1月27日は国連の「ホロコースト犠牲者を追悼する国際デー」だった。今回はウィーンの国連で開催された追悼集会で中国大使の場違いな反日発言を読者に報告するのが目的だ。多分、日本のメディアでは全く報道されていないと思うからだ。

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▲ウィーンの国連で開催中のホロコースト時代の子供たちの絵画、詩などの作品展(2015年1月27日、ウィーン国連で撮影)

 アウシュビッツ収容所解放70年目に当たる27日、ウィーンの国連でもホロコースト(ユダヤ人大虐殺)追悼集会が開催された。同集会はウィーン国連情報サービス(UNIS)と駐ウィーン国連機関担当のイスラエル大使館が共催したもので、外交官や国連職員が多数参加した。

 集会の会場には、ユダヤ人の子供たちが描いた絵画や詩が展示されていた。「空が飛べたら、世界の至る所を見たい」と書いていた子供の詩を読んで、心が痛くなった。バイオリン演奏後、ウィーン国連の事務局長、駐オーストリアのイスラエル大使がそれぞれ挨拶した後、駐ウィーン国連機関担当の中国大使の反日発言が飛び出したのだ。

 中国のCheng Jingye(成竞业)大使がナチス・ドイツ軍のユダヤ人虐殺を批判しながら、「わが国も1937年、第2次世界大戦で日本軍によって南京市で30万人の国民が虐殺される悲劇を体験しています」と述べたのだ。
 ホロコースト追悼集会の場で旧日本軍の南京事件に言及し、旧日本軍の活動をナチス・ドイツ軍の蛮行と意図的に重ねて紹介したうえで、「30万人の国民が犠牲となった」と、これまた一方的な数字を語ったのだ。

 中国大使の日本批判に対し、日中両国間の軋轢を知っている外交官や国連職員の中から「またか」といったため息がこぼれた。同大使の日本批判を聞き、当方は「中国はあらゆる機会を利用し、日本を批判することを国策としている」と改めて思い知らされた次第だ。

 中国大使にとって、ホロコースト集会で旧日本軍の南京事件に言及する必然性はないこと、30万人の犠牲者数も中国の歴史家を除くと必ずしも認知された数字ではないことを熟知していたはずだ。しかし、そんなことは中国側にとってどうでもいいのだ。国際社会で日本の過去の蛮行を言いふらせばいいのだ。その意味で、中国は確信犯だ。

 追悼集会には多数の中国メディア関係者が取材に来ていた。どうして今回、中国メディアが取材に来たのかと考えていたが、中国大使の反日発言を聞いて、納得できた。中国大使館は自国のメディア関係者に大使の発言内容を事前に知らせていたはずだ。一方、同集会には日本人の国連職員の姿はあったが、日本外交官やメディア関係者は見えなかった。関心がないのか、ホロコースト追悼集会は管轄外とでもいうのだろうか。

 中国外交官は訓練されている。彼らは必要なら外交プロトコールを平気で破るし、品格が疑われる、場違いな発言も堂々と行う。それに対し、日本人外交官は余りにも上品すぎる。高い国連分担金を払いながら、日本の国連外交は貧弱だ。

 安倍晋三政府は国連常任安保理事会入りを目指して努力しているが、その前に、外交官は国際社会の激しいやり取りに耐える体力と強かな根性を培ってほしいものだ。