オーストリアで25日、欧州議会選挙の投開票が行われ、ファイマン連立政権の国民党が得票率(27・3%)を微減させたが、第1党を堅持した。選挙前は第1党維持は難しく、悪くすれば第3党に後退すると予想されていただけに、国民党にとって快挙だ。

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▲カラス議員の勝利を1面トップで報じるプレッセ紙(2014年5月26日 撮影)

 国民党は独キリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党で中道右派政党だ。前回の国民議会選や州選挙でも後退傾向にあった。欧州議会選前も「第3党になれば、シュビンデルエッガー党首(財務相)の辞任は回避できないだろう」と言われてきただけに、党首を含む党関係者は久しぶりの朗報に酔っている。

 国民党の勝因は党リストで第1位に立候補したきたオトマール・カラス欧州議会議員(56)の活躍にあったことは誰の目にも明らかだ。1999年からブリュッセルで活躍してきたオーストリア政界一番の欧州議会通である。選挙戦中、風邪でTV討論会に参加できないという事態もあったが、乗り越えてきた。オーストリア日刊紙プレッセは26日付で「国民党の勝利ではない。カラス議員の勝利だ」という論評記事を掲載しているほどだ。

 カラス議員と好対照だったのは社会民主党が擁立したオーストリア国営放送(ORF)の花形記者出身のオイゲン・フロインド氏だ。社民党から第1党の地位獲得を託されたフロインド氏はカラス氏の欧州議員としての経験の前に完敗した、といった感じだ。

 ところで、カラス議員の選挙戦略は少々変わっていた。選挙ポスターで出身党・国民党のロゴを載せなかったのだ。通常、候補者は出身党のロゴを付けたポスターを使用するが、カラス氏の場合、国民党ロゴを意図的に避けてきた。その理由は「私は政党の壁を越え、欧州全体の代表の一人という意識があるからだ」と説明してきたが、事情はもっと複雑だ。

 カラス氏には国民党現指導部に対して不信の思いが強い。具体的には、二―ダーエストライヒ州のプレル州知事(ErwinProll)を中心とした党人事政策にカラス氏はこれまで苦い体験をしてきたからだ。具体的には、前回、欧州議会選で第1党となり、カラス氏が当然、党代表としてブリュッセルに派遣される予定だったが、プレル州知事の意向もあってブリュッセルに初めて派遣される元内相のシュトラッサー氏が国民党代表に抜擢されたのだ。カラス氏にとって屈辱の人事だったはずだ。

 カラス議員は国民党のロゴを使用しない選挙ポスターを使用して世論調査の予想を覆して第1党を堅持した。シュビンデルエッガー党首(財務相)にとって少々複雑な気持ちだろうが、欧州議会選第1党は同党としては久しぶりの快挙だけに、ここはカラス氏の勝利を共に祝おうといったところだろう。

 カラス氏は欧州委員のポストを視野に入れているという。外貌は地味だが、政治的野心は燃えている。クリスタ夫人はワルトハイム元大統領(元国連事務総長)の娘だ。オーストリア政界の政党争い、党内の権力闘争には関心を払わず、欧州の政治舞台でその手腕を発揮したいと考えているわけだ。

 ウィーンの中央政界から追放されたような形でブリュッセルに行ったカラス氏の今回の勝利は一政治家の執念の凄さを物語っている。