海外中国メディア「大紀元」(エポックタイムズ)のサイトに鳥飼聡氏の興味深い見出しの記事(7月22日付)を見つけた。曰く「江沢民まもなく96歳『何故まだ生きているのか?』」というタイトルが付いている。中国第5代国家主席の江沢民氏(在任1993年3月〜2003年3月)は来月17日に96歳を迎える。大紀元の記事はその江沢民氏の長寿を祝う祝賀記事ではない。逆だ。もはや現職でないとしても元指導者に少々礼儀を欠く表現かもしれないが、大紀元の記事は、「何故まだ生きているのか」というきつい問いかけを江沢民氏にせざるを得ない事情を説明している。

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▲法輪功迫害の張本人、中国第5代国家主席江沢民氏(ウィキぺディアから)

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▲法輪功メンバーたちのデモ行進(2015年9月19日、ウィーン市内で撮影)

 「江沢民」という名前を聞くと法輪功メンバーならばきっと顔をしかめ、その顔に唾を吐きかけたくなるかもしれない。江沢民氏は上海市長、上海市党書記などを経て、1989年6月4日の天安門事件の後、��小平の推挙により、失脚した趙紫陽に代わって党総書記および中央政治局常務委員に就く。97年に��小平が死去。後ろ盾を失った江沢民は以後、自身を支える政治集団「江沢民派」(上海閥)を構築して独裁政治を続けていった。

 しかし、1990年代後半に入ると、李洪志氏が創設した中国伝統修練法の気功集団「法輪功」の会員が中国国内で急増し、1999年の段階で1億人を超え、その数は共産党員数を上回っていった。法輪功は宗教ではない。心と体のバランスを維持する上で役立つ修練法だ。貧しい国民だけではない。共産党幹部たちも法輪功に惹かれ、トレーニングする者が出てきた。

 それに危機感をもった江沢民国家主席は1999年、法輪功を壊滅する目的で「610弁公室」を創設した。「610」という数字は同公室が1999年6月10日に設立された日付から由来する。法輪功メンバーの取締りを目的とした専門機関である。「610弁公室」は旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)のような組織で、共産党員が減少する一方、メンバー数が急増してきた法輪功の台頭を恐れた江沢民主席の鶴の一声で作られた組織だ(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

 「610弁公室」は現存の法体制に縛られない超法規的権限を有し、法輪功の根絶を最終目標としている。中国当局は拘束した法輪功メンバーから生きたままで臓器を摘出し、それを業者などを通じて売買している。2000年から08年の間で法輪功メンバー約6万人が臓器を摘出された後、放り出されて死去したというデータがあるほどだ。

 中国の不法臓器摘出の実態を報告したカナダ元国会議員のデビッド・キルガ―氏は、「臓器摘出は中国で大きなビジネスだ。政府関係者はそれに関与している。法輪功メンバーの家族が遺体を引き取った際、遺体には腎臓などの臓器が欠けていたという証言がある」と報じている(習近平時代に入っても法輪功メンバーへの弾圧は続いている)。

 法輪功メンバーにとって「江沢民」という名前は悪魔を意味する。その江沢民氏が国家主席を辞めた後も生き続け、共産党政権で大きな影響力を行使。そして96歳にもなろうとしているのだ。長寿を天の祝福と受け取る中国国民にとっては理解できないのだ。

 鳥飼聡氏には「重罪を犯した人間は生きている間に公平な裁きを受けなければならない」という考えがあるから、「何故まだ生きているのか」というタイトルには、「江沢民よ、公平な裁きを受けてから死ね」という思いが込められているのだろう。

 当方は2006年頃から中国での法輪功迫害問題をフォローしてきた。それから16年以上の年月が経過した。残念ながら、法輪功メンバーへの迫害はまだ続いている。当方には「中国共産党よ、何故まだ存続しているのか」という思いがある。


<参考資料>
 「法輪功メンバーから臓器摘出」2006年11月23日
 「中国の610公室」2006年12月19日
 「『江沢民告訴』要求の署名活動拡大」2015年9月24日
「移植臓器は新疆ウイグル自治区から」2019年1月12日
 「『法輪功迫害』描いたアニメがヒット」2021年3月4日
 「なぜ法輪功学習者を迫害するのか」2021年7月7日