欧州連合(EU)にどれだけの外国人が住んでいるだろうか。欧州統計局が今月公表した統計によると、欧州国民の93・3%は自国民で、2・8%が他のEU諸国からであり、3・9%がEU外の住民という。当方はEU外からきた住民に属する1人だ。統計を見る限りでは、通称外国人と呼ばれる分類の住民の数(全体の約6・7%)が少ないことに新鮮な驚きを覚えた。

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▲自宅から見たウィーンの日没風景(12月、撮影)

 統計局によると、外国人率(国民全人口で外国人が占める割合)が10%を超えるEU加盟国は7カ国という。28カ国から構成されたEUで最も外国人率が高い国はルクセンブルクで45・3%だ。国民の2人に1人は外国人だ。ただし、同国は国際企業や機関が溢れている国だから、例外的な国と言える。同国の外国人の39%は他のEU出身者だ。

 その他、外国人率10%を超える国は、キプロス19・5%、ラトビア15・2%、エストニア14・9%、オーストリア12・5%、アイルランド11・8%、ベルギー11・3%の6カ国だ。当方が住むオーストリアの場合、外国人のほぼ半分は他のEUからで、最多はドイツ人でその数は15万8014人だ。

 逆に、外国人率が少ない国はポーランドで0・3%に過ぎない。ほぼ自国民で占められている国だ。自由な移動が保障されている21世紀の中でも特異な国だ。ルーマニアは0・4%以下、そしてブルガリア、クロアチア、リトアニアで0・8%と続く。

 英国人口約6430万人のうち、約4・1%の約260万人は他のEU諸国からの出身者。最も多い出身国はポーランドでその数は74万8207人だ。同国の外国人率は7・9%だ。

 ところで、外国人とはどのような人間だろうか。自国から追放され、戻れなくなった人もいるかもしれないが、大多数は仕事上の理由から異国で生活する人だろう。当方のように、欧州駐在直後、仕事が終わり次第、帰国する考えだったが、何かの事情から滞在が長くなり、もはや帰国するという選択肢が非現実的となった外国人も少なくないかもしれない。

 滞在が長くなったとしても住んでいる国の国籍を習得しない限り、外国人だ。ただし、国籍を取ったとしても外観で一目で分かるアジア系住民は国籍有無に関係なく外国人という称号から解放されることはない。

 オーストリアの電話帳を見れば、スラブ系の名前が多いのに気が付くだろう。旧ソ連・東欧諸国からオーストリアに流れてきた移民たちであり、難民たちだ。彼らの多くは国籍修得後は内外ともに立派な国民だが、アジア系住民の場合は少々異なる。外国人というタイトルは終身称号として付きまとう。

 世界はグローバル化し、民族の違いは昔ほど決定的ではないが、やはり外国人は歴然として存在する。明確な点は外国人だからといって得することは多くないことだ。当然かもしれない。

 当方は外国人というタイトルからいつかは解放されたいと考えたことがあった。10年前、親族の法事の為に日本に一時帰国した時だ。自分はもはや外国人ではないと成田国際空港に降り立ったが、日本を留守にしていた期間(35年間)が長すぎたためか、日本に戻りながら外国人のような自分を発見してがっかりしたものだ。住んいる異国の地ばかりか母国でも外国人というレッテルを剥すのは容易ではなくなった現実を痛感した。

 蛇足だが、Staatenloseという独語がある。無国籍者だ。いろいろな事情から国籍を失った人だ。国籍がない場合、その人の安全を守ってくれる国がどこにもないことを意味する。砂漠の荒野に独り立つ異邦人だ。

 美しい日本に住み、その国籍を与えられている人がどれだけ幸せか、思い出してほしいものだ。あなたが美しい日本から一歩外に出れば、即、外国人となることも、どうか忘れないでほしい。