このコラム欄で韓国の市民団体「慰安婦詐欺清算連帯」(今年1月結成)のメンバー4人が6月26日、ドイツ・ベルリン市内の旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」の前で、「慰安婦詐欺はもうやめろ」と書かれたプラカードを持って少女像の撤去を求めたことを書いたが、韓国聯合ニュースによると、ドイツ中部ヘッセン州カッセル市のカッセル大学構内に今月8日、新たな少女像が立てられたというニュースが飛び込んだ。韓国の人権団体「韓国協会」が同大学の学生会と連携して準備してきたもので、大学敷地のキャンパス内に建てられた。

▲林芳正外相とベアボック外相の会合(2022年5月13日、ドイツのG7外相会合で、日本外務省公式サイトから)
「韓国協会」のメンバーたちは戦時中の旧日本軍の蛮行を批判し、「女性の権利」を蹂躙したとして世界各地で少女像、慰安婦像を設置してきた反日思想に凝り固まった確信犯だ。同じ韓国人でも、史実に基づいて日韓関係の見直しを求める「慰安婦詐欺清算連帯」のメンバーとは歴史観が明らかに異なる。
ベルリンのミッテ区当局は2020年10月7日、在独日本大使館からの撤去要請を受け、韓国側に同年10月14日までに像の撤去を指示する公文書を送った。理由は、韓国側が少女像にある碑文を区当局側に事前に報告していなかったこと、そのうえ碑文には第2次世界大戦当時、旧日本軍がアジア・太平洋全域で女性たちを性奴隷として強制的に連行していたなどの一方的な歴史観が記されていたことなどを挙げた。ドイツ側は、「わが国に日韓の懸案を持ち込んで公共の安全を脅かすことは許せない」と説明した。
ここまでは事態は日本側に有利に進んだが、在独の韓国ロビーが即反撃を開始、「少女像」の撤去を拒否し、行政裁判所の決定まで少女像の設置を容認させることに成功した。換言すれば、現地ドイツの人脈を駆使した韓国側のロビー活動の勝利に終わったわけだ。
ドイツは東西分断の歴史を体験してきたこともあって、南北韓半島の分断国家のひとつ、韓国に対してもシンパが多い。日韓両国間で問題が生じた場合、ドイツは韓国側の主張に理解を示すことが多かった。一方、韓国でも「戦争後の処理問題でドイツは模範的な国だ」と称え、日本側に対して常に「ドイツに見習え」と主張してきた経緯がある。また、韓国の軍事政権下で反体制派活動家がドイツに亡命するケースが多く、ドイツには親北派の韓国反体制派の拠点が構築されている(「韓国人はドイツ人を全く知らない」2014年12月3日参考)。
韓国側の最強のロビイストはゲアハルト・シュレーダー元独首相だ。同氏についてはこの欄でも何度か紹介した。韓国女性と5回目の結婚をしたシュレーダー氏は訪韓する度に現職首相級の接待を受け、大歓迎されてきた。日韓の歴史問題では韓国側の主張を支持し、日本に対し「歴史の修正は許されない」と批判してきた人物だ。ただ、ロシア軍のウクライナ侵攻以来(2022年2月24日)、戦争犯罪を繰り返すロシアのプーチン大統領の親友シュレーダー氏に対し、ドイツ国内で批判が高まっている。同氏が所属してきた社会民主党からは党籍剥奪の声が強まっているほどだ。(「訪韓した独前首相の『反日』発言」2017年9月14日、「シュレーダー前独首相と韓国女性」2017年10月4日参考)。
問題は日本側の外交だ。ドイツに強固な人脈を誇る韓国側に反撃するためには、日本側にも強いパートナーが必要だ。幸い、ドイツにはアンナレーナ・ベアボック外相がいる。日本の林芳正外相も彼女と既に数回会談してきたから、コミュニケーションでは問題ないはずだ。
ベアボック外相は今月22日、ドイチュランドフンク(Dlf)とのインタビューの中で、「米中央情報局(CIA)によると、中国は台湾に侵攻することを決めている。ウクライナ戦争ではロシアのプーチン大統領の言動を誤って予測したが、世界は同じ過ちを繰り返してはならない」と警告を発し、「欧州がロシアの天然ガスなどエネルギーに依存してきたように、世界は中国製の医薬品、抗生物質に依存している。早急に対応を検討すべきだ」と述べている。ベアボック外相は中国の台湾海峡侵攻を現実的な脅威と受け取っているわけだ。
ドイツで開催されたG7(先進7カ国)外相会合で林外相は5月13日、ベアボック外相と会談し、「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないとの認識を共有し、インド太平洋における日独間の連携を推進することで一致した」という。
「ベルリンの少女像」問題で日韓両国がドイツで争っていたならば台湾海峡の危機の際に大きな障害となる。日本側は、「日韓両国の関係改善が急務だ。その意味からも(両国で争っている)ベルリンの少女像を撤去すべきだ」とベアボック外相に強く働きかけるべきだ。
プーチン大統領との癒着問題が暴露され、批判に晒されているシュレーダー元首相に頼る韓国側に対し、国内で支持率が急上昇中のベアボック外相を後ろ盾にする日本との両国ロビー戦は日本側に圧倒的に有利だ。日本側はこの好機を逃さず若いベアボック外相(41)の支持を獲得し、日独両国の外交で「ベルリンの少女像」の撤去を勝ち取ってほしい。

▲林芳正外相とベアボック外相の会合(2022年5月13日、ドイツのG7外相会合で、日本外務省公式サイトから)
「韓国協会」のメンバーたちは戦時中の旧日本軍の蛮行を批判し、「女性の権利」を蹂躙したとして世界各地で少女像、慰安婦像を設置してきた反日思想に凝り固まった確信犯だ。同じ韓国人でも、史実に基づいて日韓関係の見直しを求める「慰安婦詐欺清算連帯」のメンバーとは歴史観が明らかに異なる。
ベルリンのミッテ区当局は2020年10月7日、在独日本大使館からの撤去要請を受け、韓国側に同年10月14日までに像の撤去を指示する公文書を送った。理由は、韓国側が少女像にある碑文を区当局側に事前に報告していなかったこと、そのうえ碑文には第2次世界大戦当時、旧日本軍がアジア・太平洋全域で女性たちを性奴隷として強制的に連行していたなどの一方的な歴史観が記されていたことなどを挙げた。ドイツ側は、「わが国に日韓の懸案を持ち込んで公共の安全を脅かすことは許せない」と説明した。
ここまでは事態は日本側に有利に進んだが、在独の韓国ロビーが即反撃を開始、「少女像」の撤去を拒否し、行政裁判所の決定まで少女像の設置を容認させることに成功した。換言すれば、現地ドイツの人脈を駆使した韓国側のロビー活動の勝利に終わったわけだ。
ドイツは東西分断の歴史を体験してきたこともあって、南北韓半島の分断国家のひとつ、韓国に対してもシンパが多い。日韓両国間で問題が生じた場合、ドイツは韓国側の主張に理解を示すことが多かった。一方、韓国でも「戦争後の処理問題でドイツは模範的な国だ」と称え、日本側に対して常に「ドイツに見習え」と主張してきた経緯がある。また、韓国の軍事政権下で反体制派活動家がドイツに亡命するケースが多く、ドイツには親北派の韓国反体制派の拠点が構築されている(「韓国人はドイツ人を全く知らない」2014年12月3日参考)。
韓国側の最強のロビイストはゲアハルト・シュレーダー元独首相だ。同氏についてはこの欄でも何度か紹介した。韓国女性と5回目の結婚をしたシュレーダー氏は訪韓する度に現職首相級の接待を受け、大歓迎されてきた。日韓の歴史問題では韓国側の主張を支持し、日本に対し「歴史の修正は許されない」と批判してきた人物だ。ただ、ロシア軍のウクライナ侵攻以来(2022年2月24日)、戦争犯罪を繰り返すロシアのプーチン大統領の親友シュレーダー氏に対し、ドイツ国内で批判が高まっている。同氏が所属してきた社会民主党からは党籍剥奪の声が強まっているほどだ。(「訪韓した独前首相の『反日』発言」2017年9月14日、「シュレーダー前独首相と韓国女性」2017年10月4日参考)。
問題は日本側の外交だ。ドイツに強固な人脈を誇る韓国側に反撃するためには、日本側にも強いパートナーが必要だ。幸い、ドイツにはアンナレーナ・ベアボック外相がいる。日本の林芳正外相も彼女と既に数回会談してきたから、コミュニケーションでは問題ないはずだ。
ベアボック外相は今月22日、ドイチュランドフンク(Dlf)とのインタビューの中で、「米中央情報局(CIA)によると、中国は台湾に侵攻することを決めている。ウクライナ戦争ではロシアのプーチン大統領の言動を誤って予測したが、世界は同じ過ちを繰り返してはならない」と警告を発し、「欧州がロシアの天然ガスなどエネルギーに依存してきたように、世界は中国製の医薬品、抗生物質に依存している。早急に対応を検討すべきだ」と述べている。ベアボック外相は中国の台湾海峡侵攻を現実的な脅威と受け取っているわけだ。
ドイツで開催されたG7(先進7カ国)外相会合で林外相は5月13日、ベアボック外相と会談し、「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ認められないとの認識を共有し、インド太平洋における日独間の連携を推進することで一致した」という。
「ベルリンの少女像」問題で日韓両国がドイツで争っていたならば台湾海峡の危機の際に大きな障害となる。日本側は、「日韓両国の関係改善が急務だ。その意味からも(両国で争っている)ベルリンの少女像を撤去すべきだ」とベアボック外相に強く働きかけるべきだ。
プーチン大統領との癒着問題が暴露され、批判に晒されているシュレーダー元首相に頼る韓国側に対し、国内で支持率が急上昇中のベアボック外相を後ろ盾にする日本との両国ロビー戦は日本側に圧倒的に有利だ。日本側はこの好機を逃さず若いベアボック外相(41)の支持を獲得し、日独両国の外交で「ベルリンの少女像」の撤去を勝ち取ってほしい。