「アフリカであんな大きな大使館を見たことがなかったからビックリしたよ」

 知人のドイツ人化学者ヤン・ガヨヴスキ氏が言った。同氏は中部アフリカのルワンダを仕事で頻繁に訪問してきた。その彼が首都キガリで中国大使館を見た時の印象だ。
 「中国はどうしてあんな大きな大使館をルワンダで建築したのか考えたよ。中国はアフリカで資源確保に専心していることは周知の事実だ。ルワンダにはタングステンやスズが少し採掘されるが、同国の経済は農業を中心としたものだ。にもかかわらず、中国は大きな大使館を作り、多数の職員を派遣している。キガリ駐在の西側外交官の話によると、中国人の狙いは隣国コンゴ民主共和国だという。あの国はダイヤモンドなど地下資源が豊富だ。ただし、対ルワンダ国境周辺は政治的に不安定だ。だから中国側はルワンダに拠点を置き、隣国進出を模索しているということだったよ」と説明してくれた。

 アフリカ通の知人は「中国人はとにかく大きな建物が好きだね。ルワンダの中国大使館と比較すれば、米国大使館は小さな借家のようなものだ」という。中国はエチオピアの首都アディスアべバのアフリカ連合(AU)の本部建物を建設して無償で贈呈しているが、その建物も大きい。ちなみに、エチオピア政府は国家の命運をかけて巨大な「グランド・ルネッサンス・ダム」(総工費42億ドル)を建設中だが、そこにも中国が関与している。とにかく、中国は大きな建物、大きなダムといったように、大きなものを好む。アフリカには既に100万人以上の中国人労働者が働いている。

 ルワンダといえば、1994年4月にジュベナール・ハビャリマナが暗殺された事件を発端に、推定80万人が犠牲となった‘ルワンダ大虐殺‘が起きたことを想起する読者も多いだろうが、現在のルワンダの国民経済は回復し、「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどだ。

 ルワンダ通のガヨヴスキ氏によると、「中部アフリカで目下、政治的に安定している国はエチオピアとルワンダだ」という。実際、ルワンダの首都キガリには「考えられないほどの銀行がある。街を歩けば、どの通りにも銀行の看板を見つけることができる。どうしてそんなに多くの銀行があるのかと現地人に聞くと、ルワンダは政治的に安定し、社会インフラも完備されてきたから、世界の金が集まってくるからだという。キガリはアフリカ版フランクフルト市(ドイツの金融都市)のような都市だ」というのだ。もちろん、「マネーロンダリング(不法資金洗浄)に悪用されている疑いは払拭できないがね」と付け加えることを忘れなかった。

 そのような国ルワンダに中国は中央アフリカの拠点を構築し、アフリカの資源獲得に乗り出しているわけだ。中国は共産党政権だから中・長期計画に基づいて経済活動ができる。短期間に成果を期待される資本主義経済国ではできないことができる。その一つは、採算を無視した巨大な建物建設ではないか。巨大で最新施設を備えた建物をAU本部に提供し、アフリカ諸国との関係を深めている。中国の戦略は欧米諸国には絶対に真似のできないものだ。