欧州のカトリック教国フランスで同性婚解禁法案が可決されたが激しい論争が今尚続いている。一方、極東の冷凍の国・北朝鮮ではそのような国民間の論争や国会の論争もなく同性愛者の権利尊重の動きが予想以上に進められてきた。海外では既に北朝鮮友好団体のトップに同性愛者が就任しているほどだ。

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▲ウィーンの北朝鮮大使館(2013年2月、撮影)

 旧ソ連・東欧諸国で共産政権がまだ力を有していた時、「共産主義圏にはエイズは存在しない。欧米社会のように、同性愛者もいない」と表明したきた。それが冷戦の終焉後、「ソ連にも東欧諸国にもエイズ患者が存在するし、同性愛者もいる」ことが明らかになった。

 ところが、北朝鮮は旧ソ連・東欧諸国の崩壊後も朝鮮型社会主義社会を主張し、「地上の天国」という標語を撤回していない。同性愛者問題ではつい最近まで「欧米社会の病」といった受け取り方が支配的だった。ところが、金正恩第1書記時代に入ってから流れが変わってきたのだ。その結果、同性愛者が親北団体のトップに就任したのだ。

 「どの団体か」といえば、「オーストリア・北朝鮮友好協会」だ。そのK会長はウィーンの社交界では同性愛者として良く知られている。

 同性愛者のK氏を会長に選出する問題では紆余曲折があった。北側の金光燮大使(金正恩第1書記の義理の叔父)は当初、K氏の会長就任をなんとか阻止するため他の候補者を探したが、「オーストリア・北友好協会」の会長に就任したい政治家も学者を見つけることができなかった。
 前会長の急死から数年間、会長ポストは空席のままだったが、このままでは都合が悪いということから、会長代理を務めてきたK氏の会長就任が決定したというわけだ。

 もちろん、金大使はその前に平壌に問い合わせただろう。同性愛者が北友好協会の会長に就任したことが平壌に伝われば、責任を追求されるかもしれないからだ。また、メディアに騒がれないように、新会長就任式は静かに行われたことはいうまでもない。当方もかなり後で知った次第だ。

 ウィーン外交筋では、K氏の「友好協会」会長就任は、「金正恩第1書記が同性愛者問題では祖父や父親以上にリベラルな考えの持ち主であることを示した」と受け取られている。