世界で最も有名なキリスト教説教師(南部バプテスト教会)、ビリー・グラハム師(1918年11月生まれ、95歳)は、1950年「福音伝道協会」を設立して以来、60年以上の福音伝道活動(リバイバル運動)を行ってきたが、現在進行中のキャンペーン「私の希望・米国」を行った後、その活動に終止符を打つという。同師の説教は北米2万5000の教会で中継される。同師はこれまでに世界185カ国で約2億1000万人に説教している。

▲“20世紀のパウロ”と呼ばれるビリー・グラハム師(ウィキぺディアから)
バチカン放送独語電子版8日付の上記の短信を読んだ時、グラハム師の60年以上の宣教活動は成功だっただろうか、と考えてみた。説教者として同師の名声は世界の至る所に響き、同師は“20世紀のパウロ”と呼ばれている。その説教は過去、多くの信者を鼓舞し、勇気を与えたことは疑いのないことだ。同師はテレビなどマスメディアを利用した大衆伝道の道を切り開いたパイオニアだ。
ところで、グラハム師が説教活動を始めた60年前に比べ、現在の米国社会は精神的に復興しただろうか。
米国はメイフラワー号に乗った清教徒たち(ピルグリム・ファーザース)が新しい神の国を夢見て建国した国だ。米大統領は就任式には聖書の上に手を置いて宣誓する。その米国で現在、神への信仰はイベント化し、その霊性は年々、失われてきたように見える。
銃乱射犯罪は年々増加し、麻薬は社会の隅々にまで広がり、医療用麻薬の乱用は深刻だ。オバマ大統領自身も若い時、マリファナを摂取したことを認めたが、麻薬問題は米国社会を汚染し、多数の国民が中毒になっている。性犯罪はいうまでもない。一方、ワイルドな資本主義国・米国では富む者は益々豊かになり、貧者は逆に益々貧しくなっている。世界最強の国家で満足な医療すら受けることができない国民が多い。米ニューヨークの「反ウォール街デモ」参加者たちは「われわれは99%」と叫び、貧富の格差や銀行を含む金融機関の横暴を批判したばかりだ。
米カトリック教会では過去50年間で約5000人の聖職者による性犯罪事件が発覚している。例えば、ロサンゼルス大司教区は、教区内聖職者の性スキャンダル事件の和解金として6000万ドル(約70億円)を被害者に支払わざるを得なかった。カトプレス通信によると、性犯罪に対する賠償総額(和解金を含む)は20億ユーロと推定されている。賠償金が払えないために、教会関連施設を売り出さざるを得なくなった教区すら存在する。聖職者の性犯罪問題は新教会側も同様だ。
確かに、グラハム師はこの世の名声を受けてきたが、米国を神に導くという使命は依然果たせずに終わっている。グラハム師はその宣教活動を終えるが、彼が愛する米国社会は今もなお、神を失い、霊的には飢え苦しんでいるのだ。
神の期待を背負って登場した同師の説教人生は幕を閉じるが、“20世紀のパウロ”は神の国を目撃せずに舞台から去ろうとしている。

▲“20世紀のパウロ”と呼ばれるビリー・グラハム師(ウィキぺディアから)
バチカン放送独語電子版8日付の上記の短信を読んだ時、グラハム師の60年以上の宣教活動は成功だっただろうか、と考えてみた。説教者として同師の名声は世界の至る所に響き、同師は“20世紀のパウロ”と呼ばれている。その説教は過去、多くの信者を鼓舞し、勇気を与えたことは疑いのないことだ。同師はテレビなどマスメディアを利用した大衆伝道の道を切り開いたパイオニアだ。
ところで、グラハム師が説教活動を始めた60年前に比べ、現在の米国社会は精神的に復興しただろうか。
米国はメイフラワー号に乗った清教徒たち(ピルグリム・ファーザース)が新しい神の国を夢見て建国した国だ。米大統領は就任式には聖書の上に手を置いて宣誓する。その米国で現在、神への信仰はイベント化し、その霊性は年々、失われてきたように見える。
銃乱射犯罪は年々増加し、麻薬は社会の隅々にまで広がり、医療用麻薬の乱用は深刻だ。オバマ大統領自身も若い時、マリファナを摂取したことを認めたが、麻薬問題は米国社会を汚染し、多数の国民が中毒になっている。性犯罪はいうまでもない。一方、ワイルドな資本主義国・米国では富む者は益々豊かになり、貧者は逆に益々貧しくなっている。世界最強の国家で満足な医療すら受けることができない国民が多い。米ニューヨークの「反ウォール街デモ」参加者たちは「われわれは99%」と叫び、貧富の格差や銀行を含む金融機関の横暴を批判したばかりだ。
米カトリック教会では過去50年間で約5000人の聖職者による性犯罪事件が発覚している。例えば、ロサンゼルス大司教区は、教区内聖職者の性スキャンダル事件の和解金として6000万ドル(約70億円)を被害者に支払わざるを得なかった。カトプレス通信によると、性犯罪に対する賠償総額(和解金を含む)は20億ユーロと推定されている。賠償金が払えないために、教会関連施設を売り出さざるを得なくなった教区すら存在する。聖職者の性犯罪問題は新教会側も同様だ。
確かに、グラハム師はこの世の名声を受けてきたが、米国を神に導くという使命は依然果たせずに終わっている。グラハム師はその宣教活動を終えるが、彼が愛する米国社会は今もなお、神を失い、霊的には飢え苦しんでいるのだ。
神の期待を背負って登場した同師の説教人生は幕を閉じるが、“20世紀のパウロ”は神の国を目撃せずに舞台から去ろうとしている。