北朝鮮外務省は20日、国連総会第3委員会(人権)が同国の人権蹂躙を批判し、国際刑事裁判所(ICC)に付託する内容が明記された決議案を採択したことに対し、「われわれの戦争抑止力は無制限に強化される」といった内容の報道声明を公表し、第4回の核実験を実施する可能性を示唆したばかりだ(北朝鮮は2006年10月、09年5月、そして13年2月の計3回の核実験を行った)。

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▲「核爆発」(CTBTOのHPから)

 そこでウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会のトーマス・ミュツェルブルク報道官に北の核実験警告への対応のほか、イランの批准問題、条約の発効の見通しなどを緊急質問した。

 ――北朝鮮は人権問題に対する国際社会の圧力に対抗するため核実験の実施を示唆している。CTBTOの監視体制はどうか。

 「われわれは常に万全の体制を敷いている。国際監視システム(IMS、地震波、放射性核種、水中音波、微気圧振動の4種類)は今年に入り2カ所増強した。朝鮮半島周辺だけではなく、世界の核実験を監視している。北側はこれまで3回、核実験を行ってきた。21世紀に入って核実験をした唯一の国だ。北が更なる核実験を実施しないことを願っている」

 ――米国、韓国から監視強化などの緊急要請は届いているか。

 「加盟国からの緊急要請はない。なぜならば、CTBTOの監視体制は機能しているからだ。核実験是非の判断の要となる放射性物質キセノン133など希ガス検出体制も高崎の放射性物質観測所やウラジオストックなど4か所の観測所がマークしている」(CTBTOは2回目の北の核実験後、放射性物質の観測所の不備を改善するため合計31カ所の放射性物質観測所を設置した)。

 ――昨年2月の核実験では北がウラン核実験を初めて実施した可能性があると予測されたが、北の核実験がウラン核実験かプルトニウム核実験か判断できずに終わった。その理由は核実験で放出された放射性物質の希ガスが少量であり、判断出来なかったからだと聞く。

 「CTBTOは核爆発があったかどうかを判断する機関だ。核爆発がウランによるのか、プルトニウムかの判断を下す権限はない。核実験データーに基づき、加盟国が判断する作業だ。CTBTOは核実験の有無を監視する権限しか有していないのだ。核爆発が実際行われたかを100%実証するためには現地査察(OSI)以外に方法がない」

 ――CTBTOは北側と接触はあるのか。

 「北朝鮮は、インドとパキスタンと共にCTBT条約に署名していない国だ。だから、公式のチャンネルでは北側との接触や交渉はない。ただし、ラッシーナ・ゼルボ事務局長は北側が招いてくれば、平壌を喜んで訪問し、CTBT条約の意義を関係者に説明する用意があると繰り返し表明してきた」

 ――ところで、ウィーンでイランと国連安保常任理事国5カ国プラス独6か国間で核協議が行われているが、イランがCTBT条約に批准すれば、核協議にも大きなインパクトを与えるのではないか。

 「その通りだ。イランは1996年、CTBT条約に署名したが、これまで批准していない。イランが条約に批准すれば、その核関連活動が平和目的であることを内外にアピールできる機会となり、国際社会との信頼醸成でもプラスだ」

 ――CTBTは今年9月で署名開始から18年目を迎えた。条約の発効の見通しはどうか。

 「条約発効に批准が不可欠な核開発能力保有国44カ国中8カ国が批准を終えていない。未批准国は8カ国。そのうち米国、中国、イスラエル、イラン、エジプトの5カ国は署名済みだが、未批准だ。インド、パキスタン、北朝鮮の3国は署名も批准もしていない。ハンス・ブリックス国際原子力機関(IAEA)元事務局長は、『CTBTはまだ発効していないが、実質的には発効しているような状況下にある。なぜならば、加盟国183か国は署名後、条約を守り、核実験をしていないからだ』と語っている。米国や中国はまだ批准していないが、ヨルダンで今月開始された現地査察演習には積極的に協力している。米国は現地査察の費用を拠出する一方、中国は機材を提供している。イスラエルやエジプトも専門家を派遣し、積極的に関与している」