キューバの首都ハバナ駐在の米大使館関係者、外交官、情報機関員に頭痛やめまいなど通称ハバナ症候群と呼ばれる健康不良現象が発生し、ワシントンもその原因追及に乗り出しているが、これまで不明だ。そこに米雑誌「ザ・ニューヨーカー」(7月16日)は「ウィーン駐在の米外交官、情報・軍事関係者にハバナ症候群が見られる。ウィーンの米国関係者が謎の音響攻撃(mysteriose Akustikattacken)のターゲットになっている」と報じたことから、ホスト国オーストリア外務省は驚きをもって受け取ってる。

▲在ウィーンの米大使館(在ウィーン米大使館公式サイトから)
ザ・ニューヨーカーの記者によると、「数十人の米情報機関関係者、外交官、政府関係者に頭痛やめまいなどの症状を訴える者が出てきている。それらの症状はハバナ症候群(Havanna-Syndrom)に酷似している。健康障害を訴える件数はハバナ以外では在ウィーン米関係者が最も多い」というのだ。
ハバナ症候群とは、最初は2016年、在キューバの米国大使館などで報告され、翌年17年8月には在キューバのカナダ大使館職員、18年4月には在中国アメリカ領事館職員でも起きている。そして21年5月に入るとロンドンなど欧州やコロンビア、ウズベキスタンなどでも被害の報告が出ているという。
同誌は今回、「在ウィーンの米国関連施設ではこれまで見られなかったほど頻繁に起きている。音響攻撃を受けた外交官たちは突然、頭痛、めまい、耳鳴りに襲われるという健康問題が生じている。特定のマイクロ波などを使用した音響攻撃ではないかと言われてきたが、真相は今なお不明だ」という。
ある米外交官は子供を連れて車で交差点に差し掛かった時、子供が突然激しく泣き出した。車が交差点を通過すると子供は泣き止んだという報告がある。この件などは、音響攻撃説の可能性を裏付けているわけだ。また、「突然、頭の中に爆風のような圧力を感じた」、「セミの大きな声のようだった。その音は部屋の中だけで、その部屋の戸を開けると音は消えた」と証言している。関係者は一様に、頭痛、めまい、耳鳴りなどで苦しめられたというのだ。
米国側は当初、キューバ政府が関与していると受け取ってきたが、キューバ以外でも音響攻撃の報告が出てきたことから、発生源は判明できずにきた。オーストリア国営放送が17日、夜のニュース番組の中で、「ロシアの関与が囁かれている」とロシア関与説を報じていたが、また憶測の域を超えない。
同誌によると、「世界でこれまで約130人がハバナ症候群を訴えている。最近では米ホワイトハウス周辺関係者にも報告されている」というから、事態は深刻だ。被害者は、約50人は米中央情報局(CIA)関係者、残りは米軍事関係者と米国務省関係者だという。どうして、CIAや国務省・軍事関係者に被害が集中しているのだろうか。
CIAは2020年、音響攻撃について懐疑的だった。ジーナ・ハスペルCIA長官(当時)は全ての職員にハバナ症候群のような症状があれば報告するように要請した手紙を送っている。昨年の段階では在ウィーン米大使館、情報機関関係者からハバナ症候群の報告はなかったことから、在ウィーンの場合、今年に入ってからということになる。
ちなみに、在ウィーン米大使館関係者、情報機関関係者で最初のハバナ症候群が報告されたのはバイデン政権が発足した「数カ月後」だ。バイデン政権は当時、在ウィーン米大使館のハバナ症候群の件では公表を控えるように要請している。その理由は「進行中の原因追及調査を妨げてはならないからだ」という。ザ・ニューヨーカーによると、バイデン政権はウィーンでのハバナ症候群について「説明不明な健康上問題」(Unexplained Health Incidents)と呼び、「原因追及を強化してきた」という。
ホスト国オーストリア外務省は、「事態は深刻だ。米国側と連携して原因解明のために努力していく。ウィーンに派遣された外国の外交官やその家族の安全問題はわが国にとっても優先課題だ」という。
ところで、ウィーンは東西両欧州が分断されていた冷戦時代から世界のスパイ、情報工作員が集まり、激しい情報戦を展開してきた拠点だ。ザ・ニューヨーカー誌は映画「第3の男」を引用しながら、ウィーンが置かれている地理的、戦略的意味を説明し、「ウィーンには様々な国際機関の拠点がある。例えば、石油輸出国機構(OPEC)や国際原子力機関(IAEA)だ」と述べている(「スパイたちが愛するウィーン」2010年7月14日参考)。
オーストリア外務省は昨年初め、サイバー攻撃を受けた。ザ・ニューヨーカーは、「ロシアのマイクロ波攻撃(Mikrowellenstrahlung)ではないか」という憶測情報を報じている。ロシアは米外交官のコンピューターやスマートフォンの情報を盗む目的でマイクロ波攻撃をしている可能性が考えられるが、具体的にどのようにして実行できるかなどについては説明できないでいる。ちなみに、ハバナ症候群については、神経学者などからは「心因性集団パニック」「ストレス症候群」といった解釈が聞かれる。
米国防総省は6月25日、米軍事関係者が2004年以降に確認された未確認飛行物体(UFO)について報告書を公表したばかりだ。それによると、目撃された144件のうち、何を見たのか解明できたのは1件のみで、他の143件で目撃された飛行物体については不明で、地球外のものだという可能性を同省は排除していない。報告書では「未確認飛行物体」ではなく「未確認飛行現象」と記述されている。
そして今、ハバナ症候群が大きな謎として浮かび上がってきたわけだ。UFOとハバナ症候群はまったく異なった出来事か、それとも密接な関係があるのか、その答えはまだ出ていないのだ。

▲在ウィーンの米大使館(在ウィーン米大使館公式サイトから)
ザ・ニューヨーカーの記者によると、「数十人の米情報機関関係者、外交官、政府関係者に頭痛やめまいなどの症状を訴える者が出てきている。それらの症状はハバナ症候群(Havanna-Syndrom)に酷似している。健康障害を訴える件数はハバナ以外では在ウィーン米関係者が最も多い」というのだ。
ハバナ症候群とは、最初は2016年、在キューバの米国大使館などで報告され、翌年17年8月には在キューバのカナダ大使館職員、18年4月には在中国アメリカ領事館職員でも起きている。そして21年5月に入るとロンドンなど欧州やコロンビア、ウズベキスタンなどでも被害の報告が出ているという。
同誌は今回、「在ウィーンの米国関連施設ではこれまで見られなかったほど頻繁に起きている。音響攻撃を受けた外交官たちは突然、頭痛、めまい、耳鳴りに襲われるという健康問題が生じている。特定のマイクロ波などを使用した音響攻撃ではないかと言われてきたが、真相は今なお不明だ」という。
ある米外交官は子供を連れて車で交差点に差し掛かった時、子供が突然激しく泣き出した。車が交差点を通過すると子供は泣き止んだという報告がある。この件などは、音響攻撃説の可能性を裏付けているわけだ。また、「突然、頭の中に爆風のような圧力を感じた」、「セミの大きな声のようだった。その音は部屋の中だけで、その部屋の戸を開けると音は消えた」と証言している。関係者は一様に、頭痛、めまい、耳鳴りなどで苦しめられたというのだ。
米国側は当初、キューバ政府が関与していると受け取ってきたが、キューバ以外でも音響攻撃の報告が出てきたことから、発生源は判明できずにきた。オーストリア国営放送が17日、夜のニュース番組の中で、「ロシアの関与が囁かれている」とロシア関与説を報じていたが、また憶測の域を超えない。
同誌によると、「世界でこれまで約130人がハバナ症候群を訴えている。最近では米ホワイトハウス周辺関係者にも報告されている」というから、事態は深刻だ。被害者は、約50人は米中央情報局(CIA)関係者、残りは米軍事関係者と米国務省関係者だという。どうして、CIAや国務省・軍事関係者に被害が集中しているのだろうか。
CIAは2020年、音響攻撃について懐疑的だった。ジーナ・ハスペルCIA長官(当時)は全ての職員にハバナ症候群のような症状があれば報告するように要請した手紙を送っている。昨年の段階では在ウィーン米大使館、情報機関関係者からハバナ症候群の報告はなかったことから、在ウィーンの場合、今年に入ってからということになる。
ちなみに、在ウィーン米大使館関係者、情報機関関係者で最初のハバナ症候群が報告されたのはバイデン政権が発足した「数カ月後」だ。バイデン政権は当時、在ウィーン米大使館のハバナ症候群の件では公表を控えるように要請している。その理由は「進行中の原因追及調査を妨げてはならないからだ」という。ザ・ニューヨーカーによると、バイデン政権はウィーンでのハバナ症候群について「説明不明な健康上問題」(Unexplained Health Incidents)と呼び、「原因追及を強化してきた」という。
ホスト国オーストリア外務省は、「事態は深刻だ。米国側と連携して原因解明のために努力していく。ウィーンに派遣された外国の外交官やその家族の安全問題はわが国にとっても優先課題だ」という。
ところで、ウィーンは東西両欧州が分断されていた冷戦時代から世界のスパイ、情報工作員が集まり、激しい情報戦を展開してきた拠点だ。ザ・ニューヨーカー誌は映画「第3の男」を引用しながら、ウィーンが置かれている地理的、戦略的意味を説明し、「ウィーンには様々な国際機関の拠点がある。例えば、石油輸出国機構(OPEC)や国際原子力機関(IAEA)だ」と述べている(「スパイたちが愛するウィーン」2010年7月14日参考)。
オーストリア外務省は昨年初め、サイバー攻撃を受けた。ザ・ニューヨーカーは、「ロシアのマイクロ波攻撃(Mikrowellenstrahlung)ではないか」という憶測情報を報じている。ロシアは米外交官のコンピューターやスマートフォンの情報を盗む目的でマイクロ波攻撃をしている可能性が考えられるが、具体的にどのようにして実行できるかなどについては説明できないでいる。ちなみに、ハバナ症候群については、神経学者などからは「心因性集団パニック」「ストレス症候群」といった解釈が聞かれる。
米国防総省は6月25日、米軍事関係者が2004年以降に確認された未確認飛行物体(UFO)について報告書を公表したばかりだ。それによると、目撃された144件のうち、何を見たのか解明できたのは1件のみで、他の143件で目撃された飛行物体については不明で、地球外のものだという可能性を同省は排除していない。報告書では「未確認飛行物体」ではなく「未確認飛行現象」と記述されている。
そして今、ハバナ症候群が大きな謎として浮かび上がってきたわけだ。UFOとハバナ症候群はまったく異なった出来事か、それとも密接な関係があるのか、その答えはまだ出ていないのだ。