岸田文雄首相は24日午前の衆院予算委員会の集中審議で、「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の問題を巡り、被害者と面会する意向を明らかにした。首相は「被害者、弁護士の方々をはじめとする関係団体の意見を聞くことは大事だ。私も直接、お話を聞かせてもらいたい」と語った(読売新聞電子版10月24日)。

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▲山際大志郎経済再生担当相の辞任を受けての記者会見に応じる岸田首相(2022年10月24日、首相官邸公式サイトから)

 政府の最高指導者が問題の当事者と直接対面で会見することは、問題解決に資するかもしれない。懸念は、被害者は旧統一教会に対して批判的であり、その被害者を擁護する弁護士には共産主義的思想に傾斜した人物が少なくないことだ。彼らから献金問題などの問題について意見を聞くわけだ。冷静にいえば、岸田首相は旧統一教会の解体を既に決意し、その判断の根拠とするために旧統一教会に批判的な被害者と弁護士たちと会うのではないか、といった憶測すら湧いてくる。極端に言えば、一種のアリバイ工作ではないか。

 岸田首相は新資本主義経済などのビジョンを抱えて登場、停滞する日本経済の復興に乗り出す予定だったが、安倍晋三元首相が銃殺されるという大事件が発生。その後は容疑者の供述に基づいて、事件の影に旧統一教会問題があるといわんばかりに、旧統一教会との対応が岸田政権の最大急務となった。このことは岸田首相にとって不運だった。安倍元首相の国葬も無事終わり、再び自身の路線に戻れると考えていた首相だが、時間の経過とともに自民党議員と旧統一教会問題のかかわりは一層深化し、24日には岸田首相の改革で中心的な役割が期待された山際大志郎経済再生担当相が旧統一教会とのつながり問題から辞任に追い込まれたばかりだ。

 一方、朝日新聞などの左派メディアは旧統一教会を解体できるチャンスと受け取り、岸田首相に圧力をかけてきた。首相は当初、教会への解散命令請求の要件として民事訴訟だけでは無理という文化庁の意見を受け入れてきたが、ここにきて教会側に刑事責任を認めた確定判決がなくても解体を命令できるという方向に修正してきた。その直後、首相は旧統一教会の被害者そしてその弁護士たちと会見することを表明したわけだ。

 この流れから判断するならば、岸田首相は旧統一教会の解体を決意したと受け取って間違いがないだろう。岸田首相には一刻も早く旧統一教会問題から解放されたい、という思いが強いからだ。被害者と会見するシーンがメディアに放映され、被害者から統一教会へのネガティブな情報を得た岸田首相はその後、旧統一教会の解体を宣言する、というシナリオが浮かんでくる。

 とまれ、被害者たちと会見することには反対ではないが、公平でフェアな対応のためには岸田首相は反統一教会関係者による統一教会信者の拉致監禁犠牲者とも会見すべきだ。12年5カ月間、拉致監禁され脱会を強いられた後藤徹氏らと会見することを勧める。ジュネーブの国連人権理事会のサイドイベントに参加した国際NGO「国境なき人権」代表のウィリー・フォートレ代表が10年前、日本政府の拉致監禁犠牲者への対応が皆無であるという事実を知って驚いていたことを思い出す。岸田首相は、職業的拉致監禁専門家の牧師、弁護士らが暗躍し、統一教会信者たちを拉致監禁してきた実態を知るべきだろう。

 朝日新聞ら左派メディア、ソーシャルメディアが連日、旧統一教会が如何に悪なる組織かを報じてきた。それも主に昔起きた不祥事を持ち出してバッシングを繰り返してきた。一方、それを見聞きする旧統一教会の一般信者たちはどのような思いになるだろうか。彼らの「信教の自由」はどうしたのか。家族や友人たちからも「統一教会の信者」であるがゆえに白い目で見られる一般信者たちの苦しみを誰が理解できるのか。

 繰り返しになるが、岸田首相が被害者に会う一方、拉致監禁の犠牲者とも会ってその話に耳を傾けてほしい。高額献金による被害者だけと会見しても事件の核心に至ることはないからだ。メディア受けのパフォーマンスでは事は解決できない。

 メディアの一方的な報道によって教会の信者の2世が精神的に苦痛を受け、社会からバッシングも受けて不幸なことが生じた場合、岸田首相はどのように責任を取るのか。同じことが左派メディア関係者にもいえる。世論を誤導した責任は大きいのだ。特に、朝日新聞は過去、慰安婦関連報道で恣意的な虚偽の報道をしてきた前科がある。日本民族の国益を無視し、慰安婦問題を扇動したのは朝日新聞だったではないか。