とにかく暑い、という。先日、日本に電話した時、知人は猛暑の日々を語ってくれた。当方は40年あまり日本を留守にしているから、日本の夏を忘れてしまった。欧州でも2回ほど、40度を超える猛暑を体験したが、空気は乾燥し、湿気は余りない。知人曰く、「日中はクーラーで何とかしのげるが、夜は体を冷やさないためにクーラーを切って寝るので大変だ」という。

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▲ヘンリー王子とマークルさんの結婚式(2018年5月19日、英BBC放送の中継から)

 そこで猛暑に苦しむ日本の読者のために何ができるだろうかと考え出した。そうだ、「幽霊の話」を紹介すれば少しは暑さを忘れることができるのではないか。このコラム欄でも数回、「幽霊の話」を紹介してきた手前、幽霊は当方にとって決して未知の存在ではない。オーストリア最大部数を占める日刊紙「クローネン新聞」(日曜版)で幽霊の話を紹介していたので、早速その概要を読者に伝えたい。

 英国ロンドン近郊のウィンザー城内の聖ジョージ礼拝堂で5月19日、英王室のヘンリー王子(33)と米女優のメーガン・マークルさん(36)の結婚式が挙行された。ウインザー周辺では10万人以上の人々がヘンリー王子夫妻の新しい門出を祝った。話はヘンリー王子夫妻がエリザベス女王から結婚祝いとして贈られた新居に住む幽霊の話だ。

 その新居はイギリスのノーフォーク州にある王室所有のサンドリンガム別邸だ。周辺は美しい自然に恵まれている。外観は素晴らしいが、実は幽霊屋敷として知る人ぞ知る謂れのある屋敷だった。実際、同屋敷には1963年以降、誰も住んでいない。管理人が定期的に見回るだけだという。

 その屋敷にエドワード7世の息子、アルベルト・ヴィクター(クラレンス公)が生まれた。アルベルトは家族からエディ(Eddy)という愛称で呼ばれていた。彼は学校ではあまり成績の良くない子供だった。大学では豊富な自由時間にポロを興じたり、様々な享楽に耽った。女性から男性、アルコールから麻薬まで全ての享楽の世界に入り込んでしまった。そして1892年、肺炎で死んでしまった。28歳だった。歴史家によると、死因は肺炎ではなく、梅毒だったという。

 問題はエディが亡くなっても彼は自分の屋敷から離れようとしなかったのだ。エディの死後、弟のジョージ(ヨーク公)家族が住んだが、彼らは「屋敷に暗いオーラが漂い、心地よくなかった」という。それ以降、誰もその屋敷に住む者がいなくなったというわけだ。

 エリザベス女王はエディの話を知っていたはずだが、その屋敷をヘンリー王子とマークルさんの結婚祝いに贈呈したわけだ。女王には悪意がなかったはずだ。当方の解釈だが、「若い彼らならば幽霊が出ようが問題ないだろう」という確信が女王にはあったのではないか。ただし、新婚カップルは今、新しい別の屋敷を探しているというニュースも流れてくる。

 ところで、スウェーデンのカール16世グスタフ国王の妻シルビア王妃(73)は、首都ストックホルム郊外のローベン島にあるドロットニングホルム宮殿について『小さな友人たちがおりまして、幽霊です』と述べている。国王の姉クリスティーナ王女(73)も『古い家には幽霊話が付きもの。世紀を重ねて人間が詰め込まれ、死んでもエネルギーが残るのです』と主張している(「欧州王室に『幽霊』と『天使』が現れた」2017年1月6日参考)。欧州の王室では幽霊は既に市民権を有しているのだ。

 幽霊は、生前哀しい人生を送った人間の霊が地上生活から決別できないため幽霊となる場合、ある特定の人物に恨みがある場合、彼らは自身の生きていた周辺に漂い、幽霊となる。
 ちなみに、幽霊の特徴は、幽霊と何らかの関係、相対関係がない限り、その存在がキャッチできないことだ。だから、幽霊が出てきてもそれが見える人と見えない人に分かれる。幽霊が普遍的な存在として認識できない大きな原因だ(「公邸の幽霊は人を選ぶ」2013年5月26日参考)。