オーストリア出身の映画俳優アーノルド・シュワルツェネッガ―主演のクリスマスシーズン向けの映画「ジングル・オール・ザ・ウェイ」(1996年公開)があるが、その映画の独語版題名「約束は約束」だ。この台詞をウィーンのミヒャエル・ルドヴィク市長に贈りたい。以下、それを説明する
▲ウィーン市のルドヴィク市長(ウィキぺディアから)
「約束は約束」の主人公は息子にクリスマスプレゼントとしてTurbo Man(架空のキャラクター)の人形を約束したが、それを買いに行ったスーパーでは売り切れだった。そこで主人公の父親はそれを探しに店回りする話だ。父親は息子に「買う」と約束した以上、買わないとメンツだけではなく、息子との関係が難しくなる。深刻な思いで店を回る主人公の滑稽なシーンがこの映画の面白さだ。
ところで、ウィーン市のミヒャエル・ルドヴィク市長は新型コロナ感染でレストランや喫茶店など飲食業者が休業に追い込まれ、営業が厳しくなったことを受け、飲食業界を支援するという意味でウィーン市約9万5000世帯に1世帯シングルの場合25ユーロ、複数の場合50ユーロの飲食業界用の食事券をプレゼントすると発表した。発表当時は「10月11日のウィーン市議会選挙のための選挙運動だろう」と受けとった市民も少なくなかったが、25ユーロ、50ユーロの食事券は魅力がある。家族で一緒に1回はレストランで昼食がとれる。当方を含む多くの市民はいつ食事券がわが家の郵便受けに入っているかを心待ちにしてきた(「ウィーン市長の“粋なコロナ救援策”」2020年5月16日参考)。
▲ウィーン市庁舎(2013年4月26日撮影)
「どうやら多くの市区では既に食事券が郵送されたらしい」というニュースが流れてきた。メディアによると、一部の市内の郵便受け(ポスト)が壊され、中にあった食事券が盗まれたというのだ。例えば、50ユーロ、世帯20世帯の市営住宅のポストだけでも1000ユーロの食糧券となる。それも銀行払いでもなく、簡単なナンバーが記入されているだけだから、誰でもその気になれば盗むことが出来る。現地のメディアによると、50ユーロの食糧券を40ユーロで、オンラインで取引きする市民も出てきているというのだ。
郵送したというニュースが流れた後もポストに食事券が入っていない市民の間から市当局に「わが家の食事券が盗まれた可能性がある」という問い合わせが殺到、市当局は「盗まれた可能性がある場合、再送する」と説明するが、その確認作業は大変だ。新型コロナ対策で明け暮れる市当局関係者も想定外の事態に困惑気味だ。
日刊紙の「読者の声」欄には「ウィーン市長が市民に約束した以上、全市民に食事券が届くまで努力すべきだ」という市民の声が掲載されていた。そこでオーストリア出身のシュヴァルツェネッガ―氏の「約束は約束」という映画の話が出てくるわけ。映画の主人公が息子に約束したTurbo Man の人形を探しに市内を駆け巡ったように、市長は郵送したはずの食事券がどこに消えたのか、配達プロセスで不正があったかなどを調査し、市民に食事券の郵送が遅れている理由などを記者会見で説明していただきたいというわけだ。
飲食店の支援のための食事券プレゼント話が出た当時、「市長の選挙戦だ」と斜に構えて批判してきた市民も、それがまだ自分のポストに入っていないと、「わが家の食事券はどこに消えたのか」と言い出す。新型コロナで職業を失った人も多く出てきているし、短時間労働になった市民も多数いる。25ユーロ、50ユーロの食事券の価値はここにきて上昇してきた。食事券サービスで飲食業界を支援する一方、市民に喜んでもらうというアイデアまでは良かったが、その食事券を市民に届ける段階で困難に遭遇しているわけだ。
蛇足だが、日本では一世代10万円の新型コロナ救援金が支給されることになったが、完全に国民全てに届くまでには大変な労力と時間が必要となる。25ユーロの食事券でも全市民の手に無事届くことは難しいのだ。盗まれたり、郵送先で問題が生じたり、100%の仕事は容易ではない。
「布マスクの郵送が完了した」というニュースを聞いた時、やはり日本人はスゴイと感動した。布マスクを全世帯に郵送する作業は大変だ。布マスクで安倍政権を批判してきた国民はウィーン市の食事券のゴタゴタをみて、安倍政権の苦労をもう少しは見直してもいいのではないだろうか。
市長の食事券支援を批判しながらも、届いたチケットで美味しいシュ二ッツェル(代表的な肉料理)に舌鼓を打っている市民がいれば、食事券が届くのを首を長くして待っている市民がいる。たかが食事券サービスでもこのように不公平な事態が生まれてくるわけだ。
ところで、ルドヴィク市長、わが家の食事券はいつ届くのですか。約束は約束ですからね。
▲ウィーン市のルドヴィク市長(ウィキぺディアから)
「約束は約束」の主人公は息子にクリスマスプレゼントとしてTurbo Man(架空のキャラクター)の人形を約束したが、それを買いに行ったスーパーでは売り切れだった。そこで主人公の父親はそれを探しに店回りする話だ。父親は息子に「買う」と約束した以上、買わないとメンツだけではなく、息子との関係が難しくなる。深刻な思いで店を回る主人公の滑稽なシーンがこの映画の面白さだ。
ところで、ウィーン市のミヒャエル・ルドヴィク市長は新型コロナ感染でレストランや喫茶店など飲食業者が休業に追い込まれ、営業が厳しくなったことを受け、飲食業界を支援するという意味でウィーン市約9万5000世帯に1世帯シングルの場合25ユーロ、複数の場合50ユーロの飲食業界用の食事券をプレゼントすると発表した。発表当時は「10月11日のウィーン市議会選挙のための選挙運動だろう」と受けとった市民も少なくなかったが、25ユーロ、50ユーロの食事券は魅力がある。家族で一緒に1回はレストランで昼食がとれる。当方を含む多くの市民はいつ食事券がわが家の郵便受けに入っているかを心待ちにしてきた(「ウィーン市長の“粋なコロナ救援策”」2020年5月16日参考)。
▲ウィーン市庁舎(2013年4月26日撮影)
「どうやら多くの市区では既に食事券が郵送されたらしい」というニュースが流れてきた。メディアによると、一部の市内の郵便受け(ポスト)が壊され、中にあった食事券が盗まれたというのだ。例えば、50ユーロ、世帯20世帯の市営住宅のポストだけでも1000ユーロの食糧券となる。それも銀行払いでもなく、簡単なナンバーが記入されているだけだから、誰でもその気になれば盗むことが出来る。現地のメディアによると、50ユーロの食糧券を40ユーロで、オンラインで取引きする市民も出てきているというのだ。
郵送したというニュースが流れた後もポストに食事券が入っていない市民の間から市当局に「わが家の食事券が盗まれた可能性がある」という問い合わせが殺到、市当局は「盗まれた可能性がある場合、再送する」と説明するが、その確認作業は大変だ。新型コロナ対策で明け暮れる市当局関係者も想定外の事態に困惑気味だ。
日刊紙の「読者の声」欄には「ウィーン市長が市民に約束した以上、全市民に食事券が届くまで努力すべきだ」という市民の声が掲載されていた。そこでオーストリア出身のシュヴァルツェネッガ―氏の「約束は約束」という映画の話が出てくるわけ。映画の主人公が息子に約束したTurbo Man の人形を探しに市内を駆け巡ったように、市長は郵送したはずの食事券がどこに消えたのか、配達プロセスで不正があったかなどを調査し、市民に食事券の郵送が遅れている理由などを記者会見で説明していただきたいというわけだ。
飲食店の支援のための食事券プレゼント話が出た当時、「市長の選挙戦だ」と斜に構えて批判してきた市民も、それがまだ自分のポストに入っていないと、「わが家の食事券はどこに消えたのか」と言い出す。新型コロナで職業を失った人も多く出てきているし、短時間労働になった市民も多数いる。25ユーロ、50ユーロの食事券の価値はここにきて上昇してきた。食事券サービスで飲食業界を支援する一方、市民に喜んでもらうというアイデアまでは良かったが、その食事券を市民に届ける段階で困難に遭遇しているわけだ。
蛇足だが、日本では一世代10万円の新型コロナ救援金が支給されることになったが、完全に国民全てに届くまでには大変な労力と時間が必要となる。25ユーロの食事券でも全市民の手に無事届くことは難しいのだ。盗まれたり、郵送先で問題が生じたり、100%の仕事は容易ではない。
「布マスクの郵送が完了した」というニュースを聞いた時、やはり日本人はスゴイと感動した。布マスクを全世帯に郵送する作業は大変だ。布マスクで安倍政権を批判してきた国民はウィーン市の食事券のゴタゴタをみて、安倍政権の苦労をもう少しは見直してもいいのではないだろうか。
市長の食事券支援を批判しながらも、届いたチケットで美味しいシュ二ッツェル(代表的な肉料理)に舌鼓を打っている市民がいれば、食事券が届くのを首を長くして待っている市民がいる。たかが食事券サービスでもこのように不公平な事態が生まれてくるわけだ。
ところで、ルドヴィク市長、わが家の食事券はいつ届くのですか。約束は約束ですからね。
感染症の影響を経済的に直接受けていない人にまで支給するのが相当かどうか、議論のあるところですが、ほとんどの人が間接的な非経済的精神的な被害はいろいろ受けましたし、将来的には何らかの経済的被害も及んでくるかもしれないし、まあ、日本政府は気前の良いところを全世界に誇示しました。こういう支給金のない各国では妬みの声もあるかもしれないね。もっとも、政府の財政事情に悪影響があり、それが将来国民にしわ寄せされるのかも知れませんが。