ドイツの右派過激派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU)を抜いて第1党に躍り出た。予想されたことだったが、今年2月23日の連邦議会選挙後、CDU/CSUが社会民主党(SPD)と連立政権交渉を進める中、支持率を落とす一方、AfDは総選挙後、支持率で5%以上アップさせて、ついにCDU/CSUを抜いてしまったわけだ。

▲AfDの共同党首ワイデル女史、AfD公式サイトから
世論調査研究所Forsa が4月15日から17日の間、1502人に支持政党を聞いた。その結果、AfDが支持率26%でトップ、第2位はCDU/CSUで25%だった。2月23日に実施された連邦議会選ではAfDの得票率は20・8%だったからあれから5・2%増加したことになる。一方、CDU/CSUは総選挙では28・5%だったから、3・5%減らしている。もちろん、総選挙時の得票率とその後の支持率を同列で語れない面もあるが、少なくとも政党の勢いは分かる。
独週刊誌シュピーゲルはCDU/CSU中道左派「社会民主党」(SPD)が10日公表した連立協定(144頁)について、「ドイツにとって中道派の最後のチャンスかもしれない」と評している。同論調には、CDU/CSUとSPDの両党の連立政権が成果を挙げられない場合、右翼政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がそれに代わって政権を掌握する可能性が出てくるというニュアンスが含まれている。オーストリアの代表紙「プレッセ」も「メルツ氏は結果を出さなければならない。AfDがメルツ氏の首根っこをつかんでいる。今回がドイツにおける中道派にとって最後のチャンスだ」と報じている。
連立交渉の合意が総選挙後45日目で達成されるなど、記録的な速さで成立した背景には、ウクライナ戦争、国民経済の低迷に加え、トランプ米政権の関税政策による波乱など、ドイツを取り巻く外交、経済的な圧力は日増しに高まり、連立交渉で多くの時間を費やす余裕がなくなってきた、といった思いがCDU/CSUとSPDの両党指導者に共有されていたからだろう。
連立協定で合意が実現し、これからは新政権が発足してリセッション下にある国民経済を復興させ、移民対策を強化するなどの課題に取り組んでいこうという時、次期首相に就任予定のメルツ党首を主導とした新政権に国民の期待が膨れあがってもいいところだが、まだ新政権も発足していない段階で、次期与党のCDU/CSUの支持率が伸び悩み、AfDが国民の間でますます浸透してきているのだ。
Forsaの調査によると、AfDを支持する国民は現政府や現状への抗議票としてAfDを支持しているのではなくなってきたという。35%の支持者は「AfDの政治信条を支持している」と答えているのだ。
AfDの思想的指導者ヘッケ氏は、ホロコーストやナチス時代の罪を軽視または否定する歴史修正主義者であり、極右思想の中核にある「民族的純粋性」や「国家主義」に通じる思想の持主だ。若者の間でAfDの支持者が増えている。
AfDの躍進について、ドイツ中央ユダヤ人評議会のヨーゼフ・シュスター会長は「ドイツで益々多くの人々が政治的信念からAfDを選んでおり、極右イデオロギーが顕在化している」と指摘、多くの有権者が現政権への抗議票、不満票としてAfDを支持しているのではなく、意識的に極右勢力を支持していることに強い警戒心を持っている。
AfDの支持拡大は、ドイツ社会における分断の象徴でもある。移民や難民、グローバリゼーションに対する不安が、社会の一部で過激な形で表現されてきたといえる。その結果、少数派や移民、ユダヤ人コミュニティーに対する攻撃が増加し、社会全体に深刻な影響を及ぼしてきた。
来月6日ごろにはメルツ党首を主導としたCDU/CSUとSPDの連立政権が発足する予定だが、移民対策と国民経済の活性化で迅速に成果を上げることができないようだと、AfDがさらに国民の支持を得て大きな政治勢力となり、メルツ新政権の政治運営を脅かすかもしれない。
メルツ党首がウクライナに巡航ミサイル「タウルス」の供与する意向を明らかにしたが、AfDはさっそく「タブー破りだ。ドイツを戦争参戦国にしてはならない」と激しく批判している。ドイツの政界の動向に目を離すことができなくなってきた。

▲AfDの共同党首ワイデル女史、AfD公式サイトから
世論調査研究所Forsa が4月15日から17日の間、1502人に支持政党を聞いた。その結果、AfDが支持率26%でトップ、第2位はCDU/CSUで25%だった。2月23日に実施された連邦議会選ではAfDの得票率は20・8%だったからあれから5・2%増加したことになる。一方、CDU/CSUは総選挙では28・5%だったから、3・5%減らしている。もちろん、総選挙時の得票率とその後の支持率を同列で語れない面もあるが、少なくとも政党の勢いは分かる。
独週刊誌シュピーゲルはCDU/CSU中道左派「社会民主党」(SPD)が10日公表した連立協定(144頁)について、「ドイツにとって中道派の最後のチャンスかもしれない」と評している。同論調には、CDU/CSUとSPDの両党の連立政権が成果を挙げられない場合、右翼政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がそれに代わって政権を掌握する可能性が出てくるというニュアンスが含まれている。オーストリアの代表紙「プレッセ」も「メルツ氏は結果を出さなければならない。AfDがメルツ氏の首根っこをつかんでいる。今回がドイツにおける中道派にとって最後のチャンスだ」と報じている。
連立交渉の合意が総選挙後45日目で達成されるなど、記録的な速さで成立した背景には、ウクライナ戦争、国民経済の低迷に加え、トランプ米政権の関税政策による波乱など、ドイツを取り巻く外交、経済的な圧力は日増しに高まり、連立交渉で多くの時間を費やす余裕がなくなってきた、といった思いがCDU/CSUとSPDの両党指導者に共有されていたからだろう。
連立協定で合意が実現し、これからは新政権が発足してリセッション下にある国民経済を復興させ、移民対策を強化するなどの課題に取り組んでいこうという時、次期首相に就任予定のメルツ党首を主導とした新政権に国民の期待が膨れあがってもいいところだが、まだ新政権も発足していない段階で、次期与党のCDU/CSUの支持率が伸び悩み、AfDが国民の間でますます浸透してきているのだ。
Forsaの調査によると、AfDを支持する国民は現政府や現状への抗議票としてAfDを支持しているのではなくなってきたという。35%の支持者は「AfDの政治信条を支持している」と答えているのだ。
AfDの思想的指導者ヘッケ氏は、ホロコーストやナチス時代の罪を軽視または否定する歴史修正主義者であり、極右思想の中核にある「民族的純粋性」や「国家主義」に通じる思想の持主だ。若者の間でAfDの支持者が増えている。
AfDの躍進について、ドイツ中央ユダヤ人評議会のヨーゼフ・シュスター会長は「ドイツで益々多くの人々が政治的信念からAfDを選んでおり、極右イデオロギーが顕在化している」と指摘、多くの有権者が現政権への抗議票、不満票としてAfDを支持しているのではなく、意識的に極右勢力を支持していることに強い警戒心を持っている。
AfDの支持拡大は、ドイツ社会における分断の象徴でもある。移民や難民、グローバリゼーションに対する不安が、社会の一部で過激な形で表現されてきたといえる。その結果、少数派や移民、ユダヤ人コミュニティーに対する攻撃が増加し、社会全体に深刻な影響を及ぼしてきた。
来月6日ごろにはメルツ党首を主導としたCDU/CSUとSPDの連立政権が発足する予定だが、移民対策と国民経済の活性化で迅速に成果を上げることができないようだと、AfDがさらに国民の支持を得て大きな政治勢力となり、メルツ新政権の政治運営を脅かすかもしれない。
メルツ党首がウクライナに巡航ミサイル「タウルス」の供与する意向を明らかにしたが、AfDはさっそく「タブー破りだ。ドイツを戦争参戦国にしてはならない」と激しく批判している。ドイツの政界の動向に目を離すことができなくなってきた。