トルコで先月末からエルドアン政権の強権政治に抗議する反政府デモが続いている。その一方、政権支持派のデモや集会も頻繁に開かれている。
エルドアン首相は16日、与党の「公正発展党」(AKP)の集会で演説し、市中心部のゲジ公園からデモ隊を強制排除すると宣言する一方、反政府デモ隊の主要グループ「タクシム連帯」は「エルドアン政権の強権と腐敗に抗議を続ける」と主張している。

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▲トルコ系移住者のデモを報じるオーストリアのメデイア(2013年6月24日、撮影)

 ところで、トルコ国内の混乱はドイツについで多くのトルコ系移住者・労働者(約20万人)を抱えるオーストリアにも波及、23日にはエルドアン政権を支持するデモとそれに抗議する反政府デモが行われたばかりだ。

 オーストリアの首都ウィーン市で23日午後、約8000人のトルコ系移住者がエルドアン首相の写真を高く掲げ政権支持のデモを行う一方、約600人のトルコ系移住者は政府批判のデモを行った。オーストリア警察側は政権支持派と反政府系のデモ隊の衝突を回避するために厳重警戒を敷いていた。

 政府支持派デモ参加者は「エルドアン政権はわが国の国民経済を発展させてきた」と政権を擁護。反政府デモ参加者は「「催涙ガスや放水で民主的デモ参加者を鎮圧している。エルドアン政権は強権を行使し、言論・結社の自由を蹂躙している」と批判する、といった具合だ。オーストリアのトルコ系移住者社会は母国の政権支持派と反政府派で分裂してきた。
 デモ参加者数ではエルドアン政権支持派が圧倒的に多い。オーストリアの治安当局によると、反政府系デモ参加者はクルド系とアレヴィー派系の移住者が多いという。

 ホスト国オーストリアはトルコのデモ騒動をどのように受け取っているのかといえば、エルドアン政権のデモ鎮圧に対しては批判の声が強い(死傷者が出ている)。エルドアン政権支持派のトルコ系移住者に対しては「エルドアン政権が良いというのならば、さっさと母国に戻っていけ」から「トルコ系移住者の国籍取得の際はその政治信条をチェックすべきだ」といった過激な意見まで飛び出してきた。
なお、オーストリアのシュビンデルエッガー外相は「トルコは欧州連合(EU)に加盟する資格はない」として、ブリュッセルに対しトルコとのEU加盟交渉再開の延期を要請しているという。

 オーストリア国民はオスマン・トルコのウィーン北上以来、トルコ民族の動向に強い警戒心を持っている。ウィーンを舞台としたトルコ系移住者の政府・反政府デモを目撃したオーストリア国民の心に“オスマン・トルコの恐怖”が蘇ってくるかもしれない。
 同国の統合問題担当のクルツ次官は「トルコ系移住者は母国の政治問題をわが国に持ち込まないようにすべきだ」と要請しているほどだ。


【短信】UNIDO次期事務局長に中国の李勇財政部副部長を選出

 ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)は24日、第41回工業開発理事会(IDB、53カ国)を開催し、カンデ・ユムケラー事務局長の後任事務局長に中国の李勇財政部副部長(62)を選出した。UNIDO関係者によると、李次期事務局長は53カ国中、37票を獲得し、第一回投票で当選を決めた。事務局長選には7人が立候補していた。

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▲李勇次期事務局長

 李勇次期事務局長は2003年以来、中国財政分野の主要人物。中国人民銀行通貨政策委員会のメンバー、国際金融危機対策国家タスク・フォースなどを歴任してきた。
 UNIDOでは過去、米国、オーストラリア、カナダ、英国、フランス、オランダなど欧米の主要加盟国が次々と脱退し、専門機関として存続が問われてきた。
 ユムケラー事務局長時代の腐敗と縁故主義で汚染されたUNIDOを再建し、加盟国の支持を得ることできるかが新事務局長の課題となる。