南米出身初のローマ法王フランシスコが3月13日に選出されてまもなく100日目を迎える。明るい人柄と気さくな言動で教会内外での法王の人気は悪くない。ただし、世界に約12億人の信者を有するローマ・カトリック教会はここ数年、聖職者の未成年者への性的虐待事件、法王執務室からバチカン内部機密が外部に流出(通称バチリークス事件)する不祥事、バチカン銀行の不正問題などが次々と表面化し、教会の信頼は地に落ちている。

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▲バチカンのナンバー2の人選が遅れている( バチカンの復活祭の礼拝に参加した枢機卿たち、2013年3月31日、独公営放送から撮影)

 それだけに、バチカンの改革は急務だ。78歳の高齢ローマ法王の職務負担を軽減するためにもバチカンのナンバー2、国務省長官を早く任命しなければならないが、人選が遅れている。以下、オーストリアのカトプレス通信から「国務省長官の人選」を紹介する。

 新ローマ法王フランシスコの就任最初の訪問先は7月22日から28日までブラジルのリオデジャネイロで開催される青年カトリック信者年次集会(ワールドユースデー)だが、その直後に新国務省長官が任命されるだろうという声が聞かれる。
 ローマ日刊紙「イル・メッサッジェーロ」によれば、ホンジュラスのオスカー・アンドレス・ロドリグリエツ・ マラディアガ枢機卿が有力候補に挙げられている。バチカン改革のための8人の枢機卿から構成された提言グループのリーダー格だ。また、国際カリタスの会長でもある。ただし、ローマ法王とナンバー2の国務省長官が南米の修道院出身者によって占めるのはバチカンにとっては慣例破りだ(フランシスコ法王はイエズス会士、マラディアガ枢機卿はサレジオ会士)

 南米出身の法王にとって、政治、外交手腕と経験のある聖職者をイタリア、ないしは欧州から選出するやり方も十分考えられる。その意味でバチカンのお膝元イタリア出身の枢機卿の名前が挙がっている。バチカン市国政庁長官で提言グループの一人、Giuseppe Bertelloだ。その他、パリ大司教 Luigi Ventura 、ワルシャワの Celestino Migliore 枢機卿,らの名前が挙がっている。

 独週刊誌シュピーゲルは昨年、バチカン・ナンバー2のタルチジオ・ベルトーネ国務省長官(枢機卿)が絡んだ不祥事を報じた。ミラノのカトリック系病院の副院長投身自殺やトニオロ研究機関の人事問題について、同長官の独裁的な人事政策を内部文書を通じて暴露した。
 フランシスコ法王としては、教会の信頼回復のためにもバチカン改革の核となる新国務省長官は腐敗やスキャンダルからクリーンな枢機卿を選出したいが、一長一短でなかなか理想的な人物が見つからない、というのが現実かもしれない。