ウィーンで18日から開催されていたイラン核協議は交渉最終期限の24日、参加国間で包括的合意が実現できず、来年7月1日まで協議を継続することで一致して閉幕した。この結果、昨年11月ジュネーブで採択した「暫定合意」の内容が今後も有効となる。

 国連安保常任理事国(米英仏露中)と独の6カ国とイランの核協議は2008年から始まったが、イランの核問題自体は03年からで、今年で12年目の長期議題だ。イランがナタンツにウラン濃縮関連施設を有していることがイラン反体制派グループの情報で明らかになってから、イランの核関連活動が核エネルギーの平和利用ではなく、軍事目的を有している疑いが出てきた。そのため、ウィーンに本部を置く国際原子力機関(IAEA)はこれまで検証活動を行ってきたが、イランの核関連活動が平和目的だと実証できない状況が続いている。

 欧米諸国やイスラエルはイランが不法な核活動を行い、起爆実験など繰り返してきた疑いを払拭できない。一方、イラン側は終始、「わが国の核活動は核エネルギーの平和利用だ」と反論してきた。例えば、テヘラン近郊のパルチン軍事施設の査察を「軍事施設であり、IAEAとの間の核保障協定の対象外」という理由を挙げてIAEAの査察を拒否してきた経緯がある。IAEAの天野之弥事務局長は11月定例理事会で、「イランは未解決問題の解決に対する協調が足りない」と批判している。
 
 6か国とイランの核協議の対立点は大きく分けて4点だ。第1はイランにどれだけの遠心分離器設置を認めるかだ。イランは現在1万9000基(旧式)を設置し、そのうち1万基が操業している。イランは将来、19万基の遠心分離器を設置する計画を有している。それに対し、米国は4500基に削減すべきだと主張してきた。遠心分離器の数を制限することでイランの核兵器用濃縮ウラン製造を遅らせる狙いがある。
 第2は、アラクの重水炉建設問題だ。欧米側は核兵器転用可能なプルトニウムを製造できる重水炉建設を破棄するか、軽水炉に変更すべきだと要求してきた。イラン側は建設続行の姿勢を崩していない。第3は、6カ国とイラン間で「包括的核合意協定」が成立した場合、協定の有効期間問題だ。欧米は20年間を提案する一方、イランはせいぜい数年間と考えている。最後の第4は、対イラン制裁の解除問題だ。欧米側はイランの出方を見ながら漸次解除していくという考えだ。それに対し、イラン側は包括的合意後、即、全面的解除を実施すべきだと主張してきた。

 ウィーン会合ではそれらの4点の争点を中心に、参加国が協議を続けた。イランのザリフ外相は各会合が終わる度、テヘランに逐次電話して協議内容を報告、テヘランの指示を仰いでいた。ロウハニ大統領は欧米の制裁を早期解除させ、国内経済を回復したいという願いが強いが、イラン最高責任者ハメネイ師は、「欧米の圧力に屈し、イランの核開発の道を閉ざすことはできない」と強硬姿を見せている。それだけに、イラン外相はハメネイ師の意向を無視して欧米側に妥協できないわけだ。

 ウィーン会合のもう一人の主役、ケリー国務長官もウィーン会合中、サウジアラビアやイスラエル代表と会合し、ウィーン協議の内容を報告していた。イランと宿敵関係のサウジにとって、イランが核兵器を開発し、中東の主導権を握れば大変だ。イスラエルも、「イランの核開発は自国の安全を脅かすもので、絶対に容認できない」という考えだ。米国は両国の懸念を配慮しなければならない立場で、中途半端な妥協はできない。イスラエルのネタニヤフ首相は「悪い協定は無協定より始末が負えない」と警告を発しているほどだ。
 米国の場合、それだけではない。国内の議会の動きも無視できない。オバマ大統領はイランとの核合意を承認できるが、共和党主導の議会の許可なくして対イラン制裁解除はできない。すなわち、米国の交渉も国内事情から制限されているわけだ。

 イランと米国両国の交渉責任者が国内事情からその交渉に制限がある以上、抜本的な提案や妥協は最初から難しかったわけだ。しかし、国際社会が注目する会合の決裂は避けなければならない。そこで7カ月間の継続協議で合意し、ウィーン会合を閉じたわけだ。