トランプ前米大統領が5日の大統領選でハリス副大統領に圧勝し、再選を果たした。大統領選ばかりか、上院議員選挙でもトランプ旋風を受けて、共和党議員が議会の過半数を獲得した。一方、バイデン現政権は民主党の想定外の敗北にショック症状に陥っている。

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▲生前の安倍元首相の記者会見風景(首相官邸公式サイトから、令和2年8月28日)


 ところで、トランプ氏のホワイトハウスへのカムバックが実現されたことから、2期目のトランプ政権への対応が世界の主要国家の緊急テーマとなってきた。例えば、トランプ氏の再選は同盟国・日本にどのような影響が考えられるだろうか。予想されるものとしては、トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)加盟国への負担増しを要求したように、日本に対しても米軍駐留経費の増額を求める公算が大きい。経済部門では、トランプ氏は日本製鉄の米鉄鋼大手USスチール買収計画には反対している。‘米国ファースト’を標榜するトランプ氏にとって米鉄鋼大手USスチールの外国企業への買収は歓迎しないだろう。

 問題はそれだけではない。日米間でもう一つの問題がトランプ氏の再選の結果、浮上してくるのだ。それは旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散請求問題だ。同問題は安倍晋三元首相の暗殺事件を契機に共産党系弁護士、左派メディアが実行犯の供述をもとに旧統一教会叩きを始め、メディアの圧力を受けた当時の岸田文雄首相が法の解釈を変えて旧統一教会の解散請求を持ち出した経緯がある。そして忘れてはならない点は、暗殺された安倍元首相は現職時代、トランプ氏とはゴルフ友達であり、両者は信頼関係があった。そのトランプ氏が大統領府の主人として戻ってきたのだ。

 トランプ氏は旧統一教会関係の国際会議に祝電やビデオ挨拶などをしたことがある。それに対して、日本のメディア、政府関係者は「反社会的グループの旧統一教会と関係を断つべきだ」とトランプ氏に助言できるだろうか。そのような要求を海外の国家元首にすれば、日本政府、外務省は逆に「信教の自由を蹂躙する非民主国家」と厳しい批判を受けることは必至だ。

 裁判で有罪判決を受けて反社会的と断定されていない段階で特定の宗教団体を魔女狩りのように糾弾することは通常の民主主義国家では許されない。また、トランプ氏にとって旧統一教会との関係を隠す必要はないだろう。一方、日本の与党関係者は旧統一教会と過去、関係を有したり、関連団体の会合に参加した場合、党指導部に申請し、今後関係を断つことを約束しなければならないのだ。先の衆議院選挙でも旧統一教会との関係の有無で公認、非公認が振り分けられた。トランプ氏が聞けば驚くだろう。民主国家と考えていた日本が中世時代の魔女狩りをしているのだ。それだけではない。安倍元首相暗殺事件が発生して2年が経過したが、公判がまだ始まっていないのだ。

 トランプ氏には取りかからなければならない多くの課題が山積しているから、日本の旧統一教会問題に頭を突っ込むことはできない。しかし、旧統一教会の解散請求が実行に移されれば、旧統一教会は米国の保守派メディア「ワシントン・タイムズ」などを駆使してトランプ政権に日本への制裁を実施するように圧力をかけてくるだろう。米国務省は毎年発表している「信教の自由に関する年次報告書」で日本政府の宗教政策を批判するだろう。

 衆議院選挙で党勢を失い、党内から退陣要求が受けている石破茂首相は海を越えた米国から「日本はどうしたのか」といった批判を受けた時、それに反論できるパワーを有しているだろうか。選挙戦で2度、暗殺未遂の危機に直面したトランプ氏から「安倍さんはなぜ殺害されたのか」という質問が出てきた時、反安倍勢力の強い政府は納得できる説明ができるだろうか。

 アフリカの国で旧統一教会関連団体のメンバーが現地の子供たちの教育を支援するために学校を開校して活動してきた。その功績に対し日本の外務省は日本人女性に表彰状と一品(日本の伝統的な風呂敷)を贈った。旧統一教会問題がメディアで大きく報じられる前だ。

 しかし、旧統一教会問題が大きく報道され出すと、担当駐在外交官は表彰した日本人女性に会い、今後一切関係をもたないと通達し、日本人女性に与えた表彰状と贈った風呂敷を即、返品するように求めたのだ。まるで犯罪者の証拠隠しのようにだ。こんな話をトランプ氏が聞いたら笑い出すかもしれない。それとも、「日本の外務省には小心な官僚が多いのだな」と呆れるかもしれない。

 日本ではこれまで約4300人の旧統一教会の信者が職業拉致グループによって拉致監禁されてきたが、日本の警察は被害を受けた人間が旧統一教会信者と分かると、通達を受けても家庭問題として捜査すらしなかったのだ。日本は民主国家であり、法治国家と考えていたトランプ氏はワシントン・タイムズなどの報道記事を読み、ビックリするだろう。トランプ氏の再選後、旧統一教会問題は日本政府にとって躓きの石となるかもしれない。