金融危機下のキプロスで28日、閉鎖されていた同国銀行の営業窓口が13日ぶりに再開し、多くの預金者が銀行に殺到した。幸い、大きな混乱は生じなかったという。ただし、タックス・へイヴンのキプロスに流れてきた巨額な資金が海外に流れるのを防止するため、預金者は一日、300ユーロ以上は引き出しできないし、海外送金は規制されるなど、さまざまな制限が課せられている。ユーロ圏17カ国と国際通貨基金(IMF)から100億ユーロ余りの融資を受けるが、キプロスの国民経済の行方は当分不透明だ。

P3290703
▲キプロスの金融危機を報じるオーストリア日刊紙エステライヒ

 ところで、キプロスの主要宗教、キプロス正教会(東方正教会のギリシャ正教会)もキプロス銀行、国民銀行の2大銀行の再編の影響を受け、銀行に預けてきた教会資産が減少、「1億ユーロ以上の損失が出た」という。キプロス正教会の最高指導者、クリゾストモス2世がニコシアの記者会見で答えたものだ。

 大多数の国民が所属する正教会は同国最大の不動産所有者でもある。正教会は豊かな資産を銀行を通じて活用してきたが、金融危機で銀行に預けてきた資金が減少してきたわけだ。その点、キプロスに巨額の資金を保管しているロシア富豪たちと同様だ。

 正教会は昨年9月、職員、聖職者の給料カットを実施するなど、出費の節約対策を実行してきた(1500ユーロ以下の給料の場合はカットしない)。その一方、同2世は「金融危機を誘発させた政権責任者は告訴されるべきだ」と主張し、政治家の責任を追及している。なかなかの強気だ。同時に、ニコス・アナスタシアディス大統領との会見では「正教会は国家の沈没を防止するため支援する用意がある」と述べ、連帯感を表明したばかりだ。

 一方、ニコシアのラルナカ国際空港などでは富豪所有のジェット機が頻繁に離着陸するのが目撃されたという。ロシアやイスラエルの富豪たちのジェット機がキプロスの銀行に預けてきた巨額の資金を運び出しているという。
 オーストリアの日刊紙エステライヒ紙(28日付)によると、3月15日前、多数の私有ジェット機が分刻みで離着陸したという。具体的には、ロシアから375機、イスラエルから344機、アラブ圏から121機、隣国ギリシャから382機、英国から245機、フランスから209機、そしてドイツから170機だ。一般市民が現金を引き出すために汗を流す前に、富豪たちは銀行から素早く資産を引き出していたわけだ。 

 ちなみに、10万ユーロ以上の預金は課税対象となることから、預金額を分散し、10万ユーロ以下にするために新しい口座を開く国民が増えているという。エステライヒ紙によると、人口約86万のキプロスに350万以上の銀行口座が存在するという。