世界に12億人以上の信者を抱えるローマ・カトリック教会は25日午前(現地時間)、記念礼拝後、3週間に渡って開かれた世界代表司教会議(シノドス)の幕を閉じた。シノドスでは265人の参加者が家庭、婚姻問題について協議してきた。その最終報告書は24日、3分の2以上(少なくとも177人)の参加者の支持を得て採択され、ローマ法王フランシスコに提出された。法王がその報告書をもとに新たな決定を下すかは不明だ。

 バチカンは今月4日から25日まで3週間、「福音宣教からみた家庭司牧の挑戦」について継続協議を行った。参加者は13作業グループに分かれて、家庭、婚姻問題などについて意見を交換した。
 シノドスの主要議題の一つ、離婚・再婚者への聖体拝領問題については、「個々のケースを検討して決める」という見解が多数を占めたという。すなわち、神の名による婚姻は離婚が許されないが、何らかの事情から離婚した信者に対して聖体拝領の道を閉ざさず、現場の司教たちが判断を下すという見解だ。すなわち、離婚を認めないカトリック教義を維持する一方、聖体拝領を離婚・再婚者にも与える道を開くという妥協案だ。

 一方、同性愛問題については、ドイツ語圏グループの代表、オーストリアのシェーンボルン枢機卿によると、「同性愛者の権利を擁護し、差別しないことで一致しているが、同性婚やその容認といった話はまったく協議のテーマとならなかった」という。すなわち、シノドス前と後では同性愛問題では何も変わっていないという。フランシスコ法王は4日、シノドス開催記念ミサで、「神は男と女を創造し、彼らが家庭を築き、永久に愛して生きていくように願われた」と強調している。


 昨年10月の特別シノドスと今回の通常シノドス、計5週間、司教たちが協議を重ねたが、再婚・離婚者への聖体拝領問題を含め何も新しい決定はなかった。信者の間で失望の声も聞かれる。独週刊誌シュピーゲル電子版は25日、「多くの論争、少ない進展」というタイトルの記事を送信している。

 しかし、シノドスは全く成果がなかったわけではない。ローマ法王を中心としたバチカン中央集権体制ではなく、各国の司教会議に権限を委ね、その国々の事情を配慮した教会運営が大切だという意見が支配的になってきたことだ。特に、離婚・再婚者への聖体拝領問題で各国の司教会議の判断に委ねるという考えが支持されたことは、バチカンの非中央集権化の第一歩と評価できる。
 
 フランシスコ法王は閉幕の演説の中で、「家庭、婚姻問題では非中央集権的な解決が必要だ。教会は人間に対し人道的、慈愛の心で接するべきだ。教会の教えの真の保護者は教えの文字に拘るのではなく、その精神を守る人だ。思考ではなく、人間を守る人だ」と指摘し、信者を取り巻く事情に配慮すべきだと強調している。

 バチカン非中央集権化とは、ローマ法王の権利を縮小するのではなく、各国の司教会議がこれまで以上に主体的に決定できるようにすることを意味する。カトリック教会では過去、ローマ法王が任命した司教を現地の教会信者が拒否し、バチカンとの関係が悪化するというケースが多く生じた。そこでバチカンが現場の声を重要視することで、バチカンと信者間の関係をスムーズにしていく狙いがある。

 フランシスコ法王は、「家庭は失望の中にあり、社会、経済、道徳的に歴史的危機に陥っている。教会は男性と女性の婚姻に基づき、家庭の価値と美しさを擁護すべきだ。なぜならば、家庭は全ての社会の基本的な土台であり、人生の土台だからだ」と述べ、家庭の価値の再評価を求めている。