人の懐具合を覗くのは品がないが、ゲアハルト・シュレーダー元独首相(77)の懐を探ってみた。ドイツ放送のフランク・カペラン記者の情報(2月7日)に基づく。

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▲ゲアハルト・シュレーダー元独首相(ウィキぺディアから)

 シュレーダー独元首相はロシアのプーチン大統領から国営企業ロスネフチの監査役会の仕事を得て、年間60万ユーロを受け取り、それに加え、独ロ間の天然ガスパイプラインの「ノード・ストリーム2」の株主委員会メンバーとしての報酬は25万ユーロと見積もられる。ほぼ同額の報酬がガスプロムの新しい監査役会のポジションに対しても支払われている。計算の早い人なら、シュレーダー氏がプーチン氏から年間100万ユーロ以上(約1億3000万円)のお金を受け取っていることが分かる

 その他、ドイツでは元大統領、元首相に対しては手厚い保護と資金が提供されている。シュレーダー氏(首相在任1998年10月〜2005年11月)はドイツの国庫から月8000ユーロの年金を得、連邦議会内には事務所が与えられ、スタッフ、公用車などの経費年間56万ユーロが拠出されている。

 シュレーダー氏がプーチン氏から手厚い待遇を受けていることから、野党「キリスト教社会同盟」(CSU)からは、「独裁者からたっぷりお金を得ているのだから、ドイツの納税者から年金や公用車などの経費を払う必要はない」という批判の声が聞かれる。少し妬みの思いも含まれているだろうが、当然の声だ。

 参考までに、ドイツでは大統領がその任務を終え退職した場合、連邦大統領の恩給に関する法(Gesetz ueber die Ruhebezuege des Bundespraesidenten)に基づき、終身恩給(Ehrensold)が支給される。その額は年間約19万9000ユーロだ。それだけではない。車と秘書付だ。それも任期満了でも途中辞任した大統領も同様の扱いを受ける。

 同国では過去、自身の汚職容疑で早期辞任に追い込まれた大統領がいる。クリスチャン・ウルフ氏だ。同氏の場合、ニーダーザクセン州首相時代(2003〜10年)、知人の実業家夫妻から低利の住宅ローン(50万ユーロ)を借りて住居を購入したり、友人から豪華な接待を受ける一方、その返礼に友人の事業を間接的に支援した疑いがもたれ、汚職・賄賂容疑で辞任に追い込まれた。在任期間は1年7カ月で最短記録だ。しかし、辞任後、同氏に対して大統領終身年金が支払われることから、「汚職した政治家に、国民の税金を使うのは不当だ」という声が高まったことがある(「ウルフ氏(前独大統領)の老後対策」2012年2月20日参考)。

 シュレーダー氏の場合、退職後、国家のために貢献しているのならば、文句をいう国民はいないだろうが、同氏の場合、欧州の戦争の危機を煽っているロシアのプーチン氏から巨額の報酬を受け取っているのだ。そこまでは、まだ許容範囲かも知れない。欧州では首相などを歴任した政治家が退任後、大企業のコンサルタントとなって巨額の報酬を受け取っている。問題はその次だ。シュレーダー氏はウクライナ危機に対し、「キエフは古いサーベルを構えて意気だっている」と冷笑するなど、ウクライナ危機に対するスタンスは明らかにプーチン寄りだ。「ウクライナ危機の平和的解決を実現するために努力しているショルフ独首相の後ろでロシアを支援している」というわけだ。

 シュレーダー氏のロシア寄りはウクライナ危機が初めてではない。ロシアの反体制派活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が毒殺未遂事件にあった時、シュレーダー氏は、「プーチン氏は事件には関与していない」と素早くプーチン擁護する、といった具合だ。

 ちなみに、社会民主党(SPD)の外交政策の専門家であるゲルノート・エルラー氏はシュレーダー氏とプーチン大統領の関係を「損得を越えた男同士の友情だ」と分析している。

 シュレーダー氏はSPD出身の政治家だ。SPDは労働者の政党と標榜してきた。そのSPD出身の元首相が独裁者の顧問となり、祖国を批判し、資本家顔負けの豪華な生活をしていることから、SPD党内でも批判が高まってきている。「シュレーダー氏をSPDから追放すべきだ」といった声まで聞かれ出した。

 なお、シュレーダー氏は過去、新しい奥さんが韓国女性ということもあってか、反日発言を発して物議を醸しだしたことがある。

 
<参考情報>
訪韓した独前首相の『反日』発言」2017年9月14日参考)
シュレーダー独前首相と韓国女性」2017年10月4日参考)