ウィーンに本部を置く国連工業開発機関(UNIDO)の職員グループが加盟国とUNIDO外部監査役、内部監視局長宛に付属文書を含め計5頁から成る公開質問状を送付した。テーマは「ユムケラー事務局長の腐敗を調査し、UNIDOを救え」だ。内部職員の告発だ。

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▲UNIDOのウィーン本部(2013年5月、撮影)

以下、公開質問状の概要を紹介する。

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 UNIDOは国連専門機関として45年間以上経過するが、ユムケラー事務局長とその仲間たちのミスマネージメントは類がない。
 われわれUNIDOに献身的に働く職員は過去7年間、UNIDOを工業開発分野の指導的な機関とするために汗を流してきたが、フランス、英国、ニュージランド、リトアニアはUNIDOから脱会し、オランダも脱会意志を表明した。少なくともあと4カ国は脱会を真剣に考えている。

 何が問題なのか。それはユムケラー事務局長のミスマネージメント、腐敗、縁故主義(アフリカ出身者とイスラム教徒贔屓)、そして自己昇進欲だ。献身的に働くUNIDO職員は腐敗内容を暴露し、公平な調査を要求する。
 われわれは外部監査役、加盟国、次期事務局長に議論の余地のないずうずうしい職権乱用、腐敗の調査を期待する。通常、UNIDO内部監視局(IOS)が調査をしなければならないが、内部監視局長自身が不正に任命された人物であり、ユムケラーの仲間だから、調査は期待できない。

 ユムケラー事務局長はUNIDO事務局長の中でも年365日間中、225日間、旅行している記録の持ち主だ。飛行機はファースト・クラスを常に利用する。国際通貨基金(IMF)事務局長ですらビジネス・クラスを使っている。事務局長の1回の旅行で3万5000ユーロ以上の費用がUNIDOの財政負担となる。宿泊先など準備されている場合ですら、事務局長は経費を懐にいれ、事務局長の夫人がUNIDO本部Dビル22階に一室を確保して夫の旅費を集めている、といった有様だ。
 年225日間外遊する事務局長(DG)がどうして自身の機関(UNIDO)を経営できるだろうか。彼は代理を委任しないので、組織は未決定問題で窒息状況に陥る。いつも旅行中だから加盟国とじっくりと話し合う時間はもちろんない。

 過去2年間の事務局長の旅行はUNIDOビジネスとは全く関係ない。彼はUNIDOマネーを母国シエラレオネで将来の政治キャリアを準備するために投資し、自身の将来の任務である「全ての人のための持続可能なエネルギー」担当事務総長特使のために働く。これらは本来、UNIDOの主要課題ではない。UNIDOは、UNIDOの課題ではない仕事のために旅費を払い、事務局長のプライベートな目的を実現させるために費用を支払っているのだ。

 ユムケラー事務局長が昇進させた人々の中には、事務局長の従兄弟、Patrick Kormawa氏がいる。彼はアドバイサーとしてUNIDO入りし、ナイジェリア事務所の責任者となっている。財政担当者に財政分野に精通していない人物を選ぶ一方、先述した内部監視局長George Perera氏は腐敗問題の調査担当役だが、何もしない。アフリカのUNIDO現地事務所所長はアフリカ諸国の元閣僚や事務局長の知人たちで占められている。

 内部監視局でフランス人のFabian Lambert女史が局長時代、ユムケラー事務局長の腐敗問題が調査対象となったことがある。UNIDO内部と外部の監査団は2007年9月、ギニア・プロジェクト(GCLME、総額資金約2000万ドル)の調査を開始した。同プロジェクト担当職員の資金不正融資問題が浮かび上がったからだ。その結果、同担当職員は08年3月、解雇されたが、当時ナイジェリア事務所所長だったユムケラー事務局長も事件に関与していた疑いが出てきたのだ。
 しかし、その直後、Lambert女史は調査中止を強いられた。それを良しとしない女史は辞職したが、ユムケラー事務局長の不正を明記した関連文書をパリの外務省に送付した。
 フランス政府は今年、UNIDOの脱会を決定したが、同国がUNIDO脱会を決定した最大の理由はユムケラー事務局長の腐敗問題だったのだ。
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 ユムケラー事務局長は自身が任命した局長クラスを操りながら、UNIDOを私的に利用してきた。UNIDOの最大分担国・日本側は事務局長の中身のないグリーン産業という言葉に踊らされ、貴重な資金を提供してきた。同事務局長の腐敗問題は久しく囁かれてきたもので、けっして今、表面化してきたテーマではない。日本外交の消極性がUNIDO指導部をここまで腐敗させる遠因となったことは間違いないだろう。

 UNIDOの使命を果たす為に黙々と働いてきた職員たちが今、立ち上がろうとしている。日本側も遅くはない。UNIDO機関の再建のために乗り出すべきだ。アフリカ諸国の発展に大きな役割を果たすべきUNIDOが本来の課題に取り組むことが出来るように共助すべきだ。

 それにしても、腐敗し、UNIDOを現在の困窮化に貶めた張本人ユムケラー事務局長を「全ての人のための持続可能なエネルギー」担当事務総長特使に選出した潘基文事務総長の人を見る目のなさには驚くだけだ。