ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は28日、3日間の日程でトルコ訪問を開始した。ローマ法王のイスラム教国トルコ訪問は2006年の前法王べネディクト16世以来で8年ぶりだ。28日に首都アンカラでエルドアン大統領らと会談し,29日には今回のトルコ訪問の主要目的、イスタンブールで東方正教会の精神的指導者(エキュメニカル総主教)バルトロメオス1世と会談し、キリスト教分裂(シスマ)以来の正教徒カトリック教会の再統合を目指す共同声明を公表する予定だ。キリスト教は1054年、ローマ法王を指導者とするカトリック教会(西方教会)と東方の正教会とに分裂(大シスマ)し、今日に到る。

 フランシスコ法王は正教会の祝日、聖アンドレアス祭に参加する。法王はバルトロメオス1世を「私の兄弟、アンドレアス」と呼びかけている。聖アンドレアスは聖ペトロの兄弟だ。聖アンドレアスはコンスタンティーノポリスの守護聖人、聖ペテロはローマの守護聖人だ。
 なお、両者は、パウロ6世と正教会のコンスタンディヌーポリ総主教アテナゴラスが1964年、会合し、1054年以来続いていた東西教会の相互の破門宣告を取り消した歴史的な出来事を記念する。


 トルコの人口97%はイスラム教徒でキリスト教徒は人口1%にも満たない。エルドアン大統領との会談ではシリア内戦と難民収容問題などが話し合われるとともに、中東の少数宗派キリスト教徒への迫害問題が議題となるとみられる。シリア難民問題では、トルコはこれまで約160万人の難民を収容するなど貢献していることに対し、フランシスコ法王は感謝を表明する意向だ。

 前法王べネディクト16世は法王就任年の2005年9月、訪問先のドイツのレーゲンスブルク大学の講演で、イスラム教に対し「モハメットがもたらしたものは邪悪と残酷だけだ」と批判したビザンチン帝国皇帝の言葉を引用したため、世界のイスラム教徒から激しいブーイングを受けた。トルコ訪問時でもイスラム教徒の激怒を買ったことはまだ記憶に新しい。
 フランシスコ法王の場合、トルコ国内では歓迎の声が聞かれる一方、シリア内戦で多数の難民が殺到していることもあって、治安情勢を懸念する声が聞かれる。トルコ側はローマ法王の安全のためイスタンブールだけでも約7000人の警察官を配置している。イスタンブールはイスラム国の拠点の一つと見られているからだ。トルコ側は、ローマ法王が市内を走る際、窓ガラスがオープンな車ではなく、防弾ガラスのリムジン車の使用をバチカン側に要請している。