世界のキリスト教会にとってクリスマスと共に重要な復活祭(イースター)が近づいてきた。今年は4月4日だ。イエスは十字架で処刑されたが、その3日後に死から蘇り、離散した弟子たちを再び集め、福音を宣べ伝えるように鼓舞した。死んだ人間が復活したという話は現代人にとっては簡単には信じられないだろうが、「復活イエス」によってキリスト教が生まれ、世界に広がっていった事実は否定できない。ちなみに、イスラム教の場合、イエスは十字架で処刑されたとは考えず、十字架上で亡くなったイエスはドッペルゲンガーだったと信じている(「イエスにはドッペルゲンガーがいた」2021年1月18日参考)。

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▲信者のいないサンピエトロ大聖堂で復活祭の記念礼拝をするフランシスコ教皇(2020年4月12日、バチカンニュースから)

 ところで、死んだ後、生き返った人間は新約聖書の世界では、イエス1人ではない。イエスの友人ラザロは死んだ4日後、蘇り、そして病死した12歳の娘もその父親の信仰ゆえに復活の恵みを得ている。すなわち、新約聖書の世界では少なくとも3人、死から生き返っているのだ。

 当方は米TV番組「スーパーナチュラル」が好きだったが、そこでは死んだ人間や地獄に行った人間が蘇るシーンが何度も出てきた。死んだ人間と生きている人間の垣根は現代人が考えるほど明確な一線がないのだ。「生きているのは名ばかりで、実は死んでいるのだ」といった新約聖書「ヨハネの黙示録」第3章の言葉は別の意味で成就されているのを感じたほどだ。

 メディアでは時たま、臨死現象が報じられる。患者はコマ(昏睡)状況に陥り、医者から死を宣告されるが、暫くした後、コマから目を覚め、コマの時見た世界を家族や医者たちに語る、といった現象だ。患者は臨死状況に陥った時、ベットの周囲にいる家族の姿が見えたと報告するケースもある。そのような臨死現象を研究した書籍も出ている。そこでは、「死」と「生」の世界は重なり、決して隔たっていない。一種の多元的宇宙(マルチバース)の世界だ(「人は死んだとしても生きている」2019年10月15日参考)。

 キリスト教の場合、イエスの「復活」では2通りの解釈がある。「霊的復活」か、それとも「肉体復活」かだ。そして多くのキリスト者は前者を取る。イエスが時空を超えて弟子たちと交流しているところをみれば、前者の復活のほうが説得力がある。一方、先述したラザロと12歳の娘の場合、肉体復活と考えるべきだろう。2人は一旦死んだ後、イエスによって復活させられ、その後、何年間か生き、肉体が朽ちて再び死んでいったわけだ。2人は2度、「肉体的死」を味わった人間だったことになる。復活した2人の人生がより幸せだったかは分からないが、少なくとも、イエスの「復活」を後世に伝える証人となった。

 ところで、世界最大のキリスト教、ローマ・カトリック教会の総本山、バチカンのキリスト教一致推進評議会委員長のクルト・コッホ枢機卿は10日、「カトリック信者とプロテスタント信者(西方教会)、そして正教徒など東方教会が西暦2025年、復活祭を同じ日に祝うことができれば喜ばしいことだ。フランシスコ教皇もコプト派教会のタワドロス教皇も心から願っている」と述べている。

 東西両教会の復活祭を同じ日に祝おうという動きは久しくあったが、これまで実現できなかった。西暦325年5月、二カイア(現トルコのイズニク)でキリスト教史最初の全教会規模の会議(通称「二カイア公会議」)が開催されたが、その会議の議題の一つに既に復活祭の日付の統合というテーマがあった。16世紀に入って、西方教会がグレゴリオ暦を導入したため、ユリウス暦を使い続けた東方教会と復活祭の日付けで対立してきた。西方教会は今年は4月4日、東方教会は5月2日に復活祭を祝う。

 そして二カイア公会議から1700年後の西暦2025年に東西両教会の復活祭の日を統一して祝おうという動きがでてきた、というわけだ。復活祭の日付け問題でもこのように長い歴史を通じて議論をしても解決できなかったのだ。東西キリスト教会の再統合といった課題がいつ実現できるだろうかと考えると、ため息が出てくるだけだ。キリスト教会の問題解決能力に疑いが湧くのも当然だろう。

 イエスは十字架上で処刑された後、復活したが、自身の復活を疑った弟子のトマスは復活イエスが十字架上で亡くなったイエスか否かを考え、悩んでいた、すると、イエスはトマスに十字架の釘で穴の開いた手を見せて自身のアイデンティティを証明している。

 トマスだけではない。21世紀に生きる多くの現代人にとって、イエスの復活を信じることは容易ではないはずだ。同時に、失った家族、知人を恋偲び、その再会を願う点では今も昔も、人間は大きく変わっていない。失った悲しみ、痛みが深ければ深いほど、「復活」への願望は一層現実を帯びて差し迫ってくるのだ。