ゲオルク・フラベルガ―氏(Georg Fraberger)はウィーン市にある欧州最大総合病院AKHの整形外科に勤務する心理学者だ。フラベルガ―氏が自身の経験や生い立ちを書いた著書「肉体なく、魂で」(Ohne Leib. Mit Seele)を発表した。同氏は1973年、ウィーンで腕と脚がなく生まれた。その後、通常の学校を通い、心理学を学び、心理学者として患者のケアを担当している。39歳。4人の子供がいる。

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▲フラベルガ—氏の著書「Ohne Leib Mit Seele」

 同氏はオーストリア日刊紙プレッセとのインタビューの中で「肉体、知性の彼方に魂が存在する。肉体や知性は魂を運ぶものだ。人間の核は魂だ」と主張し、魂を科学的に研究してフロイト心理学の世界を凌駕する新しい心理学を目指している。以下、プレッセ紙(9月1日電子版)とのインタビューの一部を紹介する。

 ――魂とは何ですか

 「魂は人間を形作っているもので、肉体や知性の彼方に存在する。肉体と知性は魂の運搬人に過ぎない。私たちは皆、一度は若く、若い限り、魅力的であり、知性も機能する。しかし、それらはいつかは消えていく。しかし、人間の核や存在は変わらない。魂こそ人間の中心だからだ」

 ――魂の要求をどのように認知できますか

 「それを説明するのは簡単ではない。絵描きについて説明する。銀行マネージャーはいう。金を稼ぐために何か仕事すべきだ。しかし、絵描きは『自分は買い手がなくても絵を描かなければならない』と感じていた。絵を描くことが彼の魂の欲求だったのだ。しかし、絵描きが銀行家の意見を受け入れた場合。40歳になって絵描きはバーンアウトになり、彼はなぜ病気となったか分からないだろう」

 ――心の声を聞かなければならないということですか。

 「その通りだ。自分が主張することは何も新しくないが、現代社会では重要な価値観が忘却されている。人々はハウス、自動車、金が必要だと信じている。もちろん、それらが全部あれば素晴らしいが、十分ではない。より価値あるものは物資的な世界の彼方にあるからだ。自分の診断を受けた患者の中には、物質的な全ての物を所有していたが、『自分は価値のない人間だ』と感じていた。実際、その患者は魂の病気だったのだ」


 フラベルガ—氏の本が発表されたほぼ同じ時期、著名な理論物理学者スティ―ヴン・ホーキング博士(71)の「短い伝記」が発表された。博士は「車椅子の物理学者」と呼ばれ、世界的に知られた学者だ。博士の場合、成人後、筋委縮性側索硬化症という難病に罹った。博士は自身の人生について「素晴らしく、成就した人生だった。身体障害者は、自身ができることに集中し、できないことに頭を悩まさないことだ」と述べている。フラベルガ—氏は腕と脚のない身で自身のできること、「魂の研究」に乗り出しているわけだ。