アルバニアで11日、議会選挙(1院制、定数140)が実施された。同国中央選挙委員会が12日午前(現地時間)発表したところによると、集計50%強の段階で与党社会党(PS)が得票率約52・87%で第1党を堅持し、エディ・ラマ首相主導の現政権は継続される見込みだ。野党「アルバニア民主党」(PD)は34・25%で第2党だ。今回の議会選挙では、海外居住のアルバニア人(約24万人)が初めて投票できるようになった。なお、同国では与野党とも内政、外交問題で大きな相違はなく、欧州連合(EU)加盟を最大の目標としている。投票率は約42・2%。

folk2
▲アルバニアの民族音楽・舞踏。同国観光局公式サイトから

 ラマ首相は2013年、2017年、2021年の選挙で勝利し、新政権(任期4年)は発足すれば今回が4期目。同国の首都ティラナ市長も務めた60歳の首相は2022年にEU加盟交渉を開始する一方、、経済的関係が深いイタリアとの間で難民受け入れ協定を締結するなど、一定の成果を上げてきた。ラマ首相は選挙戦では「2030年までにEU加盟を実現する」と公約している。

 ちなみに、同首相は昨年12月21日、動画投稿アプリ「TikTok」の1年間使用禁止を表明したことで注目された。同国で同年11月、14歳の少年がSNS上の公論から同級生に射殺されるという事件が生じ、大きな社会問題となった。

 ラマ首相の与党PSは前回総選挙(2021年)で74議席を獲得し辛うじて過半数を獲得したが、今回は80議席以上を獲得する可能性が出てきた。選挙では、国の12の行政単位に対応する12の選挙区で比例制に従って実施された。

 米国のシンクタンク、アトランティック・カウンシルによれば、「ラマ政権下のアルバニアでインフラへの投資は都市部と沿岸地域で建設ブームをもたらし、前例のない観光ブームと堅調な経済成長を実現している」という。その一方、インフレと生活費の急激な上昇で国民に生活を苦しめている。

  なお、 ウィーンの国際比較経済研究所(WIIW)によると、2024年の経済成長率は4%で、これは堅調な内外需要、特に輸出サービス需要の伸びに牽引されたものだ。外国直接投資は引き続き好調で、収益の再投資率の高さは、外国投資家の関心が継続していることを示している。財政状況は改善し、公的債務はGDPの55%に低下し、2007年以来の最低水準となった。インフレ率は2024年に半減したが、進行中の貿易戦争の影響を免れることは難しい。観光業は引き続き活況を呈し、消費は引き続き経済活動を支え続けると予想されます。WIIWは2025年の経済成長を3・7%と予測している。

 アルバニア経済はユーロ圏への輸出及び出稼ぎに出た自国民のユーロ圏からの送金に大きく依拠。野党指導者ベルシャ党首は「ラマ政権下で過去10年間、100万人の国民が海外に移住した」と批判している。

  人口約280万人のアルバニアはEU加盟候補国の中で「最有力候補」とみなされているが、最大の障害は組織犯罪と汚職問題だ。トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数では、アルバニアは調査対象となった180カ国中80位だ。例えば、元環境相レフテル・コカ氏や元内相サイミール・タヒリ氏を含む数名のPS党閣僚が逮捕または有罪判決を受けた。また、ティラナ市長のエリオン・ヴェリアジ氏も今春、賄賂、マネーロンダリング、収入の隠蔽の罪で告発されている、といった具合だ。