思想に洗脳され、テロ行為を行ったということだ。オーストリアの捜査当局は「TikTokなどのソーシャルネットワークを通じて数週間、数カ月で普通のイスラム教の若者が過激化することには驚かざるを得ない」と述べている。

 実際、フィラッハの容疑者はTikTokのプラットフォームを通じて短期間で 過激化している。容疑者の携帯電話にはISのプロパガンダ資料が残っていた。ISに忠誠を宣言するビデオが録音され、端末に保存されていたが、まだ送信していなかった。「犯行3日前にナイフを購入し、襲撃を決意したようだ」という。

 ところで、TikTok はアルゴリズムが非常に強化されたプラットフォームだ。TikTokにはISのプログラムがある。TikTok では目立たない動画から IS のプロパガンダに非常に迅速に移行でき、過激なコンテンツが飛び出してくる。多くのインフルエンサーが登場し、イスラム教の教えを感情的にアピールする。

 英国の「キング・カレッジ・ロンドン」で教鞭を取るテロ専門家ペーター・ノイマン教授はオーストリア国営放送とのインタビューで、「ハマスのイスラエルへの奇襲テロ事件以後、オンラインを通じて急速に過激化する若者が増えてきた」という。10年前、刑務所に入ったイスラム教の若者がそこで過激派のイスラム教徒と出会い、過激主義の道を歩みだしたり、イスラム寺院で欧米社会への憎悪を説教する伝道師から影響を受けるといったケースが多かった。オンラインでの過激化は、比較的短期間に残忍な行為につながる可能性がある」という。

 ガザでの戦争により、多くの人がこの問題に興味を持ち出しているので、テロリストや過激派がこの話題を悪用している。インフルエンサーは、特に若者を感情的にし、道具化し、最終的に「フィルターバブル」という現象の世界に陥らせる。

 「フィルター・バブル現象」とは、自分の見たい情報以外をインターネットで見ることができなくなり、自分の観点に合わない情報から隔離され、同じ意見を持つ人間同士で群れ集まるようになることだ。インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断するため、自分が見たい情報しか見なくなる状況にいつの間にか陥るわけだ。

 IT専門家によると、「フィルターバブル」に陥ることはこれまで以上に簡単だという。「最近の若者がプラットフォームをノンストップで利用しているのを見れば、フィルター・バブル現象がどれほど起きやすいか想像できる」という。

 ノイマン教授は「過激化が加速しているので、治安当局も迅速に対応しなければならない」という。具体的には、オンラインで過激なコンテンツを発信するインフルエンサーを追放し、プラットフォームの閉鎖などが考えられる。

 オーストリアのカルナー内相はシリア人やアフガニスタン人の亡命希望者の一斉検査、メッセンジャー監視などを検討しているが、個人情報の保護、人権擁護といったハードルがあるため、実行するには乗り越えなければならない問題があるのが現状だ。

オーストリアで親IS派のテロ事件

 ドイツとオーストリアはドイツ語を公用語とすることもあって兄弟国といわれる。もちろん、ドイツが兄貴分でオーストリアは弟の立場だ。ドイツで起きた事例、事象は一定の期間が経過するとオーストリアでも起きると言われてきた。特に、社会的現象やファッションなどの流行だ。 

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▲テロ現場を監視するパトロール、2025年02月15日、オーストリア国営放送からスクリーンショット

 ところで、ドイツで昨年から今年にかけ、イスラム主義の宗教的動機による襲撃テロ事件が頻繁に起きている。独南部バイエル州のミュンヘンで13日、車がデモ行進中の人々に突っ込み、これまで2人が死亡、30人余りが重軽傷を負うというテロ事件が起きたばかりだ。容疑者はアフガニスタン出身の24歳のイスラム教徒だ。その2日後、オーストリア南部ケルンテン州のフィラッハで15日、23歳のシリア出身者(滞在許可書を所持)がナイフで路上にいる人々を無差別襲撃し、14歳の男子が死亡、5人が重軽傷を負う事件が起きた。

 ナイフで人々を襲撃する容疑者をたまたま目撃したシリア出身の42歳の男性が自分の車を容疑者にぶつけ、犯行をストップ。駆け付けた警察官が容疑者を逮捕した。

 カルナー内相は16日、フィラッハで記者会見を開き、「容疑者はイスラム過激主義テロ組織『イスラム国』(IS)シンパで、犯行は宗教的動機に基づくテロだ」と説明した。家宅捜査された容疑者の家にはISの旗があったという。犯行は単独と見られている。

  ケルンテン州のカイザー知事は「この不可解で残虐行為を再発させないためにもケルンテン州に住む難民は誰でも法と秩序を尊重し、私たちの規則と価値観に適応しなければならない。これに違反した者は誰でも、裁判を受け、投獄され、国外追放される」と述べる一方、殺害された14歳の少年の遺族に深い哀悼の意を表した。

 ドイツで襲撃テロ事件が起きたばかりだったこともあって、オーストリア国民もショックを受けている。同時に、不法難民に対する強硬対策を求める声が再び高まってきている。なお、フィラッハには難民収容所があるが、今回の犯行と難民収容所関係者との繋がりについて、警察当局は捜査中だ。

 ウィーンでは昨年8月8日、世界的人気の米国のポップスター、テイラー・スウィフトさんのコンサートが予定されていたが、テロの危険性が迫っているとして中止されたことがある。テロ容疑を受けた主犯の19歳の男性(国籍オーストリア人、両親北マケドニア出身)は拘束された直後、コンサート襲撃計画を練っていたことを明らかにしている。

 ウィーン市内では2020年11月2日、新型コロナ感染防止の第2ロックダウンの開始前日、イスラム過激派による銃撃テロ事件が発生した。4人の市民(男性2人、女性2人)が死亡、容疑者は警察官によって射殺された。事件の主要容疑者とみられる人物は北マケドニア出身で20歳。IS支持者だった。

 ちなみに、過去ウィーンを舞台としたテロ事件としては、1975年12月21日、「OPEC襲撃事件」がよく知られている。テロリスト・カルロス一味が閣僚会議中の石油輸出国機構(OPEC)本部を襲撃し、閣僚を含む多数の死傷者を出した。1985年にはパレスチナ人ゲリラ指導者アブ・ニダル容疑者がウィーン空港を襲撃して無差別銃乱射したテロ事件が発生した。両事件はオーストリアの2大テロ事件と呼ばれている。


  
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