ドイツの保守政党同盟「キリスト教民主・社会同盟」(CDU/CSU))と社会民主党(SPD)は9日、3月13日から続けられてきた連立交渉がまとまったことを発表する記者会見を開いた。フリードリヒ・メルツ氏(CDU)、CSU党首マルクス・ゼーダー氏、SPD党首のサスキア・エスケン氏とラース・クリングバイル氏は新たな連立協定を国民に発表した。連立協定では移民政策の強化、弱体化した経済の活性化などが掲げられている。

▲連立協定の合意内容を発表する記者会見風景、2025年04月09日、NTV放送の中継から
先ず、CDUのメルツ党首は連立協定が合意できたことに社民党に感謝を表明し、「この連立協定はドイツ国民と欧州連合(EU)への力強いシグナルとなる。ドイツは行動力のある政府を得るだろう」と語り、連邦議会選挙(2月23日実施)から45日目、ドイツで新しい政権が誕生する運びとなったと報告した。メルツ氏は将来の連立政権について、「改革と投資によってドイツの安定を維持し、経済的に再び強くなるだろう。欧州もドイツを頼りにすることができるだろう」と語った
CDUの姉妹政党、CSUのゼーダー党首は「連立協定をまとめることは容易な作業ではなかった。協定の各一行をまとめるために政治的な判断が不可欠だった。ピュア・ポリティカルだ」と説明し、ドイツが直面している現状が如何に厳しいかを端的に述べていたのが印象的だった。例えば、ドイツの国民経済は過去2年間、リセッションだ。このままいくと3年目もリセッションが避けられないという。ゼーダー氏は「連立協定はわが国のリハビリテーションと健康プログラムを混ぜ合わせたものだ」と表現している。
社民党のクリングバイル党首(次期財務相兼副首相候補)は「私が生まれ成長したドイツは平和であり、豊かであり、未来への希望が溢れていたが、それ等は現在失われている」と指摘し、ドイツを含む欧州、世界が激動の時に突入しているという認識を吐露した。同じ社民党のショルツ首相(当時)が2021年12月、「緑の党」と「自由民主党」(FDP)との3党連立政権(信号機政権)を発足した直後、「私たちは現在、時代の大転換に直面している」と表明し、Zeitwendeという独語が政治の世界で流行語となったことを思い出す。クリングバイル氏は「スタートポジションは難しかったが、結果は素晴らしい」と強調することを忘れなかった。
連立交渉の合意が記録的な速さで成立した背景には、ウクライナ戦争、国民経済の低迷に加え、トランプ米政権の関税政策による波乱など、ドイツを取り巻く外交、経済的な圧力は日増しに高まり、連立交渉で多くの時間を費やす余裕がなくなってきた、といった思いがCDU/CSUとSPDの両党指導者に共有されていたからだろう。
連立交渉で最後まで激しい政策的対立があったのは移民政策と税制問題だった。メルツ氏は、移民政策については「不法移民をほぼ終わらせる。国境での管理や亡命希望者の拒否も行われる」という。また、国民手当は「撤回」される一方、企業は特別減価償却と法人税減額によって救済される。従業員に対しては、通勤手当の増額、週労働時間の上限設定、非課税残業代、いわゆる非課税現役年金などが設けられる。目標は中小所得者の所得税の軽減だが、実際には政権2年後までは実現できない情勢だ。また、家賃の統制、最低賃金は15ユーロに上昇されるなどが挙げられている。
一方、データ保持が再導入される予定だ。連邦警察は、重大犯罪と戦うために、通信監視が認められる。治安当局には、容疑者の顔をインターネット上で公開されているデータと比較するために人工知能などを利用することも許可される等々だ。
経済専門家は、米国の関税により、輸出志向のドイツ経済に新たな景気後退リスクと問題が生じると見ている。次期首相候補のメルツ氏は、法人税の引き下げ、官僚機構の縮小、エネルギー価格の引き下げでこれに対抗したいと考えている。
なお、省庁の配置では、CDUは6つの省庁を占める。約60年ぶりにCDUが外相のポストを得る予定だ。SPD は 7 つの部門を担当し、CSU は 3 つの部門を担当する。新しいデジタル化・国家近代化省もCDUが担当する。 SPDは防衛、金融、環境、気候保護といった重要な主要部門を担当する。
メルツ氏は当初、イースターまでに政府を樹立することを目標としていたが難しくなった。新しい連邦政府は5月初めに発足する予定だ。 SPDの30万人の党員は連立協定について投票する。 CDUでは4月28日の小党大会で決定し、CSUでは執行委員会で決定することになっている。

▲連立協定の合意内容を発表する記者会見風景、2025年04月09日、NTV放送の中継から
先ず、CDUのメルツ党首は連立協定が合意できたことに社民党に感謝を表明し、「この連立協定はドイツ国民と欧州連合(EU)への力強いシグナルとなる。ドイツは行動力のある政府を得るだろう」と語り、連邦議会選挙(2月23日実施)から45日目、ドイツで新しい政権が誕生する運びとなったと報告した。メルツ氏は将来の連立政権について、「改革と投資によってドイツの安定を維持し、経済的に再び強くなるだろう。欧州もドイツを頼りにすることができるだろう」と語った
CDUの姉妹政党、CSUのゼーダー党首は「連立協定をまとめることは容易な作業ではなかった。協定の各一行をまとめるために政治的な判断が不可欠だった。ピュア・ポリティカルだ」と説明し、ドイツが直面している現状が如何に厳しいかを端的に述べていたのが印象的だった。例えば、ドイツの国民経済は過去2年間、リセッションだ。このままいくと3年目もリセッションが避けられないという。ゼーダー氏は「連立協定はわが国のリハビリテーションと健康プログラムを混ぜ合わせたものだ」と表現している。
社民党のクリングバイル党首(次期財務相兼副首相候補)は「私が生まれ成長したドイツは平和であり、豊かであり、未来への希望が溢れていたが、それ等は現在失われている」と指摘し、ドイツを含む欧州、世界が激動の時に突入しているという認識を吐露した。同じ社民党のショルツ首相(当時)が2021年12月、「緑の党」と「自由民主党」(FDP)との3党連立政権(信号機政権)を発足した直後、「私たちは現在、時代の大転換に直面している」と表明し、Zeitwendeという独語が政治の世界で流行語となったことを思い出す。クリングバイル氏は「スタートポジションは難しかったが、結果は素晴らしい」と強調することを忘れなかった。
連立交渉の合意が記録的な速さで成立した背景には、ウクライナ戦争、国民経済の低迷に加え、トランプ米政権の関税政策による波乱など、ドイツを取り巻く外交、経済的な圧力は日増しに高まり、連立交渉で多くの時間を費やす余裕がなくなってきた、といった思いがCDU/CSUとSPDの両党指導者に共有されていたからだろう。
連立交渉で最後まで激しい政策的対立があったのは移民政策と税制問題だった。メルツ氏は、移民政策については「不法移民をほぼ終わらせる。国境での管理や亡命希望者の拒否も行われる」という。また、国民手当は「撤回」される一方、企業は特別減価償却と法人税減額によって救済される。従業員に対しては、通勤手当の増額、週労働時間の上限設定、非課税残業代、いわゆる非課税現役年金などが設けられる。目標は中小所得者の所得税の軽減だが、実際には政権2年後までは実現できない情勢だ。また、家賃の統制、最低賃金は15ユーロに上昇されるなどが挙げられている。
一方、データ保持が再導入される予定だ。連邦警察は、重大犯罪と戦うために、通信監視が認められる。治安当局には、容疑者の顔をインターネット上で公開されているデータと比較するために人工知能などを利用することも許可される等々だ。
経済専門家は、米国の関税により、輸出志向のドイツ経済に新たな景気後退リスクと問題が生じると見ている。次期首相候補のメルツ氏は、法人税の引き下げ、官僚機構の縮小、エネルギー価格の引き下げでこれに対抗したいと考えている。
なお、省庁の配置では、CDUは6つの省庁を占める。約60年ぶりにCDUが外相のポストを得る予定だ。SPD は 7 つの部門を担当し、CSU は 3 つの部門を担当する。新しいデジタル化・国家近代化省もCDUが担当する。 SPDは防衛、金融、環境、気候保護といった重要な主要部門を担当する。
メルツ氏は当初、イースターまでに政府を樹立することを目標としていたが難しくなった。新しい連邦政府は5月初めに発足する予定だ。 SPDの30万人の党員は連立協定について投票する。 CDUでは4月28日の小党大会で決定し、CSUでは執行委員会で決定することになっている。