バチカンニュースは23日、コンピューターの天才で15歳で夭折したイタリア人の少年カルロ・アクティス君が列聖される最初のミレニアル世代となるだろうと報じた。アクティス君はインターネットを駆使して神のメッセージを伝えたことから「神のインフルエンサー」と呼ばれてきた。

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▲15歳で亡くなった「神のインフルエンサー」と呼ばれたアクティス君の列福式(2020年10月10日、バチカンニュースから)

 世界に14億人余りの信者を有するローマ・カトリック教会には多くの聖人がいる。最近では故ヨハネ・パウロ2世(在位1978年10月〜2005年4月)と第2バチカン公会議の提唱者ヨハネス23世(在位1958年10月〜63年6月)が列聖された。ただし、ヨハネス23世の場合、聖人まで亡くなって50年以上の時間が経過した。ヨハネ・パウロ2世の場合、亡くなって9年しか経過していないが、聖人クラブ入りしている。異常に早い列聖であったことは間違いない(「バチカンが防戦する『不都合な事実』」2020年11月22日参考)。

 ところで、カトリック教会には聖人まで這い上がるためには厳格な規則がある。「聖人」クラブに入る前段階として「福者」という称号を得なければならない。福者になるためには、その人物が何らかの超自然的現象、例えば、病を癒したといった奇跡が必要だ。そのハードルをクリアすれば「福者入り」する。列聖の場合、更に新たな奇跡が必要となる。もちろん、その奇跡の証も証人が不可欠だ。そしてバチカンの奇跡調査委員会が奇跡を公認すれば、晴れて「聖人クラブ」に入る資格が与えられるわけだ。

 ちなみに、例外は殉教者で、奇跡の審査を通過しなくても即聖人入りする。アウシュビッツ強制収容所で他の囚人のために自分の命を捧げたポーランド人のマクシミリアン・コルベ神父もその一人だ。最近ではフランス北部のサンテティエンヌ・デュルブレのローマ・カトリック教会のジャック・アメル神父だ。同神父(当時85歳)は2016年7月26日、礼拝中にイスラム過激派テロリストに首を切られて殺害された。

 アクティス君は2020年10月10日、アッシジのサン・フランチェスコ大聖堂で既に列福式を受けている。バチカンニュースは当時、「1991年にロンドンで生まれ、ミラノで育ったアクティス君は、並外れた信心深さと優れたプログラミングスキルで早くから頭角を現した。聖体、祈り、秘跡は彼の宗教生活において重要な役割を果たした。彼は11歳の時、世界中の聖体の奇跡を記録し、死の数か月前に自ら作成したウェブサイトにそれらをカタログ化したことで知られている。それだけではなく、教区内の難民やホームレスの支援に尽力した。彼は2006年、進行性の白血病と診断され、短期間のうちに死亡した」と報じている。

 イタリアのメディアは列福式の当時、「ジーンズ、スニーカー、セーターを着た史上初と思われる列福者」と呼び、アクティス君は既に多くの人から、「インターネットの守護者」、「神のインフルエンサー」と呼ばれている。

 アクティス君にはその後、列聖入りのために奇跡の証が伝えられた。例えば、2022年にフィレンツェで自転車事故に遭い、頭部に重傷を負ったコスタリカ出身の21歳の学生が治癒したことだ。学生の母親はアクティス君の墓を巡礼し、娘の回復を祈った。被害者は同日、再び自力呼吸を始めたという。フランシスコ教皇はこの新たな奇跡を公認したことで、アクティス君の聖人への道が晴れて開いたわけだ。

 今日のインターネット世代は、自身のウェブサイトの写真やキーワードで注目を集めたアクティス君のような人物を好む。彼は新鮮で生き生きとした言葉で自分の信仰を伝え、多くの若者にメッセージを届けたという。

 15歳で亡くなったアクティス君の列聖の話はバチカン側のいい意味でのプロパガンダの感はするが、神のメッセージを紙媒体で伝える時代は過ぎ、デジタルでインターネット上で伝える時代圏に入ってきている。その意味で、カトリック教会でその道を開拓していったアクティス君は聖人クラブ入りしても可笑しくないのかもしれない。