産経新聞電子版を読んでいたら韓国の高校生による日本語スピーチ大会が22日、ソウルの日本大使館公報文化院で開かれたという記事があった。そこで大賞の第1位となった仁川の高校3年の金賢珍さん(18)は、「直接全て話して伝える韓国語」と「間接的に気持ちを伝える日本語」の表現の違いを紹介し、「言葉の裏に含まれた本当の意味を探る努力をすることが本当の意思疎通だ」と語ったという。久しぶりに感動した。

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▲5月のパリの郊外風景(2013年5月、撮影)

 竹島問題から従軍慰安婦問題まで日韓両国は「正しい歴史認識」を巡って険悪な関係が続いてきた。その矢先だけに、18歳の金賢珍さんの「言葉の裏に含まれた本当の意味を探る努力」という発言には感動した。他者、それが他国の場合、その人の発言を正しく理解することは決して容易なことではない。金さんは「本当の意思疎通」は「本当の意味を探る努力」がなくして実現できないというのだ。

 33年前、当方は初めて欧州の地を踏んだ。それから異国の地で生活してきた。欧州の社会では韓国や日本以上に言葉が重要視されている。「間接的に気持ちを伝える」といった文化ではない。今、発した言葉が全てだ。沈黙はけっして金ではない。だから、異国に行けば先ずその言葉を学ばなければ生きていけない。

 最初は生きていくために言葉を学んだが、少し余裕が出てくると、次第に「相手の心を理解したい」という思いが深まっていった。「なぜ、彼は悩んでいるのか」、「なぜ、彼は涙を流すのか」、それを理解したいために、彼が使う言葉を学んでいった。

 「言葉」が重なリ「文化」を構成し、その文化が織り成してきた内容が「歴史」とすれば、「正しい歴史認識」まで到達するためにはどれだけの長い道程が控えていることだろうか。「歴史は民族の数ほどある」という表現を聞くが、それは大きくは間違っていないだろう。

 「正しい歴史認識」に取り組む前に、先ず「言葉の裏に含まれた本当の意味を探る努力」が日韓双方に大切だろう。意思疎通の努力をせず、「正しい歴史認識」と叫んでも空虚なことだ。
 そして相手を理解する最短手段は相手が話す言葉を学ぶことだろう。金賢珍さんのように、相手の言葉を学ぶ人々は愛の実践者だ。日本語と韓国語は文法が同じだから、学びやすいという人もいるが、他国の言葉を本当に理解するには常に至難が伴う。

 朴槿恵大統領の就任後最初の外遊地は米国だった。次の訪問先は中国だ。日本より中国を最初に公式訪問する初の韓国大統領となる。韓国側は領土問題や従軍慰安婦問題で対立する日本を意識的に外したわけだ。日本側は当然、そのように受け取っている。
 朴槿恵大統領が対日関係が悪化しているゆえに、何をさておいても日本を訪問していたら、日本国民は韓国大統領の「意思疎通の努力」に感動し、感謝したかもしれない。

 日韓両国を隔てているのは海だけではない。先述したように、言語が異なり、文化は異なっている。努力せずしては理解できないのだ。両国は今こそ、意思疎通を図る努力を積み重ねていくべきだろう。