パレスチナ自治区ガザを2007年以降実効支配するイスラム過激テロ組織ハマスは組織の解体寸前まで追い込まれてきた。イスラエル軍はガザ南部でも北部と同様空爆を実施する一方、地上戦も展開し、ハマス戦闘員に投降を呼びかけている。
▲パレスチナ難民(2023年12月12日、UNRWA公式サイトから)
一方、イスラエルの最大支援国バイデン米政権はガザ地区でのパレスチナ人の犠牲者が急増し、人道的な危機に陥っていることを受け、ネタニヤフ首相に「国際社会の支持を失ってきている」と警告を発し、イスラエル軍のガザ攻撃の休戦を要求している。
ところで、バイデン大統領は「イスラエルへの国際的支持が失われきた」と述べたが、中東紛争で米国らの同盟国を除くと、イスラエルは常に国際社会から批判にさらされてきたことは事実だ。特に、パレスチナ問題ではそうだ。その大きな主因はイスラエルが1948年にパレスチナ人を追放してイスラエルを建国したことに遡る。すなわち、イスラエルが“神の約束”に基づいて祖国を再建したが、約70万人のパレスチナ人がその結果、難民となったという事実だ。換言すれば、イスラエルは加害者、パレスチナ人は犠牲者という構図が出来上がっているわけだ。
確かに、70万人のパレスチナ人が住居を失い難民となったが、イスラエル側も第2次世界大戦後、アラブに居住してきた80万人のユダヤ人が難民となっている。難民の数ではユダヤ難民のほうがパレスチナ難民より多い。しかし、イスラエルとパレスチナ間で紛争が起きる度に、パレスチナ難民問題に焦点が集まり、イスラエル側はユダヤ難民の存在についてはあえて主張しないこともあって無視されてきた経緯がある。
信頼性の高い動画「トラベリングイスラエル」によると、モロッコには1948年まで約26万5000人のユダヤ人が住んでいたが、2018年の段階でその数は2150人に激減した。イラクでは13万5000人から10人以下に。エジプトでは7万5000人のユダヤ人が2018年には100人になっている。イエメンでも6万3000人から50人以下に。リビアでも3万8000人のユダヤ人が現在ほぼゼロだ。チュニジア、シリア、レバノンでも同様だ。中東・北アフリカに住んでいたユダヤ人が戦後、難民として放浪し、最終的にイスラエルに避難していったわけだ。
奇妙なことに気が付く。難民救済を目的とした国連機関は現在、2つある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)だ。イスラエルが1948年に建国された際、70万人のパレスチナ人が難民となったが、彼らを救済するために、パレスチナ難民だけを対象としたUNRWAが1949年に創設された。パレスチナ難民は世界の難民の中でも一種の特権的な位置にあって、国連を含む世界から支援金を受けているのだ。
ハマスの大規模なテロを受け、欧米諸国ではパレスチナ支援の停止を求める声が出てきている。欧州連合(EU)の欧州員会は、パレスチナ援助の見直しに取り組み出している。UNRWAに1953年以来、積極的に支援してきた日本政府に対しても、「日本のパレスチナ人への支援金はハマスのテロを助けている」として、UNRWAへの支援を停止すべきだという声が出ている。日本はUNRWAに対し3320万米ドルを支援し、パレスチナ難民の教育、医療などを支援してきた。日本は2022年時点でUNRWAへの支援では6番目に多い拠出国だ。
それでは国際社会から難民救済資金を得たパレスチナ自治政府はそれでパレスチナ人の生活向上、教育、国民経済の発展に投資しただろうか。現実は、ハマスはそれらの資金で武器を購入し、イスラエルへ侵入するためにトンネルを建設してきた。一方、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府には腐敗、汚職の噂が絶えない、といった具合だ。
一方、アラブ・イスラム教国はパレスチナ難民問題でイスラエルを批判するが、それでは同じイスラム教の兄弟パレスチナ難民を収容してきただろうか。イスラエル・ガザ紛争でも明らかだが、例えば、エジプトは病人、負傷者以外、ガザから逃げてきたパレスチナ難民を引き受けていない。イスラエル軍のガザ空爆を批判するが、彼らはパレスチナ難民を収容していないのだ。
さまざまな理由が考えられる。先ず、経済的理由だろう。ハマスなどのイスラム過激派テロリストが難民に交じって入ってくることを警戒することもあるだろう。普段は「われわれは兄弟だ」といいながら、戦争から避難する兄弟を収容していないことは事実だ。
多くのアラブ諸国はパレスチナ問題をイスラエル批判のために政治利用してきただけではなかったか。そのアラブ諸国はイスラエル軍のハマス攻撃を人道的犯罪として批判しながら、救済を必要とするパレスチナ人に対しては国境を閉じているわけだ。これは単に偽善といって済ませる問題ではない。
以上、難民問題に絞って、イスラエルとガザ紛争を見てみた。他の問題も関わってくるから、中東の問題を「難民」からだけで論じることは出来ないが、中東問題で看過されている「ユダヤ難民」問題についても公正に取り扱う必要があるだろう。
▲パレスチナ難民(2023年12月12日、UNRWA公式サイトから)
一方、イスラエルの最大支援国バイデン米政権はガザ地区でのパレスチナ人の犠牲者が急増し、人道的な危機に陥っていることを受け、ネタニヤフ首相に「国際社会の支持を失ってきている」と警告を発し、イスラエル軍のガザ攻撃の休戦を要求している。
ところで、バイデン大統領は「イスラエルへの国際的支持が失われきた」と述べたが、中東紛争で米国らの同盟国を除くと、イスラエルは常に国際社会から批判にさらされてきたことは事実だ。特に、パレスチナ問題ではそうだ。その大きな主因はイスラエルが1948年にパレスチナ人を追放してイスラエルを建国したことに遡る。すなわち、イスラエルが“神の約束”に基づいて祖国を再建したが、約70万人のパレスチナ人がその結果、難民となったという事実だ。換言すれば、イスラエルは加害者、パレスチナ人は犠牲者という構図が出来上がっているわけだ。
確かに、70万人のパレスチナ人が住居を失い難民となったが、イスラエル側も第2次世界大戦後、アラブに居住してきた80万人のユダヤ人が難民となっている。難民の数ではユダヤ難民のほうがパレスチナ難民より多い。しかし、イスラエルとパレスチナ間で紛争が起きる度に、パレスチナ難民問題に焦点が集まり、イスラエル側はユダヤ難民の存在についてはあえて主張しないこともあって無視されてきた経緯がある。
信頼性の高い動画「トラベリングイスラエル」によると、モロッコには1948年まで約26万5000人のユダヤ人が住んでいたが、2018年の段階でその数は2150人に激減した。イラクでは13万5000人から10人以下に。エジプトでは7万5000人のユダヤ人が2018年には100人になっている。イエメンでも6万3000人から50人以下に。リビアでも3万8000人のユダヤ人が現在ほぼゼロだ。チュニジア、シリア、レバノンでも同様だ。中東・北アフリカに住んでいたユダヤ人が戦後、難民として放浪し、最終的にイスラエルに避難していったわけだ。
奇妙なことに気が付く。難民救済を目的とした国連機関は現在、2つある。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)だ。イスラエルが1948年に建国された際、70万人のパレスチナ人が難民となったが、彼らを救済するために、パレスチナ難民だけを対象としたUNRWAが1949年に創設された。パレスチナ難民は世界の難民の中でも一種の特権的な位置にあって、国連を含む世界から支援金を受けているのだ。
ハマスの大規模なテロを受け、欧米諸国ではパレスチナ支援の停止を求める声が出てきている。欧州連合(EU)の欧州員会は、パレスチナ援助の見直しに取り組み出している。UNRWAに1953年以来、積極的に支援してきた日本政府に対しても、「日本のパレスチナ人への支援金はハマスのテロを助けている」として、UNRWAへの支援を停止すべきだという声が出ている。日本はUNRWAに対し3320万米ドルを支援し、パレスチナ難民の教育、医療などを支援してきた。日本は2022年時点でUNRWAへの支援では6番目に多い拠出国だ。
それでは国際社会から難民救済資金を得たパレスチナ自治政府はそれでパレスチナ人の生活向上、教育、国民経済の発展に投資しただろうか。現実は、ハマスはそれらの資金で武器を購入し、イスラエルへ侵入するためにトンネルを建設してきた。一方、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府には腐敗、汚職の噂が絶えない、といった具合だ。
一方、アラブ・イスラム教国はパレスチナ難民問題でイスラエルを批判するが、それでは同じイスラム教の兄弟パレスチナ難民を収容してきただろうか。イスラエル・ガザ紛争でも明らかだが、例えば、エジプトは病人、負傷者以外、ガザから逃げてきたパレスチナ難民を引き受けていない。イスラエル軍のガザ空爆を批判するが、彼らはパレスチナ難民を収容していないのだ。
さまざまな理由が考えられる。先ず、経済的理由だろう。ハマスなどのイスラム過激派テロリストが難民に交じって入ってくることを警戒することもあるだろう。普段は「われわれは兄弟だ」といいながら、戦争から避難する兄弟を収容していないことは事実だ。
多くのアラブ諸国はパレスチナ問題をイスラエル批判のために政治利用してきただけではなかったか。そのアラブ諸国はイスラエル軍のハマス攻撃を人道的犯罪として批判しながら、救済を必要とするパレスチナ人に対しては国境を閉じているわけだ。これは単に偽善といって済ませる問題ではない。
以上、難民問題に絞って、イスラエルとガザ紛争を見てみた。他の問題も関わってくるから、中東の問題を「難民」からだけで論じることは出来ないが、中東問題で看過されている「ユダヤ難民」問題についても公正に取り扱う必要があるだろう。