ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ベルリンを公式訪問し、メルツ独首相やシュタインマイヤー大統領らとウクライナ情勢について協議した。その後の記者会見では、メルツ首相は「ドイツは今後もウクライナが必要とする限り、支援を継続していく。ウクライナ国内で長距離ミサイルを共同開発し、射程距離に関係なく武器を提供する」と表明した。同首相によると、ドイツ政府は、ウクライナに50億ユーロの軍事援助を約束した。ベルリンの連邦国防省によれば、この支援策は連邦議会で既に承認された資金から賄われる。

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▲メルツ首相と会談するゼレンスキー大統領、2025年5月28日、ウクライナ大統領府公式サイトから

 巡航ミサイル「タウルス」(射程距離500キロ)のウクライナ供与についてはメルツ首相は直接返答しなかったが、ドイツ公共放送ZDFの番組の中で、「もちろんそれは可能性の範囲内だ」と述べ、タウルス供与があり得ることを示唆した。ただし、「これにはウクライナの兵士に数か月の訓練が必要になる」と指摘し、タウルス供与が即ゲームチェンジャーとなることは期待できないと説明した。なお、ウクライナにおけるドローン製造への投資について合意に達し、両政府代表は生産施設の建設と開発に関する協定に署名した。

 メルツ首相は「ロシアが交渉のテーブルに立った場合にのみ、ロシアが対話の意思を持っていると信じる。戦争を終わらせる鍵はモスクワにある」と強調した。モスクワに対する更なる制裁については、「安全な法的根拠に基づいて実行できることはすべて行う」と述べた。
 ちなみに、メルツ氏はロシアからのガス輸送用に建設されたバルト海パイプライン「ノルドストリーム2」の再稼働の可能性を否定した。

 一方、ゼレンスキー大統領は「平和の促進、ロシアへの圧力強化、防空体制の強化、そしてウクライナのドローン生産への投資といった議題について協議した。ドイツはウクライナとルールに基づく国際秩序を支援する世界のリーダーだ」と評価。また「無条件停戦にいかなる前提条件も存在せず、そのような停戦は可能な限り早期に実現されなければならない。そのためには、欧州各国、そして欧州と米国間の防衛協力を継続することが重要だ」と強調した。

 ベルリンでのメルツ・ゼレンスキー両氏の記者会見について、ロシアのクレムリン報道官のドミトリー・ペスコフ氏は「ドイツは好戦的だ。ウクライナ人に戦闘を継続させようとする試みで、無責任だ。ベルリンは紛争の外交的解決の努力を妨害している。ベルリンはパリと最も危険な放火犯の役割を競っている」と批判している。

 なお、ロシアのラブロフ外相は28日、ウクライナとの次回直接協議を6月2日に前回と同じくトルコの最大都市イスタンブールで開くことを提案したこと、その際、和平に関するロシアの覚書案を提示することを明らかにした。

 参考までに、ドイツ民間放送ニュース専門局ntvのライブティッカーによると、ロシアは原子力施設を近代化している。独週刊誌シュピーゲルが衛星画像を引用して報じた。「シュピーゲル」誌によると、舞台は核兵器舞台の軍事施設が多数あるカザフスタンとの国境に近いヤスヌイだ。 2009年と2024年の各基地の衛星画像を比較すると、新しい道路や追加の建物が建設され、高品質のセキュリティシステムが導入されているという。