駐オーストリアのチョー・ヒュン韓国大使(CHO・Hyun)は22日、ウィーンの工業産業協会でオーストリア経済界代表たちの前で韓国経済について講演をしたが、「わが国の経済は今、日本の円安の影響で危機的な状況にある。輸出国の韓国経済は苦戦を余儀なくされている」と説明した。

▲ウィーン市1区の風景(2013年4月、撮影)
韓国外交官がウィーンで講演する場合、数年前ならば、停滞する日本経済をよそに威勢のよい話が飛び出したものだが、チョー大使は終始、「円安は韓国経済にとって最大の脅威だ」と繰り返すだけ。円安の実感が乏しいオーストリア側の経済専門家たちも韓国大使の悲鳴に驚きの顔をしていたほどだ。
韓国連合通信は「円相場が2009年4月以来となる1ドル=100円台に迫っている。円安は韓国製品の価格競争力を弱め、韓国経済の支えとなっている輸出に大きな影響を与えるのは必至だ。内需と不動産景気が低迷する状況で、輸出まで悪化すれば、しばらく低成長から抜け出せなくなる。そのため、韓国では『アベノミクス』に対する恐怖が広がっている」と報じている。チョー大使も「円安恐怖症」に悩まされている1人だろう。
ただし、韓国メディアは「経済が危機にある」という認識では一致してきた。例えば、同国の大手日刊紙「中央日報」日本語電子版は「北核より韓国経済が危機」という社説記事を掲載しているほどだ。
同紙は「グローバルコンサルティング会社マッキンゼーが出した『第2次韓国報告書:新成長公式』と米外交専門誌フォーリンポリシーに寄稿した『止まってしまった漢江(ハンガン)の奇跡』は、私たちが知らない新しい内容でない。私たちの目の前で進行している生きた現実が書かれている。私教育や家計負債の負担で中産層が崩壊し、大企業の工場の海外移転で韓国で『雇用なき成長』が深刻になっているという内容だ。サムスンとLG・現代自動車を除いた企業の競争力が大きく落ち、低い出生率と高齢化のためもう『漢江の奇跡』は作動しにくくなった」と指摘している。
それに対し、知人の韓国外交官は「円安は続くだろうが、永遠に続くものではない。安くなればいつか再び高くなるのが常だ。韓国政府が円安悪説を説きまわったとしても効果は期待できない。韓国経済界はこの期間を有効に利用し、構造改革など実施していけばいいだろう」と述べた。
例えば、先述した中央日報の社説は「1人当たりの国民所得が2万ドルを突破してから、わが国の経済が伸びていない背景にはサービス業の革新を怠ってきたからだ」と分析している。
知人外交官のような長期的視点から国内経済の刷新を考えれば、円安も韓国経済の刷新のチャンスとなるわけだ。今回の円安を乗り越えることが出来れば、韓国は真の経済大国入りを果たすのではないだろうか。
【短信】CTBTO広報部長に聞く
北朝鮮が2月12日、3回目の核実験を実施したが、これまで同実験で放出された放射性物質(キセノン133など)が検出されなかった。ところが、ウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)は23日、日本の高崎観測所が北の核実験による微量の放射性物質を検出したと発表した。それによると、北の核実験55日後の4月8日から9日にかけ、日本の高崎観測所が検出したほか、ロシアのウスリースク観測所でもキャッチしたという。
そこでCTBTOのアニッカ・トウンボルク広報部長に電話で確認した。同部長は「核実験後55日目に放射性物質が検出されたことは通常ではない。そこでこれまでの観測データーを検証し、検出された日の気流状況などを再現する一方、加盟国に原発事故か放射性物質の放出事故がなかったかを確認した。その結果、加盟国からは北の核実験から発生した放射性物質以外に考えられないという返答があったので、23日公表した」という。
高崎観測所では過去、核実験直後、放射性物質が検出されたが、検証の結果、北の核実験のものではなかったという結論になったことがあった。今回は間違いがないか、との質問に対し、同部長は「100%間違いないと断言できないが、検出された放射性物質が北の核実験によるものという専門家の判断を信じる」という。微量だったこともあって、「北の核実験がウラン爆弾かプルトニウム爆弾かは識別できない」という。

▲ウィーン市1区の風景(2013年4月、撮影)
韓国外交官がウィーンで講演する場合、数年前ならば、停滞する日本経済をよそに威勢のよい話が飛び出したものだが、チョー大使は終始、「円安は韓国経済にとって最大の脅威だ」と繰り返すだけ。円安の実感が乏しいオーストリア側の経済専門家たちも韓国大使の悲鳴に驚きの顔をしていたほどだ。
韓国連合通信は「円相場が2009年4月以来となる1ドル=100円台に迫っている。円安は韓国製品の価格競争力を弱め、韓国経済の支えとなっている輸出に大きな影響を与えるのは必至だ。内需と不動産景気が低迷する状況で、輸出まで悪化すれば、しばらく低成長から抜け出せなくなる。そのため、韓国では『アベノミクス』に対する恐怖が広がっている」と報じている。チョー大使も「円安恐怖症」に悩まされている1人だろう。
ただし、韓国メディアは「経済が危機にある」という認識では一致してきた。例えば、同国の大手日刊紙「中央日報」日本語電子版は「北核より韓国経済が危機」という社説記事を掲載しているほどだ。
同紙は「グローバルコンサルティング会社マッキンゼーが出した『第2次韓国報告書:新成長公式』と米外交専門誌フォーリンポリシーに寄稿した『止まってしまった漢江(ハンガン)の奇跡』は、私たちが知らない新しい内容でない。私たちの目の前で進行している生きた現実が書かれている。私教育や家計負債の負担で中産層が崩壊し、大企業の工場の海外移転で韓国で『雇用なき成長』が深刻になっているという内容だ。サムスンとLG・現代自動車を除いた企業の競争力が大きく落ち、低い出生率と高齢化のためもう『漢江の奇跡』は作動しにくくなった」と指摘している。
それに対し、知人の韓国外交官は「円安は続くだろうが、永遠に続くものではない。安くなればいつか再び高くなるのが常だ。韓国政府が円安悪説を説きまわったとしても効果は期待できない。韓国経済界はこの期間を有効に利用し、構造改革など実施していけばいいだろう」と述べた。
例えば、先述した中央日報の社説は「1人当たりの国民所得が2万ドルを突破してから、わが国の経済が伸びていない背景にはサービス業の革新を怠ってきたからだ」と分析している。
知人外交官のような長期的視点から国内経済の刷新を考えれば、円安も韓国経済の刷新のチャンスとなるわけだ。今回の円安を乗り越えることが出来れば、韓国は真の経済大国入りを果たすのではないだろうか。
【短信】CTBTO広報部長に聞く
北朝鮮が2月12日、3回目の核実験を実施したが、これまで同実験で放出された放射性物質(キセノン133など)が検出されなかった。ところが、ウィーンに事務局を置く包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)は23日、日本の高崎観測所が北の核実験による微量の放射性物質を検出したと発表した。それによると、北の核実験55日後の4月8日から9日にかけ、日本の高崎観測所が検出したほか、ロシアのウスリースク観測所でもキャッチしたという。
そこでCTBTOのアニッカ・トウンボルク広報部長に電話で確認した。同部長は「核実験後55日目に放射性物質が検出されたことは通常ではない。そこでこれまでの観測データーを検証し、検出された日の気流状況などを再現する一方、加盟国に原発事故か放射性物質の放出事故がなかったかを確認した。その結果、加盟国からは北の核実験から発生した放射性物質以外に考えられないという返答があったので、23日公表した」という。
高崎観測所では過去、核実験直後、放射性物質が検出されたが、検証の結果、北の核実験のものではなかったという結論になったことがあった。今回は間違いがないか、との質問に対し、同部長は「100%間違いないと断言できないが、検出された放射性物質が北の核実験によるものという専門家の判断を信じる」という。微量だったこともあって、「北の核実験がウラン爆弾かプルトニウム爆弾かは識別できない」という。