ウィーン発 『コンフィデンシャル』

 ウィーンに居住する筆者が国連記者室から、ウィーンの街角から、国際政治にはじまって宗教、民族、日常の出来事までを思いつくままに書き送ります。

東欧

「チェコ」と「スロバキア」で同日抗議デモ

 チェコで10月実施された下院選挙の結果を受け、アンドレイ・バビシュ前首相率いる右派ポピュリスト政党「ANO」、実業家トミオ・オカムラ氏が率いる右派ポピュリスト政党「自由と直接民主主義」(SPD)、そして、新党の右派「モトリスト」による3党連立政権が年内に発足する予定だが、首都プラハで17日、バビシュ氏を首相とした新政権の誕生に反対し、「チェコ共和国は売り物ではない」というスローガンを掲げ、数千人がデモを行った。参加者たちは欧州連合(EU)懐疑派政権の発足に対し、「法の支配が失われ、権力の乱用が生じる」と懸念している。

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▲チェコのパヴェル大統領、天皇陛下と会見、2025年7月25日、チェコ大統領府公式サイトから

 チェコのペトル・パヴェル大統領は17日、EUに批判的な億万長者であるバビシュ氏を首相に任命する義務を負わないと警告した。首相の任命権を有する大統領は、71歳のバビシュ氏が実業家であり補助金の受給者である一方、政治家でもあることから利益相反が生じていると指摘し、「もしバビシュ氏が利益相反を解決できないのであれば、私はバビシュ氏を首相に任命することを拒否する」と説明し、「バビシュ氏は首相に別の候補者を指名する方が賢明だ」と述べている。

 バビシュ氏は自身の企業を売却するつもりはない。2007年から施行されている利益相反防止法に基づき、バビシュ氏は2017年から2021年までの首相在任中、自身の企業を信託基金に委託したが、その後解散している。パヴェル大統領とバビシュ氏の話し合いが難航も予想される。

 報道によると、アンドレイ・バビシュ前首相率いる新政権は、16人の閣僚で構成される。ANOは首相とその他8つのポストに就く見込みだ。モトリス党は4つの閣僚ポスト、SPDは3つの閣僚ポストに就く予定だ。下院は5日、日系SPD党首のトミオ・オカムラ氏を国会議長に選出している。なお、ANOは10月初旬の議会選挙で圧倒的な差で勝利した。モトリス党とSPDを合わせると、議会200議席のうち108議席を占める。

 一方、1989年11月に共産主義政権に対する「ビロード革命」が起こってから36年目を迎えた17日、スロバキアでは数万人が左派民族主義者ロベルト・フィツォ首相率いる政府に抗議するデモを行った。

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▲当方とのインタビューに応じるスロバキア初代首相ウラジミール・メチアル氏(1993年3月13日、ブラチスラバの首相官邸で撮影)

 主催者によると、雨天にもかかわらず、首都ブラチスラバの政府庁舎向かいの自由広場で最大5万人が参加した。人々は共産主義独裁政権の崩壊を記念する一方、フィツォ首相率いる三党連立政権の終焉を要求し、「もうフィツォにはうんざりだ」と声を揃えて叫んだ。

 スロバキアでは、学生たちによる抗議活動がメディアの注目を集めている。フィツォ氏がスロバキア北部の町ポプラドにある高校を訪問する予定だった際、ある生徒が入り口前の地面にチョークで厳しい批判を書き込んだ。それが発端となり、インターネット上はチョークで書かれた反政府スローガンの画像で溢れかえっている。

 フィツォ政権は隣国ハンガリーのオルバン首相に倣い、対ウクライナ政策では武器支援拒否、親ロシア政策を推進する一方、公共放送RTVSの解散など司法・メディアの改革に乗り出してきた。EU)のブリュッセルからは「スロバキアが第2のハンガリーとなる」といった懸念の声すら聞かれる。

 ちなみに、フィツォ首相は昨年5月15日、同国中部ハンドロバで政治集会を終えて退出し、会場前に集まった市民と交流しようとした時、男性から5発の銃弾を受け、一発は腹部に命中し、重体となって近くの病院にヘリコプターで搬送され、緊急手術を受けるという暗殺未遂事件に遭遇した。スロバキアの政情はここにきて不安定さを増している。

 いずれにしても、チェコとスロバキアで同日、偶然にも抗議デモが行われたわけだ。 チェコの場合、EU懐疑派政権の誕生を恐れ、スロバキアの場合、フィツオ政権の反EU路線、ロシア接近などの外交路線に、それぞれ抗議したわけだ。

 チェコとスロバキアは共産党政権時代、「チェコスロバキア連邦」を構成していた同胞だった。それが民主改革(1989年)後、分裂し、1993年1月から独立国家となった。両国ともEUと北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。

燻り続けるセルビア人の「反米感情」

 セルビアの首都ベオグラードで11日、数百人が旧陸軍司令部があった建物の取り壊しに反対する抗議活動を行った。同司令部建物は1999年のコソボ紛争中、北大西洋条約機構(NATO)空軍に爆破され、破壊されたが、セルビア政府は2005年、同司令部建物の残骸を保存するために文化遺産に指定した。しかし、セルビア議会が今月に入り、その取り壊しを認め、その後に高級ホテルを建設する計画を「重要なプロジェクト」と認定したため、国民の一部で批判の声が上がっている。

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▲ベオグラードへの空爆に向かう米軍F−15E,1999年3月28日、米国防総省提供

 旧陸軍司令部建物の取り壊し決定のニュースに油を注いだのは、トランプ米大統領の義理の息子、ジャレッド・クシュナー氏が所有する投資会社アフィニティ・パートナーズが旧陸軍司令部の敷地に高級ホテル複合施設を建設する計画だということが明らかになったことだ。メディアによると、クシュナー氏の投資会社はセルビア側との間で99年間の賃貸契約を締結したという。

  セルビアのヴチッチ大統領は、ホテル建設プロジェクトを擁護し、「我々は彼らに土地を与え、彼らは少なくとも6億5000万ユーロを投資する。これは我が国にとって巨額の投資だ。これは売却ではなく長期リース契約だ」と強調した。同大統領によると、「ベオグラードのあらゆるものの価値が高まり、さらに多くの観光客が訪れることになるだろう。このプロジェクトは即座に10億ユーロ以上の価値を生み出す」という。

 なぜ、一部のセルビア人が米投資会社による高級ホテル建設計画に強く反対するのかを理解するためには、コソボ紛争中のNATOのベオグラード空爆に遡る必要があるだろう。それはNATO軍の空爆がセルビア国民にトラウマとして反米感情の源流となっているからだ。

 ユーゴスラビア(現セルビア)内のコソボ自治州で、独立を求めるアルバニア人とセルビア人との間で武力衝突が激化した。セルビアのミロシェヴィッチ大統領(当時)が1989年、コソボの自治権を剥奪したことから紛争が勃発。コソボのアルバニア人に対するセルビア側による民族浄化や虐殺行為が報告され、多数の難民が発生した。NATOは1999年3月24日、セルビアの民族浄化の阻止と人道上の理由からベオグラード空爆(アライド・フォース作戦)を始めた。ちなみに、この空爆作戦の最中、米軍のB-2爆撃機が誤って在ベオグラード中国大使館を爆撃し、死傷者を出す事態も発生し、一時期、米中間の関係が悪化した。

 米軍が主導したNATO軍のベオグラード空爆は、セルビア人に強い反米感情を植え付けた。セルビアのインフラに大きな被害が生じ、多くのセルビア人が犠牲になった。そのうえ、国連安保理の承認を得ずにNATOが軍事行動を行ったこともあって、セルビア側の米国憎しの感情を生み出したわけだ。

 ところで、NATO空爆後の米国とセルビアとの関係は緩やかだが改善してきている。セルビアは2006年、NATOの「平和のためのパートナーシップ」に参加した。米国とセルビアの両国関係を大きく改善させたのは、トランプ大統領が2020年9月4日、敵対関係にあったセルビアとコソボの仲介に乗り出し、両国の経済関係を正常化する歴史的協定が実現したことだ。米国が調停したセルビアとコソボ間の合意は両国の欧州連合(EU)加盟への一歩前進と受け取られた。トランプ大統領の第一期目の大きな外交上の功績となった。

 ただし、米国とセルビア両国は、コソボの国家承認問題では依然対立している。米国はコソボの独立を承認しているが、セルビアは反対だ。また、セルビアがEU加盟を目指しつつロシアや中国との関係を強化しようとしていることもあって、セルビアの対米関係の完全な正常化までにはまだ遠い。

 トランプ大統領の娘婿クシュナー氏の旧陸軍司令部跡での高級ホテル建設計画がセルビア人の反米感情を刺激する契機となるか、セルビアの経済成長を支援するプロジェクトとして歓迎されるか、ここ暫くは注視しなければならない。

チェコ下院選でバビシュ氏のカムバック

 3,4日の両日実施されたチェコ議会選挙(下院)の開票が行われ、アンドレイ・バビシュ前首相率いる右派ポピュリスト政党「ANO」が約35%の得票率を獲得し、圧勝した。一方、ペトル・フィアラ首相の保守派「市民民主党」(ODS)、「キリスト教民主人民党」(KDU-CSL)、そして中道リベラル派の「TOP 09」で構成された与党「選挙連盟」(シュポル)は約23%に留まった。
 また、右派リベラル派の「STAN」は11%、実業家トミオ・オカムラ氏が率いる右派ポピュリスト政党「自由と直接民主主義」(SPD)は8%、「海賊党」は9%の得票率を獲得した。そのほか、新党の右派「モトリスト」は7%を獲得し、議席獲得に必要な得票率5%をクリアした。

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▲アンドレイ・バビシュ氏、ウィキぺディアから

 将来の下院(定数200)は、ANOが80議席、ODS27議席、STAN22、海賊党18議席、KDU-CS16議席、SPD15議席、「モトリスト」13議席、TOP9は9議席となる予定だ。
 
 「ANO」の勝利は投票前から予想されていた。2017年から2021年までチェコ首相を務めた億万長者のバビシュ氏は「欧州連合」(EU)には懐疑的だ。EUのブリュッセルの官僚支配を嫌う。親EU路線を走ってきたフィアラ現政権とは明らかに異なる。

 ウクライナ支援政策の見直しも避けられなくなるだろう。チェコはウクライナ支援の「有志連合」のメンバーであり、ウクライナへの武器供与、兵士の訓練などをしてきた。ウクライナ戦争が始まって以降、ウクライナに2000点以上の重装備、火砲、戦車、ミサイル発射装置などを供与してきた。また、多数のウクライナ難民を受け入れ、キーウの防衛を支援するための「軍需品イニシアチブ」を立ち上げた。しかし、現政府のウクライナ支援に対して、「自国への配慮が不足している」と批判されてきた。国民の間にも支援疲れが出てきている。

 それに対し、バビシュ氏はウクライナでの停戦と軍事援助の停止を訴え、「チェコの政治家はこの問題に影響力を持たない。戦争が終わるまで待とう」と主張するなど、ウクライナ政策では、スロバキアとハンガリーの政策に近い。バビシュ氏はスロバキアのロベルト・フィツォ首相とハンガリーのヴィクトル・オルバン首相と良好な関係にある。バビシュ氏は彼らとブリュッセル批判の連合を形成する意向といわれている。

 経済の面でも国民の間には現政府に不満の声がある。特に、物価の高騰だ。2023年にはインフレ率が10%を超えた。現在は3%を下回ってきたが、国民は購買力の低下に悩んでいる。

 ちなみに、バビシュ氏は熱心なトランプ氏ファンだ。バビシュ氏の支持者たちは、トランプ氏の「アメリカを再び偉大に」に倣い、「強いチェコを」と印刷された赤い帽子を被っているほどだ。

 いずれにしても、バビシュ氏は新政権を発足させるためには連立相手を必要とする。ANOのパートナー候補としては、SPDが挙げられている。ただ、SPDは政権外に留まり、ANOの少数与党内閣を容認する可能性も考えられる。問題は、ANOとSPDの両党で過半数を獲得できなかった時だ。その場合、初めて議会選挙に参加した右派政党「モトリスト」が挙げられる。選挙戦終盤に入り支持率を伸ばした「モトリスト」は、「バビシュ氏を支援する」と公言してきた。

 ただ、問題はある。SPDも「モトリスト」もEU離脱を主張していることだ。EUに批判的だが、離脱には反対のバビシュ氏にとって2党との連立は容易ではない。

チェコ議会選で右派ポピュリスト政党リード

 チェコで3日と4日の両日、議会選挙(下院200議席,任期4年)が実施される。複数の世論調査によると、実業家で資産家のアンドレイ・バビシュ前首相が率いる右派ポピュリスト政党「ANO2011」が支持率で大きくリードし、同党の政権復帰が現実味を帯びてきている。

 チェコでは投票は、3日午後2時から同日午後10時まで、翌日4日午前8時から再開され、同日午後2時まで行われる。投票の大勢は4日夜には判明する予定だ。選挙には26政党、選挙連合、グループが参加しているが、議会で議席獲得に必要な得票率5%をクリアする政党は7政党に留まるものと予想されている。

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▲日本を訪問して石破茂首相と会談するチェコのペトル・パヴェル大統領、2025年7月25日、首相官邸公式サイトから

 同国からの情報によると、ANOは支持率30%から33%とトップを走り、ペトル・フィアラ首相が率いる現政権の連立同盟を10%以上リードしている。ただし、バビシュ氏のANOが勝利したたとしても、1党で過半数を獲得するのは難しく、他政党との連立が不可欠となる。

 ANOの連立相手としては、実業家トミオ・オカムラ氏が率いる右派ポピュリスト政党「自由と直接民主主義」(SPD)が挙げられている。SPDは政権外に留まり、ANOの少数与党内閣を容認する可能性も考えられる。問題は、ANOとSPDの両党で過半数を獲得できなかった時だ。その場合、初めて議会選挙に立候補する右派政党「モトリスト」が挙げられる。選挙戦終盤に入り支持率を伸ばしてきた「モトリスト」は、「バビシュ氏を支援する」と公言している。

 前回の総選挙(2021年10月)では、バビシュ首相が率いる「ANO2011」は反バビシュで結束したリベラル・保守政党の野党連合(Spolu)と左翼のリベラルの政党「海賊党」と「無所属および首長連合」(STAN)の選挙同盟に僅差ながら敗北し、野党連合のフィアラ首相を中心とした5党から成る連立政権が発足した。

 いずれにしても、欧州連合(EU)懐疑派のバビシュ氏が政権を握った場合、フィアラ現政権の親EU路線に修正が出てくるだろう。また、ウクライナ支援政策の見直しも避けられなくなると受け取られている。

 ウクライナ支援問題は選挙では争点の一つだ。チェコは「有志連合」のメンバーであり、ウクライナへの武器供与、兵士の訓練などをしてきた。ウクライナ戦争が始まって以降、チェコはウクライナに2000点以上の重装備、火砲、戦車、ミサイル発射装置などを供与してきた。その一方、国民の間に支援疲れが出てきている。

 一方、チェコの国民経済は新型コロナウイルス危機からようやく回復してきた。旧ソ連・東欧諸国の経済分析で有名な「ウィーン比較経済研究所」(WIIW)によると、「チェコ経済は2025年第1四半期も回復を続け、GDPは前期比0.8%増、前年比2.2%増となった。実質所得の向上と低インフレが支出を支え、成長は主に家計消費によって牽引された。労働市場の状況は引き続き良好。雇用は、サービス業と建設業の雇用増加に支えられ、前四半期比0.7%増、前年比1.1%増となった。平均粗賃金は名目ベースで前年比6.7%増、実質ベースで3.9%増となり、家計購買力の回復を後押しした。インフレは2025年初頭も引き続き緩和し、国内外のコスト圧力の好ましい傾向を反映している。。第1四半期の実績と国内需要の基調的な動向を踏まえ、2025年のGDP成長率は2.0%」という。

ポーランド、独に巨額の戦争賠償金要求

 第2次世界大戦が終戦して80年が経過したが、戦争の痛みや被害が既に癒されたか否かは犠牲者の個々の事情によって異なってくるだろう。これは国にとっても当てはまることかもしれない。

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▲ナブロツキ大統領(左)を迎えるドイツのメルツ首相、2025年9月16日、独連邦首相府公式サイトから

 今年8月に大統領に就任したポーランドのナブロツキ大統領は16日、ドイツを初訪問し、シュタインマイヤー独大統領と会談したほか、メルツ首相とも会合した。初顔合わせだったが、42歳の若いポーランド新大統領はシュタインマイヤー大統領との会談ばかりか、メルツ首相との話し合いの中でもドイツ・ナチス政権による戦争賠償金を要求したという。1兆3000億ユーロの賠償金請求だ。

 独のメディアによると、シュタインマイヤー大統領もメルツ首相も隣国の新大統領に対してやんわりと拒否したという。ベルリンの大統領府の報道官によると、シュタインマイヤー大統領は「戦争時の賠償金問題はドイツの観点では法的に解決されている」と述べる一方、「しかし、戦争被害者に対する追悼や記念行事の促進は依然として共通の懸念事項である」と答えたという。

 ナブロツキ大統領は訪独直前、ドイツの大衆紙「ビルト」とのインタビューの中で、「賠償問題はまだ法的に解決されていない」と述べ、「ドイツが戦争賠償金として1兆3000億ユーロを支払うことを願っている。この額は非常に綿密で確固たる科学的研究に基づいてはじき出された数字だ」と説明している。

 ちなみに、大統領選でナブロツキ氏を支援した愛国主義的右派政党「法と正義」(PiS)は、政権時代にこの問題に関する議会委員会を設置し、同委員会は3年前、報告書の中で、賠償額を1兆3000億ユーロと概算している。

 ポーランドへのドイツの侵攻は1939年9月1日に始まり、ダンツィヒ(現在のグダニスク)近郊のヴェスタープラッテへの砲撃に先立ち、当時のドイツ・ポーランド国境付近に位置するヴィエルンはドイツ空軍によって爆撃された。この攻撃だけで約1200人の民間人が犠牲になった。戦争全体でポーランドでは約600万人が命を落とした。

 会談に関する政府副報道官の声明では、ナブロツキ氏の賠償要求については言及されていないが、「第二次世界大戦とドイツ占領の惨禍を経て、ポーランドとの和解を促進することは、ドイツ政府にとって歴史的な責務であり続ける」と述べられている。

 メルツ首相はナブロツキ大統領との会談では、ロシア軍の無人機がポーランドの領空侵犯した件に言及し、「ドイツは常にポーランド側に立っている。隣国の領空監視強化のため、ドイツ軍のユーロファイター戦闘機を2機から4機に増やした」と述べている。

 両国関係では、メルツ政権が不法難民対策の一環として対ポーランド国境の監視強化したことから、ポーランド側は「ドイツは不法移民をポーランドに押し返している」と非難、同じように対独国境管理を導入するなど、一時期、両国関係は険悪化した。ただ、ウクライナ戦争では両国とも緊密な関係を維持している。メルツ首相は5月の首相就任直後、まずフランスを訪問した後、ポーランドを訪問し、ドイツ・ポーランド両国関係が重要であることを示したばかりだ。


 【参考】ドイツの戦争賠償金問題
 ドイツ政府は「賠償問題は戦後直後、解決済み」という立場を堅持してきた。日本は戦後、サンフランシスコ平和条約(1951年)に基づいて戦後賠償問題は2国間の国家補償を実施して完了済みだが、第1次、第2次の2つの世界大戦の敗戦国となったドイツの場合、国家補償ではなく、ナチス軍の被害者に対する個別補償が中心だ。ナチスによるホロコーストなどの被害者への補償は、国家や企業が設立した基金などを通じて行われ、これは戦時賠償とは別の問題として扱われた。ポーランドの賠償請求に対しては、ドイツ政府は1953年のポーランドによる賠償放棄宣言を理由に、「既に解決済みだ」としている。

 ドイツにとって過去問題は政治的にはフランスとの関係だが、損害賠償問題はバルカン諸国や旧東独諸国で常にくずぶってきた厄介なテーマだ。例を挙げる。シュタインマイヤー大統領は2024年10月末、アテネを公式訪問した時、ホストのサケラロプル大統領(当時)から第2次世界大戦でギリシャが受けた損害と、当時のナチス・ドイツに支払わされた強制貸付について賠償を請求された。サケラロプル大統領は「戦争賠償と強制貸付の問題は、ギリシャ国民にとって今なお非常に重要な意味を持っている」として、「同問題は依然として宙に浮いたままだ。ナチス・ドイツ軍のギリシャ占領時代(1941〜44年)の蛮行、ユダヤ系住民のアウシュビッツ収容所送還、経済的略奪などに対し、賠償金を支払うべきだ」と語った。

ポーランド、NATO条約第4条の協議要請

ワルシャワからの情報によると、ロシアから複数の無人機がポーランド領空を侵犯し、北大西洋条約機構(NATO)戦闘機が無人機を打ち落とす、といった事態が生じた。ポーランドのドナルド・トゥスク首相は10日、「ロシアの大規模な挑発だ」とし、NATO条約第4条に基づき協議を要請した。同条項は、NATO加盟国が外的脅威にさらされていると判断した場合、同盟国と協議することを規定している。

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▲トゥスク首相、議会でロシア軍の領空侵犯を報告、ポーランド政府公式サイトから、2025年9月10日

 トゥスク首相は同日、議会で「今回の事件は、ポーランド領空における過去の無人機攻撃とは比較にならない。ロシアのミスや軽微な挑発によるものでなかった。ベラルーシから直接、相当数の無人機が飛来したのは初めてだ」と述べた。

 ロシア軍のウクライナ侵攻以来、ロシア側の領空侵犯はポーランドやバルト3国で過去、何度が生じたが、今回のように大規模な無人機の領空侵犯は初めてであり、NATO軍がロシアの無人機を打ち落とすことも初めてだ。

 同国のシコルスキ外相は、「ロシアの行動は意図的なものだ。ポーランド領土だけでなく、NATOとEUの領土に対する前例のない攻撃だ。19件もの領空侵犯が一晩で偶然に起こるはずがない」と述べた。

 9日の夕方(現地時間)、ロシアがドローンとミサイルを使ったウクライナへの大規模な空爆を行ったという最初の情報を受け、NATOの早期警戒管制空中システム(AWACS)などが警戒態勢に入っていた。NATO報道官は10日、「NATOの航空機が同盟国の領空で潜在的な脅威に遭遇したのは初めてだ」と述べた。この領空侵犯の際、ポーランドのドイツのパトリオット防空システムも警戒態勢に入り、イタリアの早期警戒機も出動したという。

 ドローンは9日夜から10日未明にかけて飛来し、トゥスク氏によると19機がポーランド領空に侵入し、最大4機を撃墜した。大半はロシアの同盟国ベラルーシ側から侵入したという。ポーランドに駐留していたオランダ軍のF35戦闘機などが対応に当たった。この影響でポーランドの首都ワルシャワの国際空港への離着陸が一時停止された。

 ワルシャワの内務省からの予備情報によると、これまでに7機のドローンとロケット弾の残骸が押収された。警察と軍はドローンとドローン部品の捜索を続けている。

 現地からの情報によると、ロシア軍の無人機の領空侵犯で死傷者は出ていない。ただ、ドローンがポーランド東部の住宅に衝突し、建物の屋根が損傷したことが報じられた。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアがポーランド上空にロシア製無人機を意図的に飛行させた。今回の無人機は事故と言えるようなものではない。欧州にとって極めて危険な前例だ」と述べ、共同防空システムの導入を改めて訴えた。

 トランプ米大統領は10日、ポーランドのナブロツキ大統領と電話会談し、、「ロシアがドローンでポーランド領空を侵犯した」と述べ、ポーランドへの支援を約束し、同国への米軍増派にも前向きな姿勢を示している。ナブロツキ大統領は9月3日、ホワイトハウスを訪問し、トランプ氏と会談したばかりだ。報道によると、ポーランドには約8,000人の米軍が駐留している。

 NATOのルッテ事務総長は10日、「意図的であったか否かに関わらず、全くの無謀であり、危険だ」と強調。また、EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はストラスブールで行われた欧州議会での一般教書演説で、ポーランドに連帯を表明する一方、「ロシアに対する更なる制裁が必要だ」と述べた。

 一方、ロシア国防省は10日、ポーランドが,領空侵犯したロシアのドローンを撃墜したと発表したことを受け、「ウクライナの軍産複合体への大規模攻撃を実施中に生じた可能性があるが、ポーランド領内を目標とする計画はなかった」と弁明した。しかし、ロシア外務省はウェブサイト上で、「ポーランドがウクライナ紛争をエスカレートさせるために虚構を捏造しようとしている」と非難した。ロシアでは外務省と国防省で今回の出来事に対する反応が異なっている。

難民支援にも「善意の賞味期限」有り?

 ロシア軍がウクライナに軍事侵攻を開始して既に3年半が経過した。ロシア軍はウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州、ルハンスク州)をほぼ占領、南部のヘルマン州、サボリーシャ州でも優利に戦争を展開している。ただ、ロシア軍だけではなく、ウクライナ軍にも戦闘疲れがみられる。同時に、ウクライナ避難民を積極的に受け入れた西側にも息切れが出てきた。

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▲ウクライナ避難民への社会保障給付の延長を拒否したナブロツキ大統領、2025年8月25日、ポーランドの日刊紙「ヴィボルチャ」ウェブサイトから

 ウクライナ戦争が勃発した直後、多くのウクライナの女性や子供たちが隣国のポーランドに避難した。ロシアに対して歴史的に警戒心が強いポーランド人は隣国から避難してきたウクライナ人が国境の駅に到着すると、食料や住居を提供するなど、ウクライナ避難民を温かく歓迎した。

 そのポーランドでナブロツキ新大統領は25日、ウクライナ難民への社会保障給付の延長に拒否権を発動した。「就職していないウクライナ人には無償で医療を受けさせるべきではない」と説明、ウクライナ難民への社会保障給付金の支給を就労状況に依存させる考えを明らかにした。

 同国では、保護ステータスを持つウクライナ国民は、子ども1人につき月額180ユーロ相当の児童手当を受け取る。2人目以降の子どもには、最初の2年間、月額117ユーロの育児手当が支給される。難民はまた、教育制度と医療サービスを無料で利用することができ、ポーランドの家族と同等の権利を有する。ポーランドの難民の就労率は65%で、保護ステータスを持つウクライナ国民の合計約98万9000人がポーランドに居住している。その大部分が女性と子供たちだ。トゥスク首相率いる中道左派連合の投票により可決されたこの法案は、難民が2026年3月までこれらの社会保障給付を受け続けることを規定していた。

 このニュースを聞いた時、「クリスマス・キャロル」の作者、英国作家チャールズ・ディケンズ(1812〜70年)とデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805〜75年)の交流を思い出した。両作家は親交があった。アンデルセンは1857年、ディケンズ宅を訪問し、そこに宿泊した。ディケンズと家族は数日か1週間ぐらいの滞在と考えていたが、ディケンズ家の歓迎もあり、ロンドンが気に入ったアンデルセンは滞在し続けた。親切なディケンズの家族だったが、「デンマークの客はいつ出ていくだろうか」という当惑の声が飛び出してきた。ホストの家族の事情など知らないアンデルセンはその後も長期、ディケンズ宅に滞在した、というエピソードだ。

 ポーランドをディケンズの家族、アンデルセンをウクライナ難民とみると、最初は善意から歓迎した事項も時間の経過と共に、その善意が重荷になってくる。それは珍しいことではなく、多くの人が程度の差こそあれ人生で何度かは経験することだろう。これは国にも当てはまる。

 ポーランドではロシア軍の侵略を受けるウクライナを支援することで与野党の間には大きな相違はなかった。ただ、ロシアがウクライナ産穀物の黒海経由での輸出にストップをかけて以来、安価な  ウクライナ産穀物がポーランド市場に流れ、ポーランドの農民たちがウクライナ産穀物の流入に反対したため、政府はウクライナ産穀物の取引禁止策を取らざるを得なくなり、、ポーランドとウクライナ間で一時期不協和音が流れたことがあった。

 ところで、ポーランドで6月1日、大統領選挙の決選投票が実施され、愛国主義的右派の野党「法と正義」(PiS)の候補者カロル・ナブロツキ氏が親欧州派の与党リベラル派「市民プラットフォーム」(PO)が支持するラファウ・チャスコフスキ氏を破り、当選した。ナブロツキ氏が当選したことで、大統領府をPiS、政府が与党POが主導するというねじれ関係が今日まで継続されている。ナブロツキ氏は選挙戦中でも`ポーランド・ファースト`を掲げ、ウクライナ支援の見直しを主張してきた。

 ウクライナへの支援は単なる善意ではなく、欧州全土の安全保障を守るか否かの問題だ。それにしても、戦争が長期化し、その停戦の見通しが立たない現状では、避難民を収容するという善意の政策もその時々の政治、経済事情に影響される。ちなみに、ナブロツキ大統領の拒否権をひっくり返すには、議会の3分の2の支持が必要だが、トゥスク現政権はそれを有していない。

 なお、2015年夏、中東・北アフリカから多くの難民が欧州に殺到、ドイツには100万人の難民が殺到した。当時のメルケル首相は人道的視点から難民のウエルカム政策を実施し、難民を受け入れていった。あれから10年が経過したが、政治家や国民の間には難民ウエルカムの痕跡はもはや見られない。同時に、ポーランドと同様、シリア難民やウクライナ避難民への支援カットが囁かれている。欧州各地で‘自国ファースト‘を主張する政治勢力が台頭するなど、難民、避難民に注がれてきた「善意」は次第に限界を迎えている。

イリエスク氏の死と民主革命直後の証言

 時代は冷戦時代の終焉を迎えていた。ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスク大統領とその妻エレナの公開処刑の場面は世界を震撼させた。1965年から約24年間君臨してきたチャウシェスク大統領夫妻が1989年12月末、銃殺された。その直後、政権を掌握したイオン・イリエスク氏が革命後の初代大統領に就任した。そのイリエスク氏が5日、ルーマニアの首都ブカレストの病院で肺癌で死去した。95歳だった。

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▲当方のインタビューに応じるロマン首相(当時)、1990年7月24日、ブカレストの首相執務室で

 イリエスク死去のニュースを聞いて、ルーマニアの革命直後の政情を思い出した。当方は1990年7月24日、ブカレストでぺトレ・ロマン首相とブカレストの首相執務室で単独会見した。同首相はイリエスク大統領の最側近だ。会見の当日、革命から半年以上経過していたが、首相執務室前には機関銃を構えた兵士が立ち、ブカレスト官邸前には戦車が待機していた。それを見ながら部屋に入ると、ロマン首相はラフなスタイルで迎えてくれた。会見はスムーズだったが、人権問題に及ぶと急にその口調は厳しくなった。

 ルーマニアでは当時、チェウシェスク大統領を処刑し、即政権を掌握したイリエスク大統領を含む与党「救国戦線」に対して国民の間に批判の声が強まっていた。
 チャウシェスク大統領時代の共産党のノーメンクラトゥ―ラ(特権階級)に属していたが、1980年代にチャウシェスクによって党要職から追放された元政治家イリエスク氏を見る国民の目は厳しかった。

 ロマン首相は「イリエスク大統領に対する批判の声は全国的というより、国民の一部に過ぎない。大統領は昨年末の民主革命に参加、独裁政治を崩壊させた人物であり、わが国の新生に責任持っている政治家だ。大統領が元共産党員だったというだけで批判するのは不当なことだ。ルーマニアは民主化に必要な諸政策を実施している。それらの政策は現在進行中であり、成果が出ている。問題は山積しているが、過去の独裁政権の残滓があるからだ。与党『救国戦線』は英国労働党や西独社会民主党と同様に中道左派政党を目指している」と説明した。

 同国野党は当時、与党「救国戦線」がルーマニアの民主革命をダメにしたとして、第2の民主革命が必要だと主張していたが、ロマン首相は「断言するが、ルーマニアの民主化は同革命の成果である。第2の革命云々はナンセンスだ」と強く反論した。

 ブカレスト市内で反イリエスク大統領のデモ集会が開催された時、新政権は治安部隊を出動させ、多数の市民が逮捕され、負傷者も出た。ロマン首相は日本政府に対しても、「経済支援と人権問題をリンクさせることは間違いだ。どのような民主化の方法をとるかはルーマニア政府が決定すべき問題だ」と強調した。

 同国検察庁は革命の血みどろの時代に多数の死者を出したとして、「革命裁判」でイリエスク氏を起訴し、人道に対する罪を含む罪で起訴する予定だったが、結局実施されなかった。なお、ブカレストからの情報によると、イリエスク氏の葬儀は国葬として挙行される予定という。

 ロマン首相は民主革命直後から2年間余り首相を務めた後、上院議長、外相などを歴任している。現在79歳。会見から35年の年月が過ぎた。同国は2004年に北大西洋条約機構(NATO)に、そして2007年に欧州連合(EU)にそれぞれ加盟した。ルーマニアの政情は今年5月に実施された大統領選に見られるように、極右政党「ルーマニア統一同盟」(AUR)が躍進するなど、ここにきて右傾化してきている。

大統領に野党右派ナブロツキ氏が当選

 ポーランドで6月1日、大統領選挙の決選投票が実施され、愛国主義的右派の野党「法と正義」(PiS)の候補者カロル・ナブロツキ氏(42)がワルシャワ市長で親欧州派の与党リベラル派「市民プラットフォーム」(PO)が支持するラファウ・チャスコフスキ氏(53)を僅差で破り、当選した。

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▲当選したナブロツキ氏、ワルシャワ・ボイス紙から,2025年6月2日

 中央選管当局によると、ナブロツキ氏は得票率50・89%、チャスコフスキ氏は49.11%で、両者の差は1・78 %という歴史的な僅差だった。大統領の任期は5年。外交・国防で一定の権限を有し、議会で採決した法律に拒否権を行使できる。

 大統領選の行方は欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドにとって重要な選挙と受け取られてきた。トゥスク政府は2023年12月、政権発足後、PiSの前政権下で導入された司法制度の改革、中絶禁止令の撤廃、メディアへの規制緩和などを行おうとしたが、PiSのドゥダ現大統領は拒否権を行使して阻止してきた。

 ナブロツキ氏が当選したことで、大統領府をPiS、政府が与党POが主導するというねじれ関係が続き、政府と大統領府が対立することで政治的膠着状態が生まれ、、最終的には早期の議会選挙につながる可能性が出てくる。

 なお、新大統領はウクライナへの継続的な支援では変わらないが、選挙期間にトランプ米大統領を訪問するなど、熱狂的なトランプ支持者だ。ナブロツキ氏はメディアの質問に答え、「我々は、旧ソ連のロシアを倒そうとするウクライナの努力を支持する。ロシアの新帝国主義的脅威に対抗することは、ポーランドの戦略的利益にかなう」と述べる一方、その外交・国防の核は‘ポーランド・ファースト‘にあることを明らかにしている。

 
【短信】    ナワリヌイ夫人、TV放送「ロシアの未来」を開設

 ロシアのプーチン大統領の最強の反体制派活動家と見られてきたアレクセイ・ナワリヌイ氏の夫人、ユリア・ナワリナヤさんは夫の49歳目の誕生日の6月4日にロシアの「報道の自由」を訴えるテレビチャンネルを開設する。            

 同チャンネルは「ロシアの未来」と呼ばれ、非政府組織「国境なき記者団(RSF)」と共同でパリから衛星システムを通じて放送される。

 ナワリヌイ氏は昨年2月16日、収監先の刑務所で死去した。47歳だった。同氏は昨年末、新たに禁錮19年を言い渡され、過酷な極北の刑務所に移され、厳しい環境の中、睡眠も十分与えられず、食事、医療品も不十分な中、独房生活を強いられてきた。死亡診断書には「自然死」と記載されていた。

 ナワリヌイ氏は2020年8月、シベリア西部のトムスクを訪問し、そこで支持者たちにモスクワの政情や地方選挙の戦い方などについて会談。そして同月20日、モスクワに帰る途上、機内で突然気分が悪化し意識不明となった。飛行機はオムスクに緊急着陸後、同氏は地元の病院に運ばれた。症状からは毒を盛られた疑いがあった。交渉の末、同年8月22日、ベルリンのシャリティ大学病院に運ばれ、そこで治療を受けた。ベルリンのシャリティ病院はナワリヌイ氏の体内からノビチョク(ロシアが開発した神経剤の一種)を検出し、何者かが同氏を毒殺しようとしていたことを裏付けた。

 ナワリヌイ氏は2021年1月17日、治療が終わると、ドイツのベルリンからモスクワ郊外の空港に帰国した。その直後、逮捕された。同氏の死後、ユリア・ナワリナヤさんが夫の遺志を継ぎ、海外でロシア反体制派の結束のために努力している。

ポーランド大統領選の決選投票の行方

 ポーランドで6月1日、大統領選挙の決選投票が実施される。決選投票は、今月18日に実施された第1回投票で上位2人、親欧州派のラファウ・トシャスコフスキ氏と右翼民族派のカロル・ナヴロツキ氏の間で争われるが、現地の世論調査によると、両者の支持率は拮抗している。欧州連合(EU)の有力国ポーランドの大統領選の行方にブリュッセルは関心をもって注目している。

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▲与党「市民プラットフォーム」が大統領選に擁立したトシャスコフスキ氏、ウィキぺディアから

 第1回投票では、ドナルド・トゥスク首相が率いる与党リベラル保守派「市民プラットフォーム」(PO)に所属するトシャスコフスキ氏が31・36%の得票率でトップ、それを追って、元与党「法と正義」(PiS)の支持を受けるナヴロツキ氏は29・54%だった。両者の差は1・82%と僅差だった。

 大統領選の行方は欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)加盟国のポーランドにとって重要な選挙だ。ワルシャワ市長のトシャスコウスキ氏(53)が勝利すれば、トゥスク首相は自身が推進する政府の改革の道を開くことができる。一方、42歳のナヴロツキ氏が決選投票で当選すれば、退任するアンジェイ・ドゥダ大統領(PiS)の封鎖政策が継続されることが予想される。

 大統領府をPiS、政府が与党POが主導する場合、政府と大統領府が対立することで、政治的膠着状態、ねじれ関係が続き、最終的には早期の議会選挙につながる可能性が出てくる。

 外電によると、選挙集会ではナヴロツキ氏の支持者たちは愛国歌や宗教歌を歌い、移民の終結を求めるプラカードを掲げる一方、トシャスコフスキ氏の集会では、多くのデモ参加者がEU旗やレインボーフラッグを振っている。

 決選投票では、第1回投票で躍進した極右候補のスラヴォミル・メンツェン氏と反ユダヤ主義の欧州議会議員グジェゴシュ・ブラウン氏の票の行方が注目される。両者で20%以上の得票率を上げている。ちなみに、ナヴロツキ氏はメンツェン氏と政策的統一戦線を構築する考えはないという。

 トゥスク政府は2023年12月、政権発足後、PiSの前政権下で導入された司法制度の改革、中絶禁止令の撤廃などを行おうとしたが、PiSのドゥダ大統領は拒否権を行使して阻止した。したがって、トゥスク氏にとって、トシャスコフスキ氏の勝利は今後の政権運営を楽にするためには不可欠だ。

 なお、ウクライナへの継続的な支援では両候補者には大きな差はない。ナヴロツキ氏はメディアの質問に答え、「我々は、旧ソ連のロシアを倒そうとするウクライナの努力を支持する。ロシアの新帝国主義的脅威に対抗することは、ポーランドの戦略的利益にかなう」と述べている。

 ワルシャワのシンクタンク、欧州外交評議会のマルタ・プロフヴィチ・ヤゾフスキ氏によると、「政府陣営はナヴロツキ氏の勝利を恐れている一方、PiSにとっても大統領選は非常に重要な意味を持つ。大統領選の敗北は党内に深刻な混乱を招き、極右派メンツェン氏との連携を加速させる動きが出てくる」(オーストリア国営放送=ORF)という。
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