ローマ法王フランシスコは8人の枢機卿から構成された提言グループを創設し、法王庁の改革(具体的には使徒憲章=Paster Bonusの改正)に取り組むことを明らかにした。バチカン法王のロムバルディ報道官が13日、発表した。

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▲バチカンの復活祭の礼拝に参加した枢機卿たち(2013年3月31日、独公営放送から撮影)

 同グループ内の調停役を任せられたホンジュラスのオスカー・アンドレス・ロドリグリエツ・マラディアガ枢機卿(Oscar Andres Rodriguez Maradiaga)によれば、同グループの最初の会合は今年10月1日から3日まで開催される予定だ。

 マラディアガ枢機卿は「私たちは法王と全ての問題を話し合う。バチカン銀行(IOR)も当然、テーマに含まれる。私たちはまだ準備会議をしていないが、法王選出会(コンクラーベ)開催前の枢機卿会議で話題となったテーマについて話し合うことになる」と指摘している。

 その枢機卿会議では、現フランシスコ法王(ベルゴリオ枢機卿)が法王庁の改革を強く主張し、「福音を述べ伝えるためには、教会は(垣根から)飛び出さなければならない。自己中心的な教会はイエスを自身の目的のために利用し、イエスを外に出さない。これは病気だ。教会機関のさまざまな悪なる現象はそこに原因がある。この自己中心的、ナルシストのような教会の刷新が必要だ」と檄と飛ばしている。

 世界に12億人の信者を有するローマ・カトリック教会ではここ数年、聖職者の未成年者への性的虐待事件が頻繁に発覚し、教会の信頼を大きく震撼させた。それだけではない。法王執務室からバチカン内部機密が外部に流出(通称バチリークス事件)する不祥事が発生し、バチカン銀行の不正問題が表面化するなど、バチカンは難題に直面してきた。

 提言グループの1人、シドニー大司教区のゲオルゲ・ペル枢機卿(George Pell) はメディアとのインタビューの中で、「バチカンには2、3の問題があることは皆知っている」と述べている。
 実際、コンクラーベ前の枢機卿会議で法王庁の改革を主張したベルゴリオ枢機卿が90%以上の枢機卿たちの支持を得て法王に選出されたということは、114人の枢機卿たちの多くも教会の刷新がなければもはや存続できないと肌で感じていることを示している。その意味で法王庁の改革は枢機卿のコンセンサスと受け取って間違いがないだろう。

 しかし、法王庁の改革は非常にデリーケートなテーマだ。簡単には推進できない。ヴァルター・カスパー枢機卿は「世界の教会を欧州中心のやり方で主導することはもはやできないが、ローマ法王は教会最高指導者であり、最終決定権を有する点は変わらない。その意味で世界正教会のような体制に変わる事はない」と釘をさしている。イタリアの日刊紙コリエーレ・デラ・セラ の中で答えている。

 提言グループからどのような改革案が出されるか注目されるが、バチカン改革のポイントは「中央集権」体制の見直、大陸司教会議など現場の声(聖職者)の重視だろう。1人の法王が12億人の教会を指導することは無理だから、「権限の分割」は避けて通れない。
 
 最後に、提言グループに属する8人の枢機卿を紹介する。

 1)Reinhard Marx(.欧州、ミュンヘン・フライジング大司教)
 2)Giuseppe Bertello (バチカン市国政庁長官)
 3)Francisco Javier Errazuriz Ossa (南米、サンチアゴ元大司教),
 4)Oswald Gracias (アジア、ボンベイ大司教)
 5)Laurent Monswengo Pasinya (アフリカ、キンシャサ大司教)
 6)Sean Patrick O´Malley (米州、ボストン大司教)
 7)George Pell (オーストラリア、シドニー大司教)
 8)Oscar Maradiaga Rodriguez (南米、テグシガルパ大司教)