オーストリアのローマ・カトリック教会系通信社「カトプレス」は12日、大変興味深いインタビュー記事を配信した。会見相手は法王庁教理省長官のゲルハルト・ミュラー大司教だ。会見記事のタイトルは「自分は改革派のローマ法王に対立する保守派ではない」というのだ。ちなみに、同大司教は今月22日、フランシスコ法王から正式に枢機卿に任命される一人だ。

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▲バチカン教理省長官のミュラー大司教(バチカン独語電子版から)

 ミュラー大司教は独レーゲンスブルク教会出身聖職者で前ローマ法王べネディクト16世が自身の後継者として教理省長官に抜擢した人物だ。そのような経緯があるためか、カトリック教会内外で「ミュラー大司教は保守派聖職者だ」と見られてきた。

  バチカン法王庁内の人材配置を見ていると、不思議に感じることがある。バチカン改革と教会の刷新に取り組むローマ法王フランシスコの周囲に改革促進派だけが取り巻いているわけではない。バチカンの中枢を表現するとすれば、改革派の中に保守派聖職者がにらみを利かせている、といった状況だ。その保守派聖職者の代表としてミュラー大司教の名前がいつも出てくる(「法王と教理省長官の“難しい関係”」2013年12月21日参考)。

 世界的神学者ハンス・キュンク教授は独シュピーゲル週刊誌とのインタビューの中で「ミュラー大司教の神学的立場は保守的であり、改革促進を模索するフランシスコ法王の路線とまっこうから対立している」と指摘しているほどだ。

 そこでカトプレス記者は単刀直入に、「大司教は改革派法王に対立する保守派聖職者の代表ではないか」と質問したわけだ。その答えは「カリスマ的なローマ法王とドクマ的な教義の番人といったタイトルと同様、事実ではない」と一蹴。フランシスコ法王との関係については、「法王は兄弟的、父親的であり、全てに心情的だ」と述べている。大司教によると、「法王とは月、2、3回会合するが、法王は教理省の仕事には理解を示している」という。同時に、「法王と自分は確かに出身が違う。法王はイエズス会修道院出身であり、自分は神学教授だった。しかし、前歴の相違は相互補完するもので、対立するものではない」と説明している。

 「フランシスコ法王は2、3のモラル問題で従来のカトリック教義とは異なった見解を有している」と憶測されているが、「法王の見解はカトリック教義と完全に一致している」と強調した。

 「フランシスコ法王はバチカンの重要な機関に女性をトップに抜擢する考えがあると思うか」では、「十分考えられることだ。ただし、女性が聖省のトップに立つということはないだろう。神学研究、カリタス、教鞭などの分野で女性が登用されることはあり得る」という。女性聖職者については従来通り、「考えられないだろう」という立場だ。

 カトリック教会根本主義聖職者組織「ピウス10世会」(聖ピオ10世会)の再統合問題については、「バチカンの立場は明確だ。対話の門戸は開いている」と述べ、「ピウス10世会」の教会再統合の可能性を排除していないという。 

 バチカンと「ピウス10世会」との対立は、第2バチカン公会議(1962年〜65年)に参加した故マルセル・ルフェーブル大司教が教会の近代化を明記した公会議文書の内容を拒否し、69年に独自の聖職者組織「ピウス10世会」(聖ピオ10世会)を創設したことから始まる。当時のローマ法王パウロ6世(在位63年〜78年)は75年、一時付与した同聖職者組織の教会公認を撤回し、ルフェーブル大司教を追放した。

 バチカンは09年10月、「ピウス10世会」との関係正常化交渉に本格的に乗り出し、11年9月、「ピウス10世会」の再統合に関する条件(未公開)を提案。「ピウス10世会」は12年3月、バチカン側に同提案への返答したが、両者間の相違を乗り越えることは出来ずに終わった経緯がある。

 なお、フランシスコ法王が今週、ハードなスケジュールだ。17日から19日まで8人の枢機卿から構成された提言グループとの会合、20日には枢機卿会議、22日には19人の新枢機卿の叙任式、そして23日には新枢機卿叙任祝賀ミサだ。