米共和党は目下、来年の中間選挙と次期大統領選(2016年)に勝利するための戦略を練っているが、有権者の支持率はもう一つ芳しくない。そこで党のイメージ・アップのため今売り出し中のローマ法王フランシスコから学べ、といった声が出てきた。イタリア通信社ANSAが19日、「ローマ法王が共和党の模範」というタイトルで報じた。

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▲米共和党が模範とするフランシスコ法王(2013年3月31日、独国営放送中継から )

 米国内の複数世論調査によれば、共和党は孤立し、不寛容であり、富者優先、貧者に対して同情心をもたない政党と受け取られてきたという。特に、草の根保守運動「ティーパーティー(茶会)」への反発は強い。同党は米財政協議と政府一部閉鎖の政治的責任が問われている。このままいけば、来年の中間選挙、16年大統領選挙は厳しい、といった判断が党内で強まっている。
 
 米共和党は白人男性の党というイメージが強すぎ、人口増大が著しいヒスパニック系のマイノリティーや黒人を引き付けることができなかったという反省から、マイノリティー、女性票をも引き付け得る戦略を検討中だ。そこで南米初のローマ法王フランシスコのカードが急浮上してきたというわけだ。

 米共和党が高く評価するフランシスコ法王のイメージとして、「率直」「人間性」そして「勇気」の3点が挙げられている。党の救世主として「フランシスコに倣え」というのだ。
ちなみに、米国のカトリック教徒数は、聖職者の未成年者への性的虐待問題にもかかわらず、南米出身のカトリック系移住者のお蔭で、増えている。もちろん、フランシスコ法王の人気は非常に高い。これも共和党にとって大きな魅力だ。

 参考までに、第113回米連邦議会に選出された上院議員(100議席)と下院議員(430議員、欠員5議席)の所属宗派図を見ると、最大グループは299議席を有するプロテスタント派で全体の約56・4%を占める(前回は307議席)。同派内の最大グループはバプテスト派の74議席(全体の約14%)、その次はメソジスト派47議席(8・9%)、長老派43議席(8・1%)となっている。一方、カトリック教会は上・下院で161議員で全議会の約30・4%、前回比で5人増加した。単一グループで見れば、カトリック教会が米連邦議会最大グループとなる。

 バチカン法王庁は新ミレ二アムを迎えた西暦2000年、世界の政治家の守護聖人にトーマス・モアを選出した。故ヨハネ・パウロ2世は当時、「世界が急激に発展する今日、政治家も理想像が必要だ。家庭を保護、青少年、老人、障害者など、弱者のために実行できる政治家が願われる」と説明、トーマス・モアこそ世界の政治家が追求しなければならない理想像だと主張したことがある。

 (モアは1478年、ロンドン生まれ。ヘンリー8世時代の大法官として活躍したが、ヘンリー8世が教会法に反して夫人との婚姻を無効宣言し、固有の教会を創設した時、反対。最終的には退官させられ、反逆罪として処刑された人物だ。人道主義者、法律家、外交官、政治家であったモアは、キリスト教という枠を越えて人々を魅了してきたといわれ、「モアはキリスト者としての信仰をどの生活分野でも見事に具現化して人生を送った」と評されている。「貧者の聖人」であり、地位や名誉から距離を置き、「国家の僕(しもべ)」として国家に忠実を尽くした一生を送ったことで知られている。モアが抱いてきた理想世界は1516年に著した「ユートピア」の中で描かれている)。

 米共和党は政治家の理想像トーマス・モアには全く関心を示さず、党のイメージ・アップのためにフランシスコ法王を選挙戦の御神輿に担ぎ出そうとしている。